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農林水産省

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(6)持続可能な農業生産を支える取組 ア 近年の気候変動による生産への影響とその対応

(温室効果ガスの増加に伴う地球温暖化や異常気象の頻発)

地球温暖化は、農業生産にとって、CO2濃度の上昇による収量増加というプラスの面がある一方、気温上昇、干ばつ、洪水等により、農地面積の減少、生産量の変動、栽培適地の移動等のマイナスの影響を及ぼすものと世界全体で懸念されています(図3-110)。

近年、我が国においては、温室効果ガス(*1)の増加に伴う地球温暖化に、数年~数十年程度の時間規模の自然変動が重なり、真夏日(*2)の日数が増加、冬日の日数が減少するなど高温となる年が頻出しています(図3-111)。


*1 [用語の解説]を参照
*2 真夏日は日最高気温が30度以上の日、冬日は日最低気温が0度未満の日

図3-110 地球温暖化による農業生産等への影響の予測

図3-111 我が国における真夏日等の年間日数の経年変化

(近年の気候変動と農業生産面での対応)

我が国の生産現場においては、高温障害等地球温暖化によるものと思われる農作物への影響が全国各地で発生しています(*1)。例えば、水稲では登熟障害、りんご・みかん・ぶどう等では着色不良・着色遅延、病害虫の多発、葉茎菜類では生育不良、乳用牛では乳量・乳成分の低下等が報告されています(図3-112)。

また、全球気候モデルによる水稲の収量の変化予測では、2081~2100年には、気候変動の影響が強まり、北日本で収量が増加する一方、中国・九州では収量が減少するとみられています(*2)。さらに、地球温暖化による作目の栽培適地の移動も予測されています(図3-113)。

このため、地球温暖化の予測や農業における気候変動の影響を極力回避するための対応が検討されています。これまでに、例えば、水稲では登熟期の高温を避けるため移植期を変更するなどの適応策、ぶどうでは環状はく皮処理による着色向上技術等が開発されています(図3-114)。各都道府県段階においても、高温による品質低下を回避できる水稲の新品種の開発や、高温でも着色するりんご品種の開発・導入、トマトの低段どり密植栽培(*3)等による作期の変更、熱帯・亜熱帯作物の導入によるブランド化等の取組が進められています。


*1 農林水産省「平成20年地球温暖化影響調査レポート」(平成21年(2009年)9月)
*2 林陽生・石郷岡康史・横沢正幸・鳥谷均・後藤慎吉『地球環境Vol.6 No.2(温暖化が日本の水稲栽培の潜在的特性に及ぼすインパクト)』((社)国際環境研究協会、平成13年(2001年))
*3 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 九州沖縄農業研究センター、近畿中国四国農業研究センター

図3-112 水稲の高温による登熟障害
図3-114 ぶどうの高温による着色不良と改善技術
 
図3-113 温州みかんの栽培に適する年平均気温(15~18℃)の分布

(CO2削減に向けた農業分野等での取組の実績)

我が国は、京都議定書(*1)の第一約束期間(平成20(2008)~平成24年(2012年))において、基準年の平成2年(1990年)に比べ温室効果ガスを6%削減する約束をしています。平成20年(2008年)の温室効果ガス排出量をみると、我が国全体では12億8,200万t-CO2(*2)となり、平成2年(1990年)に比べ1.6%増加となりました。農林水産分野においては、省エネ機器の導入や燃油の価格高騰による使用量の減少、景気後退による電力使用量の減少、水稲の作付面積の減少等により、農林水産業で3,723万t-CO2、食品製造業で1,562万t-CO2、合計5,285万t-CO2となり、平成2年(1990年)と比べて26.3%減少しました(表3-8)。


*1 [用語の解説]を参照
*2 各温室効果ガスの排出量を温室効果をもたらす程度に応じて二酸化炭素換算し、それらを合算したものです。


現在、平成25年(2013年)以降の枠組みづくりのための国際交渉が行われています。このなかで、我が国は、すべての主要国による公平かつ実効性ある国際的枠組みの構築と意欲的な目標の合意を前提として、温室効果ガスの排出量を平成32年(2020年)までに平成2年(1990年)比で25%削減する中期目標を表明し、この達成に向け、あらゆる政策を総動員することとしています。このなかで、農林水産分野においても、省エネ施設・機械の導入や施肥の適正化、緑肥作物(*3)の作付け拡大等による農地の炭素貯留量の増加につながる土壌管理等の営農活動の普及を進めていくことが必要になっています。また、排出量取引や「CO2の見える化(*4)」等の新たな経済的手法の構築を通じて、温室効果ガス削減への取組を加速化させていくことも重要です。


*3 レンゲ等のマメ科植物で地力増進や窒素肥効が期待される作物です。また、ソルゴー等の非マメ科植物で土壌の物理性の改善や病害虫抑止が期待される作物もあります。
*4 農林水産分野における「見える化」とは、農林水産物等の原材料調達、生産から廃棄・リサイクル等の各段階にかかる温室効果ガスの排出量、排出削減量や農林水産物の生産者等の排出削減努力を消費者にわかりやすく示すことです。

事例:CO2削減に向けた取組
(1)ヒートポンプの導入による取組
ヒートポンプを導入したハウス
ヒートポンプを導入したハウス
大分県玖珠町(くすまち)

大分県玖珠町(くすまち)のバラの施設栽培を行うM農業生産法人は、省エネルギー効果が高いヒートポンプや保温効果が高い高断熱被覆設備の導入により、CO2排出量の削減に取り組んでいます。ハウスの暖房設備をA重油焚きのみの暖房機から電気式ヒートポンプを組み合わせたハイブリッドシステムに転換したことで、燃油の使用量が大幅に削減できたことから、温室効果ガスの排出量は年間577t-CO2削減される見込みです。また、この取組により、燃料コストの低減と経営体質の強化が期待されます。

(2)木質バイオマス利用加温機の導入による取組
木質バイオマス利用加温機を導入したハウス
木質バイオマス利用加温機を導入したハウス
静岡県袋井市(ふくろいし)

静岡県袋井市(ふくろいし)及び近隣市町のメロン栽培農家6戸は、ハウスの暖房設備として木質バイオマス焚き温水ボイラーを導入し、CO2排出量の削減に取り組んでいます。これまで、ボイラーの燃料には重油を使用していましたが、木くず等の木質バイオマスを原料とした木質ペレットに変えたことにより、温室効果ガスの排出量は年間1,382t-CO2削減される見込みです。また、生産したメロンは、環境に配慮した農産物として販売されており、農林水産分野における温室効果ガス削減の取組に対する消費者の理解醸成に役立つことが期待されます。

(3)店舗で地元産木材を使用した取組
木材利用店舗(建築中)
木材利用店舗(建築中)
秋田県由利本荘市(ゆりほんじょうし)

全国に牛丼店をチェーン展開するY社は、木造店舗の建設により環境負荷軽減に取り組んでいます。外装をはじめ柱や内装材に地元産の秋田杉を使用した店舗(秋田県由利本荘市(ゆりほんじょうし))では、木の温もりが心地良さを与えるとともに、使用された木材のなかに約2.7tの炭素が貯蔵されていると試算されています。Y社は、今後、全国で国産材を使用した店舗建設を予定しており、木材利用を通じた地球温暖化対策への貢献に取り組んでいくこととしています。

 

(省エネ技術の導入等による国内クレジット制度の取組)

中小企業や農家等が行ったCO2排出削減のための取組は、国内クレジット制度(*1)において、排出削減量が認証され、大企業等の自主行動計画等の目標達成のために活用されます(図3-115)。農林水産分野における国内クレジットについては、平成21年(2009年)7月に初めて、施設園芸におけるA重油焚きボイラーからヒートポンプへの転換によるCO2削減事業が認証されました。現在、国内クレジット制度において認証された国内クレジットの量は、我が国全体で延べ3.5万t-CO2、うち農林水産分野関係では延べ1.2万t-CO2(*2)となっています。


*1 京都議定書目標達成計画(平成20年(2008年)3月28日閣議決定)において規定されている、大企業等の技術・資金等を提供して中小企業等が行ったCO2等の排出抑制のための取組による排出削減量を認証し、自主行動計画等の目標達成のために活用する制度です。
*2 第11回国内クレジット認証委員会(平成22年(2010年)3月26日)時点

図3-115 排出量取引の国内統合市場の試行的実施の概要

(「CO2の見える化」の取組)

消費者に対しては、農産物等への「CO2の見える化」の推進等を通じ、地球温暖化対策の必要性、省CO2の取組趣旨、表示内容に関する知識の普及等を行っていくことが必要です。「CO2の見える化」の手法の一つであるカーボンフットプリント制度が現在試行的に実施されていますが、今後、CO2排出量が商品選択の一つの基準となることにより、生産者や消費者が排出削減に向けて主体的に行動することが期待されます(図3-116)。なお、カーボンフットプリントは、世界各地で検討が進められていることから、ISO(国際標準化機構)による国際規格化に向けた議論が進められています。


図3-116 カーボンフットプリントマーク

コラム:ライフサイクルアセスメントとフード・マイレージ

LCA(ライフサイクルアセスメント)とは、製品の材料調達から廃棄に至る各段階におけるエネルギー(燃料)、資源の投入と排出を把握し、製品、サービスの環境への負荷を分析、評価し、負荷の少ない生産への移行を検討する手法です。この手法を用いて、食料の生産から消費・廃棄物処理に至る過程で必要となる燃料エネルギーの総量を算出すると、例えば、ごはん6,330kcal/kg、パン類9,510kcal/kg、めん類15,040kcal/kgとなります(*1)。

一方、輸送距離にのみ着目したフード・マイレージがあります。食料輸送量に輸送距離を乗じた我が国のフード・マイレージは約9千億t・kmと試算され、韓国・米国等他国と比べて格段に大きくなっており、この試算からも我が国が世界最大の農産物輸入国であるとともに、輸送に多くの化石燃料を使用していることがうかがえます(*2)。


各国のフード・マイレージ

*1 久守藤男『飽食経済のエネルギー分析』(農山漁村文化協会、平成12年(2000年)3月)
*2 中田哲也『フード・マイレージ』(日本評論社、平成19年(2007年)9月)

(バイオマス利活用の一層の取組が必要)

我が国では家畜排せつ物、稲わら、林地残材といったバイオマス(*1)が年間3億2千万t発生しています。これらバイオマスについては、「バイオマス・ニッポン総合戦略」(平成18年(2006年)3月)に基づき、全国各地で、飼肥料等の製品やバイオ燃料等のエネルギーとして利活用が進められています。例えば、市町村段階では、家畜排せつ物のたい肥化、間伐材等を利用した木質ペレット製造等により、バイオマスの地域内での循環を図るバイオマスタウン構想を策定する取組が進められ、平成22年(2010年)3月末現在で全国268地区の構想が公表されています(図3-117)。


*1 [用語の解説]を参照


平成21年(2009年)9月には、バイオマスの活用の推進に関する施策を総合的・計画的に推進するため、「バイオマス活用推進基本法」が施行され、現在、政府のバイオマス利活用に関する基本的事項を定めた「バイオマス活用推進基本計画」の策定実現に向けた検討が進められています。今後、この基本計画に基づき、地域における計画の策定を推進するなど、バイオマスの利活用について一層の取組が必要となっています。

バイオ燃料については、農山漁村の活性化や地球温暖化防止への貢献等の観点から、その生産拡大に対し関心が高まっています。我が国では、平成19年(2007年)2月に、関係7府省が「国産バイオ燃料の大幅な生産拡大に向けた工程表」を作成し、平成23年(2011年)に国産バイオ燃料を5万kl生産する目標をたてているところです。

この目標の達成に向け、平成19年(2007年)に、原料の調達からバイオ燃料の製造・販売まで地域の関係者が一体となった実証事業として、多収穫米や余剰てんさい等を原料としたバイオエタノール・廃食用油やなたね油等を原料としたバイオディーゼル燃料の製造が開始されました。平成20年(2008年)では国産バイオ燃料の生産量は2千klとなっていますが、平成21年度(2009年度)からは、施設の本格的な稼働により生産量が拡大されることが期待されます(図3-118)。なお、平成20年(2008年)10月に施行された農林漁業バイオ燃料法(*1)では、農林漁業者等とバイオ燃料製造業者が連携して農林漁業有機物資源からバイオ燃料を製造する取組や、バイオ燃料の製造の高度化を図る研究開発等の取組を国が認定し、固定資産税の軽減等の支援が講じられています。

さらに、食料供給と両立できる稲わら等のソフトセルロース系原料からバイオエタノールを製造する技術の確立が図られています。

今後、このような事業を通じて、生産コスト面での課題等を解決しつつ、国産バイオ燃料の増大に向けた取組を進めていく必要があります(図3-119)。


*1 正式名称は「農林漁業有機物資源のバイオ燃料の原材料としての利用の促進に関する法律」



事例:ソフトセルロース利活用技術確立事業の取組

国産バイオ燃料の生産拡大を図るため、食料供給と両立できる稲わら・麦わら等のソフトセルロースを原料としたバイオエタノール生産が推進されていますが、効率的な製造技術は、いまだ確立されていません。このため、原料の安価で効率的な収集運搬技術の開発導入、酵素等を用いて効率的にバイオエタノールを製造する技術の開発導入等を図るための技術確立事業が行われています。


ソフトセルロース利活用技術確立事業の取組

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