農林水産分野の最新研究成果を紹介! アフ・ラボ
トマトの「これから」に期待!
トマトの全ゲノム解読に成功
日本を含む国際研究チームがトマトの全ゲノム解読に成功しました。ゲノムとは生物がもつ遺伝情報全体のことを指し、 今回解き明かされた情報は今後品種改良などさまざまな研究に活かすことができます。 |
![]() ゲノムが解読されたトマトの品種「Heinz 1706」 ![]() 断片化したトマトのゲノムDNAに酵素などを加えて化学反応をおこし、DNA配列を解読するための準備を自動的に行う装置 |
なぜ「トマト」なのか
トマトは世界的に栽培されている野菜で、生食だけでなく調味料などの加工品としても幅広く利用されています。わが国でも米に次いで第2位の農業産出額を誇っています。そこで、トマトの「生物」としての基本的な仕組みである遺伝子の情報を理解することを目指し、アメリカ、韓国など計14カ国、300名以上の研究者による国際的な協力体制のもと、2003年(平成15年)からトマトの全ゲノム解読が開始されました。 国際研究で日本も貢献
生物の細胞の中には、遺伝情報(遺伝子)を伝える物質であるDNAとそのDNAが膨大につながった染色体が含まれています。トマトには、第1から第12まで番号付けされた12本の染色体があります。それらを参加国がそれぞれ分担して研究した結果、3万5,000もの遺伝子の染色体上の位置や構造が解読され、今年5月に「トマト全ゲノム解読」としてとりまとめられました(※)。 日本は第8染色体の解読を担当しました。この研究は、公益財団法人かずさDNA研究所と明治大学農学部、および独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 野菜茶業研究所が連携して行い、高精度の解析などにより大きく貢献しました。 公益財団法人かずさDNA研究所は、実験植物「シロイヌナズナ」の全ゲノム解読においてすでに実績を上げていました。また、農作物で世界初となったイネの全ゲノム解読は、農水省の委託プロジェクト予算に基づく、日本を中心とした国際共同研究によるものです。このように、わが国のゲノム解読の優れた技術と高い研究水準があったからこそ、好成果がもたらされたといえるでしょう。 トマトの品種改良に期待 解読されたトマト全ゲノムのDNA配列が、トマトの品種ごとに異なる配列の違いを見つけるための「基準」として利用できることから、配列の違いと品質や性質の関係について研究を進めることができます。それにより、耐病性・害虫耐性・乾燥耐性に優れたトマトや栄養成分が豊富なトマトの育成など、トマトの品種改良と新しい栽培方法の開発へとつながることが期待されているのです。
また、トマトのゲノム情報を活用することで、ナスやジャガイモ、ピーマンなど、トマトと同じナス科作物全般の育種が大きく加速することも期待されており、今後も農作物の研究から目が離せません。 ![]() 参加国が分担して研究を行ったトマトの染色体。 この10カ国に加え、アルゼンチン、ドイツ、ベルギー、イスラエルの4カ国も研究に参加 (※)総合科学誌「Nature」2012年5月31日号に論文が掲載された。 公益財団法人かずさDNA研究所 http://www.kazusa.or.jp/j/information/news20120531.html 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 野菜茶業研究所 http://www.naro.affrc.go.jp/project/research_activities/laboratory/vegetea/040000.html |