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特集1 日本の森林(もり)を育むのは、あなたの“木づかい”~木材の利活用のすすめ~(3)

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公共建築で“木づかい”

消防署なのに木造!?
集成材を使って耐火性を強化しつつ住民の親しみやすさもグンとアップ!
— 秩父消防署東分署・北分署(埼玉県秩父郡横瀬町・皆野町)


主要構造は鉄骨ながらも、随所に木材を使用した東分署のエントランス

主要構造は鉄骨ながらも、随所に木材を使用した東分署のエントランス

「木の香りや風合いに、地域住民や署員が癒やされてくれれば」と小林さん

「木の香りや風合いに、地域住民や署員が癒やされてくれれば」と小林さん

養蚕農家の”越し屋根をイメージ”

木造2階建ての北分署。主要構造部の柱および梁には集成材を使用し、耐火性や耐震性を強化

木造2階建ての北分署。主要構造部の柱および梁には集成材を使用し、耐火性や耐震性を強化
豊かな自然に恵まれた埼玉県秩父地方。1市4町を管轄する秩父消防本部では、各分署の統廃合に伴い、東、北、南分署の新庁舎で木材を全面的に利用しています。

消防署なのに木造。この意外性あふれるアイデアが生まれたのは、平成22年10月から施行された「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」がきっかけでした。

当初は鉄骨で建築する予定でしたが、かねてより林業が盛んな土地ということもあり地元の木材を利用した設計案を採用することにしました。

「周辺住民の方は、新しくお蕎麦屋さんでもできるのかなと思っていたそうですが、以前より親しみやすくなったという声が多いですね」と、秩父消防本部の小林幸一さん。

平成23年に完成した東分署は、主要構造は鉄骨ですが、署内の随所に秩父産のスギやヒノキを使用。特に吹き抜けのエントランス部分は木材の優しい香りと十分な採光で、明るく開放的な空間になっています。

一方、平成24年完成の北分署は車庫を除いてすべて木造。柱や梁(はり)の接合には、耐震性に優れたドリフトピン工法を採用しています。また、秩父は古くから養蚕が盛んであったことから、その農家の家を思わせる「越し屋根」を設け、真夏でも天窓を開ければ涼しい風が吹き抜ける構造になっています。

「木材は耐火性の強い集成材を使用。署内は完全禁煙で、キッチンでもIH調理器を使って防火対策を徹底しています」と小林さんは話します。

名峰・栗駒山の山並みを切らないフォルムで、緑豊かな景色と調和するよう設計

名峰・栗駒山の山並みを切らないフォルムで、緑豊かな景色と調和するよう設計

構造面では、梁や柱を金具で接続するKES構法を採用

構造面では、梁や柱を金具で接続するKES構法を採用
2度の震災にも耐え抜いた木造庁舎現地対策本部として、地元の〝防災の要〞に!
— 栗原市栗駒総合支所(宮城県栗原市)
「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」の制定前から、地域の木材活用に取り込んでいる自治体もあります。宮城県栗原市もその1つ。平成17年に完成した栗駒総合支所は、地元産のスギなどを使った木造の建物です。平成20年の岩手・宮城内陸地震に続き、平成23年の東日本大震災と、2度の震度6弱の大きな揺れにも耐え抜きました。震災後は、現地対策本部として、救援・支援活動の拠点となりました。