第81回 コーデックス連絡協議会
資料・議事概要
消費者庁、厚生労働省及び農林水産省は、平成30年6月12日(火曜日)に、「第81回 コーデックス連絡協議会」を中央合同庁舎4号館において開催しました。主な質疑応答事項及び意見は以下のとおりです。資料(全体版)(PDF : 2,994KB) (分割版1)(PDF : 1,425KB) (分割版2)(PDF : 1,965KB)
概要(PDF : 254KB)
1.経緯
(1) 消費者庁、厚生労働省及び農林水産省は、コーデックス委員会の活動及び同委員会での我が国の活動状況を、消費者をはじめとする関係者に対して情報提供するとともに、検討議題に関する意見交換を行うためコーデックス連絡協議会を開催しています。
(2) 今回は、平成30年3月に開催された第12回食品汚染物質部会(CCCF)、第50回食品添加物部会(CCFA)、平成30年4月に開催された第50回残留農薬部会(CCPR)、第24回食品残留動物用医薬品部会(CCRVDF)、平成30年5月に開催された第39回分析・サンプリング法部会(CCMAS)の報告を行い、平成30年7月に開催される第41回総会(CAC)の主な検討議題の説明を行い、意見交換を行いました。
2.質疑応答及び意見交換の主な内容
(1) 第12回食品汚染物質部会(CCCF)
議題6「チョコレート及びカカオ由来製品中のカドミウムの最大基準値(ML)原案」について、調整ココアのMLの設定作業が中止になったのはMLを設定しなくても問題がないとの判断か、あるいはデータがなくてMLを設定できないからか質問がありました。これについて、各国にデータ提出を呼びかけたが総ココア固形分別のデータが限られていたこと、総乾燥ココア固形分含有率100%のココアパウダーのMLが設定されれば調整ココアの安全性も確保できること等から作業中止に合意した旨回答しました。
議題7「魚類中のメチル水銀の最大基準値及びサンプリングプラン原案」について、MLを補足する消費者へのアドバイスの対象が「妊娠適齢期の女性と子供」とされたが、日本では胎児をハイリスクグループとして「妊婦」を対象に摂食指導を行っているが、今後見直す予定はあるのか質問がありました。これについて、食品安全委員会の食品健康影響評価に基づいて現行の摂食指導を行っており、現時点では見直す予定はないが、今後も海外の管理措置や文献等の調査を継続し、科学的根拠に基づいて必要があれば対応を検討していく旨回答しました。
同じく議題7について、すべてのマグロ類のMLが1.2 mg/kgとなった経緯について質問がありました。これについて、日本は当初、水銀含有量はマグロの種類によって異なるため、水銀含有量の高い魚種のデータに基づいてMLを設定すべきとの立場から、1.7 mg/kgを主張したが、部会では高すぎるとして賛同が得られず、また、EUは原案の1.1 mg/kgより低いMLを主張したことから、妥協案として1.2 mg/kgで合意されたが、EU、ノルウェー、スイスはこの妥協案でも高すぎるとして留保した旨回答しました。
同じく議題7について、小児は大人と同様の水銀排出機能を持つとしているが、日本国内の小児の食べる魚種はマグロが多いと聞いたが、日本でMLを設定する際はコーデックスのMLと同等にするのではなく、より厳しいMLの設定が必要ではないかとのご意見をいただきました。
議題12「食品中に低濃度で意図せずに(inadvertently)存在する化学物質のリスクアナリシスに関するガイドライン原案」について、本ガイドラインが今後焦点をあてる「Threshold of Toxicological Concern: TTC」の訳は「毒性学的懸念の閾値」とされているが、意味がわかりにくいのでより適切な訳注をつけてほしい旨ご意見をいただきました。
議題15「穀類中のアフラトキシン及びステリグマトシスチン汚染に関する討議文書」について、コーデックスにおいて穀類及び穀類加工品に総アフラトキシンのMLは設定されていないのか質問がありました。これについて、MLは設定されていないが、「穀類のかび毒汚染の防止及び低減に関する実施規範(CXC 51-2003)」に沿って収穫後に適切に管理すれば、穀類からアフラトキシンは検出されないため、日本はMLの設定よりも本実施規範を着実に実施すべきと主張してきている旨回答しました。
同じく議題15について、MLの策定を急ぐことのデメリットについて質問がありました。これについて、日本では穀類は適切に管理されておりアフラトキシン汚染がないため実態調査をしておらず、分析しても検出されないが、穀類に高濃度のアフラトキシン汚染があることを報告している論文等では適切に管理されていない穀類を調査しているため、そのようなデータを用いてMLを設定すると必要以上に高いMLが設定される懸念がある旨回答しました。
同じく議題15について、アフラトキシンは輸入時の違反事例として最も多く、全量が廃棄又は積戻しされているようだが、輸出国に確実に積み戻されて適切に処理されているのかがわかるような管理体制を設けてほしい旨ご意見をいただきました。
同じく議題15について、飼料用穀物のアフラトキシン汚染に対する日本国内でのリスク管理について質問がありました。これについて、農林水産省が飼料安全法に基づいて飼料中のアフラトキシンの管理基準と指導基準を設けており、また、アフラトキシンに汚染された飼料を牛が摂取すると乳に移行することから、厚生労働省が乳中のアフラトキシンの基準値を設定している旨回答しました。
同じく議題15について、輸送段階でアフラトキシンが増えることもありうるが、輸出国あるいは輸入国のどちらのデータに基づいてMLを設定するのか質問がありました。これについて、CCCFでは基本的には主たる生産国のデータに基づいてMLを設定するが、生産国が途上国の場合にはデータが提出されないことが多く、実態としては先進国が提出した輸入品を含むデータが主に用いられている旨回答しました。また、輸送段階においても、実施規範(CXC 51-2003)に沿って適切に管理することにより、アフラトキシン汚染の防止・低減が可能となる旨回答しました。
近年、加盟国はGEMS/Foodにデータを提出するようになってきたのか質問がありました。これについて、CCCFでは、MLの設定に必要な実態調査のデータの提出を奨励し、実態調査の提出・蓄積を待ってMLの議論を行うスタンスであり、ML案に反対する場合にはその根拠となるデータ提出が強く求められる旨回答しました。
CCCFにおいて、MLをALARAの原則(食品中の汚染物質を“無理なく到達可能な範囲でできるだけ低くすべき(ALARA: As Low As Reasonably Achievable)”という考え方)に従い設定する際の違反率をいくらとするか決めているか質問がありました。これについて、CCCFとして具体的な違反率の水準は決めておらず、各議題の議論の中で決めていくことにしているが、5%を超えない範囲とする暗黙の合意があり、1~4%の中で落としどころを探してMLを決定している旨回答しました。
(2) 第50回食品添加物部会(CCFA)
議題4(b)「個別食品規格の食品添加物条項と食品添加物の一般規格(GSFA)の関連条項の整合」について、整合作業の結果、これまで使用できた食品添加物が使用できなくなるのか質問がありました。これについて、あくまでも整合性をとる作業であり、個別食品規格で使用が認められている食品添加物は、GSFAでも基本的には引き続き使用できるが、個別食品規格で使用を認めている食品添加物の中にはFAO/WHO合同食品添加物専門家会議(JECFA)が安全性を評価していない食品添加物が含まれる場合があるので、そのような場合は使用できなくなる旨回答しました。またソルビン酸ナトリウムについては、加盟国にJECFAが評価するためのデータ提供を求めていたが、加盟国からデータ提出ができない旨の発言があったことから、CCFAが個別食品規格から削除することに合意した旨回答しました。
議題5(a)「食品添加物に関する一般規格」について、食品分類01.1.2「その他の液状乳(プレーン)」における食品添加物条項において、乳化剤や安定剤としての機能を発揮するが増粘剤としての機能は発揮しない濃度を今後どのように設定するのか質問がありました。これについて、部会において複数の国から、乳化剤や安定剤としての使用であっても増粘剤の機能を持つ添加物を使用することで乳本来の性質が変わるとする強い懸念が示されており、今後電子作業部会において、まずは、使用している食品、食品中の添加物の最大濃度について情報提供していく必要がある旨回答しました。
同じく議題5(a)「食品添加物に関する一般規格」について、着色料及び甘味料の機能を持つ添加物はいつ議論されるのか質問がありました。これについて、現時点では「各国の規制に委ねる」とする注釈161についての議論が終わってからになる旨回答しました。
議題5(c)「硝酸塩(INS 251、252)及び亜硝酸塩(INS 249、250)に関する討議文書」について、子供の硝酸塩・亜硝酸塩の摂取量が多いことを懸念しているが、今後国内できめ細かく調査する予定はあるか質問がありました。これについて、食品添加物由来の硝酸塩・亜硝酸塩は2013年に行った生産量統計に基づく摂取量推計においてJECFAの推定する一日摂取許容量(ADI)を下回っていることを確認しており、また硝酸塩の主要な摂取源である野菜は通常の摂取量では健康への影響はないとされていることから、現在のところ、子供を対象にした調査の予定はない旨回答しました。
議題6 「食品添加物の国際番号システム(INS)の変更/追加に関する修正原案の提案」について、タマリンドシードガムはJECFAが「ADIを特定しない」と評価したが、今後日本国内において既存添加物から指定添加物に変更する予定はあるのか質問がありました。これについて、既存添加物を指定添加物にすることは予定しておらず、既存添加物のまま、指定添加物と同様の安全性確保が可能と考えている旨回答しました。委員より、既存添加物と指定添加物について、安全性が評価され国際規格が作成されたら指定添加物に変更する等のわかりやすい整理が必要ではないかとのご意見をいただきました。
同じく議題6について、ステビアは日本でも従来から使用されている食品添加物であり、国際規格と整合性をとっていく予定はあるのか質問がありました。これについて、ステビアを使用している事業者から今後要請があれば対応していきたい旨回答しました。
議題8「CCFAの将来戦略に関する討議文書」について、注釈161の代替となる注釈の文言を検討することの下地になるアイディアはあるのか質問がありました。これについて、着色料と甘味料の食品添加物条項の策定作業が進まないのは問題との認識は一致しており、議場で具体的なアイディアが提示されたわけではないが、問題を解決するため電子作業部会が設置されたこと、今後別の電子作業部会において、まずは着色料の使用に理解が得られやすいデコレーション・トッピングの食品分類から議論を始めることとしている旨回答しました。
JECFAに対し、策定されてから時間が経った規格の食品添加物の再評価を依頼するのは、JECFAの仕事量を増やすことにつながるのではないかとの質問がありました。これについて、2000年以前に評価された食品添加物は、毒性評価はされているが、摂取量推定がされていないものが多いため、安全性を適切に担保する観点で再評価が必要になる場合がある旨回答しました。
(3) 第50回残留農薬部会(CCPR)
議題6「食品又は飼料中の農薬最大残留基準値(MRL)案及び原案」について、日本でも使用量の多いアセタミプリドの最大残留基準値(MRL)案が取り下げられる理由について質問がありました。これについて、mustard greenの短期暴露評価を精緻化するための新たな作物残留試験データが提出されなかったため取り下げられた。また日本ではアセタミプリドの残留基準値について数年前に、ハチミツへの残留を考慮するとともに、その他の国際基準等を踏まえ残留基準値を改正している旨回答しました。
議題7「食品及び飼料のコーデックス分類の改訂案及び改訂原案」について、クラスC(飼料)に位置づけられる副産物とはどのようなものか質問がありました。これについて、クラスD(植物由来加工食品)のうち主に飼料に使用されるもの、例えば穀類を精白した際に生じるぬか、かんきつ類など果実のジュースの製造過程で生じる絞りかすなど、植物を原料として食品を製造・加工する過程で生じる副産物のうち、主に家畜用の飼料に使用される品目である旨回答しました。
同じく議題7について、上記のような品目がクラスDからクラスCに移動される場合、当該品目に適用されていたMRLも変更されるのか質問がありました。これについて、MRLは変更されないが、新たに分類されたグループのMRLが設定される場合は変更されることもある旨回答しました。
同じく議題7について、分類により一つ一つの作物にMRLを設定する必要性を避けることが可能になるのか質問がありました。これについて、そのとおりであり、グループMRLを設定することにより、コストがかかる等の問題で作物残留試験が実施できないマイナーな品目にもMRLを設定することが可能となり、またコスト削減にもなる旨回答しました。
議題11「その他の事項及び今後の作業」の「生物農薬(biopesticides)に関する討議文書(チリ提案)」について、新規提案文書を作成することに合意した経緯について質問がありました。これについて、日本としては、CCPRの任務は残留農薬の基準値設定であることや、生物農薬の評価は化学物質の評価とは異なるためFAO/WHO合同残留農薬専門家会議(JMPR)とは異なる専門性が必要であること、チリの主張する貿易上の問題が不明であることを主張したが、南米を中心に多くの国が農産物貿易を推進したい意向があるからか作業の必要性を強く主張したため、議論を開始すること自体には反対しなかったこと、また、今後電子作業部会に参加し、適切な方向で議論が進むよう意見していく旨回答しました。
(4) 第24回食品残留動物用医薬品部会(CCRVDF)
議題5「ゲンチアナバイオレットのリスク管理に関する勧告(RMR)案」について、魚の細菌感染の予防としてゲンチアナバイオレットの代替となる薬剤は何か質問がありました。これについて、次回の連絡協議会で回答することとしました。
議題6「ジルパテロール塩酸塩(牛の脂肪、腎臓、肝臓及び筋肉)のMRL 原案」について、ジルパテロールと同じβ作動薬であるラクトパミンとの違いについて質問がありました。これについて、ジルパテロールは牛、ラクトパミンは豚に対するβ作動薬である旨回答しました。
同じく議題6について、手続きマニュアルに沿ってMRLのステップを進めるべきであり、総会でステップ8で保留となっている牛ソマトトロピン(rbST)と同様、動物用医薬品のMRL設定が進まないのは問題ではないかとのご意見をいただきました。
薬剤耐性に関する国際的な取組として、動物用抗菌剤の使用削減対策が進められている中、CCRVDFの議論はこの対策とどのように関係するのか質問がありました。これについて、薬剤耐性は重要な問題であり、今次部会では薬剤耐性に関する特別部会(TFAMR)の議長から2017年12月に開催された第5回TFAMRの議論について情報提供が行われたが、一方でCCRVDFでは動物用医薬品のMRL設定を求める途上国が増えており、バランスをとっていくのが難しいところである旨回答しました。
消費者の健康を守る上では、基準値を設定しないより安全性を評価した上で基準値を設定する方がよいと考えるが、CCPRでの農薬MRLの設定作業に比べて、CCRVDFでの動物用医薬品MRLの設定作業は遅れていることを懸念している旨ご意見がありました。
(5) 第39回分析・サンプリング法部会(CCMAS)
議題6「測定の不確かさのガイドライン(CXG 54-2004)の改訂の提案」について、食品の輸入検疫の適合性評価の際に日本では測定の不確かさを考慮しているのか質問がありました。これについて、日本では食品について分析値が基準値を上回ったら不合格であり、測定の不確かさを考慮していないが、飼料では測定の不確かさを考慮することが検討されている。また、現状、各国によって、適合性評価における測定の不確かさの取扱の仕方は異なっており、国際合意されていない旨回答しました。委員より、不確かさの取扱いが各国の判断に委ねられる場合、国際貿易を進める上で、各国がそれぞれの合否判断を提示し、透明性を高めていく必要がある旨ご意見がありました。
同じく議題6について、暴露評価において測定の不確かさを考慮しているのか質問がありました。これについて、暴露評価は食品を食べる量と食品中に含まれる濃度によるが、通常、濃度の測定値の不確かさは考慮されていない旨回答しました。
(6) 第41回総会(CAC)
仮議題10「総会、執行委員会および部会の報告から提起された事項」について、糖類部会(CCS)の「分蜜せずに脱水したさとうきび汁の規格案」について、議長国がこれまでの議論を無視して新たな規格案を示していることは問題であり、ルールに則って作業を進めてほしい旨ご意見がありました。
仮議題11「電子的作業のみによる部会及びパイロットとしてのCommittee on Standards Advancement (CCSA) の設置」について、よいアイディアだが、議長をどのように決めるか等、具体的な進め方が不明確ではないかとの質問がありました。これについて、CCSAをどのように運営するかも含めて今後議論されることになる旨回答しました。
仮議題17「コーデックス信託基金(CTF2)に関するサイドイベントの報告」について、CTF2の対象国に小国だけではなくインドのような新興国まで含まれている点は問題ではないかとの質問がありました。これについて、CTF2は能力開発に関する事業を支援の対象にしており、各国の応募を精査して決定するが、CTF2に拠出している日本としても小国の能力開発に活用してほしいと考えている旨回答しました。
仮議題18「国際政府間組織(IGO)及び国際非政府組織(NGO)とのパネルディスカッションの報告」について、この報告はコーデックス全体の中でどのような位置づけとなるのか質問がありました。これについて、パネルディスカッションでは各IGO・NGOから短いプレゼンテーションが行われ、総会ではこの内容について報告があるだけであり、現段階では各部会へ報告されるものではない旨回答しました。
仮議題20「コーデックス部会の議長を指名する国の指定」について、国際標準化機構(ISO)では提案国が事務局を務め、議長を指名し、議論を有利に進めているが、コーデックスにおいて日本は議長国に立候補しないのか質問がありました。これについて、コーデックスではルール上では総会毎に各部会のホスト国を指名することになっているが、実際は同じ国が毎回指名を受けており、他の国がホスト国になりたくても、現在のホスト国が降りるまでできない。また部会のホスト国は議長を指名する権限があり、ホスト国以外が議長を務めることは難しいが、日本は各部会の電子作業部会の議長や共同議長を務め、作業に貢献している旨回答しました。
科学的助言機関へのデータ提出について、データがなくて評価できなかったとならないよう、提案国がデータの提出に責任をもつようにする仕組みがよいのではないかとのご意見をいただきました。
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