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農林水産省

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(4)都市と農村の交流・人材の育成 エ 若者による農業・農村への積極的かかわり

(多くの農業高校で農産物のブランド化等、様々な取組)

1960年代から1970年代には500校ほどあった農業高校は、少子化等の影響で統廃合が進み、現在では333校に減少し、生徒数も平成21年(2009年)では87,636人、高等学校の全体の生徒数の3%程度となっています(*1)。しかし今、農業高校は、我が国の農業・農村のおかれた厳しい情勢を少しでも改善していきたいとの思いから、若い力を発揮して様々な取組を行っています。例えば、農業高校生が地元特産の作物を育て加工した製品、いわゆる「農業高校ブランド」の商品づくりが多くの学校で行われています。また、鳥獣被害や地球温暖化対策等、農業・農村全般にかかわる取組等も行われています。

現在、農業高校卒業生の進路は、23%が専修学校、15%が大学や短期大学への進学、51%が他産業への就職、2%が就農等となっていますが、今後、これらの取組を通じて、卒業生が新規就農者や農業・農村活性化のためのコーディネーター等として活躍することが期待されます。


*1 文部科学省 「平成21年度学校基本調査」

事例:様々な農業高校ブランド等
(1)加工品開発等(農業高校ブランド)の取組

新潟県立長岡(ながおか)農業高等学校

米ぬかを除草剤に使用するなど、農薬や化学肥料を抑えた循環型農業を実践し、コシヒカリを栽培しています。

新潟県長岡市加工品開発等(農業高校ブランド)の取組(新潟県)

愛知県立渥美(あつみ)農業高等学校

外見も種の部分も四角いメロンを生産しています。生徒のアイデアを基に開発し、特許の取得、商標登録も行っています。

愛知県田原市加工品開発等(農業高校ブランド)の取組(愛知県)

沖縄県立北部(ほくぶ)農林高等学校

沖縄在来種の「アグー」と米国系品種「デュロック」をかけ合わせた豚を生産しています。大型で肉の量が多いことが特徴です。

沖縄県名護市加工品開発等(農業高校ブランド)の取組(沖縄県)

青森県立弘前(ひろさき)実業高等学校 藤崎校舎

学校で栽培・収穫したりんごをジュースやジャムに加工しています。

青森県弘前市加工品開発等(農業高校ブランド)の取組(青森県)

山形県立置賜(おきたま)農業高等学校

生徒が育てた米をもち皮に、学校産のかぼちゃと地元産の紅大豆、秘伝豆をあんに使用した和菓子をつくっています。

山形県川西町加工品開発等(農業高校ブランド)の取組(山形県)

茨城県立鉾田(ほこた)農業高等学校

学校の農場で育てた小麦とかぼちゃを使用して、かぼちゃパンを製造しています。

茨城県鉾田市加工品開発等(農業高校ブランド)の取組(茨城県)

鳥取県立日野(ひの)高等学校

国産の大豆と米麹を使用し、地元で昔から伝わる味噌づくりに取り組んでいます。味噌は学校のアンテナショップ等で販売しています。

鳥取県日野町加工品開発等(農業高校ブランド)の取組(鳥取県)

熊本県立八代(やつしろ)農業高等学校

生徒が作ったトマトや地元農家が収穫した規格外トマトをピューレにし、規格外の地元産なしやいちご、ぶどう、しょうが、レモン等を配合した万能たれをつくっています。道の駅や学園祭で販売し、人気を得ています。

熊本県八代市加工品開発等(農業高校ブランド)の取組(熊本県)
(2)鳥獣被害対策の取組

栃木県立栃木(とちぎ)農業高等学校

麻と農村の生活文化を研究していた生徒が、農作物を野生動物の被害から守るロープを考案しました。このロープはとうがらしのエキス等を染みこませたもので、農業資材会社によって平成20年(2008年)3月に商品化されました。手軽さが人気で、これまでに1万本売れています。

栃木県栃木市鳥獣被害対策の取組(栃木県)
(3)地球温暖化対策の取組

京都府立桂(かつら)高等学校

古来から日本に自生していた「ノシバ」(北海道北部以外の日本全土に自生する芝。山芝や地芝等とも呼ばれる)の種子・増殖方法確立に挑戦し、発芽率を大幅に向上させました。これにより屋上緑化用の芝マットの開発に成功しています。

京都府京都市地球温暖化対策の取組(京都府)
(4)産学連携による共同開発の取組

宮崎県立高鍋(たかなべ)農業高等学校

学校で作った乳酸菌飲料を生地に練り込んだメロンパンをコンビニエンスストアと共同で開発しました。平成21年(2009年)10月から12月まで限定発売され、九州全県で1日平均約1万個売れました。

宮崎県高鍋町産学連携による共同開発の取組(宮崎県)
(5)競走馬の育成の取組

北海道静内(しずない)農業高等学校

全国の公立高校で唯一、サラブレッドの繁殖、育成、調教、乗馬に関する知識と技術等を総合的に学習する授業が行われています。同校の生産馬は、市場で落札されています。なかには中央競馬で勝利した馬もいます。

北海道新ひだか町競走馬の育成の取組(北海道)

(若者による農業への積極的なかかわり)

最近、若者の間で農業への関心が高まり、いろいろな形で農業にかかわる動きが出てきています。これら若者の取組が始められたきっかけは、農業・農村の将来への危機感、雇用不安、食・農村・自然への関心等様々なものがあると考えられます。また、その内容も、(1)自ら就農する取組、(2)農村におもむき地域の活性化に参加する取組、(3)マーケティング等で農産物の販売を支援する取組、(4)若手農業者組織が自主的に行う啓蒙活動の取組、(5)雑誌等を通じて農業・農村の魅力を伝える取組等多種多様なものがあります。


事例:農業に関心をもち、活動している若者
(1)自ら就農する取組

福井県坂井市(さかいし)

経営コンサルタントをしていた若者が、I農業法人を立ち上げ、ベビーリーフの栽培を行っています。レストラン等に直接販売することで、近年売上げを伸ばしています。

福井県坂井市自ら就農する取組(福井県)
(2)農村におもむき地域の活性化に参加する取組

秋田県大潟村(おおがたむら)

20歳代前半の元会社社長が、若者が食や農業に関心をもつきっかけづくりのため、雑誌モデルたちとともに、秋田県の農業法人と共同で、同県で米の栽培を行い、収穫した米を東京都内等で販売しています。この新しい試みは、「農業するギャル」通称「ノギャルプロジェクト」といわれています。

秋田県大潟村農村におもむき地域の活性化に参加する取組(秋田県)

福島県須賀川市(すかがわし)

東京の大学生が福島県で農作業の手伝いと、地元の中高生に勉強を教える取組「農泊せんせい」を行っています。

福島県須賀川市農村におもむき地域の活性化に参加する取組(福島県)

山口県宇部市(うべし)

特定非営利活動法人学生耕作隊は、農繁期等に農村地域で農作業を手伝ったり、遊休農地の復興等の手伝いを行っています。また、山口県内の農産物や加工品を買って、県内や都内の提携先の施設で販売すること等により、6次産業化の取組にも寄与しています。

山口県宇部市農村におもむき地域の活性化に参加する取組(山口県)

全国

JASC(ジャスク)(日本農業系学生会議)では、多くの学生団体やサークルが集い、農業について勉強したり、大いに議論したりしています。

農村におもむき地域の活性化に参加する取組(全国)
(3)マーケティング等で農産物の販売を支援する取組

北海道・東京都・島根県

東京の大学生が、団体を立ち上げ、島根県で生産された規格外野菜を販売する露店を東京都内で開いています。規格外野菜を買い取って、料理を提供している島根県の旅館でのインターンシップがきっかけとなりました。また、学生たちは、札幌市にI食品流通・加工会社を設立し、規格外の道産野菜を本州に運ぶ新たな流通網づくりに取り組んでいます。運輸会社や地域のボランティアの協力も得て、採算を確保したいと考えています。

北海道東京都島根県
マーケティング等で農産物の販売を支援する取組(北海道・東京都・島根県)
(4)若手農業者組織が自主的に行う啓蒙活動の取組

北海道浦幌町(うらほろちょう)

十勝地方の若い農業者が、都市と農山漁村の相互補完関係を構築しようと「十勝おやじの背中を超える会」を設立しました。原料作物の一大産地である十勝の役割と価値の発信をテーマにイベント等を実施し、大都市の消費者との交流を通じ、農業や地域の活性化を目指しています。

北海道浦幌町若手農業者組織が自主的に行う啓蒙活動の取組(北海道)
(5)雑誌等を通じて農業・農村の魅力を伝える取組

都会の若者等に向けて、農業に取り組む若い世代のライフスタイル、農業の魅力、農業体験や新規就農に至るまでの情報等を盛り込んだ様々な雑誌等が発売されています。


(「農」に対する消費者等の支援)

これまでは、農業・農村を支える取組は主に行政や農業関係団体によって行われてきましたが、近年、各地において消費者等が応分の負担を行いつつ、農業者・農村を主体的に支えようとする動きがみられるようになっています。


事例:「農」を支える新たな連携
(1)消費者等が生産者を支える動き
CSA(*1)の取組

北海道長沼町(ながぬまちょう)

地域内の農家と消費者が、農業の恵みとリスクを分かち合う新たな産直システムであるCSAを実践しています。会員(消費者)は、かかる費用の合計を年会費として支払い、5月から約半年間、隔週の決まった曜日に多品種少量の農産物を受け取っています。

北海道長沼町CSA の取組(北海道)

消費者が生産者を応援する取組

岩手県奥州市(おうしゅうし)

JA江刺りんご部会では、平成21年度(2009年度)より、奥州市と連携して江刺りんごをPRするため、「江刺りんごサポーター」事業を立ち上げました。この取組は、サポーターに年数回、広報誌や江刺りんごの代表品種「サンふじ」を発送したり、収穫体験をしてもらったりすることで、りんごについての関心を深めてもらい、消費者・関係者みんなで江刺りんごを支えていくことをねらいとしています。

岩手県奥州市消費者が生産者を応援する取組(岩手県)

地域における援農の取組

千葉県我孫子市(あびこし)

農家、消費者、団体・法人で構成する、あびこ型「地産地消」推進協議会では、消費者が週3回、3時間単位で農家の作業を手伝う援農ボランティア活動を実施しています。平成21年度(2009年度)の活動は2,100回を数えています。

千葉県我孫子市地域における援農の取組(千葉県)
(2)生協活動を通じた支援の動き
販売額から農家に支援金を送る取組

岡山県岡山市(おかやまし)

鳥インフルエンザ被害をきっかけに、産直の卵生産者の不慮の被害への補てん等を目的として、産直の卵1パックにつき、1円の募金を上乗せして販売しています。

岡山県岡山市販売額から農家に支援金を送る取組(岡山県)

鹿児島県鹿児島市(かごしまし)

飼料価格高騰で経営がひっ迫した酪農家を支援するため、平成20年(2008年)6月から平成21年(2009年)2月の間、生協が販売した大隅産牛乳1本当たり2円を県酪農協へ支援金として送っています。

鹿児島県鹿児島市販売額から農家に支援金を送る取組(鹿児島県)

生産者と消費者が参画し、有機野菜を届ける取組

熊本県益城町(ましきまち)

生産者が組合員でもあるこの生協では、消費者に有機野菜を届ける活動を行っています。価格は生産者の希望を基に設定され、豊作不作にかかわらず価格は一定となっています。消費者は、「提携」により生産者を支える意識をもっています。

熊本県益城町生産者と消費者が参画し、有機野菜を届ける取組(熊本県)

土づくり等を支援する取組

東京都

組合員がお金を出し合い、資金を産地に低利で融資する「土づくり基金」をつくり、たい肥場建設や農業機材の購入等に活用しています。

東京都土づくり等を支援する取組(東京都)

基金等により多様な活動を支援する取組

全国・新潟県

事業連合組織では、農林漁業の発展等への貢献を目的に、活動の余剰金の一部を活用した基金を設立し、調査研究、環境保全、食育等に取り組む生産者・生産者団体・メーカー・特定非営利活動法人へ助成しています。また、JAささかみ(新潟県)と、特定非営利活動法人「食農ネットささかみ」を設立し、産直交流、食育に取り組んでいます。

全国・新潟県基金等により多様な活動を支援する取組(全国・新潟県)
(3)NPO・企業等と連携した動き
企業と連携して耕作放棄地を解消する取組

山梨県北杜市(ほくとし)

特定非営利活動法人「えがおつなげて」は、企業との連携による耕作放棄地活用を行っています。耕作放棄地の貸し手と借り手のマッチング機会の提供や、イベントの開催等により、農村での企業CSR(*2)活動、人材育成、安全・安心な農産物の直接調達も行っています。

山梨県北杜市企業と連携して耕作放棄地を解消する取組(山梨県)

メーカーの支援により耕作放棄地を解消する取組

K機械メーカーは、ディーラーや第三者機関との連携により、農業の活性化を支援しています。耕作放棄地の農地への復元整備と作物栽培作業の一部を、農業機械作業での応援を通じて支援しています。

メーカーの支援により耕作放棄地を解消する取組

*1 CSA(Community Supported Agriculture)とは、「地域支援型農業」のことであり、特定の消費者が、生産者と農産物の種類、生産量、価格、分配方法等について、代金前払い契約を結ぶ農業のことです。
*2 CSR(Corporate Social Responsibility)とは、「企業の社会的責任」のことです。企業が活動するに当たって、社会的公正や環境等への配慮を組み込み、従業員、投資家、地域社会の利害関係者に対して責任ある行動をとるとともに、説明責任を果たしていくことが求められています。

(若者や消費者等の取組は未来に大きな希望)

農業者の減少・高齢化、後継者や若者の不在、地域の活力低下等、農村では厳しい状況がいわれ続けています。一方で、近年の景気悪化もあり、平成21年(2009年)では15~24歳の若年層のうち、中高卒者の完全失業率が年平均14%と過去最悪になるなど、若者も含め雇用環境は非常に厳しくなっています(*1)。未来に向けて「夢と希望のある農業・農村」を目指すためには、このような「若者を求める農村」と「職を求める若者」等とのミスマッチを解消していくことが必要と考えられます。

既にみたような昨今の若者、消費者等の取組や支援については、決して一過性のものとせず、継続的に行われるようにしていくことが重要です。各地で若者等を取り込み、農村地域の活性化等に成功している取組をみると、地域の関係機関等の熱心な支援やコーディネーターの活躍があります。今後これらをより盛んにしていくため、全国・地域段階でしっかりしたサポートを行うことが一層重要となっているのではないでしょうか。


*1 総務省「労働力調査(2010年2月(速報))」(平成22年(2010年)3月公表)

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大臣官房広報評価課情報分析室
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