特集2 新・日本の郷土食(1)
個性いろいろ伝承のおせち料理
12月も半ばを過ぎると、食料品売り場には、お馴染みのおせち料理が並びます。 まるで日本中が同じ料理でお祝いしているように見えますが、全国にはその土地ならではの珍しい正月料理がたくさんあるようです。 今回は、そんな郷土の伝統おせち料理を特集します。 |
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おせち料理のおせちとは、平安時代に宮中で行われていた「御節供(おせちく)」の行事に由来する言葉です。年に数回、季節の節目の日に、神様にお供えをするのですが、次第に年神様に感謝する「正月」が一番盛大に祝われるようになり、庶民の間で「おせち」とは、正月のお祝い料理をさすようになりました。 しかし、農民や漁師たちは「おせち」という言葉を使う以前から、正月のお祝いをしていました。年の暮れにはもちをついて神棚やかまど、漁師は船などに供え、縁起の良い魚を用意し、乾物や塩漬け、野菜を使った煮物や酢の物を作って新年を迎えます。明けて正月には、装いを改めた家族が一堂に集まって、雑煮やお祝いのごちそうをいただくのです。そして現在も、その当時からの伝統を守りつづけた「正月のハレ食=おせち料理」が全国各地にみられます。おもしろいことに、「真面目に(まめまめしく)働けるように」と豆を煮たり、「先見通しが明るいように」とレンコンやちくわを使ったり、「五穀豊穣を祈って」田作りを作ったりと、縁起を担ぐ料理が多いのは全国共通です。 料理の盛り付け方には地方ごとの特色があります。もともとお重箱に詰めるのは、東海や近畿地方の数県程度と、意外と少数派。今お重箱に詰めた形式が多いのは、昭和の中ごろからデパートや料亭が注文販売を始め、雑誌などでも多く紹介された影響のようです。関東地方や徳島、沖縄県では大鉢や大皿盛が多かったようです。全国的な多数派はめいめいのお膳で祝う「正月膳」のスタイルです。 最近はお正月に旅行に行ったり、仕事をする人もいて家族全員が集まらない家庭もあります。それに「昔ながらの風習」をすべて執り行うのは難しいものです。それでも、郷土の手作りのおせち料理を1品でも用意して、祝いの膳を整えてみてはいかがでしょうか。「ほう、これは懐かしいね」と家族が喜ぶ素敵なお正月が迎えられることでしょう。 |
![]() 窪田春美さん(左)とスタッフのみなさん。それぞれに昆布巻、煮物、漬物など得意分野があって和気あいあいと分担作業している |
棹前(さおまえ)昆布を使った越前流昆布巻はあせらずじっくりと
今回は、福井県の南越前町にある「土の駅今庄」の厨房で「伝承のおせち料理」を教えていただきました。代表者の窪田春美さんは、よその土地から嫁いできて、今庄地区の食文化の多彩さに感動し、以来JAや地区活動を通じて郷土料理の普及に尽力してきた達人。そんな彼女が「福井の伝承おせちはまずこれ」と教えてくれたのが昆布巻です。市販の昆布巻とは味も大きさも大違い。北海道厚岸郡浜中で一般の昆布より若いうちに採る「棹前昆布」を1本につき2枚使う贅沢なもので、焦らずじっくり煮れば味は絶品。ぜひ皆さんも試してください。福井県南越前町/「土の駅 今庄(いまじょう)」のみなさん |
昆布巻の作り方
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![]() 地元の新鮮な食材を使って、自慢の手打ち蕎麦やお膳料理、「惣菜バイキング」と称した量り売りをしている人気の店 土の駅 今庄 福井県南条郡南越前町湯尾 96-19 TEL.0778-45-1272 営業時間/11時00分~18時00分 定休日/木曜日、第4日曜日 http://tutinoeki.com/ Photo:Keita Suzuki |
年末のおせちバイキングが大盛況
「土の駅 今庄」では、毎年12月の30日と31日の2日間「おせち料理バイキング」を開催し、大好評を博しています。これは自前のお重箱(20×20cmのもの)を持っていくと、1段重5,250円(限定30)2段重10,500円(限定50)で、好きな料理が詰められるという趣向。町外からのお客も多く、1時間10組程度と入場者を制限して大混乱を避けているほどだそう。それほど、「忙しくておせち料理が作れないが、やはり手作りの味が欲しい」という人が多い証拠ですね。(予約は12月1日から)。なお今回ご紹介した昆布巻は別会計で予約販売しています(12月25日まで1本400円)
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