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農林水産省

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チャレンジャーズ チーム力で輝け 第80回

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長野県 山田桂一郎さん 田中清文さん 塩原恵市さん 高山典士(のりひと)さん

若手米農家が手作りする切り餅、「色男の力もち」
対面販売をとおして、商品力もチーム力も年々増強中!


農林漁業生産(第1次産業)と、加工・販売(第2次、3次産業) を一体化させることで、新たな産業を生み出す6次産業。
今回は、切り餅を作るだけでなくメンバーで販売もしている、米農家のチーム力を紹介します。

「色男の力もち」を加工するメンバー。前列左から山田桂一郎さん、田中清文さん、後列左から塩原恵市さん、高山典士さん。写真手前右側にあるのが餅つき機

「色男の力もち」を加工するメンバー。前列左から山田桂一郎さん、田中清文さん、後列左から塩原恵市さん、高山典士さん。写真手前右側にあるのが餅つき機

白餅は10枚入り600円と20枚入り1,100円。他、玄米餅や豆餅などは4枚入り380円

白餅は10枚入り600円と20枚入り1,100円。他、玄米餅や豆餅などは4枚入り380円

 大人気の鏡餅は、家庭で使う大、中、小サイズの皿に餅を入れて形作る

大人気の鏡餅は、家庭で使う大、中、小サイズの皿に餅を入れて形作る

この日は、約180kgの米をついた。11月で、約1,800kg分の米を加工したという

この日は、約180kgの米をついた。11月で、約1,800kg分の米を加工したという

販売は、JA松本ハイランドの農産物直売所「ファーマーズガーデンやまがた」が中心。お客さんからは「火の通りがよくて調理しやすい」と好評だ

販売は、JA松本ハイランドの農産物直売所「ファーマーズガーデンやまがた」が中心。お客さんからは「火の通りがよくて調理しやすい」と好評だ
「色男、金と力はなかりけり」とは昔からよく言いますが、こちらの〝色男〞たちはちょっと違います。なにしろ、若き米農家たちがチーム力を結集して、「色男の力もち」なる切り餅を作っているのですから。

長野県松本市で、米を作る彼らが目指したのは、煮ても焼いても、米本来のうまみが味わえる餅。「4人が大事に育てたもち米を、じっくりつきあげるので、甘み、粘り、伸びが格別ですよ」と、田中清文さん(36)は胸を張ります。とはいえ、「米作りはプロだけど、餅は素人。もち米を水につける時間や、蒸し加減もすべて手探りで、理科の実験みたいでした」と高山典士さん(34)は、開発当初を振り返ります。

蒸し時間が長すぎて、できあがりが〝べちゃっ〞となったり、米の吸水時間が足りず餅が固くなり、乾燥するとすぐに割れてしまったり。それでも、必ず4人で意見を出し合い、蒸す、つく、まとめる、それぞれの勘どころを探っていきました。

〝即断・即決〞の心意気で、新しい餅を開発してきた3年間
餅づくりは、農閑期の11月から1月に4人集まって行います。「早朝から餅を作り、土日はJAの直売所で対面販売もします。1年で一番しんどい時期」と、山田桂一郎さん(34)は苦笑します。

しかし、対面販売の場でつきたての餅をホットプレートで焼いて、お客さんに食べてもらううちに、新商品のアイデアも飛び出しました。「豆餅はないの?」「鏡餅も作ってよ」「家族が少ないから、少量のがほしい」彼らの強みは即断力と行動力。2年目には青豆入りの豆もちと、香ばしさがきわ立つ玄米もちを、そして3年目には黒豆入りときび入りを、ラインアップに加えました。

「最初はついた餅に豆を散らしたけど、均等に混ざらなくてね」と田中さん。「『だったら、蒸した米と一緒に豆も入れてつきあげてみよう』という意見が出て、やってみたらほどよく混ぜ込めました」

4年目の今冬は、白餅10枚入りと20枚入りの2種類を用意。豆餅などは、4枚入りの小口パックにしたことで「いろんな種類が食べられる!」 「小家族でも使いやすい」と、お客さんの反応も上々です。

飛ぶように売れた鏡餅は、今冬、3倍以上に増産
過去には失敗も。一昨年、鏡餅をテスト販売すると、当初作った300個が瞬く間に完売。しかし、「そんなに売れないだろう」と予想していたため、増産しようにもお米が底をついていたのです。「今冬は1000個作ります。お客さんのがっかりした顔は、もう見たくないんで」と塩原恵市さん(35)は、餅をまとめる手を休めずに力強く言いました。

チーム力を発揮する秘訣はコレ!
〝色男〞4人衆のチーム力の源は、〝ネタ帳〞です。彼らは年齢も就農してからの年数もほぼ同じで、週に1回は会う仲。飲みに行けばいつの間にか、農業や餅作りの話になり、アイデアが出てきます。それを書き留めるのが、書記役の高山さん。通称〝ネタ帳〞と呼ばれるノートには、「初期投資1,000万円を10年で完済」「うるち米で新しい食感を出せないか」「ホームページを作ろう」「餅の切り方を変えてみる」など、新商品に結びつきそうなネタが満載です。

すでに実現したことも、これから挑戦していくこともありますが、ネタ帳には4人の熱い思いが、生き生きと綴られています。

〈ファーマーズガーデンやまがた〉
長野県東筑摩郡山形村1579-1
TEL:0263-98-5231


文/久ヶ澤和恵
写真/古城 渡