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農林水産省

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(3)総合的な食料安全保障の確立 ア 生産資材等生産面での不安要因への対応


食料安全保障をめぐっては、既にみたような食料の需給に関する中長期的な不安要因に加え、生産面、流通・消費面の各段階においても様々なリスクがあり、総合的な食料安全保障を確立するためには、国内生産の増大を基本とした食料自給率の向上のほかにも、克服していくべき様々な課題が存在します。


(肥料原料の安定供給の確保)

食料を生産するに当たっては、肥料、農薬等の農業生産資材を安定して調達することが重要となりますが、これらのうち化学肥料について、我が国は原料のほぼすべてを輸入に依存しています(尿素(*1)は需要量の90%程度が輸入、りん鉱石(*2)は100%が輸入、塩化加里(*3)はほぼ100%が輸入)(図1-29)。近年の世界的な肥料需要の増大を背景として、平成19(2007)~平成20年(2008年)にかけて一時的に肥料原料の需給がひっ迫し、肥料原料の価格が高騰する事態が生じたところです(図1-30)。将来的には、世界の人口の増加等により、さらなる肥料需要の拡大が見込まれており、化学肥料の安定供給への影響が懸念されています。


*1 肥料の3要素(窒素、りん酸、加里)の1つである窒素成分を供給する主な窒素質肥料。窒素はたんぱく質、葉緑素、酵素、核酸等を構成し、植物体の形成・生命維持に不可欠な成分
*2 りん酸質肥料の主な原料。りん酸はDNAや多くのたんぱく質等を構成し、植物体内のエネルギー移動にも関与する成分
*3 加里質肥料の主な原料。加里は光合成、炭水化物の移動、たんぱく質の合成等に関与する成分

将来にわたって国民に安全な食料を安定的に供給するとともに、我が国農業の持続的な発展を図っていくためには、資源の有効活用と肥料の安定確保の両面から、総合的な対策を講じることが重要です。

このため、農業現場における取組として、(1)土壌診断に基づく施肥設計の見直し、効率的施肥技術の導入等による適正施肥の徹底、(2)耕畜連携や食品リサイクル等を通じた国内の有機性資源の循環利用の促進等を図っているところです。加えて、肥料の安定供給を図るうえでは、海外の肥料原料の安定確保が重要となることから、国際市況や需給に関する情報の収集、新たな輸入相手国の探索等の取組を推進する予定です(表1-3)。


表1-3 総合的な肥料確保に向けた対応策

(植物防疫や動物検疫等による病気、害虫の侵入、まん延防止)

植物防疫や動物検疫を的確に実施し、農作物・家畜の病気、害虫の国内への侵入やまん延防止を徹底することも重要です。

植物関係では、輸入農産物の増加に伴い、我が国への病害虫侵入リスクは高まっており、世界貿易機関(WTO(*1))においては、「衛生植物検疫措置の適用に関する協定」(SPS協定)により、加盟国が科学的な根拠や国際基準に基づいた様々な措置をとることを認めています。過去、世界では植物病害虫の侵入被害により農業生産に壊滅的な被害が生じた例もあります。このため、我が国でも、検疫対象とする病害虫の科学的なリスク評価を行い、国内の移動規制や緊急防除を実施するなど、国際基準に沿って、病害虫のリスクに応じた植物検疫制度の充実強化を図っています。また、国際植物防疫条約(IPPC)による国際基準の策定過程にも、専門家を派遣するなど積極的にかかわっています。

鶏等の家きんの高病原性鳥インフルエンザ(*2)は、平成22年(2010年)2月24日現在、59の国と地域で発生が確認されており、これらの国と地域からの家きん肉等に対しては我が国への輸入の一時停止措置を講じています。我が国では、平成21年(2009年)2月にうずらにおいて弱毒型の高病原性鳥インフルエンザが発生しましたが、迅速なまん延防止対策を実施し、7月には国際獣疫事務局(OIE)の規定に基づいて清浄国に復帰しています(*3)。また、ヒトの患者の発生は、世界保健機関(WHO)の発表によると、平成15(2003)~平成22年(2010年)5月6日までに15か国で498人の感染者、12か国で294人の死亡者が確認されています。


*1 、2 [用語の解説]を参照
*3 国際獣疫事務局の規定においては、殺処分や消毒等の防疫措置完了後、当該地域における本病の清浄性を継続して確認し、3か月間、新たな発生がなければ、清浄国と認められることとなっています。

海外では、家畜の生産性に影響を与える口蹄疫(こうていえき)(*1)や豚(とん)コレラといった家畜の伝染性疾病が発生しており、輸入品による侵入を防ぐため、海外での発生状況の情報収集、発生国からの輸入禁止措置、空海港における靴底消毒等が行われています。

また、国内の家畜の伝染性疾病に対しては、従来から国や都道府県等が検査や発生時のまん延防止措置、自衛防疫の指導等を実施しており、広く家畜の飼養衛生管理基準に基づく飼養管理が推進されています。さらに、高度な衛生管理手法として、農場段階で危害分析・重要管理点(HACCP(ハサップ))(*2)の考え方を活用した衛生管理の推進により、衛生管理の充実・強化が図られています。

国内では、平成22年(2010年)4月20日、平成12年(2000年)以来、10年ぶりに口蹄疫の発生が宮崎県で確認され、政府は同日直ちに、農林水産大臣を本部長とする口蹄疫防疫対策本部を設置しました(口蹄疫は5月28日現在で224例(牛22,547頭、豚132,619頭、山羊8頭、羊8頭)の発生が確認されています。)。まん延防止対策として、発生確認後、直ちに発生農場の家畜の殺処分を実施するとともに、発生確認農家を中心に半径10km以内を、生きた牛・豚等の家畜やその死体等の移動を禁止する区域(移動制限区域)にし、また同10~20km以内を、生きた牛・豚等の家畜を区域外へ搬出させることを禁止する区域(搬出制限区域)にしました。また、移動制限区域内では、農場における消毒の徹底、幹線道路への消毒剤の散布、飼料運搬車の消毒の徹底等を実施しています。

5月17日には、本部長を内閣総理大臣とする政府口蹄疫対策本部及び農林水産副大臣を本部長とする現地対策本部を設置し、地元の要望等を十分受け止めて国との連絡調整を迅速・的確に行うこととしました。

5月19日には、新たな防疫対策等として移動制限区域内のすべての牛・豚等を対象に殺処分を前提としたワクチン接種を実施すること(対象は牛45,600頭、豚79,600頭。(5月22日~5月28日の間にほぼ終了))とし、接種した家畜については早期処分のための殺処分奨励金、経営再開支援金を交付することを決定しています。

また、拠出制限区域内では出荷適正前であってもと畜を進め食肉として早期出荷し、一定期間は家畜を飼養せず、緩衝地帯を設けることとし、早期出荷に伴う価値の低減分、経営再開支援金を交付することとしています。

この他、殺処分に対する手当金の交付を概算で支払うことにより、収入の途絶えた農家を支援すること等もあわせて発表しました。

さらに、5月28日には、「口蹄疫対策特別措置法」が成立しました。この法律では、(1)一般車両等の消毒義務、(2)患畜・疑似患畜以外の家畜の予防的処分、(3)死体の焼却又は埋却の支援、(4)無利子融資など家畜の生産者等の経営再建等のための措置などが規定されています。政府としては、口蹄疫のまん延防止と生産者等の経営及び生活再建等に、なお一層の努力をしていくこととしています(*3)。


*1 、2 [用語の解説]を参照
*3 平成22年(2010年)5月28日現在

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