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農林水産省

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5.コンバイン導入の経済性

大豆作にコンバインを導入する場合の経済性の評価や機種選定の判断は、通常、地域の条件に応じて次のニつの方法で行うことができる。

(1)収穫作業委託やコンバインのリース・レンタルが可能な場合

第一はコンバインを自ら所有して作業を行う場合の費用(機械償却費、燃料費、労賃など)と、大豆収穫作業を委託したり機械をリースやレンタルして作業を行う場合の委託料金や賃借料とを比較し、よりコストの安い方法を選択するというものである。

図36(GIF:23KB)は、この点を示している。これにより、(ア)大豆収穫面積が増大するにつれて10a当たりの作業コストは低下していくこと、(イ)各機種の作業能率に応じて適期内に収穫可能な面積には限界があり、それ以上の面積を処理するには、より大型の機種を装備しなければならないことが分かる。

すなわち、機械の稼働面積が大きいほど経済的であり、そして各機種に対応して、例えば大豆専用コンバインで5~10ha、汎用コンバイン(刃幅2m程度)ならl5~20ha、同(刃幅3.5m程度)ではおおむね25ha以上の稼慟面積が確保できない場合には、大豆の収穫作業を委託するか、コンバインを借用して作業を行うことが経済的に有利といえる。ただし、このような経済性の判断は、機械の取得価格やその地域の作業適期幅、あるいは作業委託料金や機械の賃借料の水準により大きく左右されることに注意する必要がある。

(2)収穫作業委託やコンバインのリース・レンタルが困難な場合

上述したケースでは、地域内に大豆収穫作業の受託を行う組織があるか、コンバインのリースやレンタルが可能な場合を前提としている。しかし、現実にはそれが不可能な場合も多い。したがって、そこでは、コンバインを自ら所有することを前提とした上での経済性の評価と導入機種の選択が必要となる。このような場合の経済性の判断は、大豆用コンバインや汎用コンバインの導入に伴って発生するコスト(取得費用や維持・稼働費用)と、それにより規模拡大や作付作物数の増加、生産調整への対応など経営全体にもたらされる利益の増加額を比較して、後者(メリット)が前者(コスト)を上回るかどうかという観点から行う。すなわちコンバインの導入費用と、それに伴う経営改善効果の比較から、各機種ごとにコンバイン導入の妥当性を判断するのである。
表22は、茨城県のある経営事例をもとに、いくつかの前提をおいた上で(表の注参照)、大豆専用コンバインから汎用コンバイン(刃幅2m)、さらにより大型の機種に変更するとして、それに伴う大豆の収穫作業能率の向上に対応した規模拡大の可能性や収益の増大効果を、線形計画法により試算したものである。

表22 コンバイン導入による経済改善効果

 ここでは、経営する水田面積の3割は生産調整に参加し小麦―大豆の二毛作を行うという前提をおいているため、モデル1(大豆専用コンバイン導入)の場合には、大豆収穫時期の作業競合が制約となって経営面積は比較的小規摸にとどまらざるを得ない。しかし、刃幅2mの汎用コンバインの導入(モデル2)により大豆の収穫作業能率が向上すると、経営全体の規摸拡大が進み、586万円近い利益の増加が見込める(なお、この中には水稲の作付面積増大の効果も含まれている)。汎用コンバイン(刃幅2m)の年間固定費は200万円程度と見込まれることを考慮すれば、この場合の汎用コンバインの導入は有効であると判断できる。
しかし、モデル3に見るように、この汎用コンバインを刃幅3.5mの機種に拡充し一層の収穫作業の効率化を図るとしても、この規摸ではすでに水稲作業も労力的に限界にきており、これ以上の面積拡大は行えず、経営全体の収益も増加しない。したがって、刃幅3.5mの汎用コンバインの導入は、このような条件下では、経済的に不利であると言える。

(3)経済性判断の留意点

以上のように、コンバイン導入の経済性の判断は、その経営を取り巻く環境条件(規摸拡大の可能性やその際の借地料水準、作目構成と機械の汎用利用の可能性など)により大きく異なってくることに留意する必要がある。
このため、大豆の収穫作業へのコンバイン導入の妥当性を検討する場合には、

  1. 機械を所有した場合にかかる費用と地域の作業委託料金や機械の賃借料との比較をまず行ってみること
  2. 機械の購入を行う場合には、地域農業の将来動向をよく考えながら、コンバ イン導入による自分の経営の今後の展開方向(目標とする経営モデル)を明確にし、それが達成された時の経営改善効果を踏まえて導入機種を選定すること

が重要である。

(補足)線形計画法の利用について

本稿では、コンバイン導入の経済性を評価する手法として線形計画法を用いたが、ここではその計画の手順等について概略を説明する。

線形計画法は、いわば農業経営の内容をコンピューター上に経営モデルとして表現し、最適な経営計画(最も望ましい規模や作物別の作付面積など)を計算するとともに、経営上の条件(例えば新技術の導入など)を変更させてその効果のシミュレーション分析を行うことを可能とする手法である。

線形計画法の適用手順は、次の通りである。

(1)データの収集

この手法は、コンピューターによる数値計算を行うものであるから、当然、その前提となるデータがないと実行は不可能である。そのために、分析対象とする経営のデータを収集する。必要となるデータは、主に、

  1. 作物別10a当たり収入と資材費などの変動費
  2. 作物別時期別10a当たり労働時間(1年間でなくてもよい、農繁期のみのデ ータでも計算可能)
    (なお、分析しようとする問題によっては、1、2とも、品種別や栽培様式別のデータが必要となる。)
  3. 経営資源の制約量(土地面積、時期別の可能な家族労働時間数、導入可能な 雇用労働力数など)
  4. 生産調整への参加など経営運営上で制約されている条件(例えば、水田の30 %は転作しなければならないといった数値)
  5. 分析しようとする経営の機械・施設償却費などの固定費(農業所得を計算す るため必要)

この他、経営内容によりまた新たなデータが必要となる場合もある。

(2)単体表の作成

線形計画法とは、そのための専用のソフトを必要とする(ソフトについては後述)が、いずれのソフトにおいても分析を行う際には単体表と呼ばれるデータの表を作成する必要がある。
データは、対話型で入力していくことができるが、事前に次のような表を作成し、データを記載しておくと入力に便利である。なお、単位は10a当たりなどに統一しておく。

表23は、単体表の一つのイメージを示したものである。別添として今回用いた線形計画法の単体表(一部)を示した。単体表は問題によってかなり複雑な場合も生じる。その作成の仕方等については後述の資料を参照されたい。

表23 単体表の例

(3)計算(コンピューターソフトの操作)

計算はコンピューターソフトを用いて行う。ソフトの操作方法や計算に必要なコンピューターの能力などの動作環境については後述の資料参照。

(4)計算結果に対する検証

線形計画法の利用において最も重要なのは、計算結果が現実の経営内容と整合性が十分とれているかきちんと検証してみることである。実態と計算結果との間に大きなズレがある時には、経営者と一緒にその理由を確認し、現実を正確に反映したモデルになるよう修正する必要がある。

(5)シミュレーション分析

今回のように大豆コンバインの導入効果を検討する場合には、大豆の収穫時期の労働時間をコンバイン収穫による省力効果を考慮した時間数に修正し、さらに規模拡大の可能性をも加味して(具体的には土地面積制約を5haから10haや20haに引き上げる)計算を行う。例えば、別添の表で言えば、10月、11月の自作地小麦大豆、借地小麦大豆の列の労働時間を刈払い機利用、あるいは大豆コンバイン利用(なお、ここでの基データは汎用コンバインを利用した場合の数字である)による所要時間数に直し、計算を行っている。コンピューターを用いて計算を行うことで、最適解(ここでの例の場合は売上げ総額から資材費などの変動費を差し引いた値)が分かる。この数値を大豆コンバインを導入した場合の最適解と比較し、その増加額が大豆コンバインの年償却費を上回れば、コンバインの導入は経済的であると判断できる。このように経営上の条件をいろいろと変えて計算し、その結果を比較するのがシミュレーション分析である。

線形計画法は、経営全体をとらえて分析する上で非常に有効な手法である。ただし、重要な点は、上記の手順の(4)で述べたように現実の経営内容をまず正確にコンピューター上に再現することであり、それがないと、まさに机上の計算になりかねない。計算それ自体はコンピューターが容易に実施してくれるが、その前提となる経営の実態を十分把握することがまず重要であるという点に十分留意する必要がある。

なお、ここでは線形計画法のごく概略しか説明し得ていない。この手法について詳しくは、農林水産省農業研究センター編「線形計画法による農業経営の設計と分析マニュアル」(農林統計協会刊行、1998年3月)等を参照されたい。また、ここで使用した線形計画法の計算プログラムはインターネットで公開(http://nilgs.naro.affrc.go.jp/prog/lprs.html)されているので、希望者は上記のサイトから直接ダウンロードして利用されたい。

お問合せ先

生産局農産部穀物課 
担当者:豆類班
代表:03-3502-8111(内線4846)
ダイヤルイン:03-3502-5965
FAX:03-6744-2523