特集1 ニッポンの”おいしい”をもっと世界へ(2)
北米など世界20か国へ養殖ブリを輸出
東町(あずまちょう)漁業協同組合(鹿児島県長島町)
養殖魚ではほとんど例のない、品質管理システムを構築。 一年を通じ、安定した品質のブリを供給することで、世界中のバイヤーから商談殺到! |
![]() 北米やアジアだけでなく、養殖魚ではじめてEU諸国への輸出を開始(写真/アフロ)
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![]() 入り江が多い穏やかな海域で、年間平均水温が19℃と養殖には最適な環境 |
雲仙天草国立公園の南に位置する鹿児島県長島町。大小23の島々からなり、入江に抱かれるように養殖筏(いかだ)が浮かんでいます。 ここでブリの養殖に取り組むのが、東町漁業協同組合。昭和41年に試験養殖が始まり、平成3年には水揚げ高100億円を突破。輸出にも先駆的に取り組み、出荷量を伸ばし続けています。 追い風になっているのは、寿司に代表される日本食ブームと世界的な魚食の広まり。これを好機とみた東町漁協は、平成10年、養殖ブリの加工品として世界初となる、食品衛生管理システム・HACCP認証を取得。5年後には、対EU輸出水産食品取扱い施設の認定を受け取引を開始。さらに、中国や韓国、ロシアに向けても同様の認定を受け、今後、輸出を拡大していく考えです。 「年間の出荷量は1万2000トン。そのうち10%をアメリカ、カナダなど、世界20か国に輸出しています。主な取引先は海外の日本食レストランで、脂の乗ったブリが現地の人たちに好まれるようです。今年は15%くらいまで輸出の割合が増えると見込んでいます」と、東町漁協加工課課長補佐の兼勝久(かねかつひさ)さん。骨付きの魚が敬遠され、国内の消費が伸び悩む今、海外にも複数販路を確保したいと考えています。 |
![]() 組合員1人につき1冊のファイルがあり、種苗生産から給餌、投薬、環境にいたるまで、管理のすべてがわかる仕組みに。平成18年の品質管理室開設以来、1件のクレームも寄せられていない |
140人の養殖漁業者が均一な品質のブリを生産
世界と戦う武器となるのは、種苗から餌の開発、加工、出荷までの一貫生産体制と、徹底した品質管理です。平成15年、安心・安全のこだわりをさらに高めようと、東町漁協は水産庁の補助事業により、生産記録管理のための情報システムを導入。独自の「ぶり養殖管理基準書」を作り上げました。これは、生産者が厳しい基準に基づき自らの飼育情報を日誌に記録し、その情報を漁協が一括管理するもの。養殖魚ではほとんど例のない品質管理システムの構築でした。 「140人の養殖漁業者が、品質のまちまちなブリを生産していては、世界に打って出ることはできません。味や品質が均一で安心・安全なブリを365日出荷できてこそ、世界のバイヤーから商談が舞い込むのです。こうした管理体制のもと生産したブリは、『養殖ブリの王様、業界で頂点を目指そう!』という生産者の強い思いや目標を込めて、『鰤王(ぶりおう)』という商品名で出荷しています」と、兼さん。大勢の組合員の理解を得るには時間もコストもかかりましたが、世界のバイヤーからの〝おいしくて安心〞との評価は、こうした努力によって、もたらされているのです。 若い後継者が多いことも東町漁協の強み。〝夢を持てる漁業〞を合い言葉に、日本一の養殖ブリを世界へ送り届けています。 輸出成功の陰には、一貫生産と最新の品質管理システムが!
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![]() ※RD(一本丸ごと出荷する「鮮魚(ラウンド)」)、SD(エラと内臓を除去した「セミドレス」)、D(内臓と頭を除去した「ドレス」)、F(3枚おろしを真空パックにした「フィレ」) ※中東はレバノンやヨルダンなどに輸出している |
海外から、1日約500本入るオーダーに応じて、毎朝ブリを水揚げ・加工
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HACCP認証ってなに?
HACCPとは原材料の受入れから最終製品までの工程ごとに、危害を分析した上で、危害の防止につながる特に重要な工程を継続的に監視・記録するシステム。世界各国にその採用が推奨されている国際的に認められた食品衛生管理の手法。 |