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農林水産省

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(2)農地・農業用水の確保と農地の有効利用の促進

(2007年の耕地面積は463万haに減少)

耕地面積は、1961年の609万haをピークに一貫して減少し、2008年の耕地面積はピーク時の7割の462万8千haとなっている(図2-58)。耕地のかい廃要因をみると、耕作放棄と宅地等への転換が大部分を占めており、2008年ではそれぞれ全体の41%、39%となっている(*1)。また、耕作放棄地面積は1985年以降増加し、2005年には38万6千haとなっている(*2)。
*1 農林水産省「耕地及び作付面積統計」 データ(エクセル:25KB)
*2 農林水産省「農林業センサス」 データ(エクセル:16KB)


(農用地区域から除外して転用された農地は、農地転用面積全体の15%程度)

農地のかい廃要因となる農地転用の面積は、近年減少傾向で推移している(図2-59)。その用途をみると、駐車場・資材置場、土石等採取用地、農林漁業用施設等の業務用地が全体の33%と最も多く、次いで住宅用地(31%)、商業・サービス等用地(11%)等となっている(2007年)(*3)。
また、農用地区域は、区域内の農地を原則的に転用禁止とすることによりその長期にわたる農業上の利用を確保する区域であるが、農地転用全体に占める農用地区域から除外して転用された農地の比率は、1990年代より下落しているものの、近年は15%程度で推移している。
*3 農林水産省「土地管理情報収集分析調査」 データ(エクセル:18KB)


(担い手に農地を集めるほか、面的にまとまった形で利用できるようにすることが重要)

耕地面積が減少し続けるなか、耕地利用率(耕地面積に対する作付延べ面積の割合)も長期的に低下傾向で推移しており、2007年は前年より0.4ポイント低下して92.6%となっている(*1)。
一方、担い手が経営する農地面積は、貸借を中心に利用集積が進められたことから年々増加し、1997年度の113万haから2007年度の210万haへと10年間でほぼ倍増しているが、依然として全耕地面積の45%にとどまっている(表2-4)。
また、一定の規模があるにもかかわらず農地が分散している事例もみられる。土地利用型農業では、農地が分散している場合、ほ場間の移動時間の増加、機械の効率的な利用が困難といった問題から、規模拡大のメリットが十分に活かせず、拡大できる規模にも限界が生じる。
このため、担い手への農地の集積に加え、農地が面的にまとまった形で利用できるようにすることが重要である。
*1 農林水産省「耕地及び作付面積統計」


(多様な主体による農業参入は増加傾向)

耕作放棄地の利用の増進を図るため、構造改革特区制度を活用し、農業生産法人(*2)以外の一般企業等が市町村から農地を借り入れて農業参入できるようにする規制緩和措置(いわゆるリース特区)が2003年度に導入され、2005年度には全国展開された。2010年度末までに参入法人数を500法人とする目標が設定されており、2008年9月時点では320法人が950haの農地で農業を行っている(*3)(図2-60)。これらの法人は、野菜、米麦等の生産を行っているが、法人の6割以上が参入後3年以内であること等から、売上高なしとする法人は2割、経営収支が赤字となっている法人は6割となっている(*4)。
*2 [用語の解説]を参照
*3 食料・農業・農村政策推進本部「21世紀新農政2006」(2006年4月決定)による目標
*4 農業参入法人連絡協議会、全国農業会議所「農外から農業に参入した法人に対するアンケート調査」(2008年8月公表)。調査時点の参入270法人のうち、回答のあった82法人による回答


(農地を確保し、有効利用を進めていくため、農地制度を見直し)

農業生産や農業経営が展開される基礎的な資源としての農地は、優良な状態で確保し、その有効利用が図られるようにし、意欲のある者に集まることが極めて重要である。他方、我が国の農地の現状は、農業従事者の減少、高齢化等による耕作放棄地の増加や、分散錯圃(さくほ)(*1)等により農地を集めるのが容易ではないこと、転用期待等により農地価格が農業生産による収益に見合う水準を上回る傾向があること等、制度と実態の両面で様々な問題点が指摘されている。
このような認識のもと、農林水産省は2008年12月に「農地改革プラン」を策定した。同プランでは、1.農地面積の減少を抑制すること等により農地を確保していくこと、2.農地制度の基本を「所有」から「利用」に再構築することを大きな柱としており、農地の確保、農地の面的集積の促進、農地の権利移動規制の見直し等の具体案が明らかにされている(図2-61)。
また、貸したい人は貸しやすく、借りたい人は借りやすい環境を整え、意欲のある者に農地が集まることにより、国内の食料生産の増大を通じた国民に対する食料の安定供給を確保することを目指している。このため、農地法等の一部を改正する法律案が第171回通常国会に提出された。
この農地改革プランに沿った改革を実現するため、相続税の納税猶予制度等についても見直しが行われた。
また、この農地改革プランに沿った改革を円滑に推進し、実現するための条件整備として、農地情報の共有化と耕作放棄地の計画的な解消が進められている。
*1 農業者が所有する農地が分散しており、また、他者の農地と混在していること

図2-61 農地制度の見直しの概要

(農地情報の共有化を推進)

地図情報を表示したパソコン画面
地図情報を表示したパソコン画面
農地情報の共有化を図るため、2008年度から、市町村段階の地域担い手協議会で農地情報図(農地情報データベース)の整備が開始されている。この取組により、農地の所在や所有者、耕作者、利用状況が、地図上において視覚的・経年的に把握できるよう、関係者共通のデータベースとして電子情報化される。このデータベースは、農地の利用調整といった農地関係の施策以外に、行政や農業関係団体等が行う各般の対策の推進にも活用できる可能性がある。
新潟県十日町市(とおかまちし)では、地域が目指す環境保全型農業の推進、担い手への農地集積、農地情報の管理を目的に、市や農協等の関係者が農地に関する情報を「産地づくり支援システム」として共有している。共有情報は、米の生産調整での転作ほ場や中山間地域等直接支払交付金の対象農用地の現地確認等に活用されており、市の業務の省力化等に効果を発揮している。また、農協では良品質米の生産を支援する営農指導への利活用が計画されている。
また、新規参入等に必要な貸出農地、賃借料等の情報に全国どこからでも、誰でもアクセスできるシステムを2009年度から本格稼働することとされている。
 

(耕作放棄地の発生防止と解消を図る必要)

耕作放棄地の4割は、土地持ち非農家(*1)が所有している(*2)。また、農業地域類型別では中間農業地域に最も多く、耕地面積に対する割合では山間農業地域が最も高い。耕作放棄地の発生原因は「高齢化等により労働力が不足」、「生産性が低い」、「地域に農地の引受け手がいない」等様々である(*3)。耕作放棄地の発生は、農業生産にとって最も重要な資源である農地の確保・有効利用による国内農業の食料供給力(食料自給力)確保に支障を来すほか、農業の多面的機能の低下を招くこと等から、その発生防止と解消を図ることが喫緊の課題となっている。
*1 農家以外で耕地及び耕作放棄地を5a以上所有している世帯
*2 農林水産省「農林業センサス」(2005年) データ(エクセル:22KB)
*3 (財)農政調査委員会「農業振興地域・農地制度等の実態把握及び効果分析に関する調査」(2004年2月公表)、当時の全3,170市町村を対象として実施(回収率67.4%)

(耕作放棄地の解消に向けた取組が進展)

耕作放棄地の解消に向けて、2008年度には以前耕地であったもので現状では耕作できない土地について、その位置と荒廃の程度を把握するための現地調査が市町村・農業委員会により行われた。1,777市町村の調査結果から、草刈り等を行うことにより耕作可能な土地(緑)は8万2千ha、草刈り等では耕作できないが、基盤整備を実施して農業利用すべき土地(黄)は6万7千ha、合計で14万9千haと推計された。このうち農用地区域を中心に概ね10万haの再生・利用を目指すこととされている。
耕作放棄地の解消には多くの課題・困難があるが、取組の重要なポイントは、「引き受け手をどうするか」、「土地条件はどうか」、「作物はどうするか(作物選定・販路確保)」である。

表2-5 耕作放棄地全体調査の概要(推計値)

(農地の有効利用のためには基盤整備が不可欠)

農業の生産性の向上と食料供給力の確保を図るためには、良好な営農条件を備えた農地や農業用水等の確保が重要である。ほ場の大区画化や農道整備等の生産基盤の整備率が高いほど担い手への農地利用集積の割合が高い傾向にある(図2-62)。また、ほ場整備事業完了地区への調査によると、事業実施前と実施後では、稲作の生産費が3分の2に減少し、担い手の経営規模が2.1倍に拡大している(*1)。
また、基盤整備は耕作放棄の抑制にも有効であり、ほ場整備実施後10年経過した地区では、耕作放棄の発生が0.2%と、著しく低くなっている。水田の場合、基盤整備の実施により排水改良され、麦や大豆等畑作物の作付けが可能となることから、耕地利用率は向上している(図2-63)。
*1 農林水産省調べ。2003 ~ 2005年度にほ場整備事業を完了した全国457地区への聞き取り調査

(農業用水路の延長は地球10周分)

我が国の農業用水の使用量は549億m3/年(取水量ベース)であり、我が国全体の水使用量の3分の2を占める(*2)。水源からほ場まで農業用水を送るための水路は、4万7千kmの基幹的な水路も含め、その総延長は地球10周分に相当する40万kmにもなり、7千か所のダム等の基幹水利施設、21万か所のため池等を合わせ、農業用水の使用を支えている。
これらの農業水利施設のストック(*3)の多くは戦後整備されたものであり、今後更新時期を迎える施設が大幅に増加している(図2-64)。
*2 国土交通省「平成20年度日本の水資源」(2008年8月公表)
*3 これまでに長い年月をかけて整備されてきた施設等


(ストックマネジメントによる安定的な用水供給機能等の確保が重要)

このように、多くの農業水利施設が更新時期を迎えるなか、施設が破損するなど機能に支障が生じた施設が年々増加している。今後、人口減少や高齢化社会の進展に伴う社会資本投資余力の減少が想定されることから、新たな施設の造成から、既存施設の長寿命化とライフサイクルコスト(建設・維持管理等にかかるすべての費用)の低減が必要となっている。そこで、施設機能診断に基づき、補修、必要な部分からの更新整備といった効率的・効果的な対策を選択実施する「ストックマネジメント(*1)」の取組が進められている(図2-65)。
*1 施設の効率的な機能保全のため、定期的な機能診断に基づき、性能低下の要因と状況、機能の発揮状況に応じた対策を比較検討し、適時・的確に対応を実施するとともに、施設情報の蓄積を図り、継続的に施設保全対策に活かす手法

図2-65 基幹的農業水利施設のストックマネジメントの仕組み

(畑作振興には安定的水源の確保が不可欠)

畑地かんがいは作物の生育に必要な水量を補うだけでなく、防除や施肥、防霜等、作物の品質向上に不可欠な役割を持っているが、田では8割以上で用水施設の整備がなされている一方、畑地かんがい施設の整備率は2割にとどまっている。
外食・加工食品産業等のニーズに対応し、国産野菜等の生産拡大を図ることは、国内農業の食料供給力(食料自給力)強化のために重要であり、畑作物の安定的な生産のためには安定的にかんがい用水を確保することが不可欠である。
事例:畑地かんがいの整備により野菜、果樹の施設栽培が拡大

地下ダム水位観測施設
地下ダム水位観測施設
沖縄県宮古島市
沖縄県宮古島市(みやこじまし)にある宮古島(みやこじま)と来間島(くりまじま)は、沖縄県の耕地面積の3割を占める大規模畑作地域であるが、地質が琉球石灰岩で通水性がよく、降雨があっても地下水として海に流れ出ていたため、河川やため池等の水源がなく、農業生産は、そのほとんどがさとうきび、葉たばこで占められていた。そこで、地中に止水壁を作って地下水を貯める地下ダム2か所の築造と、揚水機、用水路等のかんがい施設を整備する国営かんがい排水事業等が実施され、2000年度に施設が完成した。
畑地かんがいの導入により、野菜や果樹の施設栽培が可能となり、これらの作付面積が大幅に増加した。2007年にはにがうり、とうがん、かぼちゃの3品目が沖縄県の拠点産地に認定されている。また、さとうきびは、かんがいにより単位面積当たりの収量が増加している。さらに、地区内の販売農家1戸当たりの生産農業所得は事業実施前と比べ、24%増加している。
2009年度からはさとうきびと牧草の通年かんがいや、施設野菜・果樹の作付けの拡大への対応と隣接する伊良部島(いらぶじま)のかんがい用水の確保を目的に、新たな地下ダムの築造が計画されており、より安定的な用水確保による畑作振興が期待される。
 

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