農林水産分野の最新研究成果を紹介! アフ・ラボ
農業の未来を支える「農業新技術2013」その2
日没後の加温や光照射で花きの省エネ栽培を実現
農林水産省は毎年「農業新技術200X」と題して、農業に関連した新しい重要な技術を選定し、その普及推進を図っています。 今月号では、花き栽培の省エネ化や栽培期間の短縮につながる、新しい技術について紹介します。 |
ストックに遠赤色光を照射している実験圃場。日没後、早いうちから照射する |
日没後と夜間の温度管理で燃料使用量を削減
日本の花きの多くはハウスで栽培され、生長を促すための温度管理に燃料代や電気代など、多大な生産コストがかかります。農研機構花き研究所が開発した日没後に加温や光照射する方法は、そうした光熱費を削減する技術の一つです。 日没後の時間帯は、光や温度に対する花きの感受性が高まります。そこで、これを利用し、陽が落ちた後の数時間、ハウス内の花きに温度と光の刺激を与えることによって、省エネと栽培効率の向上を図るのです。 スプレーギクで行った日没後の加温の実験では、3時間加温すると、夜間の温度を従来の設定温度より下げても、花の生育・開花は従来どおり確保でき、燃料使用量を約30%削減できることが判りました。 日没後の加温と遠赤色光の照射で、早期出荷が可能
日没後に加温するだけでなく、花きに遠赤色光を当てることで、草丈の伸長と開花を早められ、栽培期間の短縮、および切り花の早期出荷が可能となります。トルコギキョウによる実験では、日没後3時間加温するとともに、遠赤色光を照射することによって生育が早まり、光熱費の総額が20%削減される結果が出ました。 農研機構花き研究所の久松完さんは、「本当の苦労はこれから。花きには様々な品目・品種があるうえ、地域の気象条件によっても栽培結果に差が出ます。いかに汎用化・実用化していくかが最大の課題です」と、語ります。 現在、カーネーションやアジサイ、ストック、シクラメンなどへの応用も徐々に進んでおり、今後さらなる品目で実用化されることが、期待されています。 |
実用に当たっては、地域の気象条件と品種間差を考慮する必要があります。また、使用燃料の削減程度は気象条件・作型等により異なります。 農林水産技術会議 http://www.s.affrc.go.jp/ 独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構 花き研究所 文/宗像幸彦 |