保存食とは、その名の通り、長期保存ができるよう加工・処理された食料のこと。
数カ月以上にわたって保管することができるので、非常時の食料や、料理に取り入れる常備食としても最適です。
保存食にはさまざまなものがありますが、その中から、古くから親しまれている乾物と、
製造技術の進歩によって生まれたフリーズドライ食品を紹介します。
乾物
乾物とは
昔から保存食として日本各地で作られてきた“乾物”とはどういうもので、どうして長く保存できるのでしょうか。
- 乾物とはどんな食品?
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野菜や海藻類、魚介類などの食材を乾燥させて、水分をカラカラになるまで抜き、常温で数カ月以上の長期保存をできるようにした食品のことです。
- 常温で保存できるのはなぜ?
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食材に含まれる水分は、ものを腐らせる細菌やカビなどの微生物を増やしてしまいます。しかし、乾物は水分が抜けているので、微生物の繁殖が抑えられるため、常温でも腐らずに保存できるのです。
- どうやって作られるの?
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生の食材を天日干ししたり、煮る・ゆでるなどの加工をしてから乾燥させたり、凍らせてから干したりと、さまざまな製法で作られています。
- どんなものがあるの?
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乾物の種類はとても多く、ポピュラーなものとしては昆布、寒天、ひじき、干ししいたけ、切干し大根、高野豆腐などがあります。これらの他にも、豆類や麩(ふ)、麺類、のり、ワカメ、煮干し、桜エビなどがあります。
- どうやって食べるの?
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乾物を食べるときは、一般的には水やお湯などに浸して柔らかくさせる「戻す」ことを行うのが基本です。戻してから調理に使用します。
- 干物も乾物?
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アジなどの魚を干して作る干物も保存食の一種ではありますが、乾物ほど水分を抜いているわけではありません。柔らかさを保ち、おいしく食べられる程度には水分が残っています。冷蔵庫での保存が必要になります。
- 乾物の保存方法は?
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高温になりやすいところ、直射日光があたりやすいところ、湿気の多いところを避けて保存。密閉保存する際は、口をしっかり閉めましょう。
おいしい乾物のレシピ
乾物の魅力とおいしい調理方法について、乾物の普及活動を行っている(一社)DRYandPEACEのサカイ優佳子さんと田平恵美さんに伺いました。
「乾物は、生の食材と比べてうま味が凝縮されていることが魅力です。また、必要なぶんだけ戻し、残りは長期保存できるので、食品ロスを削減できるのも利点です。戻すだけで、包丁を使わずに調理できるものも多く、料理の時短になります」
乾物は水やお湯で戻すだけでなく、オレンジジュースやトマトジュース、ヨーグルトでも戻すことができます。では、主な乾物の特徴と、簡単に食べられるレシピを見てみましょう。
(注)明記のない材料はすべて2人分。小さじ1は5ミリリットル。
大根を千切りにして干したもの。市販品のほとんどは30時間ほど天日干しして作られています。生の大根に比べ、カルシウムや鉄分などが豊富。
(注)明記のない材料はすべて2人分。小さじ1は5ミリリットル。
水で戻して和えるだけ。ピリ辛味でお酒のおつまみにも向いています。
- 材料
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切干し大根…20グラム、(A)<砂糖…小さじ2、酢…小さじ2、白すりごま…小さじ2分の1、塩…小さじ4分の1、粉トウガラシ…適量>
- 作り方
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(1)切干し大根は水に約20分浸して戻す。
(2)戻した切干し大根の水気を絞って、(A)で和える。
てんぐさや、おごのりといった海藻が原料の棒寒天は、水溶性食物繊維が豊富。干しにんじんは、干すことで甘みがグッと増して、にんじんが苦手な人でも思わず食べてしまうかも。
オレンジジュースで戻すことで、爽やかな味わいに。
- 材料
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棒寒天…2分の1本、干しにんじん…20グラム、オレンジジュース(果汁100パーセント)…90ミリリットル
- 作り方
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(1)棒寒天はさっと洗い水気をよく絞ったら、細かくちぎる。
(2)(1)を干しにんじん、オレンジジュースと合わせ混ぜ、15分から20分ほど、干しにんじんが柔らかくなるまでおく。
凍らせた豆腐を氷点下で熟成し、さらに乾燥させて作ります。植物性のたんぱく質が豊富です。現在多く売られている高野豆腐は、従来より柔らかく早く戻るように「膨軟(ぼうなん)加工」が施されています。
直接トマトジュースで戻すことで濃厚なおいしさに。冷蔵庫で8時間ほどかけてじっくり戻します。2日から3日は保存可能です。
- 材料
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高野豆腐…2枚、無塩トマトジュース(味が濃いもの)…200ミリリットル、細切りチーズ…40グラム、油…適量、好みのミックスハーブ…少々
- 作り方
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(1)高野豆腐をトマトジュースに浸して冷蔵庫に約8時間入れておく。
(2)(1)を7ミリメートル程度の厚さに切り、油を薄くひいた耐熱皿に並べたら、細切りチーズをのせる。
(3)180度のオーブンで15分ほど、焼き色がつくまで焼く。
(4)仕上げにミックスハーブを散らす。
干ししいたけは、他の食材のうま味をより強く感じさせる働きがあるグアニル酸を多く含みます。しいたけは天日干しすることでカルシウムの吸収を助けるビタミンDが増します。
あらかじめ軸を折っておくと早く戻ります。また、ヨーグルトを使って戻すことで、コクが深まります。戻す時間は冷蔵庫で約8時間ですが、2日から3日なら浸したままおいていても大丈夫です。
- 材料
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(A)<干ししいたけ…6枚(軸をのぞいて15グラム程度)、プレーンヨーグルト…90グラム>、(B)<しょう油・みりん・酒・水…各50ミリリットル>、牛細切れ肉…150グラム、たまねぎ(薄切り)…60グラム、ごはん…2杯分、紅しょうが…適量
- 作り方
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(1)(A)をファスナー付き保存袋に入れてよく混ぜ、冷蔵庫に入れて約8時間おいて戻す。
(2)(1)は大きければ食べやすい大きさに切る。
(3)鍋に(B)を入れて火にかけ、煮立ったら(2)、牛肉、たまねぎを加える。再度煮立ったら弱火にして5分ほど火を通す。
(4)器にご飯を盛り、(3)をのせて紅しょうがを添える。
乾燥ひじきは、乾物にする過程でゆでる、蒸すなどの加工が施されています。食物繊維が豊富で、ヨウ素やカルシウムなどが多く含まれています。
納豆が苦手な人でも食べやすい、ひじきの風味が楽しめる一品。
- 材料
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乾燥ひじき…4グラム、納豆…40グラム、青ねぎ(小口切り)…1本分、しょう油…小さじ1、酢…小さじ2分の1、ラー油…少々
(注)1人から2人分
- 作り方
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(1)ひじきは水に30分ほど浸けてから流水で洗い、水気を絞る。
(2)納豆をよく混ぜ、(1)と青ねぎを加えたら、しょう油、酢、ラー油で調味する。
ドライフルーツ
果物の種類が豊富な欧米で、保存食として親しまれてきたドライフルーツ。果物の水分を抜いたもので、天日干しや機械乾燥、砂糖に漬け込んで乾燥させる、といった製法に加え、フリーズドライで作られるものもあります。一般的に3カ月から6カ月の保存が可能。水で戻す必要もなく、そのまま食べられます。日本にも、干し柿などの伝統的なドライフルーツがあり、近年では、国産の梅やレモン、キウイをドライフル-ツにしたものも販売されています。
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