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農林水産省

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特集1 日本の水産資源を守る(3)

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漁業取締船の活躍 (2)


違法操業を繰り返す韓国漁船集団を追跡
違法操業を繰り返す韓国漁船集団を追跡

荒波の中、勧告に従って停止した漁船に取締艇で接近する

荒波の中、勧告に従って停止した漁船に取締艇で接近する

乗り移る時が最も緊張する瞬間。冷静かつ穏やかな態度で臨むという

乗り移る時が最も緊張する瞬間。冷静かつ穏やかな態度で臨むという

カラーボールが命中した逃走中の違法操業船。これが確固たる証拠になる

カラーボールが命中した逃走中の違法操業船。これが確固たる証拠になる

集魚灯を計測し、違反がないか確認する

集魚灯を計測し、違反がないか確認する

捜査中の漁業監督官と本船から密に連絡を取る

捜査中の漁業監督官と本船から密に連絡を取る
厳しく対処する理由
漁業取締船の乗組員は許可船に対して立入検査を行うだけでなく、無許可の外国漁船などによる違反操業を認めた場合には、昼夜を問わず拿捕行動をとります。拿捕行動が夜間に及んだ場合には、たとえ深夜であろうと九州漁業調整事務所でも状況を把握し、迅速に対応できるよう、職員が待機しています。外国漁業者の拿捕については、検察庁への48時間以内の送致や担保金制度の適用を行わなければならないなど時間的な制約があるため、緊迫した状況の中、連携しながら任務を遂行します。

橋本船長によれば、停船命令に従わないような悪質な違反漁船は取締艇で追いかけ、これに横付けして飛び乗り、拿捕したことも数多くあり、暗闇や波高3m近くもある荒波の中、違反漁船を取締艇で約20kmも追いかけて拿捕したこともあるそうです。できる限り相手に気付かれないように隠密に行動しますが、時には違反漁船の乗組員からハンマーなどを投げられ、頭上をかすめたことやこん棒などで抵抗を受けたことも、本船に体当たりされたこともあったといいます。常に危険と隣り合わせの任務です。

「私たちには、我が国の漁業環境や水産資源を守らなければならないという強い使命感と覚悟があるからこそ、そのような行動も勇気を持ってできるのです。違反があれば、厳しく対処するのはもちろんのことであり、特に悪質・巧妙な違反に対しては、全力を挙げて厳しく対処しています。立入検査で8時間もの時間をかけて違反を暴き、立件したこともありました。とにかく妥協せずに、徹底的にやっています」と語る橋本船長。なぜなら、違反者にとって怖さや厳しさのない取締りでは、違反への抑止効果が薄らいでしまうからです。

しかし、漁業取締船の仕事は、単に違反者を捕まえて一件落着というものではありません。拿捕して一時的に打撃を与えたとしても、それだけで後の施策がなされなければ、しばらくは沈静化しても、またすぐに元の状態に戻ってしまいます。漁業取締り本来の目的は、漁業環境を守り秩序を保つことで、日本の水産資源を持続可能な状態に維持することです。拿捕行動はその一端にすぎません。

橋本船長は「これを一時的な対症療法だけに終わらせないよう、できる限り時間をかけて違反者と根気よく向き合って、対話や指導などを行います。そうして、拿捕されたことについて、単に運が悪かったというように思わせず、自分が犯したことの問題について、しっかりと認識と反省を促し、漁業秩序の遵守や資源保護の重要性について理解してもらうよう取り組むことが、何よりも大切だと思っています。

漁獲量の減少や魚価の低迷など、漁業者を取り巻く現状は厳しいところがありますが、多くの漁業者はそのような状況にあっても、資源保護の必要性についてしっかりと理解し、目先の利益にかられることなく資源の回復にも努めながら、辛抱強く地道に頑張っています。そのような真面目に漁業を営む人たちの収益を守り、将来的にも漁業が安心して継承されるよう、漁業環境を守っていくことが私たちの使命だと考えています」と語っていました。

日本の水産資源を守る使命を負って
最後に橋本船長が話してくれた、そのひとつの事例を紹介します。

平成18年頃、許可を受けて日本のEEZで操業する韓国はえ縄漁船が、割り当てられた漁獲量の何倍もの漁獲物を獲ろうとして、申告する漁獲量を過小に偽る悪質・巧妙な違反が組織的かつ大規模に横行していました。しかし、当時確立されていた検査技術ではこれを暴くことができませんでした。このような状況がしばらく続いたため、橋本船長はそれまでの検査技法や取締手法を根底から見直し、4カ月かけて新たな技法を開発して臨みました。

「相手も常に仲間内で集まり、戦略を練って挑んできていたため、それは日本の資源をかけた闘いと言えました。私は、我が国の水域へ入域する100隻余りのすべての漁船に対して、あらゆる角度から常にモニタリングして徹底的に分析し、違反を行っている可能性が高い者を絞り込み、集中的に取り締まりました」

その結果、7隻の違反漁船を立て続けに拿捕するなど、それまではびこっていた同種の違反を鎮静化させることができました。そして、そのリーダーを拿捕した際、いよいよ観念して、自分が統括する船団40隻の船長名や連絡先などが詳細に記されたリストを差し出したのだそうです。

徹底した捜査手法の構築による拿捕などの取締行動を決行するとともに、根気強い対話と説得を繰り返すうちに、初めは敵意をむき出して激しくぶつかってくる違反者たちも、次第に分かってくれるといいます。そこまでやらなければ、取締り本来の目的を果たすことはできないといいます。こうした地道な漁業取締船の活動によって、次世代に残すための水産資源が守られています。

適正な漁獲量かどうか、魚種ごとに調査する

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   ズワイガニの漁獲量を計測中

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捜査対象の船長への聞き取り。あくまでも温厚に、しかし厳しく進める

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漁具の検査も入念に行い、違法があった場合には押収する

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東日本大震災でも活躍した漁業取締船

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水産庁漁業取締船「白竜丸」による物資陸揚げの様子(宮城県石巻市)

写真・資料提供:水産庁
水産庁の漁業取締船は、被災現場で海上保安庁と連携して捜索活動を行いました。また、岩手県釜石港や宮城県石巻港などを拠点に、自衛隊と協力して食料、医薬品、軽油、A重油などを輸送しました。

この他、漁業取締船は、座礁した船舶からの救助要請の無線を受け、救助活動を行うこともあります。