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特集1 “あふちゃん”といっしょに、のぞいてきました 農業の研究開発最前線!(3)

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農業の研究開発最前線 事例紹介(2)


「ここで確立した技術は全国で共有されます」と高市さん

「ここで確立した技術は全国で共有されます」と高市さん

さまざまな技術を生かし、イチゴの促成栽培と夏秋どり栽培、多収生産に取り組む

さまざまな技術を生かし、イチゴの促成栽培と夏秋どり栽培、多収生産に取り組む

最前線3  
イチゴの生産コストを半減し、収益率を2倍に!
最新技術の集積で、被災地農業を強力に後押し

(独)農研機構野菜茶業研究所
宮城県亘理(わたり)郡山元(やまもと)町。東日本大震災で津波の塩害に遭った水田地帯の一角に、東西90m、南北80m、軒高4.5mの太陽光利用型植物工場があります。

「ここに、施設園芸に関するあらゆる先端技術、使えそうな技術をすべて集めました」と話すのは、昨年スタートしたこの大規模施設園芸実証研究を総括する、(独)農研機構野菜茶業研究所の高市益行(たかいちますゆき)さん。平成29年度まで続くこの研究は、収益率が2倍になる大規模経営のモデルを示すことを目標にしています。

「亘理町、山元町は、日本有数のイチゴの産地でしたが、震災で壊滅状態になりました。それを以前のような形に戻す復旧ではなく、これまでどこにもなかったような先進的な大型生産団地を形成することをめざしています。この植物工場は、産地をリードするモデル工場の役割も果たします」と高市さん。

被災地に誕生する大規模な施設園芸団地
ハウスではイチゴのほか、東北地方の気象条件を活用したトマトの栽培も始まっています。イチゴと同じように高品質で、しかも1年を通じて何度も繰り返し収穫・出荷できる生産システムを確立させるのが目標です。さらに、被災地に大規模な施設園芸団地を出現させ、大きな雇用を生み出して地域の復興を後押しするのも、収益率の向上と並ぶ大きなテーマです。

現在、亘理町や山元町の、海岸から少し離れた高速道路の両側に、イチゴ栽培のための大型ハウスが合わせて約50ヘクタール建設されています。そこに就農する約100人が、この植物工場で研修を受けました。

今後は実際の営農で生じた問題に対処し、解決策を探っていく役割も植物工場には求められています。

おいしいイチゴができそうね


ハウス内には、7つの最新技術が!
1.高設ベンチ養液栽培

1.高設ベンチ養液栽培

イチゴは草丈が低いため、収穫などの作業は腰をかがめるなど、大きな負担となります。苗の位置を高くすることで、立ったままでの管理作業が可能となり、作業負担の軽減が図れます。また、養液栽培により、肥料成分が容易に調節でき、安定的な生産が可能となります。
   
2.低段密植栽培

2.低段密植栽培

通常のトマト栽培と異なり、株あたりの果房数を1~3(低段)に抑え、2~3倍の栽植密度で年3~4作栽培する方法で、作業を単純化。農業未経験者でもすぐに作業を担当できます。また、周年で栽培できるというメリットもあります。

3.高度環境制御システム

3.高度環境制御システム     3.高度環境制御システム

CO2濃度、日照などを自動的に計測し、そのデータを離れた場所にいてもスマートフォンやタブレット端末で確認できます。天窓開閉やミスト噴霧などの遠隔操作ができるシステムも順次導入。

4.雨水利用システム

4.雨水利用システム

施設の屋根に降った雨水をろ過・殺菌後、タンクに回収・貯留したものを栽培用水として活用します。このことで、津波により塩類濃度が上昇した地下水を使用せずに栽培することが可能です。
   
5.総合防除(IPM)

5.総合防除(IPM)

イチゴに害を与えるダニへの天敵利用や、トマト着果へのクロマルハナバチ利用など、生物機能を最大限に活用しています。大型施設の周年栽培において、環境に配慮した病害虫防除を体系化します。

6.クラウン温度管理技術

6.クラウン温度管理技術

イチゴの株元(クラウン)を部分的に加温・冷却することで、施設全体の温度管理と比べてエネルギーロスを減らし、省エネルギー・安定生産を実現します。また、通常は高コストのため実施できない、夏季の冷却による花芽形成促進も、低コストで実現可能です。
   
7.移動ベンチ栽培システム

7.移動ベンチ栽培システム

収穫や栽培管理に必要であった通路をなくし、イチゴの栽培ベンチを循環して移動させるものです。これまでに比べ同じ面積でおよそ2倍の栽植株数の栽培が可能です。移動中に果実に損傷を与えないよう、縦移送と横移送のメカニズムを開発。