このページの本文へ移動

農林水産省

メニュー

(1)地域社会・農村地域の現状と課題 ウ 農村地域の安全・安心な生活に資する集落基盤の整備状況

(汚水処理施設の普及率は人口規模の小さい市町村で依然低い)

農村地域では、農業生産と地域住民の生活が同じ空間で営まれていることから、農業生産基盤と地域での生活を支える集落基盤が一体となっています。例えば、集落道と農道、さらに一般道が連続することによって、住まいや生産現場・勤め先、出荷先等がつながれ、農村地域における道路としての機能が果たされることになります。また、生活排水処理は、ほ場と住宅地が近接している農村において、農業生産のためにも欠かせないものです。

集落基盤は着実に整備されてきているといえますが、汚水処理施設の普及率に関しては、市町村の規模で大きく異なり、人口5万人未満の市町村では7割にとどまっています(図4-11)。また、これを都道府県別にみると、9都道府県で9割を超える一方、8県で5~7割未満、2県で5割未満になっているなど、差異が生じています(図4-12)。




(情報通信技術活用の推進が必要)

我が国の情報通信基盤の整備については、情報通信技術が進んでいる国のなかでも最高水準にあります(*1)。情報通信技術は、農村地域においても、農産物をはじめとする地域資源の有効活用や、医療機関や商店等の不足といった条件不利性の克服の手段として、その一層の活用が期待されています。

市区町村における情報通信技術の活用状況を総合活用指標(*2)の平均点でみると、政令指定都市や特別区、中核市・特例市では高くなっています(図4-13)。一方、それ以外の市、町村では低くなっており、また、全く活用していない市町村があるなど、活用状況にはばらつきがみられます。

過疎地域を含む市区町村や高齢化市区町村では、福祉・保険、医療分野や産業・農業、交通・観光で集中的に情報通信技術を活用しているところもありますが(*3)、全域が過疎地域の市町村では、その5割が情報通信基盤整備・利活用の課題として、ブロードバンド化の遅れ・一部未整備等をあげています(図4-14)。

今後、農村地域においては、地域情報化アドバイザーの活用等により、情報通信技術の活用の推進が必要であると考えられます。


*1 平成21年度版情報通信白書
*2 自治体の行政分野を「防犯・防災」、「福祉・保険」、「医療」、「教育・文化」、「産業・農業」、「交通・観光」、「行政サービス」、「住民交流」の8つに分類し、各分野のICT(情報通信技術)活用状況を表す指標として「ICT活用指標」を作成。総合活用指標は8分野を統合した全体的なICT活用状況を表す指標
*3 総務省「地域の情報化への取組と地域活性化に関する調査研究」(平成20年(2008年)3月公表)。図4-13注釈参照



事例:農業・地域活性化につながる情報通信技術活用の取組
北海道西興部村(にしおこっぺむら)

北海道西興部村(にしおこっぺむら)では、村内の全戸に対して光ファイバ網を整備し、農業や福祉、教育等で情報通信技術を活用したサービスを展開しています。

山村であるため電波事情も悪く、テレビ、ラジオの難視聴地域だったことから、平成元年(1989年)に農業多元情報システムを導入して西興部村コミュニケーションネットワーク(自主放送)を開局し、村内全戸に村役場からの通知や情報を提供するようになりました。

しかし、開設から10年を経て設備の更新時期を迎え、また、住民の要望も、双方向で情報のやりとりができるインターネットへの移行が大きくなりました。そこで、村全体に光ファイバ網が敷設され、平成13年(2001年)より、「マルチメディア館IT夢」を中心にCATVサービスや様々なサービスが展開されています。

在宅健康管理サービス
在宅健康管理サービス

農業分野では、酪農家や獣医師が村内牛舎の牛を遠隔監視できる「牛舎遠隔監視サービス」、農業者が農協の経営支援データベースから情報を取り出し、農業簿記の記帳や青色申告決算書の作成が簡単にできるといった「農業経営支援サービス」が提供されています。

福祉分野では、高齢者が簡単な操作で血圧と体温を測定して村役場に送信し、テレビ電話を利用して自宅にいながら保健師に健康相談できる「在宅健康管理サービス」や、心臓発作等の緊急時に、指定した近隣の人に援助を求める装置や高齢者の在宅を確認するセンサーの設置といった「高齢者見守りサービス」が提供されています。

教育分野では、パソコンを使った授業や、村内の小学校間で交流ができる「学校間交流サービス」が利用されています。また、北海道大学と村とをインターネットで結び、テレビ公開講座が行われています。

すべての村民は個人のメールアカウントをもつことができるとともに、村民掲示板を活用することによって、村長からのメッセージや役場からのお知らせ・イベント案内等の情報を、家に居ながらにして確認することができます。役場からのお知らせや緊急情報は、音声告知放送で聴くこともできます。

このような取組は、農業や地域の活性化につながっています。

 

(自然災害の多くは農地で発生)

台風の通過や地震の発生の多い我が国において、水害をはじめとする自然災害は、毎年各地域で発生しています。平成19年(2007年)には、延べ453市区町村が家屋、農作物等に被害を受けました(図4-15)。

平成4年(1992年)から平成19年(2007年)までの状況をみると、水害を被った区域の面積は1万~7万ha、そのうち農地の面積は1万~5万haと変動がありますが、水害区域全体に占める農地の割合は7~9割と非常に大きくなっています(図4-16)。




(農村資源の適切な管理が災害発生の抑制に効果)

生産と生活の基盤が同じ空間にある農村において、農用地・農業用施設への自然災害による被害を未然に防止することは、農業生産の維持や農業経営の安定に加え、国土の保全や地域住民の暮らしの安全の確保にも貢献するものです。

例えば、全国に21万か所あるため池は、農業用水の水源として利用されていますが、受益面積が2ha以上のため池の4分の3は江戸時代もしくはそれ以前に築造されたものであり、老朽化したその堤体が決壊してしまうと、下流に甚大な被害を及ぼすおそれがあります。このため、ため池の適切な維持管理、補修や改修を行うことが、堤体の決壊による下流の農地や住宅、公共施設等への被害の未然防止策として重要です。例えば、平成21年(2009年)7月の中国・九州北部豪雨災害の際、山口県防府市(ほうふし)では、改修されていたため池の堤体が上流からの土砂を受け止め、下流にある集落や公共交通施設への被害を最小限に防ぎました(図4-17)。

地すべりは斜面災害の一つで、地下水の上昇等によって斜面の一部がある程度もとの形を保ったまま、比較的ゆっくりと下方に向かって移動する現象です。地すべり地(*1)は比較的緩やかな傾斜地を形成しており、古くから多くの地域で水田として利用されてきました。水田には、湛水を保持するための不透水層が形成されており、これが雨水の浸透による急激な地下水位の上昇を防いで地すべりを抑制しています。こうした地すべり地などでは、水田の見回りによる地すべり兆候の早期発見が期待され、その適切な対応によって災害の効果的な予防・軽減につながることになります。平成21年(2009年)2月、山形県鶴岡市七五三掛(つるおかししめかけ)地区において、例年より早い融雪で、地下水が急激に上昇したこと等から地すべりが発生し、その後活動が活発化し、大規模化したため、農地や下流域への被害を防ぐための緊急対策が行われました。地下水を排除するなどの適切な対策により、同年7月以降は地すべり活動は沈静化しつつあります。

このように、災害の発生を抑制し、安全で快適な農村を維持していくためには、ため池、農地といった農村資源を適切に管理していく必要があるといえます。


*1 「地すべり等防止法」に基づいて指定された地すべり防止区域

図4-17 ため池の土砂流出防止の例(山口県防府市(ほうふし))

(ハード、ソフト対策と地域住民の取組を組み合わせた「災害に強い農村づくり」が重要)

自然災害の発生は、抑制することはできても、なくすことは困難です。災害発生時または発生のおそれがある時は、都道府県や市町村が災害対策本部を設置し、指定地方行政機関や陸上自衛隊、警察、消防、指定公共機関等が連携して対策に当たります。

しかし、地震等の災害発生時に、道路や通信手段が寸断され、集落が孤立することもあります。孤立する可能性のある農業集落(*1)は、特に山間を中心に17,406集落あり、なかでも長野県(1,276集落)と広島県(1,114集落)で多くなっています(図4-18)。災害が発生した際には、孤立した集落と市町村との間の通信を確保することはもとより、通信設備が使えなくなることも想定して、自主防災組織を中心とした体制の構築を図ることも必要となります。自主防災組織は、住民の隣保協同の精神に基づく自発的な防災組織で、災害発生時には、近隣住民相互の初期消火や救出、救護、避難誘導といった活動等が期待されます。

自主防災組織の活動カバー率は、東海地震が発生した場合に大きな被害が想定されている県で高い傾向があるなど、都道府県によって差異があります(図4-19)。市町村別にみると、過疎地域等の条件不利地域で活動カバー率が低い傾向にあり、特に全域が振興山村、離島である市町村では5割となっています(図4-20)。

安全で快適な農村の暮らしの実現のためには、国・地方公共団体による洪水対策や土砂災害対策等のハード整備とともに、ハザードマップや情報連絡システムの整備等のソフト対策のほか、地域住民による農村資源等管理活動への参画や自主防災組織結成といった対策を組み合わせた「災害に強い農村づくり」が重要です。


*1 図4-18の注釈参照


事例:自主防災組織を結成し、避難基準の作成や避難訓練に取り組む高齢化集落
鹿児島県薩摩川内市(さつませんだいし)
自家用車による避難訓練
自家用車による避難訓練

鹿児島県薩摩川内市(さつませんだいし)の本俣(ほんまた)地区は、川内(せんだい)川支流の田海(たうみ)川上流の山間部に位置し、地区内4つの班で31世帯58人が居住しています。住民の7割以上が65歳以上の高齢者であり、世帯員がすべて高齢者の世帯は全体の8割となっています。

平成9年(1997年)の3月から5月に、3回の震度5強のものを含め地震が多発し、梅雨時期で大雨と重なり土砂災害の危険性も高まったことから、本俣地区の全世帯が仮設住宅に避難しました。避難生活は4か月にわたり、その間に住民のなかで、「本俣に戻ったら自分たちの集落は自分たちで守ろう」という気運が高まり、平成10年(1998年)5月に「本俣自主防災組織」が結成されました。

本俣自主防災組織は、地震の際の教訓を活かし、毎年、梅雨期直前に避難訓練を行っています。訓練は、特に支障がない限り全住民が参加します。避難基準で決められた避難時の非常用持ち物を手にして、災害時要援護者以外は徒歩で自治公民館に避難します。消防団員も駆けつけ、住民の避難誘導等を行います。住民が公民館内に集まった後は、市の消防局員による非常用持ち物の点検や説明、警察署職員による防犯意識啓発活動等を行い、最後は住民全員で、炊き出し訓練でつくったおにぎりや非常食で食事をとります。なお、この組織の事務局は、地区内の林業会社が務めています。

また、本俣自治会としても、地震後の集団避難の体験に基づき、「防災規約」として避難基準を作成しています。避難場所を本俣地区の中心から4km離れた小学校隣接のコミュニティセンターとし、避難の手段を自家用車としています。地区の半数の世帯が車を所有しており、どの世帯がどの世帯の車に乗るか、乗せるかといった分乗計画も作成されています。また、地区外で勤務する住民の勤務先や、被災時・復興時に活躍が期待される住民の職業や勤務先といった、きめ細やかな情報が記載されています。

このように、本俣地区では、地域一体となって活動が展開されることにより、日常の暮らしと防災が緊密に結び付き、住民の日々の安心につながっています。

 

お問合せ先

大臣官房広報評価課情報分析室
代表:03-3502-8111(内線3260)
ダイヤルイン:03-3501-3883
FAX:03-3593-9467