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農林水産省

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特集1 獣医師の仕事(4)

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動物用医薬品から食品の安全まで


感染症を防ぎ、動物の健康と食品の安全を守るために、動物用医薬品の研究・開発に携わっている獣医師もいます。
農林水産省動物医薬品検査所で動物用医薬品の有効性の確認等を図るための審査、検査等を通じて、動物衛生や公衆衛生の向上に取り組む獣医師を取材しました。

動物用医薬品の品質検査や生体中薬物の分析も動物の健康や食品の安全を守る獣医師の仕事のひとつ
動物用医薬品の品質検査や生体中薬物の分析も動物の健康や食品の安全を守る獣医師の仕事のひとつ

2010年5月、動物医薬品検査所は独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構動物衛生研究所と共同で、国際獣疫事務局(OIE)からアジア初のコラボレーティング・センターとして認定された。アジア各国の獣医師が研修に訪れ、さらなる国際貢献が期待されている

2010年5月、動物医薬品検査所は独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構動物衛生研究所と共同で、国際獣疫事務局(OIE)からアジア初のコラボレーティング・センターとして認定された。アジア各国の獣医師が研修に訪れ、さらなる国際貢献が期待されている

検査第二部で動物用医薬品の品質検査や有効性評価方法の調査研究をしている獣医師・清水裕仁さん

検査第二部で動物用医薬品の品質検査や有効性評価方法の調査研究をしている獣医師・清水裕仁さん

企画調整課長を務める獣医学博士・小島明美さん

企画調整課長を務める獣医学博士・小島明美さん

室内には医薬品検査に使われるさまざまな精密検査機器が置かれていた

室内には医薬品検査に使われるさまざまな精密検査機器が置かれていた

ここで審査・承認された動物用医薬品の数々

ここで審査・承認された動物用医薬品の数々

動物の慰霊碑。動物愛護週間には職員全員が献花するという

動物の慰霊碑。動物愛護週間には職員全員が献花するという
動物医薬品検査所の概要
動物医薬品検査所は、動物用医薬品等の品質・有効性・安全性を確保するための検定・検査とその企画・立案等を行っている唯一の国の機関です。動物用医薬品は、製造や輸入されてもすぐに販売できるわけではありません。国家検定や農林水産大臣の命令による検査を受けることが義務づけられています。現在約3,000種類の動物用医薬品が市場に出ているそうです。

動物用医薬品の製法、品質に関わるさまざまな基準を作成したり、製造販売業者に対して開発段階から適切な助言や指導を行うことも、同検査所の業務のひとつです。また製造販売承認申請書の審査や流通段階での抜き取り検査なども行っています。

同検査所に勤務する78人の職員のうち35人が獣医師。そのうち15人が女性の獣医師です。

牛と向き合う日々から得た学び
今回お話を聞いた清水裕仁さんは、北海道江別市にある酪農学園大学獣医学科を卒業後、獣医師の免許を取得して同検査所に就職しました。現在は検査第二部で、動物用医薬品等の有効成分の分析等の品質検査、新薬の治験届や承認申請資料の安全性及び有効性評価に携わっています。

高校の時から生命科学を探求したいと思っていたという清水さん。大学での実習相手はもっぱら牛でした。在学中、北海道の酪農家さんに3週間住み込んで酪農実習を経験し、そのときの生産者の方の生の声を胸に抱いて、日々牛と接する大学生活を過ごすうちに、「酪農業を発展させるために、乳牛の病気を減らし、疾病の予防をするにはどうすればよいのか」と考えるようになり、乳牛の病態解明による治療法の探索や治療薬の検査などに携わりたいと思うようになったといいます。動物用医薬品の検査や審査業務には、獣医学の幅広い基礎知識や、動物の病気や薬に関する専門性が必要です。清水さんは、動物薬開発メーカー・生産者・臨床獣医師の各々の思いを想像しながら、生産現場に有効で安全な薬が届けられるよう、動物用医薬品の検査や審査業務について向き合っています。

人の健康にも貢献する仕事
検査所内のさまざまな施設を案内してくれた企画調整課長の小島明美さんは、博士号をもつ獣医師です。小島さんは動物が好きだったことから獣医師を目指し、東京農工大学で獣医学を学んだのち、動物の病気を治す医薬品の研究等の道を志し、入所後、獣医学博士を取得しました。

獣医師の仕事には動物の診療以外に、家畜衛生分野で家畜伝染病の発生予防や感染の拡大を防止すること、人の健康に関わる公衆衛生分野で人獣共通感染症を予防することや食品の安全を守ることなど幅広い分野があります。小島さんによれば、口蹄疫が発生した際も同検査所の獣医師が現地にサポートに入り、県庁に詰めて指導を行うなど防疫に貢献したといいます。

小島さんは、動物用医薬品の有効性の確認等の仕事を通して、動物衛生や公衆衛生の向上に取り組む獣医師としてのやり甲斐を、次のように話してくれました。「獣医学は畜水産物の安全確保について、最も関係の深い学問分野です。ここで確認した医薬品が使われて、動物の健康と食品の安全が守られることは大変うれしいことです。ひいてはそれが人の健康を守ることになるのですから」

獣医師が食品の安全の確保に深く関わっていることを実感しました。

口蹄疫や鳥インフルエンザのワクチンを検査している総合検査棟

口蹄疫や鳥インフルエンザのワクチンを検査している総合検査棟

所内には検査棟や動物舎など20棟以上の建物がある

   所内には検査棟や動物舎など20棟以上の建物がある
所内には検査棟や動物舎など20棟以上の建物がある

所内には検査棟や動物舎など20棟以上の建物がある

Photo:Eri Iwata

日本における家畜防疫体制

我が国では、どのような機関がどのような連携を取りながら口蹄疫などの重要な家畜の伝染病の対策を進めているかを紹介しましょう。

国は、都道府県、(独)動物衛生研究所等と連携し、国内の家畜防疫に関する企画、調整、指導等を実施するとともに、動物検疫所を設置し、海外からの疾病の侵入を防ぐとともに、国内の病気を持ち出さないようにするための、動物や畜産物(生鮮食肉、ハム、ソーセージ等)輸出入検疫を実施。都道府県は、家畜防疫の第一線の機関として家畜保健衛生所を設置し、家畜の疾病の発生予防や蔓延の防止に取り組んでいます。国は、これらの家畜保健衛生所の取り組みの支援、職員の講習等も実施しています。

また、全国及び地方の各段階で自衛防疫団体が組織され、予防接種等生産者の自主的な取り組みを推進しています。

日本における家畜防疫体制