このページの本文へ移動

農林水産省

メニュー

指定前の公示(第155号)

更新日:令和5年1月12日
担当:輸出・国際局 知的財産課
下記の名称について、指定前の公示をしたのでお知らせします。

Vinagre de Jerez(ビナグレ デ ヘレス)


1 指定前の公示の番号  第155号
2 指定をした場合に締約国の名称として公示されることとなる国の名称  欧州連合
3 農林水産物等の区分 第8類 調味料類 食酢(果実酢)
4 農林水産物等の名称 Vinagre de Jerez(ビナグレ デ ヘレス)
5 農林水産物等の生産地  スペイン

 Cádiz県のJerez de la Frontera、El Puerto de Santa María、Sanlúcar de Barrameda、Trebujena、Chipiona、Rota、Puerto Real及びChiclana de la Frontera並びにSeville県のLebrijaのうち西経5度49分の東かつ北緯36度58分の南。
6 農林水産物等の特性、生産の方法その他の当該農林水産物等を特定するために必要な事項 (1)特性
ビナグレ デ ヘレスは、生産地で生産された、基準に適するワインを酢酸発酵させたもので、後述の伝統的な方法で生産、熟成されたものであり、その官能的及び分析的特性は以下に記載される。

本産品の分析的特性は以下のとおりである。
 ・残留アルコール分は容量比3%を超えてはならない。ただし、sweetタイプやsemi-sweetタイプの場合は、残留アルコール分が容量比4%を超えてはならない。
 ・総酢酸量は70 g/L以上でなければならないが、sweetタイプやsemi-sweetタイプの場合は、総酢酸量は60 g/L以上となる。Gran Reservaタイプの場合は、総酢酸量は80 g/L以上でなければならない。
 ・硫酸塩の最大含有量は3.5 g/Lである。
 ・semi-sweetタイプの本産品には、少なくとも60 g/Lの還元物質が含まれる。
 ・sweetタイプの本産品には、少なくとも150 g/Lの還元物質が含まれる。

本産品は、古金色からマホガニー色まであり、濃密で滑らかな外観をもつ。強い芳香をもち、わずかにアルコールの香りが混じっており、ワインや木の香りが目立つ。酸味はあるものの、心地よい余韻が残る。

本産品は熟成期間の違いにより、以下の通り区別されている。
 (a) Vinagre de Jerez:本指定の対象となるビネガーで、6ヶ月以上熟成させたもの。
 (b) Vinagre de Jerez Reserva:本指定の対象となるビネガーで、最低2年間熟成させたもの。
 (c) Vinagre de Jerez Gran Reserva:本指定の対象となるビネガーで、10年以上熟成させたもの。

さらに上記の各区分において次のsemi-sweetタイプのビナグレ デ ヘレスが存在する。
 ・Vinagre de Jerez al Pedro Ximenezは、本指定の対象となるビネガーであり、Pedro Ximenez(ペドロ・ヒメネス)ワイン、又は生産地内で生産された、非常によく熟した又は天日干しされたPedro Ximenez(ペドロ・ヒメネス)品種のブドウの果醪を加え、発酵を止めるために中性ブドウ酒アルコールが加えられたものをいう。
 ・Vinagre de Jerez al Moscatelとは、本指定の対象となるビネガーであり、Moscatel(モスカテル)ワイン、又は産地内で生産される、非常によく熟した又は天日干しのMoscatel(モスカテル)種のブドウの果醪を加え、発酵を止めるために中性ブドウ酒アルコールが加えられたものをいう。

最後に、前項で示したタイプは、還元物質含有量が150 g/L以上あれば、Vinagre de Jerez Dulce(甘口)として市販することができる。


(2)生産方法
〇 原材料
ビナグレ デ ヘレスの対象となる食酢は、「基準に適するワイン」の酢酸発酵から得られる。したがって、本産品の製造のための原材料は「基準に適するワイン」である。これらのワインは、原産地呼称保護Jerez-Xérès-Sherry及びManzanilla-Sanlucar de Barramedaの生産地と一致し、本産品の生産地に位置する生産者によって生産されるものをいい、以下のものでもよい。
 (a) 量り売りで自然のアルコール度数で出荷されうる同年のワイン。
 (b) 製品仕様に定められた最低平均熟成期間を経た熟成ワイン。

これらのワインは、当該名称の製品仕様に従って製造されているほか、生産地のブドウの産地に関する要件と、適用される法令に規定されたワイン醸造方法に準拠している。ただし、自然発生的に始まった酢化工程が、当該法令に規定されている限度以下までアルコール度数を低下させる可能性があるという事実を損なうものではない。

さらに、Vinagre de Jerez al Pedro Ximenez及びVinagre de Jerez al Moscatelについては、原産地呼称保護Jerez-Xérès-Sherryの登録ワイナリーの酒精強化ワインの添加が認められており、生産地内で生産される、これらの品種の、非常によく熟した又は天日干しのブドウの果醪を加え、発酵を止めるための中性のブドウ酒アルコールを加えることが認められる。なお、後者についても原産地呼称保護Jerez-Xérès-Sherryの登録ワイナリーからのものでなければならない。

Vinagre de Jerez Dulceの場合、濃縮した果醪及び調整濃縮した果醪を添加することも認められる。

〇 製造工程
 (a) 変性
基準に適するワイン全てについて、登録生産者の施設に入庫する際、部分的に酢化を通して変性させる必要があるが、当該変性にあたっては、酢酸含有量の最小等級が1°になるよう十分な量が貯蔵されているビネガーを使用する。

 (b) 酢化
酢化とは、酢酸菌の働きによってワインのアルコール分を酢酸に変えることである。ビナグレ デ ヘレスを生産するには2つの方法がある。
  [1] Bodegas de Elaboración de Vinagre(食酢製造施設)、すなわち原材料である基準に適するワインを酢酸発酵させて基準に適する食酢にする酢酸発酵機を保有する製造施設で行われる方法。
  [2] Bodegas de Crianza y Expeditión de Vinagres (食酢熟成・供給施設)、すなわち製品を熟成させるのと同じ木製容器の中で酢化が行われる方法。

 (c) 熟成又は成熟
本産品に必要な熟成又は成熟システムとして、伝統的なcriaderas y soleraシステム (樽は、熟成の度合いに応じてcriaderasと呼ばれる異なる段に配置され、最も古いものは最下段となる床の高さ(solera)に置かれ、下の段は定期的に上の段から注がれるビネガーが補充されていく)もの、又は、añadas (vintage)システムと呼ばれる、ビネガーがそれぞれの区分の官能的及び分析的品質に達するために必要な期間静置されるもののいずれかを用いることができる。
  [1]熟成容器
   熟成工程を経るすべてのビネガーは、過去にワインの熟成に使用されたことのある、容量1,000リットル未満の木製容器に保管されなければならない。規制委員会は、容量が1,000リットルを超える木製容器をワインの熟成に使用することを臨時で承認することも可能である。ただし、その容器が歴史的なもので、製品仕様書の公表前に、規制委員会にその使用が登録されていることを条件とする。
  [2]最低熟成期間
   本産品が消費に供される為には、いずれも少なくとも平均熟成期間が6ヶ月以上であることが条件となる。Vinagre de Jerez Reservaの場合、最低平均熟成期間は2年、 Vinagre de Jerez Gran Reservaの場合は10年である。
単一年産のビネガーで、異なる収穫年のビネガーと混ぜることなく熟成されたビネガーは、熟成期間が少なくとも2年であれば、Añada(Vintage)とラベル表示することができる。この用語は、ワインがそれぞれのケースで要求される特性に適合していることを条件として、本書に記載されている他の記述用語と互換性があるものとする。

〇 製品の切分け、切削、包装
直接消費用のビナグレ デ ヘレスを入れるボトルは、製品の特性を損なわないガラス又はその他の材料で作られ、いかなる場合においても本産品に対して認められた名目上の容量を有するものとする。

本産品のボトリングは、
  [1]ビネガーの熟成庫及び供給庫として登録されている企業が所有するボトリング施設、又は、
  [2]規制委員会によって認可され、生産地内外の業者が所有するボトリング施設(登録企業から本産品を一括購入しボトリング工程のみ行う)で行われるものとする。

いずれの場合も、認可されるためには、規制委員会に対して、これらのボトリング施設が、ビネガーのボトリング加工に関して各地域で適用される法律上の要件を満たしていることを証明しなければならず、また、ボトリングのために登録生産者から購入した製品の完全なトレーサビリティと適切な取り扱いを保証する品質管理システムを導入することが条件となる。

〇 ラベル表示
本名称の文字は、メインラベル及び裏ラベルに目立つように記載しなければならず、また、当該ラベルには、ビネガーの種類や、一般的には、関連法規で定められた全ての情報を記載しなければならない。さらに、ビネガーは、規制委員会が定めた規則に従って、規制委員会が発行する品質シール及び識別のための英数字コードを表示した裏ラベルを付けて販売しなければならない。

規制委員会は、本名称を有するラベルが、原産地名称固有の製品仕様及び表示規則の要件に適合していることを確認するものとする。


(3)農林水産物等の特性がその生産地に主として帰せられるものであることの理由
〇 地理的地域の特性
ビナグレ デ ヘレスの産地の特異性は、歴史的、自然的、人的要因に基づく。
 (a) 歴史的要因
ブドウ栽培兼ワイン醸造とワインやビネガーの生産は、フェニキア時代から何千年にもわたってヘレス地方の中心的な役割を担ってきた。CadizやSevilleなどの歴史的に重要な商業港に近いという地理的条件から、アメリカ大陸やヨーロッパ北部の市場向けに航海する船の貨物に頻繁に積載されており、さらに、ワインやビネガーの熟成に使用される容器は、スペインの海外植民地産であるアメリカンオークから作られていた。同様に、ヘレスのワイン造りの伝統的側面である criaderas y soleras システムは、17世紀にまでその起源を明確にさかのぼることができ、収穫の変動に左右されない、安定した品質のワインとビネガーに対する市場の需要を満たす必要性に迫られた。

 (b) 自然的要因
生産地は、平坦か緩やかな起伏のある土地で、傾斜は10%から15%である。土壌はalbarizaとして知られており、水分を多く保持する軟らかい白亜質を特徴とする。また、炭酸カルシウム、粘土質、シリカを多く含むという特徴をもつ。気候は温暖で、冬の最低気温は約5°C、夏の最高気温は約35°Cで、年間300日以上の日照日数と約600L /平方メートルの平均年間降雨量を有し、降水量の大半を占めるのは11月、12月、3月である。いずれの場合においても、この要因は、水分を保持し蒸発・蒸散を防ぐ能力を持つ地域の特徴的なalbariza土壌と組み合わせて考慮する必要がある。最後に、この地域に吹く2つの偏西風が気候に与える影響も無視できない。東風は内陸部から吹く高温で乾燥した風で、西風は海から吹く湿度の高い風で、特に夏場には重要な緩和要因として作用する。

 (c) 人的要因
本産品の熟成に主に使用されるcriaderas y soleraシステムは、生産地における伝統的な熟成システムであり、botaと呼ばれるアメリカンオークの伝統的な樽にワインの風味を強く染みこませている。建築もまた、本産品がもつ特別な性質において重要な役割を果たしている。ビネガーを熟成させるために使われるセラーは、切妻屋根で天井が高く、内部の空気量が多くなり、外部の温度変化の影響を受けにくい構造となっている。壁は断熱材として十分厚く、窓も高い位置にあるため、樽への直射日光を避けながら、西風による新鮮な夜風を利用し、空気を循環させることができるようになっている。

〇 製品特性
ビナグレ デ ヘレスの特性は、主にその原材料であるワインに起因する。生産地は非常に本格的な特徴を持つワインの産地でもあり、本産品にはその特徴(古金色からマホガニー色までの色と、ワインと木の香りが優勢でありつつもわずかにアルコールが香る)がはっきり見て取れる。さらに、当該地域の気候条件やセラーの建築的特徴により、セラー内に特定の微気候が生まれ、熟成の過程でビネガーの成分が凝縮され、余韻のある味わいになる。

〇 地理的地域と製品の品質若しくは特性との間の関連性
上述の地形的、土壌的、気候的特徴は、生産地のブドウに特有の特徴を与え、それが適性ワインに適した特徴、ひいてはビナグレ デ ヘレスの特異性の多くを形成している。使用されるブドウ品種(Palomino, Moscatel及びPedro Ximénez)から得られる適性ワインへの自然要因の影響は、決定的なものである。本産品の生産地のような暑い地域では、ブドウは非常に早く熟し、果汁は非常に甘く、比較的酸度が低くなる傾向にある。ブドウの生育が最も活発な時期には、生産地の総光量が特に多く、そのため果実はしっかりと成長し熟すことができる。さらに、当該生産地の特徴として、夏期が乾燥しており、成熟から収穫までの期間と一致すること、非常に暑く乾燥した東風が吹くことに特徴づけられる。その中で、大西洋から吹く東風はその独特の温度特性を活かし、夏には頻繁に夜風をもたらし、大量の露を発生させ、当該地域の強い日差しによる水不足から水分を補っている。albariza土壌の保水力により、下層土の水分が確保されるため、この点でも決定的な役割を果たしている。

また、古来より選抜されてきた酵母の培養による特性と、その地域の環境条件との関連性も非常に重要である。Marco de Jerezと呼ばれる土着のアルコール生産酵母によるワインのアルコールとポリアルコールの代謝は、ワインの主要成分の変化、すなわちグリセリン含有量の減少とアセトアルデヒド含有量及びエステル化生成物の増加をもたらす。次に、アセトアルデヒドはアセトインを生成し、より高いアルコール度数の下で本産品の特徴的な芳香を与えることとなる。多量のアルコールが存在することが、ビネガーを構成するエステル化合物 (主に酢酸エチル) を生成し、その特性をより複雑なものとし、酢化による初めの芳香のバランスを取る役割を果たすため、本産品の品質と個性にとって非常に重要である。

さらに、オーク樽での熟成とセラーの特殊な微気象条件により、ビネガーは熟成の過程で非常に特殊な特性を獲得する。使用される樽の種類は、ビネガーをゆっくり成長させるのに最適な微量酸素供給能力を有し、熟成中に徐々に成分を放出させることで、着色物質を安定させ、ポリマー基を形成し、琥珀色とマホガニー色の間の独特な色調や、バニラの香り、ホワイトコーヒーとtorrefactoタイプのローストコーヒーの香りを与える。

この地域の主要な熟成システムであるcriaderas y solerasシステムは、様々なヴィンテージの影響を和らげ、ビネガーの均質化を促す。最後に、ヘレス地域のセラーの建築構造は、微気象条件を維持するのに役立っており、ビネガーのゆっくりとした酸素供給を促進するだけでなく、樽を完璧な状態に保つことで、本産品の熟成を可能にしている。

7 法第29条第1項第2号ロの該当の有無等 
(1)商標権者の氏名又は名称  -
(2)登録商標  -
(3)指定商品又は指定役務  -
(4)商標登録の登録番号  -
(5)商標権の設定の登録の年月日  -
(6)専用使用権者の氏名又は名称  -
(7)商標権者等の承諾の年月日  -
8 公示の年月日  令和5年1月12日
9※ 意見書提出期間
(公示開始日から3か月間)
 令和5年4月12日まで
※縦覧及び意見書提出についてはこちら

お問合せ先

輸出・国際局知的財産課

担当者:地理的表示保護担当
代表:03-3502-8111(内線4285)
ダイヤルイン:03-6744-0234
FAX番号:03-3502-5301