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農林水産省

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チャレンジャーズ チーム力で輝け 第82回

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福岡県 農事組合法人 モア・ハウス

女性の視点を生かした、「農家自慢のきのこごはんの素」めざすは、地元で愛され続ける商品!


農林漁業生産(第1次産業)と、加工・販売(第2次、3次産業) を一体化させることで、新たな産業を生み出す6次産業。
今回はしめじの栽培から加工を手がける法人の、女性理事たちのチーム力を紹介します。

(左から)「モア・ハウス」の野口直子さん、大藪佐恵子さん、松藤富士子さん。栽培室は12室あり、1室あたり8000本のしめじ培養ビンが並ぶ

(左から)「モア・ハウス」の野口直子さん、大藪佐恵子さん、松藤富士子さん。栽培室は12室あり、1室あたり8000本のしめじ培養ビンが並ぶ

しめじの袋詰め。3人の理事のほか、正社員7人、パートタイマー10人が勤務

しめじの袋詰め。3人の理事のほか、正社員7人、パートタイマー10人が勤務

「きのこごはんの素」の加工は佃煮業者に委託。自社では、しめじを使った漬物やパスタソースなどを加工している

「きのこごはんの素」の加工は佃煮業者に委託。自社では、しめじを使った漬物やパスタソースなどを加工している

「きのこごはんの素」は1個380円。今春には、炊き上がったご飯に混ぜるタイプも発売予定

「きのこごはんの素」は1個380円。今春には、炊き上がったご飯に混ぜるタイプも発売予定

きのこごはんの素が並ぶ、道の駅おおきの店内。「南関揚げが、いいだしになっているんです!」と、若者にも支持されている

きのこごはんの素が並ぶ、道の駅おおきの店内。「南関揚げが、いいだしになっているんです!」と、若者にも支持されている
青い薄明かりに照らされ、しめじの培養ビンが整然と並ぶ栽培室。室温は14℃、湿度は約90%で蒸気が朝もやのようにたちこめ、森の中にいるような幻想的な風景です。「しめじにとって快適な、秋の山の環境に似せているんですよ」と話すのは、農事組合法人「モア・ハウス」の代表理事、大藪佐恵子さん。

福岡県大木町は、しめじの大産地。平成9年に農家の女性だけでスタートした「モア・ハウス」は、年間約300tのしめじを出荷しています。

設立当初はしめじを使ったメニューのPRをかねて、スーパーを中心に、炒め物、カレー、おひたし、天ぷらなどの試食会を年間200回実施。その中でとくに人気だったのが、しめじの炊き込みご飯でした。しかし……。「レシピを渡すと『具を入れるだけの、炊き込みご飯の素がほしいわ』という主婦の声が、すごく多かったんです」と、理事の松藤富士子さん。「ちょうど、『地元の看板商品を作りたい!』っていう思いもありました」と、同じく理事の野口直子さんは続けます。

そこで、それまでに培ったレシピを基本に、炊き込みご飯の素作りがスタートしました。

具材を佃煮状にするアイデアで、究極の〝手間いらず〞商品に!
具材はしめじのほか、〝南関(なんかん)揚げ〞と呼ばれる郷土食の油揚げ、しいたけ、まいたけ、にんじんなどを使い、醤油で味付けすることに。問題は、誰が作ってもおいしく味わえる手軽さをどうやって実現するかでした。

3人は試作を重ねては試食会を開き、100人を超えるしめじ農家の主婦やスーパーのバイヤーなどから、聞き取りやアンケート調査を実施。なかでも、「お米に具と汁を加えると水加減が面倒じゃない?」「それなら具にしっかり味を染み込ませて、佃煮状にするのはどう?」という、主婦ならではの意見に着目し、採用しました。

こうして平成16年、2合炊きの水加減のまま、具材を加えるだけで炊き込みご飯ができる「農家自慢のきのこごはんの素」がついに完成。地元の道の駅で販売すると、「しめじのシャキシャキ感と風味がたまらない!」「水加減の手間がなくて楽!」「具だくさんだから、おかずを作る手間まで省けるわ!」と、主婦を中心にたちまち人気が爆発。年間3000個を売り上げる、地元を代表するヒット商品となりました。

〝顔の見える距離感をだいじに〞が、3人の揺るぎないポリシー
「農家自慢のきのこごはんの素」は現在、地元の道の駅での販売が中心。加工品はあくまで、〝大木町のきのこ〞のPR商品です。「売り上げを増やす目標もありますが、お客様に『私たちが作っているから安心して食べてね』って、胸を張って言える距離感がだいじ。これからもお客様の声をしっかり聞きながら、3人がひんぱんに足を運べる場所で売っていきたいですね」と、大藪さんが3人共通のポリシーを語ってくれました。

チーム力を発揮する秘訣はコレ!
大藪さんはしめじの栽培、野口さんは総務・経理、松藤さんは販促・広報をそれぞれ担当しています。家族の理解を得ながら法人を経営しているとはいえ、主婦として子育てや家族の介護などで、急に仕事を抜けなければならないことが何度もありました。「そんなときでも、お互いの仕事をカバーし合ってきました」と、松藤さん。3人はそれぞれの仕事内容を把握し、いつでもフォローし合えるようにしているのです。

大藪さんが「いまでは、だれかが1週間以上会社を留守にしても、仕事を回せるようになっています」と言うと、3人は互いに顔を見合わせて笑いました。


〈農事組合法人モア・ハウス〉
福岡県三潴郡大木町大字上木佐木527-1
TEL:0944-32-1588
〈みちの駅おおき〉
福岡県三潴郡大木町大字横溝1331-1
TEL:0944-75-2150


文/久ヶ澤和恵
写真/古城 渡