特集1 夢を追いかけて、酪農ヘルパー(3)
酪農ヘルパー歴18年 市原美千代さん(鹿児島県鹿児島市)
![]() 現在35戸の酪農家を担当する美千代さん。
「『家族旅行楽しかったー』とか『休みは40日ぶり。待ってたよ』って言われると、うれしいですね」 |
![]() 出勤前に息子の惇敬(しゅんけい)ちゃんとスキンシップ。「息子が産まれてから、牛にもより愛情深く接するようになったかな。作業が遅れても、イライラしなくなりました」と美千代さん |
酪農家に代わり、大切な牛たちを世話するから、プレッシャーは常に感じますね
酪農ヘルパーとしては、すでにベテランの域という市原美千代さん。今日は自宅から車で約40分ほど離れた、日置(ひおき)市内の酪農家西園さんの依頼で、午後3時半すぎに農場に到着しました。清潔な作業着に着替え、すぐに牛舎の清掃に取り掛かります。“生乳を冷やすスイッチ入れ忘れた!”っていう夢で、よく飛び起きるんです(笑) 続いて、80頭の乳牛にTMR(混合飼料)を与え、5時からは搾乳作業へ。「牛は毎日搾乳しないと、乳が張って、炎症を起こすこともあるんですよ」と話しながら、美千代さんは搾乳機を次々と牛の乳にセットします。 さらに、仔牛の世話を終えると、すでに夜7時すぎ。最後に牛舎全体の見回りをし、報告書を書いて、この日の作業はようやく終了。その後、いったん帰宅し、翌朝5時半の再出勤に備えます。 子どもの頃から動物好きだったという美千代さん。家畜人工授精師を目指し、農業大学校に進みましたが、酪農ヘルパーの仕事を知り、この世界に飛び込みました。 「酪農ヘルパーは簡単にいうと、酪農家が休みを取るために、1日、2日、牛の世話などを代行するお仕事です。作業代行って、単純そうですが、餌の配合から、乳房の拭き方、乳の搾り方まで、農家ごとに工夫を凝らしていて、全然違うんです。臨機応変さが求められるし、伺う農家も毎回違うから、飽きっぽい私向きかな(笑)」と美千代さん。女性ならではの細やかな配慮も評判で、多くの酪農家から信頼を得ています。 〝酪農のエキスパート〞という責任感と誇りを持って
酪農ヘルパーの仕事は、2人1組で行うのが基本です。ベテランの美千代さんが、だいたい現場を仕切るので、その責任は重大。万が一、注意を怠れば、牛の不調を見逃したり、けがをさせたりする危険性もあります。「どんなに長くやっていても、プレッシャーはなくならない。あれはやったか、これはやったかと、つねに確認しつつ作業します。たまに、〝生乳を冷やす装置のスイッチを入れ忘れた!〞って夢を見て、飛び起きるんですよ」と明るく話す美千代さん。 酪農ヘルパーは、酪農家が牛を安心して預けられる、いわば〝酪農のエキスパート〞。その責任感と誇りを胸に、美千代さんは、今日も現場へ向かいます。 酪農ヘルパー、なんでもQ&A
●休みの日はどう過ごす?なるべく、子どもと遊ぶようにしています。 ●趣味は何? 料理ですね。得意レシピは、“煮込みハンバーグ”。 ●好きな言葉は? 和顔愛語。いつも笑顔を心がけてます。 ●自分を動物にたとえると? のんびり屋の牛。だんだん似てきたかも(笑)。 |
〈 ベテラン酪農ヘルパー、美千代さんの作業に密着! 〉
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酪農家の西園満徳(にしぞのみつのり)さん・小百合さん・仁教(よしたか)さんから美千代さんへ
美千代さんとは、もう長いおつきあいです。牛の扱いはうまいし、乳房炎など、牛の体調変化も見逃さないから、仕事はもうお任せ。ときどき、私が怠けた器材の掃除もしてくれて大助かりです。美千代さんのおかげで、酪農家にとって貴重な休日が取れます。そんな日は夫婦でよく映画に。たった1日でもリフレッシュできるので、また仕事も頑張れますね。 |