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農林水産省

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(7)研究・技術開発の取組

(農業・農村の資源や潜在能力を最大限活用する技術開発を推進)

我が国において食料を安定的に確保し、食料生産基盤である農山漁村の活力を維持していくためには、農業・農村が有する様々な資源や潜在能力を最大限に活用することが重要であり、技術開発の役割が増大しています。

このような役割を果たしていくため、農林水産分野の研究については、食料自給率の向上、地球規模の環境課題への対応等の政策課題や、地域の生産現場における諸課題の解決に技術の側面から的確にこたえる必要があります。このため、産学官の幅広い研究者を集結しつつ、農林水産分野の研究開発を進めています。

具体的には、食料自給率の向上に向けて、多収米品種の育成や米粉利用を加速化するための技術開発やゲノム(*1)情報を活用した革新的な品種(良食味でいもち病抵抗性を有する水稲の品種)の育成を進めています。

また、地球規模の環境課題を解決するため、農地からのCO2排出削減技術(不耕起栽培やカバークロップ(*2)の利用技術)等の地球温暖化緩和・適応技術の開発や木・草等の非食用バイオマスをガス化し、発電や液体燃料生産を行う「農林バイオマス3号機」の開発等バイオマス利用技術の開発等を進めています。


*1 、2 [用語の解説]を参照

(米の新規需要に対応した技術を開発)

米粉用米・飼料用米等の新規需要米の生産拡大に資するため、米粉用米向けの多収品種の育成と、低コスト栽培技術の開発が行われるとともに、全国各地域の気候特性に適合した飼料用米や飼料用稲向けの多収品種、飼料用稲の立毛利用、稲発酵粗飼料を組み合わせた繁殖牛の周年放牧体系の開発が行われています(図3-126)。今後、食用米との識別性があり、収穫量が10a当たり1t以上の超多収品種の育成と、さらなる低コスト栽培向けの技術の開発が期待されています。


図3-126 米粉用米・飼料用米等への利用が期待される新品種の開発

(植物・害虫等の光への反応を応用した新たな光利用技術を開発)

光の波長等をコントロールできる発光ダイオード(LED)(*1)の開発や生物の生理現象の解析手法の進展を踏まえ、植物・害虫等の光への反応を応用して農産物の品質の安定化を図るなど新たな光利用技術の開発が進められています(図3-127)。このような新技術の開発・導入により、施設園芸における省エネルギーの進展、安全で簡易な病害虫防除の実現や野菜等の商品化率の向上が期待されます。


*1 [用語の解説]を参照

図3-127 光の波長の違いによるサニーレタスの機能性成分(アントシアニン)の変化

コラム:植物工場

植物工場は、施設園芸の一形態であり、環境及び生育のモニタリングを基礎として高度な環境制御を行うことで野菜等の植物の周年・計画生産が可能な施設です。我が国では、昭和60年(1985年)の国際科学技術博覧会における「回転式レタス生産工場」の展示により注目を浴びましたが、経済性の課題等から、その取組は広がりませんでした。しかし、近年、環境制御技術の進展や養水分の供給技術、養液の循環利用技術、LEDや省エネ型のCCFL蛍光灯(冷陰極蛍光ランプ)等の新しい光源の開発等により、サラダ菜、フリルレタス、ハーブ等の葉茎菜類を中心に生産する「野菜工場」がふえてきています。

植物工場は、立地場所を選ばず、農地以外の工業用地、空き店舗・工場等への設置も可能であることから、異業種からの参入もみられます。これにより、例えば、製造業の計画的な生産・品質管理手法や通信技術等、異業種のノウハウ・技術が広く農業に活用されることが期待されます。また、特に完全人工光型の植物工場で作られる野菜は、虫や異物の混入が少ないこと、歩留まりが高いこと等の利点があり、加工・業務用向けの食材としても需要が拡大する可能性があります。さらに、今後、施設の設置・運営コストの削減や安定的な販路の確保等を進めることにより、植物工場をはじめとする高度な施設園芸の広がりが期待されています。


販売目的で野菜等を生産している植物工場(50か所)の分布(2009年3月現在)

(ゲノム情報の活用により新産業を創出)

稲や豚をはじめとする農畜産物のゲノム情報の解読が進み、品種改良等に活用する条件は整いつつあり、将来に向けた研究成果を出していくことが重要となっています。我が国においては、いもち病抵抗性遺伝子をはじめとする稲の病害抵抗性遺伝子等、農業上重要な遺伝子が明らかとなってきました。これにより、異なる病害抵抗性遺伝子の集積によって複数の病原菌に強い抵抗性を示す稲の作出が可能となります。

今後、さらにゲノム情報を活用して、効率的な品種改良を可能とするDNAマーカー選抜技術や遺伝子組換え技術等、育種の高度化により画期的な農産物が開発されるとともに、その研究成果や遺伝子特許等を有効に活用することにより、農業・農村に新たな利潤をもたらす新産業の創出が期待されます。


(遺伝子組換え技術により新たな分野へ挑戦)

一方、世界では、遺伝子組換え技術により、主に除草剤耐性や害虫抵抗性が付与されたとうもろこし、大豆、なたね、ワタ等が栽培されています。他方、我が国においては、バイオマスエネルギー用の超多収作物やカドミウム等を吸収する環境修復用作物等の研究が進められています。また、医薬品分野との連携によるスギ花粉症緩和米等や新機能を付加した絹糸の開発等の新たな分野への挑戦の動きもみられます(図3-128)。


図3-128 遺伝子組換えカイコを活用した蛍光絹糸の開発

(民間企業でも様々な研究開発を実施)

民間企業により世界で初めて開発された青色色素をもつバラ
民間企業により世界で初めて開発された青色色素をもつバラ

農林水産分野の研究開発については、国・都道府県の公的機関のほか、民間企業も担っており、民間企業における研究者数は、現在1万4千人(*1)となっています。食品産業や生産資材関連産業等の民間企業における研究開発については、基礎的・先導的研究の成果を応用しつつ、消費者や生産者ニーズを踏まえた商品の開発、実用化・商品化が中心となっています。

最近では、遺伝子組換え技術により開発されたバラが初めて国内生産され、平成21年(2009年)11月に販売が開始されました。


*1 総務省「科学技術研究調査」(平成21年(2009年)12月公表)。企業等における研究関係従事者数のうちの研究者数で、農林水産業(227人)と食品製造業(13,348人)の計
 
コラム:農業者ニーズに応じた農業機械の開発と実用化

農業機械の開発は、これまで米・麦等の土地利用型農業における農作業の効率化等を目的に行われてきました。野菜・果樹等の園芸農業においては、繊細な取扱いが求められること、品目ごとにみると市場規模が小さいこと等から機械化が遅れていましたが、近年、重量野菜の収穫作業の軽労化等を目指し野菜の種類に応じた収穫機の開発が進められています。これまでに、ねぎ、だいこん、キャベツ等の収穫機が市販化され、これらの導入地域においては、省力化、農業従事者の負担軽減につながっています。

一方、開発機の性能と価格とのバランス、現状の品種や作業工程と合わないなどの課題から、市販に至らなかった機種もみられます。このため、今後、高齢化が進行するなかで、どのような機械開発が必要なのか検討しつつ、我が国のもつ技術を結集し、対応していく必要があります。


だいこん収穫機
だいこん収穫機
軽労化アシストスーツ
軽労化アシストスーツ
 
ねぎ収穫機
ねぎ収穫機
トマト収穫ロボット
トマト収穫ロボット
 
資料:(独)農業・食品産業技術総合研究機構 生物系特定産業技術研究支援センター、野菜茶業研究所

(今後の研究開発の課題)

今後の研究開発に当たっては、安全な農林水産物の安定供給、農業・農村の6次産業化のための新需要創出、環境面での課題の解決等、様々な課題に技術面での的確な対応を念頭に進めていくことが重要です。このため、新品種や革新的な生産技術の開発、新需要を創出する付加価値の高い農産物、食品、新素材、医薬品等の開発、温室効果ガスの発生抑制技術等の地球温暖化への対応技術の開発等をさらに進めていく必要があります。

また、研究成果を確実に普及・実用化につなげていくことも重要です。このため、国・都道府県、大学、民間企業等の幅広い分野の人材・情報等を活用し研究マネジメント機能を強化するとともに、研究段階に応じて、人材、知的財産・研究成果、研究資金を機動的かつ一体的に運用する体制を整備していく必要があります。また、研究開発から産業化までを一貫して支援する視点を導入し、ニーズを探りつつ実用化や産業化を進める流れを強化するとともに、産学官の枠組みを構築していく必要もあります。さらに、産地段階では、普及組織と大学、民間企業、試験研究機関等が連携して、研究成果の普及・実用化を強化していくことも重要です。


事例:産学官の戦略的な連携による技術開発の取組
神奈川県平塚市(ひらつかし)

神奈川県平塚市(ひらつかし)では、都市近郊という立地条件を活かし、園芸施設での野菜の養液栽培が盛んに行われています。しかし、園芸施設で使用される野菜の培地や培養液は、リサイクルされずに廃棄されており、環境への負荷が課題となっています。

このような現場の課題を解決するため、環境保全型農業の技術開発を進めてきた県農業技術センター、光触媒技術を有する大学、養液栽培システムを取扱う企業が連携し、各々の強みを持ち寄ることで、地域に適したリサイクル型養液栽培技術の開発を行いました。同時に、神奈川県内で産学官の連携を支援する組織が、関係者間の調整や、研究成果の普及啓発を支援し、研究成果の普及・実用化を加速させる役目を担いました。

このように産学官の関係者が戦略的に連携して取り組むことにより開発した排液処理システムは、研究終了時までに製品化されるとともに、リサイクル型養液栽培システムとして現場への導入が始まっています。また、県農業技術センターでは、農業者用のマニュアルを作成すること等により技術の普及を促すことで、養液栽培に伴う環境への負荷軽減に取り組んでいます。


リサイクル型養液栽培システムの開発

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大臣官房広報評価課情報分析室
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