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農林水産分野の最新研究成果を紹介! アフ・ラボ

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処理能力は、1時間で10a!(約1反)

新世代農業用機械「アイガモロボット」ただいま、開発中!


田んぼの雑草対策は、農家にとって手間のかかる作業の一つです。
そんな負担を軽減する、画期的なロボットが登場! 開発のヒントは、なんと愛らしいアイガモで、商品化も間近のようです。

岐阜県情報技術研究所の研究員によるアイガモロボットの実験中。自律走行が基本ですが、ラジコンでも動かせる

岐阜県情報技術研究所の研究員によるアイガモロボットの実験中。自律走行が基本ですが、ラジコンでも動かせる

動力源はバッテリ-。1回8時間の充電で約3時間の走行が可能。ガソリンなども使わないため、環境にやさしい

動力源はバッテリ-。1回8時間の充電で約3時間の走行が可能。ガソリンなども使わないため、環境にやさしい

アイガモさんより働き者よ

アイガモ


文/宗像幸彦

アイガモが泳いだ後は、いつも水が濁る
田んぼで苗がすくすくと育つと同時に、いっしょに伸びる雑草。駆除するには、雑草の生長を阻害するシートを敷いたり、チェーンや手押し車で雑草を掻き出す方法などが一般的ですが、どれも重労働なのがネックでした。

そこで農家の負担を少しでも減らすため、岐阜県情報技術研究所等で開発されているのが、自走して雑草対策をする賢いロボット、通称「アイガモロボット」です。

開発のきっかけは、10年前。除草を研究していた岐阜県中山間農業研究所の研究員がアイガモを使った田んぼの除草を見学中に、ふと気付いたのです。

「あれ、アイガモが泳ぐ田んぼの水は、泥が掻き回されていつも濁ってるぞ。もしかして、この濁りが除草にとって重要なのかも?」

調べてみると、アイガモの足が掻き出した泥で水が濁り、雑草の光合成を阻害していることが判明。「この動きを再現すれば、草取りロボットが作れるかも。しかも、アイガモと違って、世話をする手間もお金もかからず、だんぜん経済的!」とひらめきました。農業研究所では機械の開発は専門外なので、ロボット開発が可能な岐阜県情報技術研究所に話を持ち込み、アイガモロボットの開発がスタートしました。

しかし、アイガモの動きをロボットで行うのは至難の業。開発は苦難の連続でした。

泥を掻き回す方法を、どう再現すればよいか、さっぱりわからないところからのスタート。本体を船型にしてスクリューをつけても、ただ水面を走るだけ。4輪駆動のラジコンカーも試しましたが、泥に足を取られて進みませんでした。

試行錯誤の末、ついにたどり着いたのは、キャタピラ状の駆動方式です。これにより、発芽したての雑草を掻き出し、さらに水中の泥を舞い上がらせることも可能になりました。

その後も改良を重ね、現在では人が平地を歩く速さと同じ、時速4kmで田んぼの中を自走しながら、1時間で約10aを処理できるほどまで性能が向上しました。

残る課題は、完璧な自律走行のみ
平成15年から約10年続けた開発も、いよいよ大詰め。計画は実用化の一歩手前まで漕ぎ着けています。

今も苦心しているのは、自律走行。アイガモロボットは、頭部のカメラで田んぼの中を撮影し、画像処理によって、稲の列に沿って動き、1列が終わったら、自動で次の稲列へ移動します。しかし、稲列の終わりを認識できず、うまく移動できないことがまれにあるとか。それでも、情報技術研究所の研究員は完成に自信をのぞかせます。

「画像処理の方法を改良することで、稲列の終端を確実に判断できるようになれば実用化に近づきます」と、力強く語ります。

まさに、開発者たちの汗と努力が詰まったアイガモロボット。岡山県の農機具メーカー「みのる産業(株)」も途中から研究開発に加わり、市販を検討中とか。

草取りはロボットに任せて、農家のみなさんはのんびり一休み……なんて日も近いようですね。

アイガモロボットはこんなにすごい!
全長50cm×幅45cm×高さ50cmで、ボディはアルミ製。幅広のキャタピラで田んぼをかき混ぜる

全長50cm×幅45cm×高さ50cmで、ボディはアルミ製。幅広のキャタピラで田んぼをかき混ぜる
  付属のチェーンで、稲間に生えた雑草を処理する

付属のチェーンで、稲間に生えた雑草を処理する

アイガモの課題を、アイガモロボットが克服!