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農林水産省

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(2)農業経営の動向と農業生産を支える経営体・農地等をめぐる状況 ウ 農業就業者等の確保

(農業就業者は減少と高齢化が同時に進行)

農家戸数の減少とともに、農業就業者数も減少傾向にあります。農業就業者数の減少は、欧米諸国等でも共通してみられる傾向ですが、我が国の場合、減少と高齢化が同時に大きく進んでいることが特徴となっています。

我が国においては、平成2年(1990年)から平成19年(2007年)にかけて、農業就業者(基幹的農業従事者(*1))の数は3割減少し202万人となるとともに、平均年齢は7.9歳上がり64.6歳になりました(表3-5)。一方、例えば、ドイツの場合では、農業就業者(農業経営者)の数は4割強減少していますが、平均年齢はわずか0.8歳上昇の48.8歳、イタリアの場合では、農業就業者(農業経営者)の数は4割弱減少していますが、平均年齢は3.1歳上昇の60.4歳にとどまっています。

なお、農地10ha当たりの農業就業者数を欧米諸国と比較すると、土地条件や営農体系の違い等に留意する必要がありますが、我が国では6.2人となっている一方、イタリア1.7人、英国0.4人、米国0.1人等となっています。


*1 [用語の解説]を参照


(若者を中心とした新規就農をさらに進めることが重要)

農業就業者が減少、高齢化しているなか、新規就農者(*1)は近年6万~8万人で推移しています。平成20年(2008年)の新規就農者6万人のうち、農家出身の農家子弟は5万1千人であり、年齢別には39歳以下9千人、40~59歳1万5千人、60歳以上2万7千人となっていますが、就農形態をみると、ほとんどが自家農業への就農となっています(表3-6)。

一方、非農家出身者は雇用される形態で就農する者が近年増加し、7千人となっていますが、そのうち39歳以下が4,500人となっています。

土地や資金を独自に調達して新たに農業経営を始めた新規参入者(農家・非農家出身者計)は2千人ですが、年齢別にみると、39歳以下580人、40~59歳800人、60歳以上580人となっています。

これらを合わせて、39歳以下の者の就農者は1万4千人となっていますが、今後は農家子弟だけでなく、非農家出身者からの新規就農を促進することが重要です。


*1 [用語の解説]を参照


(新規就農者に対しては様々な支援が必要)

新規に就農し農業経営を開始するときは、営農技術の習得、資金の確保等がまず必要になります。農家子弟についても、これらの面での苦労がありますが、非農家出身者の場合は、資金の確保や営農技術の習得に加えて、農地や住宅の確保の面でも負担が大きい傾向にあります。例えば、農地の確保について苦労した者は、農家子弟の場合32%となっているのに対し非農家出身者では57%、住宅の確保について苦労した者は、農家子弟では0%となっているのに対し非農家出身者では34%となっています(図3-55)。

資金面をみると、新規参入による就農1年目に要する費用は、営農類型によって異なりますが、酪農で平均1,954万円、採卵鶏で平均1,310万円、花き・花木で平均1,238万円となっています(図3-56)。このような初期投資の多い営農類型では、自己資金を上回る資金の借入れが必要となっています。




このようなことから、農家子弟だけでなく、非農家出身者の就農を進めていくためには、それぞれの事情に応じながら、就農時の情報提供、相談対応、技術習得等の研修機会の充実はもとより、農地確保に向けた情報提供や機械・施設等の導入に際しての負担軽減等の支援を図っていく必要があります(図3-57)。

また、近年、農業法人等に雇用される形での就農が増加していますが、これは営農開始時のリスクや負担が少ない就農形態であり、今後、農業に関心がある者が円滑に就農していくための主要なルートになっていくものと考えられます。

このため、平成20年度(2008年度)以降、農業法人等への就業を促進し、就農者の確保と育成を図ることを目的として、新たに就業希望者を雇用する農業法人等に対して、研修に要する経費等を助成する「農の雇用事業」が実施されています。これにより、平成20年度(2008年度)から平成21年度(2009年度)にかけて、3,597人(延べ2,747法人)が採択されています。


図3-57 新規就農者に対する主な支援

事例:農業法人による人材育成の取組
就農のお祝いの「天鍬」
就農のお祝いの「天鍬」
群馬県伊勢崎市(いせさきし)

群馬県伊勢崎市(いせさきし)のA農業生産法人は、施設、露地で30品目の野菜を生産し、スーパーマーケットや外食店等に直接販売するかたわら、新規就農希望者を研修生として年間10人程度、1週間前後の農業体験者を月に4~5人受け入れています。今までに受け入れた研修生のうち、4人が独立し、県内外で農業経営を行っています。

研修生の受入れは6年ほど前に県外の民間研修教育機関の学生を受け入れたことに始まります。その学生が予想以上に頑張ってくれたことに感銘を受け、現在に至るまで積極的な人材育成を続けています。研修生の新規就農時にはお祝いとして、「天鍬(てんくわ)」をプレゼントしています。

 

(農業者は子どもに農業を継いでもらうことを希望)

平成21年(2009年)12月に行われたアンケート調査によると、自分の子どもに「農業を継いでもらいたい」と思う農業者は70%となっています(図3-58)。その理由としては、「(自分の家の)農地を守っていく必要があるため」が73%、「集落のリーダー、一員として仲間とともに、地域の農業・農地を守っていく必要があるため」が69%等となっており、多くの農業者が農業・農地の維持を主な理由としてあげています。

また、自分の子どもに「農業を継いでもらいたい」とは思わない農業者は30%となっていますが、その理由は、「農業では十分な収入が得られないため」が84%、「休みが少なく、労働時間も長いため」が55%等となっています。このようなことから、家族農業経営の後継者を確保していくためには、農業で十分な収入を確保していくことが重要であり、またそのような対策が求められていることがうかがえます。



(若い農業者育成には農業教育が重要)

将来を担う若い農業者を育成していくためには、農業が継続できる環境の整備等のほか、農業経営や技術を十分習得させるための農業教育が重要です。農業関係の学校等からの就農は、平成20年度(2008年度)卒業生のうち2,107人であり、我が国の新規学卒就農の主要なルートになっています(図3-59)。

農学系の学部を有する大学・短大は全国で66校あり、平成20年度(2008年度)には22,586人が卒業し、また、農業高校は全国で333校あり、平成20年度(2008年度)には27,738人が卒業しています。しかし、卒業後就農する者は、大学・短大で578人、農業高校で583人と、卒業生全体に対する割合は非常に低くなっています。

全国で42校ある道府県農業大学校については、講義とともに農場実習を多く取り入れた実践教育を行っていますが、平成20年度(2008年度)に1,733人が卒業し、就農率は5割程度となっています。

一方、地域農業におけるリーダーの育成を目指して青年農業者を対象に研修教育を実施してきた農業者大学校では、平成20年度(2008年度)の卒業生は19人と少人数ながらも、その9割以上が就農しています。なお、平成20年(2008年)以降は、それまでの地域農業におけるリーダーの育成に加えて、先進的な技術・経営管理能力をもつ農業者の育成を目指しています。

そのほか、それぞれ特色のある実践的な研修教育を実施している民間研修教育機関3校は、農業・農村を支える人材を多数輩出してきました。平成20年度(2008年度)は3校合計で71人が卒業していますが、卒業生の就農率は5割弱となっており、就農者34人のうち4割強の15人は農業法人への就農となっています。

我が国農業の発展のためには農業教育が極めて重要となりますが、今後は、学校卒業後直ちに、あるいは一定期間経過後の就農をよりふやすために、就農支援の強化に加え、効果的な実践研修や進路指導の充実等が重要となっています。


図3-59 農業関係の学校等からの就農者数(2008年度)

このような農業教育機関のほか、農業内外からの就農が円滑に進むように、就農までの各段階において教育支援が実施されています。例えば、農業体験をしたい人向けには農業法人での農業インターンシップ、他産業で働きながら農業について学びたい人向けには就農準備校や在宅のまま農業技術を学べる農業e-ラーニング(*1)等、それぞれの状況に応じた支援体制が整っています。

農業インターンシップでは、農業に興味がある学生・社会人を対象に、農業法人等において1週間から1か月程度の農業就業体験を実施しています。農作業だけでなく農産物加工や販売等も体験可能となっており、平成20年度(2008年度)では受入法人数は172法人、実施人数は365人となっていますが、うち就農した者は35人で増加傾向にあります(図3-60)。

就農準備校は、大都市圏を中心に平成8年度(1996年度)から開設され、平成20年度(2008年度)では、7校で29コースが実施されています(*2)。平日夜間における座学や週末等に行われるほ場での実習のほか、平成18年度(2006年度)からはインターネットを使って在宅でも受講できるコースを設置するなど、他の職業に就いたままで農業研修を受ける場を提供しており、平成20年度(2008年度)の受講者は1,061人となっています。


*1 インターネット等を活用して行う学習方法のこと
*2 (社)全国農村青少年教育振興会調べ

農業インターンシップ(山梨県中央市(ちゅうおうし))
農業インターンシップ(山梨県中央市(ちゅうおうし))
 

(外国人研修生等は増加傾向)

我が国では、開発途上国の「人づくり」に一層協力するため、外国人研修・技能実習制度を創設し、この制度のもと、毎年多くの研修生・技能実習生が母国で役立つ知識・技術・技能を最長3年間以内で学んでいます。農業分野への研修生は年々増加し、平成20年(2008年)には8,593人となっています(図3-61)。また、研修終了後、研修成果の評価等の要件を満たし、技能実習に移行した技能実習移行者も、農業分野で4,600人となっており、研修生、技能実習移行者を合わせると13,193人となっています。

研修生、技能実習移行者の受入人数が増加する一方で、研修生に所定時間外作業を行わせるなど不適正な行為を行った不正行為認定機関数も増加傾向にあり、平成21年(2009年)では農業分野で63機関に上りました(図3-62)。

このようなことを受け、平成21年(2009年)に公布された改正入管法(*1)により、新たな研修・技能実習制度が平成22年(2010年)7月から施行されます。従来、外国人研修生は、在留資格「研修」を付与されて、当初1年目は労働関係法令の適用を受けないものとされていました。新たな研修・技能実習制度においては、国や地方公共団体等が実施する公的研修を除き、実務研修を伴う内容であるものは、「雇用契約に基づく技能等修得活動」として、当初から在留資格「技能実習」を付与されて労働関係法令の適用を受けることにより、保護の強化策を講じることとしています。農業分野においても、新しい制度の正しい理解と適切な運営が期待されています。


*1 正式名称は「出入国管理及び難民認定法及び日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法の一部を改正する等の法律」



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