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農林水産省

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2.調製施設 ― 比重選別機 ―

(1)原理

比重選別機とは、比重液の代わりに風力を利用する機械である。一般に比重選別は、種子籾等の塩水選でよく行われているので理解できるであろう。比重液(塩水)の比重は水に対する食塩の量で定め、その比重より大きい比重のよい種子は沈み小さい比重の未熟籾は浮かぶ。沈んだ種子籾のみを苗床に播種している。

しかし、この比重選別は水につけてしまうので播種直前にしか出来ず大量に行って保管しておくことができない。そこで乾式比重選別機が考えられた。

風力選別機の原理でも説明したように、それぞれの物体には固有の「浮遊速度」があるので、たとえばあるスクリーン(網のようなもの)上に下方から、多種類の物体の浮遊速度の中間の風速を設定すれば、浮遊速度が大きい方(重い方)は下方に、小さい方(軽い方)が上方に層を形成する。このことを図2-8で説明する。

図2-8で示すように、下方に送風機があり、ダンパーで風速が設定でき、整流格子をとおして特殊なスクリーンを張ったデック上に風がでる機構を作る。Aでは、ダンパーが全閉でスクリーン上に風の流れがないので、選別物体は混在のままである。Bは、適度なダンパーの開閉を行いそれぞれの「浮遊速度」に近い最適な風速設定をしたので、選別物体は下方から重い順に積層する。Cはダンパーを開きすぎたため、風速が大きすぎて積層が乱れかつ軽いものは飛散してしまう。

図2-8  比重選別機の原理(風速の設定)
図2-8  比重選別機の原理(風速の設定)

すなわち、Bのように適切な風速を設定することで比重差による選別ができる。ただし、風力選別機の原理でも説明したが「浮遊速度」の決定係数(要因)は数多くあり、比重のみで定まらないので、大豆の比重選別機は見掛け比重の選別となる。そのことを図2-9の典型的なモデルで説明する。

Aは大きさが均一で比重が異なる2種類のものを、図2-8の機構に投入した場合に下方に重い比重のもの、上方に軽い比重のものが積層する。Bは比重は同じだが大きさが不均一なものの場合は、下方に大きいもの、上方に小さいものが比重差ではなく、大小の差で積層してしまう。Cは大きさが不均一で比重が大小の2種類のものの場合で、下方から比重が大で形が大きいもの、比重の大小と大きさの順の混在、比重が小で小さいものに積層する。

図2-9  比重選別機のモデル(見掛比重による積層)
図2-9  比重選別機のモデル(見掛比重による積層)

このように比重差とものの大小による重さとが選別の効果として作用するので、真比重の選別とはならない。もちろん風のあたる面積の大小等も影響する。しかし実際の選別作業において、そのことを理解して比重選別機を操作調整すれば、比重選別能力を十分に発揮できる。
例えば、前処理として粒度選別を行って、粒度分布の範囲を狭めてから比重選別を行うとか、風力選別で表面積の大きくて薄い軽いものを除去してから行うとよいのである。

(2)比重選別機の種類と特徴

  1. 左右2方向比重選別機(石取機型)
    図2-10のように、図2-8の機構を発展させ、デックを傾斜させかつ振動させる。このことにより積層した下層部の重比重物は振動により、傾斜上方(右)に移動し、上層部の軽比重物は風の流れが摩擦を少なくするので、傾斜下方(左)へ移動する。
    この層を乱さないように排出させれば連続的な比重選別ができる。このことが、実際の比重選別機の原型で、一番シンプルな機種である。この機種は主として、穀物中の石、金属等の重比重物の除去に使用され、もちろんその逆に、穀物中の殻付子実や、風選で除去できない比較的重い茎等の軽比重物の除去にも使用される。

    図2-10  左右2方向比重選別機
    図2-10  左右2方向比重選別機

  2. 三角型比重選別機(前後、左右方向選別)
    図2-11のように、デックの形状が三角形に近い。選別物は後方左から投入し、各作用域が重なり合わず拡散しながら積層、選別されていく。従って、より比重差の近接したものの選別が可能であり、中間に排出されるものを投入口に戻すことにより、2種類に選別する。
    世界的に見て、一番広く使用されている機種で、メーカーも多い。特にヨーロッパ、アメリカ等で多用されている。
    麦の調製に使用され、デック面積に比較し処理能力が大きい。しかし我が国では、特別な用途の機械を除いて、鉱工業用に使用されることが多い。農業(種子を含めて)には、次に説明するより選別精度の高い機種が圧倒的に多い。

    図2-11  三角形型比重選別機
    図2-11  三角形型比重選別機

  3. 長方形型比重選別機(前後、左右方向繰り返し選別)
    図2-12のように、三角形型比重選別機の三角の頂点を切断し、重比重物の広がって行く方向を堰き止めた形となっている。また前後方向に延長して選別物のデック上の滞留時間を長くさせ、積層して下部に沈んだものが右へ、上部に浮かんだものが左へ、の動作を連続して繰り返させてより精度良く選別させる機構となっている。すなわち三角型の発展型なのである。

    図2-12  長方形型比重選別機
    図2-12  長方形型比重選別機


    大豆の選別には、この機種が最適であり、デックメッシュの選定により麦との兼用も可能である。
    この機種は、デックが長いので、送風機は1台ではなく並列に数多く付いていて、それぞれに風速調整用のダンパーが取り付けてある。また、全体の風速調整には、インバーターでモーターの回転を調整する方法もある。振動は、バリダイヤプーリーあるいはインバーターで調整する。デック角度はインデックスハンドルで調整できる。
    3機種の中で一番精度が高く安定していて、操作も簡単である。ただ同じ処理能力では、一番形状が大きくなり、価格も高くなる。しかしその選別効果は非常に大きいので十分使用できる。
    被害粒(カビ粒、未熟粒、虫食い粒、口欠け粒)の除去、石・ドロ塊の除去、その他風力選別機では比重差が少なくて除去できなかったものを除去することができる。

お問合せ先

農産局穀物課
担当者:豆類班
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ダイヤルイン:03-3502-5965