特集1 ニッポンの”おいしい”をもっと世界へ(3)
国内では人気薄のサツマイモを東アジアへ輸出
JA串間市大束(くしましおおつか)(宮崎県串間市)
「香港では小さなイモが、おやつの定番だよ」 取引先のひと言をヒントに国内では需要の少ない小ぶりのイモを出荷したら、大ヒット! |
![]() 香港でのヒットをきっかけに、シンガポールや台湾へ販路を拡大中
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![]() 東アジアの富裕層にもブランド名が浸透中の「やまだいかんしょ」。甘さとホクホクした食感が自慢 ![]() 「1年中出荷できるのが強み。毎週10トン出荷しています」とJA串間市大束の島田さん ![]() 管内の販売高の8割を支える広大なサツマイモ畑。水はけのよいシラス台地はサツマイモ栽培に最適 ![]() 生産者の数は199名。「輸出の伸びは、新たな希望をもたらしています」と園芸部会の木村部会長 ![]() 「国内は安いものしか売れない状況。しかし海外は違う。次はキンカンを売り込みたい」と野邊組合長 |
宮崎県の農産物といえば、牛肉、マンゴーなどが有名ですが、輸出量が多い品目は、サツマイモ。 その先鞭をつけた産地が、JA串間市大束です。宮崎県串間市の北部にある県下で最も小さなJAですが、昭和41年からブランドイモ「やまだいかんしょ」の栽培を始めた全国有数のサツマイモ産地。600ヘクタールもの栽培面積と、年間1万3000トンの生産量を誇ります。 そんなJA串間市大束が香港への輸出を始めたのは、9年ほど前のこと。しかも送ったのは、国内ではあまり人気のない細長の小さなイモばかりでした。 「取引のあった『福岡大同青果』に中国人のかんしょ担当者がいて、向こうでは日常的におやつとして、小さなイモを食べる、という話を聞いたのです」と、JA串間市大束販売課の島田友樹さんは振り返ります。 もともと、国内では需要の少ない小さいサイズのもの。また当時、国内ではサツマイモの消費の伸び悩みが顕著になりつつありました。思い切ってチャレンジしてみたところ、大好評。輸出量は年々増え、昨年度は香港だけで210トンを輸出しています。 香港以外にも販路拡大 大きなイモも売り込みたい
香港以外にも、宮崎県の営業拠点が置かれているシンガポールや台湾にも販路を拡大。今年は毎週10トンのペースで海外向けの出荷を続けており、輸出量は前年度の2倍になる勢いです。「価格も国内は市況に左右されますが、輸出は、ルートをJA宮崎経済連に一本化することで産地主導で値付けすることができるようになりました。しかも国内より、500g 当たり20円から30円高い。今年は輸出高1億円をめざしています」と、野邊守(のべまもる)組合長は意気込みを語ります。 国内では産地間競争も激化。今後は行政とも連携しながら、小ぶりのイモだけでなく主力である大きなイモを海外市場にどう売り込んでいくかが課題です。 一方、生産者はこう話します。 「みんな、びっくりしてますよ。自分たちのイモが海外で、しかも高値で売れてるなんて。国内は、安値続き。でもそれじゃあ、みんな、努力もしなくなる。その点、輸出はリスクもあるが、価格が期待できます。アジアは人口が多いから、量を出しても価格が下がることもない。円安になればコストが上がるが、悪いことばっかり考えちょってもね。プラス思考で新しい可能性を見つけていかなくちゃ!」と話すのは、園芸部会の木村久男部会長。 輸出の成功は、生産者にも新たな希望と意欲をもたらしています。 ![]() 資料:(独)農畜産業振興機構「ベジ探」、財務省「貿易統計」より作成 収穫した“やまだいかんしょ”は、洗ってすぐサイズ別に、「国内用」「輸出用」に選別
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![]() 当初は袋売りだけだったが、最近はバラ売りも好評。販売方法も試行錯誤を重ねている |
香港の消費者のニーズを的確につかんだことが、大ヒットの要因
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