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農林水産省

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(3)食の安全と消費者の信頼の確保 イ 農場から食卓にわたる取組

(農場から食卓にわたって安全性を向上させる取組が重要)

農場から食卓にわたって安全性を向上させるためには、(1)農業生産段階においては、農業生産活動を行ううえで必要な点検項目を、関係法令等(*1)に則して定め、これに沿って各工程を正確に実施、記録、点検・評価し、持続的に改善を行う農業生産工程管理(GAP(ギャップ))(*2)、(2)食品加工・流通段階においては、原料の受入れから製造・出荷までの過程で危害防止につながる特に重要な工程を常時監視・記録することによって製品の安全性を確保する危害分析・重要管理点(HACCP(ハサップ))(*3)手法の導入が有効です(図2-39)。


*1 関係法令等とは、例えば、農薬の使用においては農薬取締法等、麦類のかび毒汚染低減対策については「麦類のデオキシニバレノール・ニバレノール汚染低減のための指針」等、法令や政府の指針、国際機関が定める基準及び科学的知見等を指します。
*2 、3 [用語の解説]を参照

図2-39 フードチェーンにおける取組の概要

また、食品の安全性を向上させるものではありませんが、食品事故発生時に迅速な回収、発生箇所の特定、安全な流通ルートを確保するために、トレーサビリティ(*1)を確立することが重要です。そのためには、個々の事業者がそれぞれ、食品の入荷や出荷の記録を作成・保存する取組が必要です。


*1 コーデックス委員会(平成16年(2004年))によれば、「生産、加工及び流通の特定の一つまたは複数の段階を通じて、食品の移動を把握できること」と定義されています。

(農業生産工程管理(GAP)の推進には共通基盤づくりが課題)

GAPについては、平成23年度(2011年度)までに2千産地においてその導入を目指す目標を掲げ、積極的に推進しています。その取組は着実に拡大しており、平成20年度(2008年度)末時点では1,572産地(調査対象産地全体の35%)においてGAPが実施されています(図2-40)。

一方で、農業者・産地、農業者団体、地方公共団体及び民間団体等の様々な主体が、栽培品目、気候、取引先等、そのおかれた実情に合わせ、それぞれ独自にGAPの導入を推進してきたことから、取組内容は多岐にわたるものとなっています(*2)(図2-41)。

このため、取引先により異なる内容の実践を求められる場合もあるなど、農業者・産地の混乱と負担が懸念される状況となっており、取組内容の共通基盤を整理することが課題となっています。

他方、GAPの推進は、科学的知見に基づく農産物の安全性の向上のための取組を生産者が確実に実施できるようにすること、環境保全や労働安全のように幅広い分野を対象として取り組むこと、消費者や実需者のニーズにこたえること等の観点から、取組内容の高度化も課題となっています。

このようなことを踏まえ、平成22年度(2010年度)に、高度な取組内容を含むGAPの共通基盤としてガイドラインを提示・公表し、普及することとされています。


*2 農林水産省調べ データ(エクセル:33KB)

なお、農畜産事業者のGAPの認知度(「内容を詳しく知っている」、「内容をある程度知っている」、「名前までは聞いたことがあるが内容までは知らない」とする者の全体に対する割合)をみると、農業で6割、畜産業で5割となっています(図2-42)。今後のGAPの普及に当たっては、農業者をはじめ、実需者、消費者にGAPの取組内容を広く認知してもらうことも有効であると考えられます。



(危害分析・重要管理点(HACCP)手法の導入には中小事業者も取り組みやすい方策が必要)

HACCP手法については、平成21年(2009年)2月現在、導入済みあるいは導入途中の食品製造業者は16.1%にとどまっています(*1)。売上規模別の導入率をみると、売上金額規模が大きい企業ほど高く、特に50億円以上の規模になると5割を超えています。

このHACCP手法の導入時における問題点をみると、施設整備の多額の初期投資、責任者・指導者の人材不足、記録管理等人的コストの高さをあげる企業が多くなっています(図2-43)。このため、このような事業者でも取り組みやすい低コストで導入できるHACCP手法等の構築とその普及に取り組むとともに、直ちに導入が困難な零細規模の事業者に対しては、HACCP手法の前提となる一般的衛生管理(*2)の徹底を推進することが重要と考えられます。


*1 (株)三菱総合研究所「食品の高度衛生管理手法に関する実態調査について」(厚生労働省委託調査、平成21年(2009年)3月公表)、食品製造・加工業の数値 データ(エクセル:33KB)
*2 HACCP手法導入の前提となる、施設・設備や機械・器具の衛生管理、食品の一般的取扱い、作業員の衛生管理等、作業環境を衛生的に確保するための管理事項


コラム:HACCP 手法とは

HACCP手法は、1960年代の米国宇宙開発計画(アポロ計画)の一環として、宇宙食の衛生管理(宇宙飛行士の食中毒防止)のために考案された仕組みです。

高いレベルでの安全性が保証されなければならない宇宙食を製造するに当たって、従来の最終製品の抜き取り検査だけによるのではなく、科学的な根拠に基づいた工程管理によって、製造ロットの全製品の安全性を確保しようとするもので昭和46年(1971年)に初めて公表されました。

その後、平成9年(1997年)にコーデックス委員会により、食品の衛生管理の基本原則である「食品衛生の一般原則」と、その付属文書である「HACCPシステム及びその適用のためのガイドライン」が取りまとめられました。

これは、一般的衛生管理を徹底することにより、安全な原材料と清潔で衛生的な食品の取扱環境等を確保したうえで、これだけでは低減・排除できない食品中の危害要因をHACCP手法により低減・排除するという考え方に基づいています。コーデックス委員会は可能な限りこのような手法を導入することを推奨しており、欧米諸国をはじめとして導入が進められています。

例えば、EUでは、平成16年(2004年)4月に制定(施行は平成18年(2006年)1月)された食品衛生に関する規則において、HACCP手法導入についての規定が盛り込まれています。

この規定では、HACCP手法導入について、1次生産を除くすべての食品の生産、加工、流通に携わる事業者を視野に入れていますが、実際の適用については、事業の認可の際にHACCP計画を審査することにより食肉製品、乳製品、水産製品等の動物由来食品を取り扱う事業者に対して厳密に適用する一方で、その他の事業者については、原則HACCP計画の策定を求めているものの、衛生当局による審査は行われないことや、小規模な事業者については一般的衛生管理での代替も可能とされること等、柔軟な運用がなされています。


(トレーサビリティは低コストな方法も含めて普及・浸透の必要)

食品のトレーサビリティは、個々の事業者の取組をつなげることで、フードチェーン全体として、食品の移動が把握できるようにすることです。しかし、食品産業の多くの中小事業者や農林漁業者に取組の遅れがみられることから、低コストで容易に取り組める方法の普及・浸透に努めることが必要です。

欧米の状況をみると、主要な品目についてトレーサビリティが義務付けられています。EUにおいては、一般食品法(*1)に基づき、食品事故等発生時に問題のある食品を的確に回収するため、生産者・食品事業者に対し、食品・飼料全般について、その取引の相手先が特定できることが義務とされています。その対応として、ガイドラインにおいて入荷先・入荷日・出荷先・出荷日の記録を残すこととされています(*2)。また、米国においては、食品医薬品局(FDA(*3))所管のいわゆるバイオテロ法(*4)(改正連邦食品・医薬品・化粧品法)により、レストラン、農場等を除く事業者は、大半の食品について、入出荷記録を残すことが要求されています。


*1 正式名称は、「REGULATION(EC)No178/2002 OF THE EUROPEAN PARLIAMENT AND OF THE COUNCIL of 28 January 2002 laying down the general principles and requirements of food law, establishing the European Food Safety Authority and laying down procedures in matters of food safety」
*2 GUIDANCE ON THE IMPLEMENTATION OF ARTICLES 11,12,14,17,18,19 AND 20 OF REGULATION(EC)No178/2002 ON GENERAL FOOD LAW CONCLUSIONS OF THE STANDING COMMITTEE ON THE FOOD CHAIN AND ANIMAL HEALTH
*3 U.S. Food and Drug Administrationの略
*4 正式名称は、「Federal Food, Drug, and Cosmetic Act」

(着実な実行が求められる米のトレーサビリティ)

平成20年(2008年)に発生した事故米穀の不正規流通問題(*1)は、米の流通に関する多くの課題を提起しました。

まず、流通の各段階において米・米加工品の取引等の情報の記録が残っていない場合や、取引等の情報の記録の提供を拒否される場合があり、事故米穀の流通状況を把握するのに相当の時間を要したり、流通先や用途の特定が困難な場合もあったことがあげられます。

また、消費者が国産米を使った商品と思っていたものにまで、幅広く輸入米が使用され、消費者が認識しないまま輸入米を口にしていたことが明らかになる一方で、米加工品や外食、弁当等を選択する際に、原料米の原産地がわからないことから、米製品全般にわたって消費者の不信が増幅したこともあげられます。

このため、米・米加工品に関し、食品としての安全性を欠くものの流通を防止し、表示の適正化を図り、及び適正かつ円滑な流通を確保するための措置の実施の基礎とすることを目的とした、米トレーサビリティ法(*2)が平成21年(2009年)4月に成立しました(図2-44)。


*1 [用語の解説]を参照
*2 正式名称は「米穀等の取引等に係る情報の記録及び産地情報の伝達に関する法律」

図2-44 米のトレーサビリティ制度の概要

これにより、平成22年(2010年)10月からは、生産者を含む米・米加工品を取り扱う事業者に対して、米・米加工品の取引等に際し、記録の作成・保存が義務付けられます。また平成23年(2011年)7月からは、産地偽装を防止するとともに、一般消費者が原料米の産地を知ることができるよう、米・米加工品の取引に際し、原料に用いている米穀等の産地の相手への伝達が義務付けられます。

米トレーサビリティ制度の目的を達成するため、対象事業者による、米穀等の取引等の記録の作成・保存や、産地情報の伝達が適正に行われることが重要です。


お問合せ先

大臣官房広報評価課情報分析室
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