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農林水産省

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(1)食品の安全性の向上に向けた取組

(食品の安全性の向上のためには科学的根拠に基づいたリスク管理が重要)

食品の安全性向上のためには、「後始末より未然防止」の考え方に基づき、生産から消費にわたる取組を進めることが重要です。このため、農林水産省では、科学的根拠に基づいてリスク管理を実施しています(図2-1)。


図2-1 フードチェーンの各段階における食品の安全性向上のための取組

まず、食品安全に関する情報を収集・分析し、優先的にリスク管理の対象とする有害化学物質・有害微生物を決定した上で、農畜水産物・食品中の含有実態調査を行っています。また、これら実態調査の結果を解析し、必要がある場合には、低減対策を検討することとしています。

このような手順の下、

(1)国民の主要なカドミウム摂取源であるコメに関するカドミウム対策を一層推進するため、生産段階における低減対策を取りまとめた指導者向けの「コメ中のカドミウム濃度低減のための実施指針」 (平成23(2011)年8月)

(2)乾燥調製施設や貯蔵施設でのコメのカビ汚染を防ぐ対策を取りまとめた生産者向けの「米のカビ汚染防止のための管理ガイドライン」(平成24(2012)年2月)

(3)生鮮野菜を衛生的に保ち、食中毒を防ぐため、生産者向けの「栽培から出荷までの野菜の衛生管理指針」 (平成23(2011)年6月)

(4)畜産物の安全性を向上させるため、牛肉及び鶏肉の生産農場への食中毒菌の侵入やまん延を防ぐ対策を取りまとめた生産者及び指導者向けのハンドブック(平成23(2011)年8月)

をそれぞれ作成し、農林水産省のホームページに掲載するとともに、生産現場への普及を始めました。

このほか、平成23(2011)年4月に発生したユッケ(生食用食肉)の食中毒事件を受けて食中毒の発生を防ぐため、生食用食肉を取り扱う業者を対象とした「生食用食肉の取扱いマニュアル」を作成、改訂しました(平成23(2011)年7月作成、平成24(2012)年2月改訂)。

今後、さらに、これらの低減対策の実行可能性・有効性を検証する取組や、「農業生産工程管理(GAP)」への反映を通じて、生産現場に強力に普及を進めていくこととしています。

また、食品安全にかかる施策の推進に活用するため、レギュラトリーサイエンス(科学的知見と規制や行政措置の橋渡しとなる科学)の研究を推進しています。


(危害分析・重要管理点(HACCP)手法導入のさらなる促進が必要)

食品の製造段階においては、原料入荷から製造・出荷までの各工程で有害微生物による汚染等の危害を予測・分析し、危害の防止につながる特に重要な工程を継続的に監視・記録し、製造工程全般を通じて製品のより一層の安全性を確保する「危害分析・重要管理点(HACCP)手法(*1)」の導入の取組を推進しています(図2-2)。

HACCP手法は、最終製品の抜取検査等の従来の管理手法に比べて、より効果的に問題のある製品の出荷を未然に防ぐことが可能な手法であり、衛生・品質管理に有効な手段として国際的にも広く認知されています。

*1 〔用語の解説〕を参照

図2-2 食品の製造段階におけるHACCP 手法の概要図

HACCP手法の導入状況をみると、農林水産省の調査では、食品製造業者のHACCP手法導入率(すべての工場または一部の工場で導入済み、または導入途中)は、平成12(2000)年度では10%(*1)でしたが、平成22(2010)年度では19%(*2)と約9ポイント上昇しています。

これを、販売金額規模別にみると、50億円以上の層が7割以上となっているのに対し、10億~50億円は48%、3億~10億円は21%、1億~3億円は9%、5千万~1億円は7%、5千万円未満は6%と販売金額規模が小さいほどHACCP手法の導入率は低くなっています(図2-3)。



こうした中、平成23(2011)年12月に取りまとめた「「我が国の食と農林漁業の再生のための基本方針・行動計画」に関する取組方針」(以下「再生取組方針」という。)においては「品質等を客観的に評価できる取組」として、平成24(2012)年度における中小規模層の食品事業者(年間販売金額1億~50億円)のHACCP手法の導入率の目標を50%と設定しています。

平成22(2010)年度にHACCP手法を導入済みまたは導入を予定している食品製造業者を対象に農林水産省が行った調査(*3)によると、HACCP手法の導入に当たっての問題点については「施設・設備の整備に多額の資金が必要」や、「モニタリング・記録管理等の運用コストが大きい」、「HACCP手法を指導できる人材がいない」があげられています。

こうした状況を踏まえ、HACCP法(*4)に基づく低利融資措置に加え、低コスト導入手法の普及促進や、HACCP手法に関する責任者及び指導者を育成する研修等の取組を実施しており、HACCP手法の導入を促進するため、これらの取組を着実に進めていくことが重要です。


*1 農林水産省「平成12年食品産業動向調査報告-安全性確保対策等の状況-」(平成14(2002)年3月公表)
*2、3 農林水産省「食品製造業におけるHACCP手法の導入状況意識調査」(平成23(2011)年5月公表)
*4 正式名称は「食品の製造過程の管理の高度化に関する臨時措置法」

事例:HACCP 手法の導入により商品の品質向上と経営の効率化が実現
福岡県(飯塚市)
区画の整備のためにビニールカーテンを使用
区画の整備のためにビニールカーテンを使用

福岡県飯塚市(いいづかし)の(株)グレアは、自社で製造している洋菓子の販売先を自社小売店以外の店舗に拡大することを契機として、取引先の求める衛生・品質管理の体制を構築するため、平成21(2009)年秋からHACCP手法の導入の検討を開始し、平成22(2010)年にHACCP手法を導入しました。

HACCP手法の導入を踏まえ、製造過程における微生物等による汚染を防止するため、製造ラインの動線(人とものの動き)の単純化、空気を浄化している清浄区域とその他の区域の明確化・区分けに重点的に取り組みました。

同社によると、この取組により、HACCP手法導入前と比較して、異物混入が減少し、顧客からのクレームが少なくなるなど、商品の衛生・品質が向上する効果が現れています。

また、衛生・品質管理に対する従業員の意識改革が進み、管理のルールに基づき適切な検証ができるようになった結果、問題が起こる前に対策を講ずることができるようになりました。

さらに、これらの取組は、企業経営の効率化にも反映しており、時間当たり生産量の5割増加や人件費の縮減が実現しました。

洋焼き菓子製造工程の短縮と整備でコストダウン

(農業生産工程管理(GAP)の導入産地数は増加)

農業生産工程管理(GAP)(*1)とは、農業生産活動を行う上で必要な食品の安全、環境保全、労働安全等に関する関係法令等に基づく点検項目に沿って、農業生産における各工程の正確な実施、記録、点検及び評価を行うものです(図2-4)。これにより、食品の安全性向上、環境の保全、労働安全の確保、競争力の強化、品質の向上、農業経営の改善や効率化に資するとともに、消費者や実需者の信頼の確保が期待されます。


*1 〔用語の解説〕を参照

図2-4 GAP の導入・実践の流れ

我が国では、これまでの間、農業者・産地、農業者団体、地方公共団体及び民間団体等の様々な関係者によりGAPの導入・普及に向けた取組が行われてきました。農林水産省においても、GAPの手法について定義を示し、基礎的な事項について全国的に汎用性の高い「GAP手法(基礎的GAP手法)のモデル」(平成19(2007)年3月)及び「GAP手法導入マニュアル」(平成20(2008)年1月)を作成するなどGAPの導入・普及に向けた取組を支援してきました。

一方で、様々な主体によって、それぞれの実情に合わせた独自の取組が進められてきたため、取組内容が多岐にわたっており、取組内容の共通基盤を整理することが課題となっています。また、科学的知見や消費者・実需者のニーズを踏まえた取組への対応も課題となっています。

こうした実態を踏まえ、GAPについて、基本計画においては、「共通基盤づくりを進めるとともに、産地における更なる取組の拡大と取組内容の高度化を推進する」としています。

このため、農林水産省は、食品安全、環境保全や労働安全に関する法体系や諸制度等を踏まえた高度な取組内容を含むGAPの共通基盤として、平成22(2010)年4月に野菜、米、麦を対象として、「農業生産工程管理(GAP)の共通基盤に関するガイドライン」(以下「ガイドライン」という。)を策定しました。ガイドラインでは、我が国の農業生産活動において実践を奨励すべき取組を明確化し、個々の法令等に定められている取組をパッケージとして取りまとめています。ガイドラインは平成23(2011)年3月の改定により、耕種全般(9分類:野菜、米、麦、果樹、茶、飼料作物、その他の作物(食用の大豆等)、その他の作物(非食用の花き等)、きのこ)に対象を拡大しています。

また、再生取組方針においては、GAPの導入産地数を平成27(2015)年度までに3千産地に拡大すると設定しています。生産者の主体的な取組に加え、指導者の育成や産地におけるGAPの取組支援、説明会やGAPの取組を支援するデータベースによる情報提供等により、GAPの導入産地数は着実に拡大しており、平成23(2011)年3月末現在で2,194産地(調査対象産地数の52%)となっています(図2-5)。



事例:「かごしまの農林水産物認証制度(K-GAP)」を導入したいちごの生産
鹿児島県(さつま町)

鹿児島県さつま町の北さつま農協いちご部会は、生食であるいちごの安全性を根拠ある方法で消費者に伝えるとともに、他の産地との差別化を図るため、平成21(2009)年11月に「かごしまの農林水産物認証制度(K-GAP)」の認証を取得しました。K-GAPに基づく生産工程管理は、16項目68基準の評価項目に基づき、生産履歴の記帳や農薬の管理等が行われますが、部会員には高齢者も含まれることから、簡易な履歴記帳の工夫等を凝らしました。

K-GAP導入の結果、農薬に頼りすぎない病害虫の防除の推進による農薬散布回数の2割程度の軽減、異物混入防止や汚染源との隔離を通じた作業環境の衛生状態の保全、土壌診断に基づく適正施肥等によるコスト低減、通いコンテナを活用した流通経費の削減等を実現することができました。また、いちごの出荷前には、部会員全員参加の下、品質向上や出荷規格の統一を図るための目揃え会を実施し、品質の安定したいちごの供給を心がけています。

安全・安心ないちごづくりに向けた研修会の様子
安全・安心ないちごづくりに向けた研修会の様子
K-GAP認証マーク
K-GAP認証マーク

なお、様々な「労力・時間・コスト」を要して取得したK-GAPの認証であっても、販売段階においては、他産地との競合等により差別化が図りにくいという事情にあります。このため、安全・安心な農産物を消費者へ届けるための取組が優先取引につながるよう、消費者や流通業者に対して、さらに制度の周知を図ることが今後の課題となっています。


(参考)鹿児島県全体でのK-GAP認証状況:57品目、210団体・個人、延べ9,804戸(平成24(2012)年2月現在)

(輸入食品の安全性確保のために検査体制を強化)

食料供給の多くを輸入に依存する我が国にとって、輸入食品の安全性の確保は重要な課題であり、国民の関心も極めて高くなっています。このため、基本計画においては、「輸出国政府との二国間協議や在外公館を通じた現地調査等の実施、情報等の入手のための関係府省との連携の推進、監視体制の強化等により、輸入食品の安全性の確保を図る」としています。 

食品や添加物等の輸入については、その重点的、効率的かつ効果的な監視指導の実施を推進することにより輸入食品等の一層の安全性を確保することを目的とし、輸入食品監視指導計画が、毎年度、食品衛生法に基づいて定められています。同計画では、輸出国における生産等の段階から輸入後の国内流通の段階に至るまで、監視や検査を行うこと等が定められています。

このような中、厚生労働省の検疫所への輸入食品の届出件数は、平成元(1989)年の68 万件から大きく増加し、平成22(2010)年には200万件となっています(表2-1)。このような状況に対応するため、検疫所の検査員を平成元(1989)年の89人から平成22(2010)年には383 人に増加させるなど、検査体制を強化しています。

検査体制の充実により輸入食品検査数も年々増加し、平成22(2010)年には25万件となりました。このような中、近年の違反件数は1,100 ~1,500 件程度となっています。

今後、輸入食品については、輸入時の監視体制の強化を図るとともに、輸出国との二国間協議等による事後的な対応に加え、計画的な対日輸出食品の情報収集や現地調査により、その安全性確保を図っていく必要があります。



お問合せ先

大臣官房広報評価課情報分析室
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