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農林水産省

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(2)食生活上の課題と食育の推進 イ 食育の推進状況

(食育推進計画の策定市町村は現状4割程度)

食に関する知識や食を選択する力を身に付け、健全な食生活を実践できる人間を育てる取組として、「食育」はますます重要となっています。

食育の推進に当たっては、「食育基本法」のもと、それぞれの地域の実情に合った食育推進計画を策定し、関係者が一体となって取り組む必要がありますが、この計画を策定しているのは全1,750市町村のうち653と4割程度になっています(表2-5)。食育推進基本計画においては、平成22年度(2010年度)までに食育推進計画の策定市町村割合を50%以上とする目標を定めていますが、その達成に向けて、推進マニュアル「地域の特性を生かした市町村の計画づくりのすすめ」等の情報提供を行うことにより、計画策定を一層進めることが求められています。



(食事バランスガイドのさらなる活用が重要)

一方で、食育に対する国民の認知度・関心度は年々高まっており、平成21年(2009年)には既に7割にまで達しています(*1)。しかし、望ましい栄養バランスに向けた具体的な行動として実践するための「食事バランスガイド(*2)」を参考にして食生活を送っている人の割合は、年々ふえているものの、平成20年(2008年)時点で18%にとどまっているなど、まだ低いのが現状です(*3)。このため、全国各地で、食事バランスガイドの活用促進に向けて、学生食堂や社員食堂等の場における取組、あるいは様々な年齢層に合わせた取組等が進められています。


*1 内閣府「食育の現状と意識に関する調査」(平成22年(2010年)3月公表)、全国20歳以上の者5千人を対象に実施(回収率58.7%)。認知度は「言葉も意味も知っていた」と「言葉は知っていたが意味は知らなかった」の合計、関心度は「関心がある」と「どちらかといえば関心がある」の合計 データ(エクセル:34KB)
*2 [用語の解説]を参照
*3 (株)ジェイアール東日本企画「平成20年度『食事バランスガイド』認知及び参考度に関する全国調査郵送モニター調査」(平成21年(2009年)2月調査)、東京圏・近畿圏及び地方圏に居住する満20歳以上70歳未満の男女2,441人を対象として実施(回収率は95.4%) データ(エクセル:32KB)

事例:様々な主体による食育の取組
(1)大学における食事バランスガイド活用の取組
食育館
食育館
福岡県福岡市(ふくおかし)

福岡県福岡市(ふくおかし)の中村学園大学では、学生等が食事の自己管理能力を養えるよう、食事バランスガイドに基づいたメニューを取り入れた食堂「食育館」を構内に設けています。食育館では、毎日の食事をとおして、健康の維持・増進のために「何を」「どれだけ」「どのように組み合わせて」食べたら良いかという「選食」の力、食に対する感謝、食や農業に関する問題を理解する力、環境問題を認識する力を身に付けることを目的としており、料理には旬の食材や地元産の食材を利用するように努めています。学生からの評判も良く、1日平均700人、多い時には1千人以上が食育館を利用しています。

(2)農業高校における食育活動の取組
くまべんの日
くまべんの日
熊本県熊本市(くまもとし)

熊本県熊本市(くまもとし)の熊本農業高等学校では、「農業高校生だからこそ、食べ物に対する感謝の気持ち、生産している方々に対する感謝の気持ち、そしていつも食事をつくってくれているお家の人への感謝の気持ちを一層大切にしなければいけない。『農』だけでなく、『食』についても当事者となって自分を磨こう」という思いから、生徒自らが、おにぎりや弁当づくりを通じ、お米の消費拡大や地産地消を実践する「くまおに(熊農おにぎり)の日」、「くまべん(熊農弁当)の日」を設け、全校で取り組んでいます。

また、熊本の食文化を未来につなげていくため、水前寺菜、熊本赤なす等地元に伝わる「ひご野菜」を栽培し、農家、行政・企業とも連携しながら、近隣小中学校の給食に提供したり、子どもと一緒に収穫、調理体験を行う交流会を実施するなど、農業高校を「農」と「食」を結ぶ拠点として位置付けた取組を展開しています。

(3)地元産大豆を給食に活用する取組
プロジェクトのメンバー
プロジェクトのメンバー
東京都日野市(ひのし)

東京都日野市(ひのし)では、平成15年(2003年)、「安心できる大豆を学校給食で使いたい」という学校栄養士の提案がきっかけで「日野産大豆プロジェクト」が始まりました。現在、農家、小中学校の調理員・栄養士、消費者運動連絡会、学生等、70人程度の地元ボランティアが栽培に参加し、生産量は年間1tまで拡大しています。収穫された大豆は地元の豆腐店の協力で豆腐に加工され、市内全小中学校の給食に供給されています。また、小学校の学童農園での大豆栽培をはじめ、児童が自ら育てた大豆を使った給食や豆腐づくり体験等の取組も行われています。

(4)高齢者等のより良い食生活の実現に向けた取組

高齢の方や障がいをもつ方がふえ続けています。人間誰しも加齢に伴い感覚や運動機能の低下は避けがたいものがありますし、障がいをもつ方も日常生活にハンディを負っています。しかし、これらの方々も元気に自立し、社会へ参加・貢献できることを願っています。特に、生きるための基本となる食生活を自立して営むことは大切です。

公益財団法人すこやか食生活協会(昭和59年(1984年)に任意団体からスタート)は、このようなハンディを抱えがちな人々の食生活の改善に貢献するという理念のもと、(1)食生活に関する知識・情報を、録音テープ・CD、ウェブサイト(音声機能付)、大活字・点字の図書等により高齢者・障がい者に提供する、(2)高齢者・障がい者にとって安全で使い勝手の良いバリアフリーの調理器具や食品の容器・包装を紹介するガイドブックを提供するなどによりその普及を推進する、(3)高齢者・障がい者等が「食事バランスガイド」を活用した健全な食生活を営めるよう、学習会を開催したり、高齢者向けの解説書や視覚障がい者向けのCDを提供するなどの取組を進めています。同協会のこのような取組が、高齢の方あるいは障がいをもつ方々に幅広く知られ、より良い食生活の実現を通じた自立等につながっていくことが期待されます。


(地産地消の取組が徐々に進展)

地産地消は、地域で生産された農産物を地域で消費することによって、生産者と消費者を結び付けるとともに、消費者の食や農業への理解促進にもつながるものです。また、食料自給率の向上や地域農業の活性化につながるだけでなく、輸送エネルギーコストの削減等、環境面にも資するものであり、全国各地で様々な取組が推進されています。

学校給食においても、「学校給食法」に基づいて、地域の産物の積極的利用が位置付けられています。しかし、学校給食における地場産物の活用率(食材数ベース)は、前年度の23.3%から平成20年度(2008年度)は23.4%と、ほぼ横ばいにとどまっています(図2-36)。これを都道府県別にみると、平成22年度(2010年度)までの30%以上の目標を達成しているのは13道県となっている一方、特に東京都、大阪府、神奈川県、福岡県等の都市部で20%未満と低いなど、各都道府県の間でも差がみられています。このため、各地域の実情に応じ、生産・流通関係者と学校・教育委員会との連携の確立や、食材の必要量を安定的に確保するための体制づくり等が必要です。なお、米飯学校給食は、平成20年度(2008年度)の週当たりの実施回数が全国平均で3.1回と、前年度の3.0回から増加しており、着実に定着しています(*1)。

また、農産物直売所は生産者の「顔」がみえる取組として近年利用者が増加しています。さらに、生産者が都市部の消費者へ定期的に直接販売を行う新たな試み等も行われており、今後このような取組がさらに推進されることが望まれます。


*1 文部科学省「米飯給食実施状況調査」(平成20年度(2008年度))


事例:県全体の地産地消を促進するための取組
福井県の地産地消率(重量ベース)(推計)
福井県
野菜等の集荷
野菜等の集荷

福井県は、地産地消を強力に進める方策の手始めとして、平成21年度(2009年度)に、県全体の地産地消率の調査を行いました。全県的に地産地消率を把握する取組は全国でも初めての試みであり、全世帯の0.5%(1,400世帯)を対象に夏・秋・冬の3シーズンでの消費実態を訪問調査したほか、すべての農協、流通・加工業者、飲食店等(6,500事業者)を対象に県内産農林水産物の使用量を調査しました。この調査に基づく推計によると、消費・地産地消率(全消費のうち県内産品の占める割合)は54%、生産・地産地消率(生産量のうち県内に仕向けられている割合)は71%という結果になっています(図)。また、調査を進めていくなかで、非農家世帯の3割が家庭菜園を行っている、知人からの「おすそ分け」が多いという実態が明らかになり、自家消費と「おすそ分け」の量を合計すると食料消費量(重量ベース)の4分の1にも上ることがわかりました。福井県では、今後、このような市場流通や統計数値に表れていない要素を加えた地産地消の実態を示す指標を広く発信するとともに、施策に反映していくこととしています。

他方、この調査と並行し、中山間地域等の高齢者等が自宅で消費しきれず、運搬・出荷もできずに畑で埋もれている野菜等を集荷して、農産物直売所等に出荷する取組を支援する事業を始めています。初年度は7か所、3年間で21か所で取り組む予定としていますが、集荷をする人を雇う経費は県が期限を設けて全額負担し、集荷に必要な車と保冷庫の導入費も補助しています。初年度の取組では、農家からは「これまで輸送手段がなかったのでありがたい」、農産物直売所からも「品揃えがふえた」と喜ばれています。

 

コラム:地域ごとの特色ある食文化

地域の食材を用いて創意工夫された料理が、それぞれの風土や歴史のなかで受け継がれて郷土料理となり、全国各地で豊かな食文化が育まれてきました。

農林水産省では、全国の郷土料理を広く国民に紹介することにより、農山漁村にある身近な料理を見直し、関心を高めてもらうため、平成19年(2007年)12月に国民の意見を参考にしつつ、選定委員により、全都道府県の郷土料理のなかから「郷土料理百選」を選定しました。

我が国の食料自給率が低下するなかで、これらの郷土料理についても、輸入食材を使ったものが多くなってきましたが、主に地域の農産物を使った郷土料理を百選のなかからいくつか紹介すると、(1)うるち米を潰して棒に巻き付けて焼いたものを比内地鶏等と煮込んだ「きりたんぽ鍋」(秋田県)、(2)えだまめをすり潰しておもちにからめた「ずんだもち」(宮城県)、(3)卵焼き、ほうれん草、桜でんぶ等で絵柄をつくる「太巻き寿司」(千葉県)、(4)京野菜を使った千枚漬けやしば漬け等の「京漬物」(京都府)、(5)れんこんや春菊等と近海の魚を何層にも重ねた「岩国ずし」(山口県)、(6)れんこんに白みそ、からし等を詰めて油で揚げた「からしれんこん」(熊本県)、(7)豆腐、きゅうり等を具としたみそ汁をごはんにかけて食べる「冷や汁」(宮崎県)、(8)にがうり、卵、豚肉、豆腐等を炒めた「ゴーヤーチャンプル」(沖縄県)等があります。

今後とも各地の郷土料理が見直され、受け継がれるとともに、地域農産物の需要が拡大していくことが期待されます。


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