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農林水産省

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指定前の公示(第117号)

更新日:令和3年12月22日
担当:輸出・国際局 知的財産課
下記の名称について、指定前の公示をしたのでお知らせします。

Cornish Pasty(コーニッシュ パスティ)


1 指定前の公示の番号  第117号
2 指定をした場合に締約国の名称として公示されることとなる国の名称  グレートブリテン及び北アイルランド連合王国(英国)
3 農林水産物等の区分  第10類 パン類及び菓子類 菓子類(ミートパイ)
4 農林水産物等の名称  Cornish Pasty(コーニッシュ パスティ)
5 農林水産物等の生産地  イギリス
 コーンウォール
6 農林水産物等の特性、生産の方法その他の当該農林水産物等を特定するために必要な事項 (1) 特性
「コーニッシュ パスティ」は、牛肉と野菜と香味料が詰まった、半円型のセイボリー(ミートパイ)である。

 生地:
  生地は、パン職人のレシピによって、ショートクラスト、ラフ・パフ、又はパフとして良い。中身を詰めた後、生地にナイフで穴を開ける、切れ目を入れる、生地を型抜きする等、製品の区別がつくよう印を付けることができる。そして、牛乳、卵又はその両方の成分を使ったつや出し用材料を塗り、黄金色に焼き上げる。生地は、調理、冷却、その他取り扱いの過程でも形状を保ち、割れたりひび割れたりしないように頑丈で、更に風味も良くなければならない。

 詰め物:
  以下の材料は本産品の詰め物に必ず使用すること:
 ・薄切り又は角切りジャガイモ
 ・スウィード(西洋カブの一種)
 ・タマネギ
  ※ 野菜の量は本産品全体のうち少なくとも25%とする
 ・角切り牛肉又は牛挽肉
  ※ 肉の量は本産品全体のうち少なくとも12.5%とする
 ・味付けのための香味料(主に塩コショウ)

  以上の材料は、生地の端を最後に閉じる時点では未調理でなければならない。

  牛肉以外の肉や、ジャガイモ・スウィード・タマネギ以外の野菜は、詰め物として一切使用できない。ただし、本産品に湿り気や風味を加えたり、加工しやすくするためであれば、その他の材料を少量加えたりすることは可能であるが、その他の材料によって全体的な風味を変えてはならない。また、加工助剤とその他の追加材料を合わせた量が、未調理の詰め物重量の5%を超えてはならない。また、焼き上げた本産品の詰め物に、人工添加物を入れてはならない。
 注: 伝統的に、コーンウォールでは「スウィード」は「カブ」と呼ばれるため、この2つの名前を置き換えて使用されることがあるが、本産品に実際に使用される材料は「スウィード」である。
  本産品を半円状に形どり、端に手又は機械でひだを作る。ひだ作りは本産品の端を閉じるための伝統的な工程であり、ひだは本産品の片側に作られ、本産品の上部から反対側に広がる丸まった形状とは大きく異なる。

  本産品全体をゆっくりと焼き上げて、具材から風味を最大限に引き出す。本産品のもう1つの独特な特徴は、構成材料が見た目、味、食感で認識できる一方、生の牛肉と野菜が調理されることで風味が融合され、全体にバランスの取れた自然で香ばしい風味が加えられることである。また、軽い香ばしさがある。本産品は様々なサイズや重さがあり、精肉店や、パン屋、スーパーマーケット、デリカテッセン、飲食店等幅広い販売経路を通じて販売されている。

(2) 生産方法
  厳選した牛肉の切り身、ジャガイモ、タマネギ、スウィード/カブを粗く又は細かく刻む。次に、生地を作り、延ばして必要な形に仕上げる。中に詰める材料を軽く味付けし、それを丸い生地の上に置き、半分に折って、半円の形に作り上げる。生地にひだを付け、艶出しを塗り、ゆっくり焼いて、具材からじっくりと風味を引き出す。焼き時間は、本産品の大きさにより異なる。

  製品が指定地域内で製造されたかどうかについては、製造者による保管記録や追跡システムで確認することができる。各製造者にはコーニッシュパスティ協会が発行した認証番号を発包装時に記載し、販売時にも表示する。この認証番号によって販売された本製品から製造者まで直接遡ることが可能となる。認証登録は指定の検査機関とも連絡を取り合った上で同協会で管理しており、各製造者に付与した認証マークも合わせて管理している。

 (検査機関)
 1. Product Authentication Inspectorate Limited
 2. SAI Global
 3. Cornwall Council

(3) 農林水産物等の特性がその生産地に主として帰せられるものであることの理由
 〇 地域との伝統的なつながり
  イギリスの料理文化遺産の一つである、「コーニッシュ パスティ」の重要性を裏付ける歴史的な証拠は豊富に残されている。本産品は16世紀から17世紀にかけて定着し、直近200年間において、本物の「コーニッシュ パスティ」としての独自性が確立されてきた。本産品は18世紀までにはコーンウォール料理として確立し、ジャガイモやスウィード、タマネギといった安価な材料しか購入できない貧困な労働層によって定番料理として作られ、食べられるようになった。ただし、肉は後から追加されたものである。また18世紀の終わりには、本産品はコーンウォールの労働者の主食となり、その家族にも広まった。炭坑作業員や農場労働者は、携帯が簡単で食べやすい便利な食べ物として、本産品を食べるようになった。そのサイズと形状から、本産品は持ち運びやすく、ポケットに入れて持ち運ばれることが多かった。また、生地の外皮が中の具を覆っており頑丈で、更に詰め物が健康的で栄養豊富であるため、厳しい長時間労働を強いられていた労働者達に十分な栄養を提供した。

  形状については諸説あるが、錫(すず)の炭鉱で働く労働者が地下で温め直して、安全に食べることができるように半円型になったというのが、最も有名な説である。多くの錫炭鉱では、労働者たちはひだのある側を手に持って食べていたが、手で触れた部分には、高濃度のヒ素が付着してしまうため、汚れた部分は捨てられていた。本産品がコーンウォールの伝統料理であることの証拠は、1808年の「コーンウォールの農業調査(Agricultural Survey of Cornwall)」でも確認することができる。本資料には、「労働者は、通常、パスティに少量の牛肉を入れていた」という記述がある。また、1860年代の記録では、採鉱場で雇われていた子どもたちもお弁当(コーンウォール語のcribやcroust)として本産品を持参した。20世紀初頭までに、本産品は、農場労働者と炭坑作業員の基本食として州全体で大規模に製造されるようになった。このことは、1901年から1910年頃のエドワード朝時代にやり取りされていた葉書にも本産品について書かれていることからも窺える。また、一般的なパスティの作り方が掲載された料理本「Good Things in England」(1922)と「Cornish Recipes, Ancient and Modern」(1929)にも本産品が登場している。本産品のレシピは200年にわたって受け継がれてきているが、これは非常に珍しいことである。通常、レシピは世代間で口伝によって受け継がれることが多く、書き留められることはほとんどなく、本製品も毎日作られているものであるため、書き留める必要がなかったからである。本産品は地域の生活及び伝統の重要な部分を形成してきた。州内の行政区ごとにわずかな違いはあるが、その概念と文化的観念は、本産品の重要性と州との強いつながりを象徴している。

  本産品の製造と地元の原材料供給業者の間には強いつながりが続いており、歴史的事例となる場合もある。例えば、ある家族経営の会社は、創業者が孫のための信託として設立した地元の農場からジャガイモを調達している。ジャガイモとスウィード(カブ)は、長い間コーンウォールの主要な農産物であった。一方、歴史的にコーンウォールの牛肉産業はパスティ業界の需要を支えるほど大きくはなかった。何故ならば、多くの製造元はパスティに使用する牛肉についての指定が非常に厳しく、各枝肉から使用できる量が限られ、必要な牛肉量を確保できなかったのである。しかしコーンウォールは、その気候と地理的な性質において、家畜の飼育に理想的な場所でもある。原材料をコーンウォール内で調達しなければならないという要件はないが、実際には、そのほとんどが地元の農場から供給され続けている。このため、コーンウォールの農場とコーンウォールのパン屋の間には、長年にわたる共生関係が構築されている。

 〇 本産品と指定地域の間のつながり及び本産品の長年にわたる評価
  本産品とコーンウォールの結び付きは、州内外で、現在も200年前も、変わりなく強いつながりがあることが研究の結果示された。州外から繋がる鉄道が発達して以降、コーンウォールに旅行者が訪れるようになり、本産品は旅行者にとって欠かせない思い出となった。2001年には480万人、2002年には550万人の旅行者がコーンウォールを訪れており、本産品は観光資源としても重要である。南西部の観光旅行団体が近年行った調査によると、コーンウォールを訪れる理由の上位3つの一つに食べ物が入っており、アンケートに参加した大部分の人が、コーンウォールと聞いて最初に本産品を思い浮かべると回答している。

 コーンウォールにおける地域食品についての調査によると、旅行者が最も頻繁に口にする食べ物の一つとして本産品が挙げられた。また、本産品は通信販売又は現地の店での購入のいずれかの方法により、旅行者がお土産として最も多く購入する製品となっている。RSGB(イギリス無線協会)が2002年10月に行ったオムニバス調査によると、イギリス全体で無作為に選んだパスティを購入する473名の女性のうち71%が「コーニッシュ」と書かれるパスティはコーンウォールで生産されるべきと考えており、48%が「コーニッシュ」と書かれた製品はコーンウォールで生産されたものと認識し、54%がコーンウォールで生産された本産品が、一般的に州外で生産されたものより品質が優れていると思っていることが判明した。

  本産品の製造は、コーンウォール経済に大きく貢献している。約13,000人が直接又は間接的に、本産品の取引により恩恵を受けていると推察されている。最近の調査では、本産品の製造業界の継続的な発展が、原材料やサービスを提供する人々だけでなく、コーンウォール州内で働く人々に広く恩恵を与えているかが明らかとなり、本産品の業界は一次元的なものではないことが示された。コーンウォール州内のパスティ産業の発展の方向性を検証すると、州内でのパスティ産業の発展性や存在価値は、コーンウォール州外での販売活動に依存していることが分かる。このため、人気が高まっている「コーンウォール製」という概念を悪用する企業が、不公正な競争を行う可能性も考えられる。コーンウォール州内のパスティ業界は現在、非常に盛んに活動しているものの、一方で最も脆弱な状態にあるとも言える。本産品の永続的な人気の高さは、コーニッシュ パスティの専門店の増加や、コンビニエンスストアで出来立てのパスティが販売されていること、また、スーパーマーケットで「1個入り」や「複数個入り」パックで販売されていることによって証明されている。

  本産品は、コーンウォールの料理文化遺産の中でも確固たる名高い地位を維持しており、何世紀にもわたり多く記録され続けてきた。本産品を保護し、評判を維持することは非常に重要である。
7 法第29条第1項第2号ロの該当の有無等 
(1)商標権者の氏名又は名称  -
(2)登録商標  -
(3)指定商品又は指定役務  -
(4)商標登録の登録番号  -
(5)商標権の設定の登録の年月日  -
(6)専用使用権者の氏名又は名称  -
(7)商標権者等の承諾の年月日  -
8 公示の年月日  令和3年12月22日
9※ 意見書提出期間
(公示開始日から3か月間)
 令和4年3月22日まで
※縦覧及び意見書提出についてはこちら

お問合せ先

輸出・国際局知的財産課

担当者:地理的表示保護制度担当
代表:03-3502-8111(内線4285)
ダイヤルイン:03-6744-0234
FAX番号:03-3502-5301