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農林水産省

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チャレンジャーズ チーム力で輝け 第83回

福島県 白石長利さん、鈴木賢治さん、萩春朋さん

男たちのスムージー「HYACCOI(ひゃっこい)(百恋)」野菜、氷、料理のプロフェッショナルが出会い、完成


農林漁業生産(第1次産業)と、加工・販売(第2次、3次産業) を一体化させることで、新たな産業を生み出す6次産業。
今回は野菜スムージーを作りあげた、3人の男たちの物語です。

ブロッコリー畑に立つ、萩春朋さん、白石長利さん、鈴木賢治さん(左から)

ブロッコリー畑に立つ、萩春朋さん、白石長利さん、鈴木賢治さん(左から)

スムージーには、規格外品を有効活用している

スムージーには、規格外品を有効活用している

材料の分量は、野菜の状態によって微妙に変えている

材料の分量は、野菜の状態によって微妙に変えている

材料には野菜、氷、乳酸菌のほか、協力者の豆腐店の豆乳も使用

材料には野菜、氷、乳酸菌のほか、協力者の豆腐店の豆乳も使用

大豆イソフラボンやビタミンを豊富に含む、ヘルシーな飲み物に仕上がった。味は約5種類

大豆イソフラボンやビタミンを豊富に含む、ヘルシーな飲み物に仕上がった。味は約5種類

萩さんいわく、白石さんも鈴木さんも舌の感覚が鋭く、野菜の味をどう表現したいか明確なイメージを持っている、とのこと

萩さんいわく、白石さんも鈴木さんも舌の感覚が鋭く、野菜の味をどう表現したいか明確なイメージを持っている、とのこと
「震災は悲しいことばかりじゃなかった。俺らの出会いは偶然じゃなく、必然だったかも」と顔を見合わせて笑う、福島県いわき市の3人の男たち。

一人は農家の白石長利さん(32)。東日本大震災のあと、東京電力福島第一原子力発電所事故のあおりをうけ、収穫期のブロッコリーなど1万6000株が出荷停止になりました。「ちゃんと食べてもらわなきゃ、こいつらがかわいそうだ」と、拳を握りしめたといいます。

もう一人は、実家が製氷店を営み、漁港に氷を卸していた鈴木賢治さん(31)。同じく原発事故による出漁禁止に伴い、氷の出荷も停止に。「何度もろ過した混じりけのない純氷を、なんとか生かしたかった」と語ります。

そして3人目は、フランス料理店を経営する、萩春朋さん(38)。震災を機に、いわき市産の野菜や果物にとことんこだわり、農家のもとへ食材を買い付けてまわるうちに、白石さんと出会いました。「〝餅は餅屋〞って言うでしょ。野菜、氷、料理のプロが3人そろったんだから、何かできんじゃないかなって思ったんです」(萩さん)

子どもにもうける味をめざし、取り入れた隠し味は……
そこで3人が考えたのが、野菜と氷の組み合わせで作ることができ、美容や健康によい飲み物として注目を集めているスムージー作り。

「せっかくうま味の濃い野菜なんだから、フルーツは混ぜないほうがいいね」「飲むっていうより、食べる感覚にしようぜ!」「舌触りはなめらかにしたほうがよくない?」と、意見を出し合いました。

味を決めるのは、主に白石さんと鈴木さんで、萩さんが「豆乳を入れてみなよ」「野菜は下ゆですると食感がよくなるよ」と、アドバイス。

3人は、老若男女とくに子どもが喜ぶ甘みに仕上げようといろいろ考え、ヨーグルト風味をめざし、隠し味に乳酸菌を採用。スムージーの冷たさに悪戦苦闘しながら、数百回もの試飲を重ねました。

こうして平成25年7月、ブロッコリー、トマト、こまつな、にんじんなどを使ったスムージー「HYACCOI(百恋)」が誕生。ネーミングの由来は、方言で「冷たい」を意味する「ひゃっこい」と、地元や食材に込められた愛情です。

野菜の食感やスイーツのような甘さに、お客が殺到!
3人はさっそく、地元のイベントなどでテスト販売。「野菜の食感がほのかに残っておいしい」「スイーツみたいな甘さ!」「野菜嫌いの子でもごくごく飲める」と絶賛され、「普段はどこで飲めるの?」という問い合わせが相次ぎました。

本格販売は今春、JRいわき駅からスタート。「駅ビルから出発して、いわきの名物にするぞ。将来はハワイにも店を出そう!」と鈴木さんが言えば、「おまえ、風呂敷広げるの早いんだよ!」と白石さん。そんな二人を見て、萩さんも笑います。まるで幼なじみのような雰囲気が、なるほど〝出会いは必然〞だったのだと感じさせてくれました。

チーム力を発揮する秘訣はコレ!
「HYACCOI」の本格販売には、資金が必要でした。そこで3人は、地域おこしに携わるNPO法人の代表でもある鈴木さんを中心に、インターネットや動画を駆使して広く支援を呼びかけました。

協力者には金額に応じて、白石さんが作った有機野菜や、ドレッシングなどの加工品、野菜の収穫やバーベキュー体験を、また萩さんの料理店のディナー券などを提供することに。すると、「食べることで福島を応援したい!」という人が殺到。120万円の目標をみごと2か月で達成しました。

“いわきはこんな風にがんばっているぞ”と、それぞれにできることを通してわかりやすくPRするのが大切」と、3人は声をそろえます。


〈ファーム白石〉
福島県いわき市小川町下小川字味噌野16
TEL:080-2810-4033


文/久ヶ澤和恵
写真/古城 渡