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農林水産省

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チャレンジャーズ チーム力で輝け 第79回

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福島県 チーム農魂(のうこん)

“女子”が手作りして、“親父”と販売するたまねぎソース。ただいま人気上昇中!


農林漁業生産(第1次産業)と、加工・販売(第2次、3次産業) を一体化させることで、新たな産業を生み出す6次産業。
今回は、たまねぎベースのバーベキューソースを作って販売する、男女混合の農家のチーム力を紹介します。

後列左から、「チーム農魂」の藤田良宣さん、鈴木博之さん、白河零蔵さん、前列左から須藤愛美さん、夕市の場所を提供している、自動車販売店に勤める小松恵さん。チーム内で女性陣は「農魂女子」、男性陣は「農魂親父」と呼んでいる

後列左から、「チーム農魂」の藤田良宣さん、鈴木博之さん、白河零蔵さん、前列左から須藤愛美さん、夕市の場所を提供している、自動車販売店に勤める小松恵さん。チーム内で女性陣は「農魂女子」、男性陣は「農魂親父」と呼んでいる

蒸したまねぎをミキサーにかけ、油を加えて乳化。クリーミーな食感になるまで撹拌する。たまねぎソースは、1パック250g600円。牛乳と混ぜるとスープになる、ブロッコリーペーストも加工している(写真下の緑色のパック)

蒸したまねぎをミキサーにかけ、油を加えて乳化。クリーミーな食感になるまで撹拌する。たまねぎソースは、1パック250g600円。牛乳と混ぜるとスープになる、ブロッコリーペーストも加工している(写真下の緑色のパック)

チーム農魂
「このたまねぎ、どうすれば……」。東日本大震災から数か月たった平成23年初夏、福島県白河市の野菜農家、須藤愛美(いつみ)さん(35)は悲しみにくれていました。目の前には、出荷するあてのない18トンのたまねぎが、倉庫の天井まで積みあがった状態。内陸の白河市では、家屋や田畑に壊滅的な被害は少なかったものの、東京電力福島第一原子力発電所の事故により、品質に問題がないにも関わらず、風評被害で出荷できない農産物が大量に出ました。

しかし、「くよくよしてもしょうがない」と須藤さんは、「地元には生で食べられるくらい甘いトウモロコシを作る仲間をはじめ、個性的な野菜を作る農家がいっぱいいる。もっと自分たちから、消費者に働きかけてもいいんじゃないかしら?」と、思い至ります。そして、「こんなつらいときだからこそ、みんなでなにかに夢中になりたい」と、周りの農家に声をかけて「チーム農魂」を結成。20代から40代の男性7人、女性4人、サポートスタッフ1人のメンバーで、出荷できなかったたまねぎを活用したバーベキュー用のソースを作り、自分たちが作る野菜といっしょに販売しようと動き出しました。

〝白いソース〞を求め、夜な夜な集まる〝農魂女子〞
  開発の中心となったのは、〝農魂女子〞です。なによりも、インパクトのある見た目を目指しました。

「ほかのバーベキューソースと同じような茶色いソースじゃ、目立たないよね」「じゃあ白河の『白』とかけて、たまねぎの白さを出すのはどう?」「炒めたり焼いたりすると変色しちゃうから蒸してみようよ!」「乳化すればいいじゃん!  とろみが出れば、お肉にも野菜にもからみやすくなるし」と、仕事を終えては加工所に集まり、深夜まで、毎晩夢中になって試作を繰り返しました。

こうして、農閑期の約5か月にわたって繰り返した試作は70種類以上。そして平成24年11月、ついに甘みと酸味のバランスが絶妙な、真っ白いたまねぎソースの完成にこぎつけました。

たまねぎの風味を生かした甘さに顧客も定着
販売には、男性メンバーの〝農魂親父〞が加わります。毎週火曜日に地元で開く「農魂夕市」や、各種イベントなどでブースを出し、ときには自分たちが手塩にかけた野菜や肉を焼き、たまねぎソースをたっぷりかけて、お客さんにふるまいます。また、事前にインターネットの動画共有サイトに〝親父〞が出演し、当日売り出す旬の野菜などをPR。集客につなげています。

たまねぎソースの人気ぶりは、「さっぱりした甘さだからサラダにも合うわ!」と、まとめ買いして行く人もいるほどで、今年2月のテスト販売から11月までで約1800パックが売れ、売り上げは100万円を超えました。今冬は加工所を改修し、生産量を増やす予定です。

チーム力を発揮する秘訣はコレ!
「チーム農魂」は、毎月1回の定例ミーティングなどのほか、ソーシャルネットワークサービスの「Facebook」を通じたコミュニケーションを大事にしています。メンバーの白河零蔵(れいぞう)さん(45)は、「全員が会って話すのはなかなか難しい。だから、メンバー専用ページを用意して、チームの最新情報を常に共有できるようにしています」と、話します。

  「Facebook」のメンバーページには、たまねぎソースの売れゆき、お客さんの反応、今後のイベントの出店内容などについて、相談や報告が随時アップされます。メンバーは、各々がパソコンやスマートフォンでそのページをチェックするようにしており、たまねぎソースを開発する際も、そこで出し合った意見やアイデアが、大きな役割を果たしました。「ネットをフルに使って、チームでやりたいことや抱えている課題を共有しています」と、白河さんは語ります。

〈チーム農魂〉
https://ja-jp.facebook.com/noukon.jp
〈夕市の開催場所(毎週火曜日)〉 くるまや軽専  福島県白河市池下95-5


文/久ヶ澤和恵
写真/古城 渡