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農林水産省

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トピックス 戸別所得補償モデル対策の実施

(戸別所得補償制度の導入とその背景)

我が国においては、食料自給率が昭和40年度(1965年度)の73%から大きく低下し、食料の約6割を海外に依存する状況にあります。一方で、農業者の減少・高齢化や農地面積の減少が続き、農村では過疎化・高齢化等により活力が低下する状況にあります(この動向については、後述の第1章「食料自給率の向上と食料安全保障の確立に向けて」、第3章「農業の持続的発展に向けて」、第4章「農村地域の活性化に向けて」において詳しく述べます。)。

我が国農業の産業としての持続性を速やかに回復させ、食料自給率の向上と多面的機能の維持を図るため、戸別所得補償制度を導入し、小規模農家を含め、意欲あるすべての農業者が農業を継続できる環境を整え、創意工夫ある取組を促していくことになりました。

平成22年度(2010年度)においては、戸別所得補償制度の本格実施に向けて、戸別所得補償モデル対策を実施します。


(戸別所得補償モデル対策の内容)

平成22年度(2010年度)に実施する戸別所得補償モデル対策は、予算総額5,618億円を確保し、我が国の農地面積の過半を占め、農業の中心的な役割を果たしてきた水田農業を対象として、(1)水田を有効活用して、食料自給率向上のポイントとなる麦、大豆、米粉用米、飼料用米等の生産を拡大させるための支援(「水田利活用自給力向上事業」)と、(2)麦、大豆等の生産拡大に取り組むための前提として、水田農業の経営を安定させ、自給率向上に取り組む環境をつくりあげていくための支援(「米戸別所得補償モデル事業」)を一体として行うもので、具体的には以下のような内容になっています。


(1) 水田利活用自給力向上事業

本事業は、水田を有効活用し、麦、大豆、米粉用米、飼料用米等の自給率向上を図るために国全体で取り組むべき作物(戦略作物)の生産を行う農業者・集落営農(*1)に対して、主食用米を生産する場合と同等の所得を確保し得る水準の交付金を直接支払により交付し、戦略作物の全国的な生産拡大を推進するものです。

また、野菜や雑穀等、各地域で各々の特色を活かした作物生産が行われている実態を踏まえ、地域の実情に応じて柔軟に交付対象作物や単価を設定できる仕組みを設け、戦略作物以外の作物についても生産を支援していくこととしています。

本事業については、これまで米の需給調整に参加してこなかった方も段階的に戦略作物の生産に取り組めるよう、米の生産数量目標の達成に関わらず、交付金を交付することとしています。


*1 [用語の解説]を参照

(2) 米戸別所得補償モデル事業

本事業は、意欲ある農業者が水田農業を継続できる環境を整えられるよう、恒常的に生産費が販売価格を上回る米について、直接支払により所得補償するものです。


平成22年度(2010年度)「水田利活用自給力向上事業」の交付単価

平成22年度(2010年度)「米戸別所得補償モデル事業」の仕組み

具体的には、標準的な生産費と標準的な販売価格との差額分を、構造的に是正が必要な部分として、価格水準の動向に関わらず、「定額部分」として10a当たり1万5千円を、主食用米の作付面積(自家消費用・贈答用等分として10a控除)に応じて交付します。また、当年産の販売価格が標準的な販売価格を下回った場合には、その差額分を基に「変動部分」を算定し、交付します。

本事業については、「米の生産数量目標」に即した生産を行うこと、すなわち需給調整に参加した販売農家・集落営農であって、水稲共済加入者であるものが対象となります。また、地域に共済組合がない、当然加入面積(*1)に満たないといった理由で共済に加入していない者についても、前年の出荷・販売実績があれば、本事業に加入することができます。

なお、交付金を全国一律の単価とすることにより、規模拡大やコスト削減の努力をした農家や、販売価格を高める努力を行った地域ほど、所得がふえる仕組みとなっています。


*1 農業共済([用語の解説]を参照)において、当然加入することとなっている基準の面積

(戸別所得補償制度による生産調整政策の大転換)

戸別所得補償制度の導入により、過去40年にわたって農村を疲弊させ、閉塞感を与えてきた生産調整政策についても大転換が図られます。

これまでは、米の生産調整は、生産調整達成者のみに麦、大豆等の助成金を交付する手法により進められてきましたが、この手法では、(1)水田で麦、大豆等を生産できるのは、米の生産調整に協力した農家だけに事実上限定される、(2)米の生産調整の仕組みの変更により、麦、大豆等の生産量が変動するため、実需者への安定供給が阻害され、需要面からも自給率向上につながりにくい、といった問題がありました。また、生産調整参加農家の努力によって米価が維持されることにより、非参加農家がより多くのメリットを受けるといった弊害も発生していました。

このため、今後は、米の需給調整は米への強力なメリット措置により行うようにする一方、麦・大豆等については、米の生産数量目標の達成いかんにかかわらず、麦、大豆等の生産に取り組んだ農家に支援することにしました。これにより、米の需給調整に参加した農家だけがメリットを受け、不公平感が解消される効果が見込まれるとともに、生産調整に参加してこなかった農家も麦、大豆等の生産に取り組みやすくなり、国民に対する食料の安定供給や自給率向上に貢献することが期待されます。


(戸別所得補償モデル対策の検討に当たっての論点)

戸別所得補償モデル対策の予算要求は、平成21年(2009年)10月15日に行いましたが、年末までの間に事業の具体的内容については、広く国民からの意見を求めつつ、検証してきました。これらの意見の中には、「自給率を向上させるためには、米ではなく、麦、大豆でモデル事業を行うべきではないか」、「なぜ余っている米に所得補償するのか」、「なぜサラリーマン農家に所得補償するのか」等様々なものがありました。

これらに対しては、「食料自給率向上の要は、麦、大豆とセットで米に支援を行い、水田農業の担い手の経営安定を通じて、水田の転作作物の増産を図ることにある」、「米について、定額部分の助成を行うことにより、担い手の経営安定を図り、将来の構造改革につなげていくことが重要」、「サラリーマン農家も、食料供給と多面的機能の維持に貢献している。担い手がいない水田集落(*1)が全体の過半を占めるなか、担い手を一気に出現させるのは難しく、サラリーマン農家を後押しして、担い手を育てていくのが現実的」等と説明し、理解を得るよう努めてきたところです。


*1 農業集落内の耕地面積に占める水田の割合が70%以上の農業集落

(戸別所得補償モデル対策に関する周知と理解のための取組)

平成21年(2009年)12月22日に戸別所得補償モデル対策の骨格が固まりました。これを受け、速やかに現場への周知徹底を図るとともに、広く国民の理解を得る必要があることから、12月28日の全国説明会を皮切りに、政務三役も参加してブロック説明会(全国8か所)、都道府県説明会を開催し、その後地区別の説明会を全国各地で開催した結果、3月末までに8千か所で、延べ30万人を超える方の参加がありました。今後とも、モデル対策の円滑な実施に向けて多くの農業者が加入されるように周知に努めていく考えです。


郡司農林水産副大臣
山田農林水産副大臣
戸別所得補償モデル対策にかかるブロック説明会(左:郡司農林水産副大臣(平成22年(2010年)1月13日、関東ブロック)、右:山田農林水産副大臣(平成22年(2010年)1月14日、北陸ブロック))

(今後のスケジュールと論点)

本モデル対策は6月末が加入申請の期限となっており、7月以降に作付面積の確認を行い、早ければ12月から農家に交付金を交付することになっています。これと並行して、このモデル対策の効果を十分に検証するとともに、なたね、そばの生産費や単収等にかかる新たな統計データの把握を行い、本格的な戸別所得補償制度の実施に向けて検討を行っていきます。

この場合、まずは恒常的に販売価格が生産費を下回っている米、麦、大豆等の土地利用型作物を対象に制度設計を行うこととしますが、具体的な対象品目については、生産費等の統計データを踏まえて、さらに検討を進めることになります。また、規模、品質、環境保全の取組等に応じた加算について、他の生産・経営関係施策や地域資源・環境の保全のための施策等との関係を整理しつつ、制度上の位置付けを検討していきます。


日本・EUにおける農業所得に占める政府からの直接支払額の割合

農業所得に占める政府からの直接支払額の割合についてみると、我が国では23%になっているのに対し、EUにおいては、78%となっており、これを通じて多面的機能を有する農業を支えています。

戸別所得補償制度の導入は、我が国における農業所得に占める政府からの直接支払額の割合を高めるものであり、このような意味からも農政の大転換に大きく舵をとるものといえます。



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