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チャレンジャーズ チーム力で輝け 第77回

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山形県 米(べい)シスト庄内

かりんとう業界の常識を打ち破れ!米農家が生み出した、米粉100%かりんとう「かりんと百米(ひゃくべい)」


農林漁業生産(第1次産業)と、加工・販売(第2次、3次産業) を一体化させることで、新たな産業を生み出す6次産業。
今回は、米粉と米油だけでかりんとうを開発した、米農家のチームワークを紹介します。

かりんとう作りの中心メンバー、佐藤優人さん、國本琢也さん、事務担当の前田絵理さん、精米などを担当する齋藤勝幸さん(写真左から)

かりんとう作りの中心メンバー、佐藤優人さん、國本琢也さん、事務担当の前田絵理さん、精米などを担当する齋藤勝幸さん(写真左から)

かりんとうのパッケージは米袋をイメージ。原料のほぼ100%が庄内産であることや、“百姓”の知識と経験、米の味わいが詰まっていることなどから、「百米」と名づけた。1袋280円

かりんとうのパッケージは米袋をイメージ。原料のほぼ100%が庄内産であることや、“百姓”の知識と経験、米の味わいが詰まっていることなどから、「百米」と名づけた。1袋280円

味の種類は、「黒糖」「白糖」「胡麻」「庄内青きな粉」「海老塩」の5種類。「黒糖」が一番人気

味の種類は、「黒糖」「白糖」「胡麻」「庄内青きな粉」「海老塩」の5種類。「黒糖」が一番人気

生地の練り込みと、袋詰めはすべて手作業で行う

生地の練り込みと、袋詰めはすべて手作業で行う
米粉だけでかりんとうが作れないか?  米農家の佐藤優人さんは、ふと思いました。通常、かりんとうの主な原料は小麦粉。市販の〝米粉入りかりんとう〞にも、小麦粉が多く使われていることに気づいたのです。

山形県庄内町にある(有)米シスト庄内は、米の生産から販売のほか、米菓の加工や販売も手がける法人。同社で営業も担当する佐藤さんは、新商品の開発に悩んでいました。

「小麦粉は輸入品が多い。庄内産の米粉だけでやってみよう!」と、米シスト庄内の挑戦が始まりました。

ところが……。

不可能を可能にしたのは、女子力や先輩力
「米粉だけのかりんとう作りは不可能だよ」。お菓子作りの専門家に相談すると、そう断言されたのです。同社の加工担当、國本琢也さんと試作を開始したものの、悪戦苦闘の連続。佐藤さんは、「できあがりが固すぎたり、持つだけでボロボロ崩れたり……。一度、油の中で爆発したことがあって、あれはやばかったなあ」と、苦笑します。

毎日平均、4種の新しいレシピを考案し、原料米の種類や配合、水の量、生地の固さ、油温、揚げ時間などを微妙に変えていきながら、試行錯誤を重ねました。

「軽やかな歯ごたえと、お米独特の香味が味わえるかりんとうを、なんとしてでも作りたかったんです!」と、二人は当時を振り返ります。試作品ができるたびに、同僚の女性社員や先輩農家などに試食してもらい、また、米菓や米粉料理についても教わりました。

「湯ごねしたほうが、生地にモチモチ感がでるんじゃないか?」「米油をつかえば低カロリーだし、お米の風味が引き立つかも」「揚げた米粒を生地に練り込むと、カリカリしておいしいんじゃない?」――。

約半年間で試作した数は、なんと350種以上。そして、平成24年4月、ついに、米粉だけの「かりんと百米」が完成したのです。

女性を中心にブームのきざし  めざすは全国区
「控えめな甘さのあとに、お米の香りが口の中に広がる感じ!」「さらっとしてヘルシーなのがいいです。少量で食べやすいのも嬉しいかな」

「かりんと百米」を食べた人たちの感想です。発売から半月で、2000袋を販売。女性を中心に、駅の売店や道の駅では、まとめ買いをする観光客や帰省客が続出しています。

現在、販路は全国各地に広がり、「いずれは海外でもデビューしたいですね」。佐藤さんたちの夢はふくらみます。

JR余あまる目め駅では、「かりんと百米」のほか、自社が開発した、玄米を使った栄養食品も販売している

JR余目(あまるめ)駅では、「かりんと百米」のほか、自社が開発した、玄米を使った栄養食品も販売している
  米シスト庄内で特別栽培(農薬や化学肥料の使用量を、通常の50%以下に抑えた栽培法)した米、「はえぬき」の米粉を使用している

米シスト庄内で特別栽培(農薬や化学肥料の使用量を、通常の50%以下に抑えた栽培法)した米、「はえぬき」の米粉を使用している

チーム力を発揮する秘訣はコレ!
佐藤さんと國本さんは、「かりんと百米」を作るにあたり、米粉や菓子に関するニーズを徹底的に洗い出しました。すると、米粉に関心を持つ人や、かりんとうをよく買うのは、30代から50代の女性層に多いことがわかりました。

また、先輩の米農家や同僚の女性社員、パートの人たちはもちろん、その知人や友達、近所の人、取引先など、あらゆる人たちに試食してもらい、意見を聞きました。こうして、地域住民をチームに巻き込んで、地域の力を結集したのです。

〈(有)米シスト庄内〉 山形県東田川郡庄内町久田字寺前8-1
TEL:0234-42-1181 http://www.beisist.co.jp/


文/久ヶ澤和恵
写真/古城 渡