このページの本文へ移動

農林水産省

メニュー
夢を創造しよう 農業高校

1 どんなことを学ぶ?農業高校を知ろう

日本の食卓や農林水産業を支えたい。地球環境を守りたい。そんな志を持った若者が集まり、必要な知識や技術を学ぶ農業高校。生徒たちはどのような学校生活を送り、どのような取り組みが行われているのか、全国農業高等学校長協会にお話を伺いました。

写真:収穫した稲をもつ生徒さん
青森県立五所川原農林高等学校の皆さん。

農業高校って、どんなことを学ぶ?

農業高校では、実践的・体験的な学習活動を中心に学びを深め、農業や農業関連産業を通して、地域や社会の健全で持続的な発展を担う職業人として必要な資質・能力を育成することを目標に日々の教育活動が行われています。農業高校生には、地域農業や地域社会の発展に寄与する人材に成長することが期待されています。どんな学科があり、どのような学校生活を送っているのかを紹介します。

農業高校のミッション

全国には約300校の農業高校があり、約8万人の生徒が学んでいます。各地にある農業高校では目指す学校像として、5つの基本方針を掲げています。それが「グローカル教育で人材を育てる学校」「地域社会・産業に寄与する学校」「地域交流の拠点となる学校」「地域防災を 推進する学校」「地球環境を守り創造する学校」の5つです。

全国農業高等学校長協会理事長の齋藤義弘先生は、農業高校は何よりも「夢を創造する場」であると話してくれました。自分の好きなことや将来の夢の実現に向けて学ぶ、有意義な時間がその3年間にたくさん詰まっているといいます。

図:農業高校のミッション グローカル教育で人材を育てる学校、地域社会・産業に寄与する学校、地域交流の拠点となる学校、地域防災を推進する学校、地球環境を守り創造する学校

普通科の高校とは何が違う?
農業高校で学べること

「ある農業高校(都市園芸科)1年生の時間割」の表を見てもわかるように、農業高校でも普通科高校と同様に国語、数学、外国語などの教科を学びます。そのうえで、専攻分野に応じた専門科目を1年次から学ぶことができます。

ある農業高校(都市園芸科)1年生の時間割

曜日 時間
1 2 3 4 5 6 7
化学基礎 体育 現代社会 数学I 保健 コミュニケーション英語I
農業情報処理 農業情報処理 家庭基礎 家庭基礎 国語総合 体育
農業と環境 農業と環境 現代社会 数学I 国語総合 ホームルーム
国語総合 コミュニケーション英語I 農業と環境 農業と環境 化学基礎 数学I 人間と社会
化学基礎 コミュニケーション英語I 音楽/美術 音楽/美術 総合実習 総合実習
 は農業科の専門科目。1年生は1週間に8時間実施。

農業高校の専門科目では、植物(野菜、草花など)や動物(家畜など)、食品や地域環境などについて、基礎的な知識や技術、その活用方法を学んでいます。学校によって違いはありますが、地域に根差した学科やコースが充実しているのが特長です。ここでは主な学科を「生産技術・経営系」「資源活用・ヒューマンサービス系」「環境技術・創造系」の3つに分けて、学習内容などを紹介します。

1.生産技術・経営系

生産技術・経営系には、「農業」、「園芸」、「畜産・動物」、「バイオ」、「農業経営」などを専門に学ぶ学科が分類されます。都市部の農業高校では都市型農業など、地域に根差した農業の形を学ぶ科目があったり、動物科でも小動物を専門とする科目を学ぶ高校もあります。そのほか、バイオ技術や流通などを学ぶコースなどを設置している学校もあり、幅広い知識を吸収できるようになっています。

写真:牛舎の様子

2.資源活用・ヒューマンサービス系

資源活用・ヒューマンサービス系には、「食品」「生活」を専門に学ぶ学科が分類されます。「食品」系の学科では食品製造や加工、食品の栄養成分や分析、食品を扱う際の衛生管理などを専門的に学びます。一方、「生活」系の学科では、食生活を含む家庭生活全般や保育、福祉などに関する基礎的な知識を学びます。被服やファッション、フラワーデザイン、フードデザイン、家庭介護などの科目があるのが生活系の学科です。

写真:饅頭作成の様子

3.環境技術・創造系

環境技術・創造系には、「農業土木」「森林・林業」「造園」などを専門に学ぶ学科が分類されます。これらの学科では測量、土木、環境、森林、林産加工、公園や庭園などのデザイン、環境デザインの知識や技術を学びます。森林・林業などの専門学科がある農業高校は全国的に多くありませんが、国土の約7割を森林が占める日本では、森林・林業など環境技術系の知識を修得したスペシャリストの育成が期待されています。

写真:測量の様子

在校生が取得を目指す主な資格・免許

農業高校の魅力のひとつにあげられているのが、さまざまな資格や免許取得に挑戦できる点です。在学中に取得可能な資格や免許・検定を一覧にしてみました。

取得可能な資格・免許の例

生産技術・経営系 農業簿記検定、初級バイオ技術者認定試験、一般毒物劇物取扱責任者、3級フラワー装飾技能士(国家資格)、3級室内園芸装飾技能士(国家資格)、アーク溶接、ガス溶接、動物愛護社会化検定など
資源活用・ヒューマンサービス系 食品衛生責任者、食生活アドバイザー3級、3級販売士、家庭科技術検定(被服、食物調理、保育)、調理師免許、全商簿記実務検定など
環境技術・創造系 測量士・測量士補(国家資格)、2級土木施工管理技士(国家資格)、造園技能士(国家資格)、小型車両系建設機械運転、高所作業車、フォークリフト、刈払機取扱いなど
学科共通 日本農業技術検定、アグリマイスター、FFJ検定、土壌医検定、危険物取扱者、2級ボイラー技士など
その他 日本情報処理検定、実用英語技能検定、実用数学技能検定、日本漢字能力検定など

卒業生の声

東京都立農業高等学校卒業 五十嵐美幸さん

家業が飲食店なので、高校は食物科への進学を希望していたのですが、最終的には推薦で東京都立農業高等学校の食品製造科(現在の食品科学科)に入学しました。農業高校では畑での実習や食品加工など実践的・体験的な授業が多かったので、とても楽しかったです。そういう体験は専門高校に行かないと、なかなかできないのではないでしょうか。同じように飲食業界を目指す仲間ができ、卒業した後も悩みや進路のことなど、いろいろなことを話し合っています。

農業高校は、自分が進むべき道や自分がやりたいことを早く見つけられる場所だと思います。実体験として自分の心に響くことが先になるので、頭で考えるより自分の向き不向きもわかりやすいでし、座学以外にいろいろな体験をすることによって、自分が何に興味があって、何をしたいのかを早く明確にできると思うのです。

私の同級生の中には、自分の娘や息子を農業高校に入れたという人がすごく多いです。私の10歳下の弟も妹も同じ農業高校で学びました。弟は東京農業大学に進学し、卒業後料理人を経て農業へ転向。調理で出た残さを肥料にして栽培した作物を農家レストランで提供するという、まさにSDGsな取り組みをしています。農業高校は今だからこそ必要とされる、実践と学びの場なのではないかと思います。

写真:東京都立農業高校卒業 五十嵐美幸さん
中華料理の料理人。高校卒業後21歳で料理長に就任。22歳でフジテレビ『料理の鉄人』に当時最年少挑戦者として出演し注目を集める。以降数々の雑誌、テレビ番組に出演。そのほかにも全国での食育活動、地方町おこしプロジェクトの参加(商品開発)、海外における日本の中国料理の普及など活動は多岐にわたる。

<外部リンク>https://www.miyuki-igarashi.info/

こんな特色のある学校も

農業高校でも部活動は盛んに行われています。実績のある部活も多く、運動部では選抜高等学校野球大会や全国高等学校駅伝競走大会をはじめとする全国大会への出場のほか、文化部では全国高等学校総合文化祭の各部門などで、優秀な成績を収めている学校も少なくありません。

また、野菜、花き、造園、測量、畜産、食品加工、農芸化学といった専門的で幅広い分野の活動に取り組むことができることも、農業高校の特長といえるかもしれません。

写真:数々のトロフィーや優勝旗と並ぶメンバー
広島県立世羅高等学校は、全国高等学校駅伝競走大会で過去に12回(男子10回、女子2回)優勝しており、2020年12月に開催された全国大会では、男女ともに優勝を果たしました。
写真:雪の積もったグラウンドで野球練習をする様子
写真:野球練習の様子
北海道帯広農業高等学校の野球部員は家畜の世話や時間外実習のため、全員で練習できるのは週末だけ。学校で収穫した大豆などから作ったパワードリンクを力に変え、2020年8月に行われた甲子園高校野球交流試合で、強豪校を破るという快挙を成し遂げました。

特別な園芸植物を有する学校もあります。東京都立園芸高等学校には日本梨の新品種「菊水」と「八雲」誕生・育成の地の記念碑や、学校創立当初からある歴史的に極めて貴重な「徳川三代将軍家光公遺愛の五葉松」の盆栽があるほか、1915年にアメリカのタフト大統領から贈られた40本のハナミズキのうち現存する最後の1本となる原木が、校内で大切に育てられています。

また、東京都立大島高等学校の校内には、2016年に世界的に権威のある国際ツバキ協会から「国際優秀つばき園」の認定を受けた椿園があります。農林科の生徒たちが丹精込めて育てている椿園、教育機関としては世界初の認定だそうです。

写真:家光公遺愛の五葉松
推定樹齢500年(2020年現在)という2鉢の「家光公遺愛の五葉松」。
写真:盆栽の手入れをする様子
大切な五葉松の維持管理を通して、生徒たちは必要な技術を修得しています。
写真:ハナミズキの木
1912年、当時の東京市長 尾崎行雄が米国に贈ったサクラの苗木への返礼として届けられたハナミズキ。
写真:椿園と生徒
約380種類の原種、園芸品種のツバキが植えられている東京都立大島高等学校の椿園。
写真:白い花弁に濃いピンクの絞りの入った椿
美しく咲き誇る多種多様なツバキを生徒たちは貴重な教材として日々栽培管理している。

今回教えてくれたのは

監修者プロフィール

全国農業高等学校長協会

全国農業高等学校長協会は農業に関する学科、総合学科等において農業に関する系列等を設置している高等学校の校長が会員。

<外部リンク>http://www.zennokocyokai.org

日本学校農業クラブ連盟(FFJ)の活動

FFJシンボルマーク:鳩と富士の稲穂マーク

戦後の新制高等学校の学習活動の中で、農業高校生の自主的・自発的な組織として日本各地で誕生した「学校農業クラブ(SAC:school Agriculture Club)」。1950年には全国組織として、「日本学校農業クラブ連盟Future Farmers of Japan(略称:日連 または FFJ)」が結成されました。

日本学校農業クラブ連盟は、「クラブ」という名称から課外活動だと思われがちですが、あくまでも授業の一環。クラブ員は農業高校で学ぶ全生徒です。主な活動は、地域資源の活用や地域課題の解決に向けた研究などで、FFJ代表で東京都立園芸高等学校の並川直人校長先生は「農業高校の学びそのものが課題解決型の学習ですが、日々主体的・協働的に問題を発見し、解決する能力を培うことがFFJの目的」といいます。具体的な活動にはプロジェクト発表(研究活動)、意見発表の発表部門と農業鑑定、測量などの技術競技部門があり、毎年10月の「農高生の甲子園」と呼ばれる全国大会には、各地のブロック大会で優秀な成績を収めた農業高校生たちが集い、成果を発表します。毎年テーマを決めて環境調査も行っており、日頃のプロジェクト学習と実践といった体験的な活動を通して、科学性、社会性、指導性を身につけた農業高校生の活躍が期待されます。

<外部リンク>http://www.natffj.org/

写真:全国大会「農業鑑定競技会」の様子
全国大会「農業鑑定競技会」の様子。(撮影:依田賢吾)
写真:プロジェクト発表会
プロジェクト発表会。I類最優秀賞を受賞した熊本県立熊本農業高等学校の皆さん。(撮影:水野浩志)
夢を創造しよう 農業高校

この特集の記事はこちらから

編集後記

新年度が始まりました。今年もaff編集チーム一同、読者のみなさまの知識欲の斜め上を行く内容をお届けしていきたいと思います。さて、今月は農業高校特集。今週号はまだウォーミングアップです。来週からは…(広報室YT)

記事の感想をぜひお聞かせください!

お問合せ先

大臣官房広報評価課広報室

代表:03-3502-8111(内線3074)
ダイヤルイン:03-3502-8449
FAX番号:03-3502-8766