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農林水産省

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(6)持続可能な農業生産を支える取組 イ 環境保全型農業の取組状況

(環境保全型農業の取組)

農業は、その生産活動に伴う肥料、農薬等の利用、水・土壌管理等を通じて、環境への負荷を生じさせています。このため、「農業の持つ物質循環機能を生かし、生産性との調和等に留意しつつ、土づくり等を通じて化学肥料・農薬等による環境負荷の軽減、さらには農業が有する環境保全機能の向上に配慮した持続的な農業」(*1)である環境保全型農業の取組を進めていくことが重要です。

農業者の環境保全型農業の取組に対する意識をみると、「消費者の信頼感が高まる」、「地域の環境をよくする」等の利点を多くあげており、関心が高いことがうかがえます(図3-120)。また、持続性の高い農業生産方式の導入に関する計画を作成し、都道府県知事から認定されたエコファーマーは増加傾向にあり、平成21年(2009年)9月末現在で19万2千件となっています(図3-121)。これを営農類型別にみると、水稲と野菜が全体の各4割程度の7万件、果樹が2割の4万件となっています。

今後、このような環境保全型農業を進めていくためには、土壌診断を実施し、その結果を活用して、たい肥の施用等を通じた土づくり、化学肥料・化学合成農薬の使用の低減を促進していくことが重要です。また、環境負荷低減・地球温暖化防止・生物多様性の保全等環境保全機能の向上を図るために、これらの取組を行う農業者のネットワーク化を進め、交流会や技術研修会による相互研鑽(けんさん)の場を設けることを通じて、点の取組を面的・全国的に展開していくことも重要となっています。


*1 農林水産省環境保全型農業推進本部「環境保全型農業推進の基本的考え方」(平成6年(1994年)4月)



(有機農業の取組)

化学肥料、化学合成農薬及び遺伝子組換え作物を使用しない有機農業の取組は、我が国においては、平成21年(2009年)4月現在、有機JAS制度の認定を受けたほ場が田2,810ha、畑5,777haで耕地面積全体の0.2%にとどまっており、諸外国に比べて低いのが現状です(*1)。一方、有機JAS認定を受けた事業者は年々増加し、平成21年(2009年)3月現在で3,924事業者(加工業者、小分け業者等を含む)となっており、有機JAS制度のもとでの有機農産物の格付数量も野菜を中心に増加しています(図3-122)。

有機農業に対する農業者の意識は、「条件が整えば取り組みたい」とする農業者が5割という調査結果等から、その関心の高さがうかがえます。他方、有機農業を行う場合は、労働時間の増加、収量の低下、有機農業に適した種苗の確保、土壌管理等への対応が必要となります。このほか、農業者からは有機農業を継続していくための必要な取組として、生産コストに見合う価格で取引してくれる販路の確保・拡大、収量、品質を確保できる技術の確立等もあげられています(表3-9)。


*1 EUは3.9%(平成15年(2003年))、米国は0.6%(平成20年(2008年)) データ(エクセル:32KB)



このため、水田の除草作業の軽減に資する除草ロボット、地域に合った有機栽培技術の確立等の研究や化学合成農薬を使用しない病害虫防除技術の開発、地域における有機農業の参入希望者に対する技術指導、販路開拓のためのマーケティング等を支援していくことが重要です。また、消費者側からは、有機JASマークの認知度が低い、有機農産物がどこで売られているかがわからない、有機農産物の品揃えが少ないなどの問題も指摘されており、これらの対応策も今後検討していく必要があります。


事例:CO2削減に向けた取組
有機米の生産に取り組む農業生産法人
有機米の生産に取り組む農業生産法人
山形県川西町(かわにしまち)

(1)山形県川西町(かわにしまち)のY農業生産法人は、昭和60年(1985年)に食の安全等の消費者ニーズを見据えて減農薬栽培に取り組む農業者グループを結成、平成7年(1995年)に法人化しました。Y法人は、現在、95人の農業者で構成されており、農薬等の生産資材のコスト削減だけでなく、環境保全型農業を通じた持続的な農業生産を実現するため、有機米、特別栽培米等の生産を行っています。また、有機米等の生産に当たっては、市場が求める品質・価格に応じた米の効率的な生産に取り組んでいます。さらに、直売や外食チェーンへの販売等、販路拡大にも努めています。

 
消費者との交流
消費者との交流
福井県大野市(おおのし)

(2)福井県大野市(おおのし)の阪谷(さかだに)地区では、平成20年(2008年)から、地域が一体となって有機農業の推進を図っています。現在、約460戸の農家のうち、58戸が有機農業に取り組み、牛糞を利用したたい肥による土づくり、地域内施設で製造された有機肥料のぼかし等の土壌改良資材を活用しています。

また、生産されたさといも等の有機農産物は、学校給食に提供しているほか、大野市内や首都圏で開催される有機農産物フェアに出品するなど、消費者の有機農業に対する理解と関心の増進に努めています。

 
レタスの収穫風景
レタスの収穫風景
熊本県山都町(やまとちょう)

(3)熊本県山都町(やまとちょう)では、平成15年(2003年)に有機農産物や特別栽培農産物の生産に取り組んでいるグループ等により「山都町有機農業協議会」が立ち上げられました。現在、123人の農業者で構成され、協議会では土壌診断や技術支援を行うほか、牛糞たい肥や油かす、魚粉等の有機質肥料を利用した土づくりを行い、有機農業に取り組みやすい環境を整備しています。生産したレタス、ばれいしょ等の野菜や米を学校給食に提供するとともに、消費者との交流や食育活動等を通じて有機農産物や特別栽培農産物への理解に努めています。

 

(環境負荷を低減しながら生産性の維持を図る防除手法)

化学農薬だけに依存するのではなく、例えば、輪作体系や抵抗性品種、熱による消毒(*1)や機械等を用いた物理的な防除、天敵やフェロモンの利用等を組み合わせる防除手法として、総合的病害虫・雑草管理(IPM(*2))があります(図3-123)。これは、病害虫の密度を制御することで、環境への影響を極力少なくし、より生物多様性に配慮しながら、生産性の維持を図る農業生産の方法であり、今後、さらなる推進を図っていく必要があります。


*1 熱水や太陽熱等を利用して土壌病原菌等を死滅させる方法
*2 Integrated Pest Managementの略

図3-123 総合的病害虫・雑草管理(IPM)の概要

事例:農家グループによる土着天敵の活用
高知県安芸市(あきし)

高知県のJA土佐あき管内の安芸市(あきし)のナス施設栽培農家は、コナジラミ類防除のため、総合的病害虫・雑草管理(IPM)技術として、土着天敵のタバコカスミカメを取り入れた栽培を行っています。土着天敵は、8~6月のナス栽培期間中にハウス内に放飼し、その後、土着天敵用のハウスで温存し次作の栽培に再度、活用しています。土着天敵の温存ハウスは、遊休ハウス等を活用し、主に農家グループが共同で管理を行っています。

土着天敵の確保に当たっては、温存ハウスの利用のほか、作型の違う地域間で土着天敵を移動させる「天敵リレー」による地域間での需給の調整等を行っています。

このような取組により、農薬散布回数が58回から24回に、また、農薬の経費が6割減少したなどの効果がみられました。

 
土着天敵温存ハウスの内部
土着天敵温存ハウスの内部
タバコカスミカメ
タバコカスミカメ
 

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