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連載29 こぐれひでこ の いただきもの絵日記

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春野菜サラダ


バカガイ

文・イラスト こぐれひでこ

こぐれひでこ
profile
イラストレーター&エッセイスト。『こぐれひでこのおいしい画帳』(東京書籍)、『こぐれひでこのごはん日記』春夏篇・秋冬篇(早川書房)、『私んちにくる?』(扶桑社)、『こぐれの家にようこそ』(早川書房)ほか、著書は30冊を超える。現在は、女性向けの人気情報サイト『カフェグローブ』で、ごはんをテーマにした『こぐれひでこの毎日ごはん』を、また遊び心をテーマにした情報サイト『あそびすと』でも連載中。

『こぐれひでこの毎日ごはん』
http://www.cafeglobe.com/travel/kogure/
うるい、たらの芽、コゴミなど、店頭に春の訪れを告げる山菜が並んでいる。すぐそばの棚にはアスパラガスや春キャベツ、スナップエンドウ、そら豆などの春野菜がさわやかな顔をして並んでいる。

春がくるとはこんなに嬉しいことだったのか。今年ほどそう感じたことはない。暖かい日々の心地よさ、植物が誕生する喜び……。何度も体験してきたはずなのに、今年の嬉しさが格別なのは、去年の大震災後に迎える初めての春だからか。

その日私の足は野菜売り場で立ちすくんでしまった。どの食材も初々しい魅力を放っていて、どれを選んだらいいのやらとぼんやりしてしまったのである。どれくらいのときが過ぎたのか分からないが、ふと我に返ってショッピングカートの中を見ると、うるい、コゴミ、アスパラガス、グリーンピース、スナップエンドウ、そら豆、キュウリ、ミニトマト……。8種類の野菜が投げ込まれていた。

いったい私はなんの料理を作ろうとしていたのか。いくつかの野菜を元の場所に戻そうとしたとき、「いや待てよ。これ全部を使って春らしさが溢れだすようなサラダを作ったらどうだろうか」という考えが浮かんだ。緑色系のグラデーションの中でアクセントを付けるトマトの赤、美しそうではないか。パリっとしたり、ヌルっとしたり、ポクッとしたり、ショリッとしたり、食感のバリエーションも楽しそうではないか。

アスパラガスの皮を薄くむいてゆでて斜め切りする。莢(さや)からだしたグリーンピースとそら豆を塩ゆでする。スナップエンドウの筋を取って塩ゆでする。コゴミをさっと塩ゆでして半分の長さに切る。キュウリを乱切りにミニトマトを輪切りにする。うるいは食べやすい長さに切る。食材の準備はそれでOK。

オリーブオイルと米酢、塩、コショウ、しょうゆを混ぜ合わせてドレッシングを作る。器に野菜類を盛りつけてドレッシングを回しかけると春爛漫のサラダが完成。

ヌルリとパリッ、二つの食感を併せ持つのは山菜から選出のうるいとコゴミ。ポクッとした食感はそら豆が、グギッとした食感はアスパラガスとスナップエンドウ、パリッの担当はキュウリ、グニュッを担当するのはミニトマト。

食感だけでなく見た目にも春の息吹を感じさせてくれるサラダだ。ドレッシングに米酢としょうゆを使うので、日本人になじみやすい味わいである。

今年もまた美しい日本の春に出会えたことに感謝しながら、そのおいしさをかみしめたのである。