このページの本文へ移動

農林水産省

メニュー

特集1 竹のおはなし(2)

  • 印刷

竹ってどんな植物?


ひと口に「竹」といっても、実は驚くほどたくさんの種類があります。
ここでは、竹と日本人との関わりや竹の特性などを紹介します。

竹の活用

伝統的な日本家屋には竹材が多用されていた

伝統的な日本家屋には竹材が多用されていた(注)2020年7月20日に画像差替
 
堅牢な竹材は建築資材として優良な素材だ。東京ミッドタウン・ギャラリー棟では床に竹材を使っている

堅牢な竹材は建築資材として優良な素材だ。一般家庭でも広く使われている
(注)写真の説明文に誤りがあったため、2019年3月18日に訂正
 
伝統工芸の駿河竹千筋細工

伝統的京竹工芸品(注)2020年7月20日に画像・キャプション差替
 
写真・資料提供:渡邊政俊/竹文化振興協会専門員(注)2020年7月20日修正
日本の文化を育んだ竹
私たち日本人と竹の関わりの歴史は古く、縄文時代の遺跡から竹を素材とした製品が出土しています。日本人は古来より竹を有用な植物として利用してきたのです。農業でも漁業でも、竹はごく身近にあって、軽くて加工性の高い素材として、例えば作物の収穫に用いる背負いかごや腰かごなど、用途にあわせて自分で編んだり職人に注文して使いやすい形や大きさの竹かごをいくつも持っていました。

伝統的な日本家屋にはいたる所に竹が使われていました。土壁には竹を芯に塗り込めてありました。この壁が寒さ、暑さ、湿気などを調整するなど、日本の気候に適した働きをしているのです。堅牢で熱伝導率が高い竹材は、現在でも床材など住宅用資材として利用されています。

また、かごやざる、花器などの日用品から玩具だけでなく、日本文化を代表する茶道や華道の道具、笛や尺八などの楽器、竹刀や弓などの武道具などに用いられていることから、私たちの生活や文化に根差した素材だといえます。

さらに、竹は古来から積極的に日本各地に植えられ、手入れの行き届いた竹林は、美しい風景をかたちづくってきました。

しなやかでいて強く、多岐にわたる用途に活用できる竹は、まさに自然からの恵みであり、日本文化の伝承や人々の暮らしに欠かせない植物です。

目を見張る成長の早さ
分類の仕方や種類の数え方には諸説ありますが、一般に国内にある竹は約600種に及ぶとされています。世界に目を向ければ1,200種ほどあるといいますから、その多様さに驚かされます。

竹は常緑性の多年生植物です。毎年地下茎の節にある芽から新しい竹を誕生させ、わずか数カ月で立派な竹に成長するという特徴があります。1日(24時間)に、マダケで121cm、モウソウチクで119cm伸びたという記録があります。

樹木で幹に当たる部分を竹類では竹稈(ちくかん)と呼びます。竹の寿命は、竹稈が太いものほど長く、一般には20年ほどといわれています。竹は上に伸びていきますが、樹木のように年輪を重ね、毎年竹稈が太くなることはありません。

竹は樹木と比較して成長が早く、種類や用途によって異なりますが、竹材として利用する場合は成長しはじめてから3年以上経った竹を使います。伐採時期は一般的に成長の休止時期である晩秋から初冬が適期です。

また、ぐんぐん成長する竹稈と同じように、地下茎も生命力に溢れた伸長を示します。土質や気象条件によって異なりますが、1年に5mも伸びたという記録があります。3~4年目の地下茎がタケノコを最も量産し、5年目を過ぎると徐々に減っていきます。それ以降は豊作(表年)と凶作(裏年)がほぼ隔年繰り返され、タケノコの収穫量に差が出てきます。

竹に宿る力
竹そのものは勢いよく成長しますが、竹稈の中は空洞です。竹は実に神秘的な植物です。

「京都市洛西竹林公園」の管理指導や熊本県水俣市(みなまたし)にあるエコパーク水俣の「竹林園」の設計などに携わり、竹の生態や歴史に詳しい渡邊政俊農学博士は、「古代の人々は空洞をもつ不思議な形の竹に、一種の自然宗教的な信仰心を抱いたと思われる」と語っていました。そうした神秘性が『竹取物語』を生み、竹を使った祭事や神事を今日まで伝承させたのではないでしょうか。

主な竹の種類(イネ科タケ亜科)

モウソウチク(孟宗竹)
  
マダケ(真竹・苦竹)
モウソウチク(孟宗竹)

モウソウチク(孟宗竹)
  直径18cm、高さ22mになる大型種です。日本の自生種ではなく、江戸時代に中国から導入されたという記録があります。節には環が1つあり、節間が比較的短く、材質部は厚いです。 建築や農漁業用資材として利用されていますが、弾力性にやや欠けるため、かごなどを編むには向きません。

春一番に芽を出すモウソウチクのタケノコは、ほのかに甘い独特の旨味があり、「春の味覚の王者」と言われています。
   マダケ(真竹・苦竹)

マダケ(真竹・苦竹)
   直径15cm、高さ20mになる大型種です。節には環が2つあり、節間が長く、材質部は薄いです。弾力性があるなど優れた材質をもつため、建築資材や竹細工などの工芸に利用されています。また、竹の皮には黒褐色の斑点があり、無毛できれいな皮なので、食料品等の包装に使われてきました。

漢字で「苦竹」とも書くように、タケノコにやや苦味があり、アクが強いのが特徴です。


メダケ(女竹)

  
ハチク(淡竹)

メダケ(女竹)    直径2cm、高さ5m程度の中型種です。主に川岸や海岸などに群生しています。材質が柔らかくねばり強いので、竹細工や農業資材などに利用されています。    ハチク(淡竹)    直径3~10cm、高さ15m程度の大型種です。耐寒性があるため、比較的寒い地域にも生育しています。節には環が2つあり、細く割りやすいという材質から、茶筅(せん)などの茶道用具に利用されています。

ハチクのタケノコは、モウソウチクのタケノコが終わったあとに出回りますが、一般に市場に出回ることは少ないようです。


その他

クロチク(黒竹)、ホテイチク(布袋竹)、シホウチク(四方竹)、トウチク(唐竹)、クマザサ(隈笹)、チシマザサ(千島笹)、ミヤコザサ(都笹)などがあります。


竹のトリビア

モウソウチクの花

モウソウチクの花

モウソウチクの種

モウソウチクの種
竹の花
みなさんは、竹にも花が咲くことをご存じですか。

一斉に開花、一斉に枯れるため、その現象がまさに病的に見えることから「開花病」「十年枯病」などと呼ばれ、昔から恐れられてきました。しかし、これは、一定の周期で起こる生理現象であり、病気ではないとのこと。

開花までの周期は長く、マダケではほぼ120年のサイクルといわれていますが、モウソウチクは67年目に開花したという事例が2つあるだけで、現状ではまだよく分かっていません。また、開花すると種子を実らせるのが一般的ですが、ほとんど種子が実らないものもあります。