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農林水産省

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特集1 みんなで広げよう! 食育活動(3)

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“企業でも食育”の先駆者 伊藤忠商事会長インタビュー

食品も扱う総合商社の社員として、自分が泥まみれになり、汗を流して生産者の苦労を知る——
これこそが生きた食育なんです
伊藤忠商事株式会社 取締役会長小林 栄三さん


伊藤忠商事では、社員とその家族が、和歌山県かつらぎ町「天野の里」で、田植えや稲刈りを体験しています。商社の社員に、なぜ農業体験が必要なのでしょうか? 同社取締役会長であり、農林水産省食料・農業・農村政策審議会委員でもある、小林栄三さんに、お伺いしました。

こばやし・えいぞう

こばやし・えいぞう
伊藤忠商事株式会社取締役会長。昭和47年伊藤忠商事入社。同社の情報産業部門において「IT革命」を牽引した。平成16年同社社長、22年より現職。




当社は、総合商社としていろいろな分野の商品を扱っていますが、そのなかで食品は大きな位置を占めています。以前から、その食品が、どのように作られ、どういう方が、どんな苦労をされているかを、社員に実体験を通して知ってほしいと考えていました。ふだん扱っている商品の原点を見てほしかったのです。

そんなとき、平成20年に、和歌山県から「企業のふるさと」制度に誘っていただきました。これは、CSR(※)活動の一環として、企業の社員が、地域の方と一緒に安全・安心な米作りや地域景観の保全などに取り組もうというものです。一種の交流活動ですね。もちろん、喜んで参加させていただきました。

現在、わが社の社員とその家族、90名ほどが、年に2回、和歌山県かつらぎ町「天野の里」を訪れ、田植えや稲刈り、地域の清掃活動などを行っています。毎回、お昼には地元のみなさんとバーベキューを楽しみ、地域や農業の話で盛り上がっています。CSR活動や社員の食育だけでなく、福利厚生にもなっていると感じますね。

地元の方々も、大勢の若者が来ることで、「地域が明るくなる」と、喜んでくださっているようです。

食の本質を知ることが生産者へのリスペクトにつながる
人間が生きていくうえで、何が大事かを考えるとき、食べ物は絶対に欠かすことができません。その食べ物は、お金を払えば天から降ってくるのではなく、たくさんの人の手で食卓に届けられるものです。そんな食の本質を知ることは、生産者へのリスペクトにつながります。

私自身は兼業農家に生まれ育ち、朝早くから夜遅くまで働く両親の姿を見て、自分も手伝って、自然と学ぶことができました。ですが、最近の子どもや大人は、そういった経験がなかなかできません。

当社の社員にとっては、天野の里で田んぼに入り、泥まみれで汗することが、食の本質を少しでも理解することに繋がっています。地元のみなさんには、貴重な食育の機会を提供していただき、本当にありがたいと思っています。

いま、わが国の農業を取り巻く情勢は刻々と変化し、農家の高齢化もまったなしの状態です。農業をよくするためには、どうすればいいのか? ひとつの方法として、農業体験を通じた食育により、国民が農業のことを肌で理解することも必要ではないかと思います。

※ CSRとは、Corporate Social Responsibilityの略で、企業が果たす「社会的責任」のこと。