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農林水産省

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1.荷受・乾燥施設 ― 乾燥ビンにおける堆積高さと風量比 ―

(1)風量比の算定方法

ライスセンタ-やカントリエレベータ-に併設される貯留乾燥施設の貯留ビンのタイプには、角ビンと呼ばれる直方体形状のものと丸ビンと呼ばれる円柱状のものがあるが、基本的には循環装置と均分器を備えた平形の静置式乾燥機の構造をしており、床下の通風路から、すのこを介して穀類に通風される。穀類の貯留乾燥での風量比は0.05~0.20m3/s・t程度とされているが、高水分大豆の場合は、貯留ビンの堆積厚の高い個所や風路から離れた通風性の悪い箇所では水分が18%以上のときに蒸れの危険もあるため、風量比は0.2~0.3m3/s・t程度を目安としたい。子実周囲の空気は、通風量が少ないと子実の水分と平衡になる湿度に近づいてくるため、大豆の場合18%以上では湿度が80%以上となり、周囲の空気温度が20゜C以上の場合には菌の繁殖が盛んになるためである。実際には、風量比よりも堆積した大豆子実周囲の風速が基本的な指標であり、堆積した大豆子実周囲の風速が0.2~0.3m/s程度に確保されれば、貯留を兼ねて安全に乾かすことができる。具体的な計算方法は以下のとおりである。

堆積した子実の周囲の風速を u′ 、空塔速度(通風量を通風面積で割った値) u 、空隙率を ε 、大豆の乾物比体積 Vm (乾物1kg当たりの真体積)、乾物見掛け比体積 Vm 、貯留ビンの床面積 S 、堆積高さを h とすると

の関係があるので、堆積した大豆の乾物量 Dw は

通風量 Q は、 Q=S・u と表されるので風量比 q は

となる。これより、乾燥層内の風速を設定して風量比を決定する。大豆の場合、乾物比体積は、品種によらずほぼ以下の水分の1次式で表される。

ε  =  0.38~0.48
具体的な例として、 u′=0.3 m/s、h =1 m、ε =0.44 、水分 18 %w.b. とする。 u と u′ の間には

u  =  ε・u′
の関係があるので風量比は

と求められる。通常設定される風量比 0.25 m3 /s・t とすると空塔風速は(3)式より

となるので、子実周囲の風速は

となり、 u′>0.2 m/s が満たされる。

空隙率の測定は、見かけ体積を測定することによって (4) 式の Vm を用いて推定することができる。いま、水分 m% のときの1kg当たりの見かけ体積を V′(10-3m3) としよう。乾物見掛け比体積 Vm′ は

であるので空隙率εは

と求めることができる。この方法は、次の通風抵抗を求めるときの空隙率の計算にも用いることができる。

(2)堆積高さと通風抵抗(圧力損失)

通風乾燥における堆積層の通風抵抗は、乾燥経過の予測やシミュレーションのほか、送風機の容量計算や乾燥機内部の空気の流れの状況を推定するための重要な特性であるが、農産物に関しては、材料ごとに測定した実験式は報告されているものの理論的な解析とそれに基づく実験式が少ないため、材料の形状変化に対応し、他の材料の圧力損失の推定に応用できる実験式は少ない状況にある。大豆の通風抵抗に関しては、材料ごとに測定した実験式やグラフデータが報告されているが、子実水分や粒径、空隙率が異なる場合の通風抵抗を算出する一般的な方法は明らかではない。

多くの物性量が関係する流れに関しては、流体工学分野で使われている抗力係数、あるいは摩擦係数とレイノルズ数などの無次元量を使って解析する必要があり、応用性も広い。無次元数を使うメリットは、さまざまな条件が変わった場合にも、物理的な変数の影響を受けずに普遍的に成立する実験式が得られるためである。流れの通風抵抗においては、抗力係数とレイノルズ数の2つの無次元数がそれに当たる。通風における圧力損失は、材料間の空隙を流れる空気の材料表面との抵抗と空気の粘性摩擦に起因するが、このときの材料がうける空気からの抵抗力を粒子の断面積で除した係数である抗力係数は、堆積層の材料の形状と材質によって決まるレイノルズ数のみの関数として表される。従ってレイノルズ数に対する抗力係数の傾向を求めておけば、異なる条件での圧力損失を計算することができる。ここでもこうした無次元数を使った実験式を用いて圧力損失を求めることにする。計算が多少面倒になるが、通風抵抗には多くの変数が関係しており、しかもその影響も大きいので、こうした無次元数を使って求める方法が信頼性もあり、一番応用が効く方法である。

レイノルズ数とは、流れの速さの指標となる無次元数で、大豆の平均粒径から推定される大豆子実の単位体積当たりの表面積apと単位通風面積当たりの通風量(空塔速度)u、および空気の密度ρairと粘性率μを用いて章末の(3)式のように計算される。大豆は、乾物ではほぼ球に近いので球相当直径Dp(1粒当たりの体積を球の体積πDp03月06日で表したときの直径)と形状係数φc(球相当直径Dpを用いた球での表面積πDp2を1粒当たりの表面積Spで除した係数)を0.986とおいて乾物でのap0を計算し、水分m%でのapを章末の(4)式により計算する。通風抵抗は空隙率の影響を強く受けるが、空隙率は粒径の分布や材料の形状(楕円体の形)によって若干変わるが大きさの影響はほとんどないと考えられる。ここでは報告されている章末の(7)式を用いて空隙率を推定する。

実際に章末の圧力損失の式で定義された抗力係数CDとレイノルズ数Reのそれぞれの対数をとってグラフに表すと、通常の通風乾燥域の40<Re<200の範囲では図1-40のように粒径や空隙率によらずほぼ一定の直線関係が認められ、CD は品種によらず通常の通風乾燥の通風範囲では一般的にCD=aRe-bで表されることがわかる。大豆の通風抵抗の実験では CD =17.4 Re-0.683、CD = 24/Re +5.49 /√Re が報告されており、この結果を用いて大豆の粒径と空隙率、風速、空気密度と大豆の形状と、風速から定義される無次元数であるレイノルズ数を用いた抗力係数により章末の(1)~(8)式に従って通風抵抗を計算することができる。

図1-41は横軸に章末の(3)式で定義されたRe数、縦軸(1)式で定義された形状係数を用いてグラフにしたものであるが、レイノルズ数が通常の通風乾燥で用いられる60~200の範囲では、大豆の粒径や水分によらず、ほぼCD = 24/Re +5.49 /√Reで表されることがわかる。

対数変換によるレイノルズ数と抗力係数の関係 レイノルズ数と抗力係数の関係
図1-40
対数変換によるレイノルズ数と抗力係数の関係
soy.slは平均粒径6.2mmの小粒、soy.mlは7.3mm、
soy.mhは8.3mmの中粒
図1-41
レイノルズ数と抗力係数の関係 


レイノルズ数Reの計算には大豆の平均粒径と形状係数を知る必要があるが、このφcDp は大豆の体積比表面積apとφcDp = 6/apの関係があるため、Re数の計算は章末の(3)式の後半の式で得られるapを用いて計算することができる。乾物でのapoを用いて水分の関数として(4)式のように与えられる。空隙率の計算は、章末の(7)式を用いる。空隙率の水分による変化は少ないので定数として与えてもよい。

(3)通風抵抗のグラフ

章末の式を用いて計算によって貯留ビンにおける通風抵抗を空塔風速を与えることによって計算できる。ap = 700、750、850(m2/m3) 、ε = 0.38~0.50(ap =700)と変え、ρm = 1.20(kg/m3)、μ= 2.0×10-5(Pa・s)として空塔風速を横軸にとって表した結果が図1-42、1-43である。空塔風速に対して指数関数的に圧力損失が大きくなる。また、空隙率が大きく、大豆の粒径が大きいほど圧力損失が大きくなる。通風抵抗は、流れが一方向の場合には堆積厚に比例するので、このグラフから求められた圧力損失に堆積厚をかけて通風抵抗を簡便に推定することができる。

対数軸上での大豆の通風抵抗

大豆の通風抵抗

図1-42
対数軸上での大豆の通風抵抗
図1-43
大豆の通風抵抗
ap:大豆の単位真体積比表面積(m2/m2)
ε:空隙率

 

具体的な例を挙げると例えば水分17%の大豆の平均粒径8mmの大豆の堆積高さが1.2m、空塔風速が0.35m/sの場合の圧力損失を求めてみよう。章末の(5)式により形状係数を 0.983 として体積比表面積 ap を、(7)式により空隙率 ε を求めると

図1-43の0.35m/sの通風抵抗を求めると約130Pa/mが求められる。従って堆積高さ1.2mでの通風抵抗 P は

と求められる。大豆の単位乾物当たりの真体積は、大豆の品種の違いによらず、ほぼ章末の(8)式で求められるので単位乾物当たりの見かけ体積から(6)式により空隙率を求めるとより正確となる。

実際の貯留ビンでは、ビン内の堆積厚が同じでないと通風抵抗が同じになるように堆積厚の低い個所に主に空気が流れるようになってしまい、乾燥むらを生じてしまう。送風機が一つで複数のビン内の穀物を乾燥する場合にも堆積厚の低いビンにより多くの空気が通風されてしまう。この対策としては、乾燥ビンそれぞれに送風機をつけてそれぞれ独立に通風できるようにするか、各乾燥ビンの堆積厚を一定に揃えることである。複数の乾燥ビンどうしの高さも同じ高さに揃える。

(4)裂皮防止のための薄層における限界乾燥速度

大豆の乾燥においては機械的な損傷粒の発生や熱による品質の変化、汚粒、乾燥によるしわ、裂皮粒の発生が問題となる。このうち損傷粒を抑えるためには、スクリュー軸等の搬送装置を柔らかい素材やブラシ等に変えたり、コンベアやベルトコンベア等の利用、あるいはモミガラ等緩衝材の混入等の方法によりある程度改善される。熱による品質の低下に関しては、30℃以下の空気を通風すれば問題はないとされている。裂皮防止には、高水分時に通風の温度を30゜C以下に、また湿度を高く設定しなければならないことが知られているが、詳しいことは知られていない。以下では、温・湿度条件をさまざまに変えた大豆の裂皮試験で得られた結果から、大豆の水分に応じてどのような温・湿度の空気を通風すればよいのかを具体的に示すが、結論としては温度よりも湿度が大きく影響している。

図1-44  大豆の水分と裂皮発生率が薄層で10%となる通風空気の平衡水分の限界値の関係

図1-44  大豆の水分と裂皮発生率が薄層で10%となる通風空気の平衡水分の限界値の関係
曲線は種皮の応力限界(水分の関数)の推定値をもとに計算したもの、
2点破線は薄層での乾燥速度が3%とした場合


裂皮粒の発生を抑えるためには、急激な乾燥を抑える必要がある。この乾燥速度の指標は、投入大豆の初期水分によって若干異なるが、局所的な薄層での上限の乾燥速度は2~3%d.b./hとされる。乾燥槽全体の平均の乾燥速度はこれよりも低くなる。図1-44に投入大豆の水分と通風空気の平衡水分の限界値を示すグラフを示した。これは大豆(タチナガハ、エンレイ)をいろいろな温・湿度状態で乾かしたときの裂皮の発生率を調べ、薄層状態での乾燥による裂皮粒の割合が10%となるときの通風空気の温・湿度を大豆の平衡水分で表したものである(図中の○印)。これによると両者の間には一定の関係があり、水分が高いほど通風空気の平衡水分を高くする、すなわち湿度を上げる必要があることがわかる。タチナガハの場合は、裂皮発生率から推定した種皮の応力限界をもとに計算した曲線でほぼ表されることがわかる。誤差はこれよりも大きいが、薄層での乾燥速度でも図の2点破線のように近似されるので以下の(7)~(9)式から簡便に限界の平衡水分を求めることができる。(11)式を逆に解いてそのときの相対湿度を求めることができる。△印は他のタチナガハの材料であるが同じ傾向を示している。□印はエンレイであるがタチナガハより裂皮しにくい傾向を示している。一般に種皮が厚く、小さい粒の方が裂皮しにくい傾向を示す。

一般に局所的な薄層での乾燥速度は、水分を M(%d.b.) として以下の式で表される。

ここでK(T)は乾燥定数といわれるもので、ある一定以上の送風量であればほぼ空気温度の関数になる。大豆では以下のような実験式が得られている。

Meは平衡水分といわれ、外気の温・湿度と平衡になる大豆の水分である。式を変形して

と表すと、乾燥速度 dM /dθ = -2% d.b./h としたときの Me が水分 M と K(T) で表される。裂皮を抑えるためには、通風入口側の表層の水分に対して、この限界の Me 以上の温・湿度の空気を通風する必要がある。 K(T) は、20°~30℃においての変化は0.222~0.239(h-1)程度であるから、25℃の値0.231を一定として限界の Me が M に対して以下のように求められる。

Me は平衡水分の式として以下のChen-Claytonの式を用いる。

大豆の場合、係数の値は次の値を用いる。

f1 = 17.147、g1 = -0.26541、f2 = 1.44298×10-5 、g2 = 1.58559
f3 =1.5(動的平衡水分のための補正量)ただし、 ψ ; 相対湿度(%) T; 絶対温度(K) Me ;平衡水分(%、d.b.)Me について解くと

通風空気の温・湿度で Me を計算し、 Me* と比較して大きければ、加温可能だが、逆に小さければ温度を下げるなどの方法で裂皮粒の発生を抑えるなどの処置を取る必要がある。目安としては水分が18%以上の場合は、加温せず常温通風を行い、外気の Me がかなり Me* より低い場合は、ゆっくり循環しながら乾燥するなどの方法で対処する。

以上の通風空気温度の調整方法を図1-45の大豆乾燥調製用の空気線図を用いて説明する。横軸を空気温度、縦軸を絶対湿度にとり、この空気線図上に大豆の平衡水分曲線と等エンタルピ線を記入してある。いま大豆の水分を19.5%w.b.としよう。乾量基準では24.2%d.b.でこのとき裂皮を起こさない通風空気の限界の平衡水分は本文の (8)式 より24.2-8.67=15.5で湿量基準で表すとほぼ13.5%w.b.となる。従ってこれよりも下側の領域の湿度の空気は、裂皮の発生の危険があることになる。この平衡水分曲線は、ほぼ相対湿度50%の線に等しいため、湿度は50%以上の空気を送る必要がある。いま外気の温度が18゜C、湿度80%付近のA点であったとすると蒸れを考慮しなければこの点を水平に移動して13.5%w.b.の平衡水分曲線とぶつかるB点まで加温できることになる。しかし、堆積層を通過する空気は水蒸気を吸収しながらほぼ等エンタルピ線に沿って左斜め方向に上昇し、大豆の水分に近い平衡水分曲線とぶつかる温・湿度の空気となる。その点は、温度20゜C以上、湿度80%以上となる蒸れ発生の危険領域となるため、実際には平衡点が20゜C以下となるB'点まで加温できる。水分が18%以下となると平衡点も18%以下となり、蒸れの危険はなくなるので限界の平衡曲線にぶつかる点まで加温できる。一方、はじめの外気の状態がこの例の場合のように10%の平衡水分曲線上にあるA点にあるときは、このまま1時間以上通風すると裂皮の危険が増してくる。この場合はゆっくりと循環させながら裂皮の発生を防ぐ必要がある。

図1-45  空気線図上(温度-絶対湿度グラフ)の大豆の平衡水分曲線と裂皮と蒸れ防止の温・湿度範囲

図1-45  空気線図上(温度-絶対湿度グラフ)の大豆の平衡水分曲線と裂皮と蒸れ防止の温・湿度範囲

(5)平均乾燥速度の推定

乾燥速度を予測するのは、通風量の設定や乾燥経過の把握のために必要であるが、通風量や堆積高さ、材料の物性値などが複雑に関係しているために、簡単にわかる方法がないのが現状である。堆積通風乾燥での乾燥経過をするには、一般的には堆積層を分割し、それぞれの薄層状態での乾燥方程式の数値解析によって求めるが、必要とする物性値の数が多く、簡単に予測を行うためには不向きである。近似的な計算のためには以下の方法がある。

材料の単位乾物当たりの見かけ密度 ρ'd とし、堆積層の通風入口、出口の空気の温・湿度を (tin、hin)(tout、hout)、△H = hout-hin とすると入口と出口での空気中の水分の物質収支から、

の関係が成り立つ。ただし G は質量速度 (kg/m2・s) で単位通風面積当たりの通風乾燥空気量で、空塔風速 u とは、 G =ρair・u の関係がある。堆積の層の入り口と出口の空気の温・湿度を測定し、 △H を求めると層全体の平均の乾燥速度 ∂M/∂θ は

として計算される。堆積層の水分が一様でし M と仮定すると積分してし △H が

従って

と計算される。ただし、 He は (tin、M)と平衡になる絶対空気湿度、Khcは絶対湿度基準の総活物質移動係数であるが、ほぼ絶対湿度基準の物質移動係数Khで近似でき

によってほぼ計算することができる。、 Cf は材料の摩擦係数、 Re はレイノルズ数、 Sc はシュミット数と言われる無次元の数値で空気~水蒸気系では、 Sc≒0.62(25゜C) である。aは単位見かけ体積当たりの材料表面積で、 a = (1-ε)・ap、ρ'd = 1/Vm' = (1-ε)/Vm の関係があり、それぞれ章末の、 (4)、(8)式 を用いて計算することができる。

 この他、空気線図を用いて蒸発水分量を推定する方法がある。堆積層を通過する空気は、材料から蒸発した水分を吸収すると同時に、蒸発に要する熱(蒸発潜熱)が奪われる。材料温度が一定で断熱状態で結露もないとすると、湿り空気の熱量と蒸発潜熱分の水蒸気のエネルギ-の和 (エンタルピー i=Ch*t + (rw+Cw*t)H Ch;乾燥空気比熱、Cw;水蒸気比熱 rw;蒸発潜熱) はほぼ一定に保たれ、堆積層を通過する空気は、通風量が少なく、堆積厚が一定以上では材料の水分と平衡する温・湿度の平衡状態に近づく。従って 図1-45 の空気線図上で通風空気の温・湿度から空気のエンタルピーを計算し、その等エンタルピー線と、大豆の平衡水分曲線(大豆の平均水分)の交点が排出空気の温・湿度状態の近似値となる。実際には、材料温度は通風空気温度に近づき、多少の結露も生じるため、等エンタルピー線より若干下側の線をたどり、平衡水分までには至らないが、近似的な計算には十分である。この絶対湿度上昇分△Hに通風量を乗じて、G △Hとするとこの分が単位通風面積当たりに蒸発した総水分量となる。

図1-46 に初期水分20(%w.b.)、堆積厚1(m)、空隙率0.48、空塔風速0.105(m/s)、風量比0.204(m3/s・t)、通風空気温度が17゜C近辺( 図1-46 中の下側の曲線)での堆積通風乾燥時の堆積層内の水分変化を乾燥シミュレーションモデルによって推定したグラフを載せた。上側の曲線群は堆積層を5等分した各層の水分変化を示し、中間の太線は平均の水分変化である。下側の曲線群は堆積層内の空気温度で上の曲線は入口の通風空気温度を示している。通風量が少ないと通風入口の堆積層付近で空気は平衡してしまい、内部の乾燥はあまり進まず、遅れて乾燥してくる様子が分かる。

図1-46  堆積通風乾燥での堆積層の水分と空気温度のシミュレーション結果

図1-46  堆積通風乾燥での堆積層の水分と空気温度のシミュレーション結果
曲線群は堆積層の上層から下層にかけての5分割した各層の水分変化を示している。
太線は平均水分。下側の曲線群は通風側(上側)の通風空気温度と堆積層内の空気温度を示している。
初期水分20% w.b.、堆積厚1 m、かさ密度670Dkg/m3、空隙率0.48、空塔風速0.105 m/s、風量比0.204 m3 /s.t

(6)乾燥むらの是正について

堆積通風乾燥では送風側と排風側では、層内の空気の温・湿度が異なるため乾燥速度が異なり、水分の違いが生じる。堆積層にほぼ均一に通風が行われれば、 図1-46 のように通風口からの高さに応じて乾燥速度が劣り、床からの高さが同じ層の水分はほぼ等しくなる。循環をした場合としない場合での層全体の平均乾燥速度の差は循環中の乾燥を除いては両者とも排出空気の温・湿度が平衡水分に近づくため少ないが、この位置別の水分むらの是正と蒸れ予防、裂皮防止のために循環を行う。目標仕上げ水分を13%としたとき、水分むらの是正のための循環は、平均水分がほぼ16%以下になった仕上げ乾燥時に行えばほぼ均一な水分に仕上がる。

また床から同じ高さの層であっても場所によって風の通りが異なるため、水分むらを生じる。乾燥が進むと粒径が小さくなり、章末の (1)式 のように通風抵抗が減少し、堆積高さも減少し、通風量が増大する。従って風の通る個所は増々風が通りやすくなり、水平の位置別の水分むらが増大する。これを解消するためには、間欠的な循環が必要になり、貯留ビンには循環装置が装備されている。しかし床面付近の大豆を均一に排出することは一般的に難しいため、場所ごとに流量が異なり、若干の水分むらの原因となる。このためには貯留ビンの均一排出機構を工夫する必要がある。貯留ビン内にしきりを設けてそれぞれのブロックで排出したり、床面をV字形にしてカバーで重量を支えながらそれぞれの溝からベルトコンベアにて排出するなどである。間欠的に循環する場合、貯留ビンの容量にもよるが30分に5分位の割で循環するのが目安になる。

乾燥調製、通風抵抗に関しては、いろいろな条件が関係しており、どうしてもそれらの条件を入れた実験式のパラメータの数が多くなり、計算式は複雑にならざるを得ない。大豆は、種子が大きく、種皮も粒のわりには薄いので米麦と違って温度や湿度、衝撃の影響を受けやすく、取り扱いには注意を要する。ここで示した乾燥調製の方法や通風抵抗の算出方法は、今後大豆の高品質乾燥調製を行うために是非とも必要とされる大豆の水分に応じた温・湿度調製とさまざまな大豆の粒径に対応できる通風抵抗の算出方法であり、従来の大まかな基準よりより詳しい最新の研究発表に基づいている。近年はパソコンが発達しているため、あらかじめ式を入力しておけば簡単に通風抵抗を求めることができる。米麦用のマイコン制御乾燥機が普及し、簡単に品質のよい乾燥調製ができるようになってきており、今後乾燥機メーカーから、衝撃を少なくした構造で大豆にも使えるマイコン制御の自動乾燥機の開発と普及が期待される。

《参考》

抗力係数CDを用いた圧力損失の計算式

大豆の抗力係数

レイノルズ数

大豆の体積比表面積

大豆の乾物比重 ρd0/ρw≒ 1.30、乾物の平均粒径を 7.3×10-3m、形状係数を0.986とすると乾物の体積比表面積

大豆の乾物比見かけ体積 Vm1 と空隙率 ε に関しては

大豆の乾物真体積Vmは

空気の密度ρairと粘性率μは空気温・湿度によって変化するので以下の表から推定する。

お問合せ先

農産局穀物課

担当者:豆類班
代表:03-3502-8111(内線4846)
ダイヤルイン:03-3502-5965