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農林水産省

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(2)食品産業を取り巻く状況の変化とその対応

(国内市場の構造の変化)

我が国経済全体として、需給ギャップが拡大しデフレが進行する中、食品をめぐる状況をみると、人口減少・高齢化等により国内市場は量的に縮小傾向で推移しています。食品産業に密接に関連する国内の人口は、平成23(2011)年から平成32(2020)年までに2.9%(372万人)減少する一方で、65歳以上の高齢者の割合(高齢化率)は23.4%から29.1%に上昇すると見込まれています(図2-23)。



また、世帯数は1世帯当たり人員の減少に伴い増加しています。高齢者の単身世帯数の割合は、平成22(2010)年には9%を占めています(図2-24)。


(消費構造の変化に対応した取組)

今後、食品産業の市場規模を維持・拡大していくためには、これまでの取組に加えて、経済社会、消費動向等の変化を的確に把握した上でのきめ細かな対応が必要となっています。

このことについて、基本計画においては、「高齢者が飲食しやすい食品等消費者のニーズに合った新商品・メニューの開発を進めること等により、新たな価値を創造し、質が高く多様性に富んだ国内市場の維持・回復を進める」としています(図2-25)。


図2- 25 高齢者向け加工食品の区分

平成23(2011)年における病院・診療施設等に滞在する高齢者が83万人、在宅高齢者が2,700万人という高齢化社会においては、新商品・メニューの開発の中でも、高齢者向け食品の市場の新たな需要の掘り起こしと的確な対応は喫緊の課題となっています。

このような状況を踏まえ、農林水産省は、一般小売用の高齢者向け加工食品を推進するための課題を明確にするとともに、食品製造業・小売業等の円滑な連携等による安定的な高齢者向け加工食品の提供方策等を整理したガイドライン「高齢者向け加工食品の製造・流通推進に向けて」を平成23(2011)年12月に取りまとめました。

当ガイドラインについては、現在、関係する食品製造業者や食品流通業者等への周知が進められています。

また、急速な高齢化や消費者の健康意識の高まりを背景に、健康関連の食品が普及しています。サプリメント等の健康保持用摂取品(*1)の年間支出金額をみると、世帯主が60歳代の世帯での増加が目立ちます(図2-26)。

国内市場が縮小していく中、消費者のライフスタイルの変化を的確に捉えて、このような健康市場や朝食市場、訪日外国人等の潜在的需要を積極的に掘り起こして、新たな市場を開拓していくことが求められています。


*1 栄養成分の補給等、健康増進のために用いる食品で、錠剤、カプセル、顆粒状、粉末状、粒状、液(エキス)状等、通常の医薬品に類似する形態をとるもの


コラム:産学官による医食農連携

香川大学等の研究機関は、国や香川県、かがわ産業支援財団の支援を受け、自然界には存在量が少ない希少糖を大量生産する技術の開発とその機能の解明研究を行いました。

希少糖の一種であり、ノンカロリーで砂糖の7割程度の甘味をもつ「D-プシコース」は、食後血糖値の上昇抑制作用があるとして特定保健用食品の表示許可申請が行われたほか、内臓脂肪蓄積抑制作用も認められています。また、同じく稀少糖である「D-アロース」には、血圧低下作用や抗酸化作用等の生理活性があり、医薬品や機能性食品等への応用開発が進められています。

(株)レアスウィート(香川県)と松谷化学工業(株)(兵庫県)は、「D-プシコース」、「D-アロース」等の希少糖を含むシロップの開発に成功しました。香川県内の加工食品製造業者や飲食店は、このシロップを使用して、菓子類、デザート、パン等の製造、販売を行っているほか、同財団は、このようなD-プシコース入り食品のブランド化を図るため、商標の登録を行っています。

また、香川大学、香川県、農薬メーカー等により希少糖の新規農業資材への応用技術の研究が進められており、病害抵抗性の増強や生育促進等の効果が認められたことから、希少糖の農業分野への活用が期待されています。

一方、琴平町(ことひらちょう)では福祉・教育・観光が連携し、香川県において生産量全国2位のにんにくを使用した、にんにく入りオリーブオイルを開発し、町内の旅館、土産店、酒屋等で販売されています。にんにくの収穫作業や一部加工を農業者と障害者が行い、農業者の人手不足解消、障害者の自立に役立っています。


稀少糖を使用したお菓子
稀少糖を使用したお菓子
開発した農業機械
開発した農業機械
にんにく入りオリーブオイル
にんにく入りオリーブオイル
 

(対応が求められる食料品アクセス問題)

飲食料品店の減少、大型商業施設の郊外化等に伴い、過疎地域のみならず都市部においても、高齢者を中心に食料品の購入や飲食に不便や苦労を感じる消費者が増えてきており、食料品アクセス問題として社会的課題になっています。基本計画においても、「高齢化の進展等に対応し、民間事業者による多様な配達サービスが健全に展開されること等により、消費者への食料の円滑な提供を図る」としています。

農林水産省が全市町村(東京都特別区を含む)を対象として実施したアンケート調査によると、75%の市町村が「何らかの対策が必要(ある程度必要を含む)」と回答していますが、このうち、実際に対策を講じている市町村は57%、また、対策を検討中の市町村は16%となっています(図2-27)。実施中の対策としては、「コミュニティバス、乗合タクシーへの運行支援」が最も多く、次いで「空き店舗対策等への出店、運営支援」となっています。また、検討中の対策としては、「宅配、買い物代行サービス等への支援」が最も多く、次いで「コミュニティバス、乗合タクシーへの運行支援」となっています(図2-28)。

一方、27%の市町村は対策が必要であるにもかかわらずその検討を行っておらず、このうちの4分の1の市町村は、どのような対策が必要かわからないと回答しています。「対策を実施中」または「対策を検討中」としている市町村について人口規模別にみると、「人口20万人以上(政令指定都市、東京都特別区を除く)」や「人口5万~20万人」の市町村の方が「人口5万人未満」の市町村や「政令指定都市、東京都特別区」に比べて多くなっています。




このように、食料品アクセス問題は、社会的課題と認識されてから日が浅いこともあり、大都市や地方都市を中心に十分な対策がとられていない状況がうかがえます。

農林水産省は、この問題の生じる要因や地域間比較、改善のための取組等を分析した「食料品アクセス問題の現状と対応方向」(農林水産政策研究所)や先進事例(*1)を平成23(2011)年8月に取りまとめました。また、平成24(2012)年3月には、地方公共団体等が関係者との連携の下、食料品アクセス問題に取り組めるよう、食料品の購入や飲食にどの程度の不便や苦労が生じているかを地域ごとに客観的に推計するための指標を開発しました。

食料品アクセス問題の解決は、基本的には民間事業者や地域住民のネットワーク等による継続的な取組が重要です。しかしながら、今後、本格的な高齢社会を迎えるに当たって、食料の安定的な供給、高齢者の健康と栄養問題、地域公共交通のぜい弱化等の観点から、住民に最も身近な地方公共団体に加えて、国においても関係府省が連携して取り組んでいくことが課題となっています。


*1 農林水産省「食料品の買い物における不便や苦労を解消するための先進事例」(平成23(2011)年8月公表)

(食品産業の環境保全に向けた取組)

食品製造業、食品流通業及び外食産業からなる食品産業については、基本計画において、「企業としての社会的責任を果たすため、環境配慮への要請等を踏まえ、温室効果ガスの排出削減、食品廃棄物の削減と資源の有効利用を促進する」こととしています。

食品産業から排出される食品廃棄物等については、食品リサイクル法(*2)に基づきその発生抑制、有効利用を促進しています。平成21(2009)年度における食品廃棄物等の年間総発生量は、食品産業全体で年間2,300万t程度となっており、飼料や肥料等への食品循環資源の再生利用等の実施率は、食品産業全体でみると81%に達しています(図2-29)。

しかしながら、食品小売業や外食産業等の食品流通の川下に至るほど、分別が難しくなることから、食品製造業の再生利用等実施率は高いものの、食品卸売業、食品小売業、外食産業の順に低下しています。


*2 正式名称は「食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律」


一方、「MOTTAINAI(モッタイナイ)(*1)」に象徴される循環型社会形成のため、食品廃棄物の発生の抑制も進めていく必要があり、平成24(2012)年4月から、食品リサイクル法に基づき、一部の業種について「食品廃棄物等の発生抑制の目標値」が設定されます。これを契機として、事業者による発生抑制の取組の推進が図られることになりますが、過剰生産・在庫、返品等の原因となる商取引慣行について関係事業者間での話合いを行い、その改善に努めることが必要です。

このため、今後は、消費者との環境コミュニケーションが形成されるよう、食育等の消費者教育等を通じて消費者の食品廃棄物発生抑制に向けた意識改革を促していくことにより、フードチェーン全体で食品廃棄物等の発生抑制を進めていくことが重要です。

また、食品産業は、その事業活動の過程でエネルギーや資源を使うことによって、CO2を排出するなど環境負荷をかけていることから、実効性のある温室効果ガス(*2)削減の取組が求められています。食品産業では、平成23(2011)年度末までに20の業界団体が環境自主行動計画を策定し、高効率ボイラーやヒートポンプ等の省エネルギー設備の導入、重油から天然ガスへの燃料転換、使用後の植物油(廃食油)等のバイオマス(*3)としての活用等、それぞれの業界の製造プロセスの特徴に合わせた取組を進めています。

その結果、食品製造業のCO2排出量については、近年、毎年約100万t減少しています(表2-8)。


*1 環境分野で初のノーベル平和賞を受賞したケニア人女性、ワンガリ・マータイ氏が、環境を守る世界共通語として広めることを提唱した日本語
*2、3 〔用語の解説〕を参照


コラム:世界の食料ロス・廃棄の状況

平成23(2011)年5月、スウェーデン食品・生命工学研究機構は、FAO(国際連合食糧農業機関)の要請により行われた世界の食料ロス・廃棄に関する調査研究結果を公表しました。この調査研究においては、フードサプライチェーン(食料の生産から貯蔵、流通、加工、販売、消費に至る一連の供給プロセス)全体をとおして発生する食料ロス・廃棄に焦点を当てて、その規模等を評価しています。

研究結果によると、世界全体で毎年、生産食料の3分の1(13億t)の食料ロス・廃棄が発生しており、消費者1人当たりの食料ロス・廃棄量は、欧州と北米では95~115kg/年であるのに対し、サハラ以南アフリカや南・東南アジアではわずか6~11kg/年であると推計しています。

また、例えば、フードサプライチェーン各段階で発生した食料ロス・廃棄量の当初生産量に占める割合を穀物についてみると、欧州等の先進工業地域では、フードサプライチェーンの途中(加工・包装)や消費の段階で多くの食料ロス・廃棄が発生する傾向があるのに対し、北アフリカ等の低所得地域では、フードサプライチェーンの早期(農業生産、収穫後の取扱い・貯蔵)の段階で食料ロス・廃棄が発生する傾向があるとしています。



(成長性の高い海外市場への進出)

途上国の中でも中国やインド等高い経済成長を遂げている国々、いわゆる新興国において所得の向上を背景とした食料消費の増大・多様化等がみられる中、特に「食」の親和性が高いアジア市場でのビジネスチャンスが拡大しています。

このような状況を踏まえ、基本計画においては、「アジア等における日本の食文化の発信の強化と連携した形で食品製造・流通業の現地生産・販売の取組や外食産業の進出を促進することにより、その事業基盤を強化し、我が国の食料の安定供給の確保等を図る」としています。

アジア諸国では、中・高所得者層(世帯可処分所得5千ドル以上)の人口が、今後大幅に増加すると見通される中、アジアに立地する食品製造業の現地法人数は、平成9(1997)年の178社から平成21(2009)年には288社まで増加しており、食品製造業の海外市場への進出は進んできています(図2-30)。


このように、食品産業のアジアへの進出は着実に増加していますが、国内法人数に対する現地法人数の割合は食品製造業の1.2%に対し、その他の製造業は3.5%となっており、製造業全体でみると、食品製造業の海外進出はまだ遅れている状況にあります(図2-31)。国内市場が成熟化する中、新たな海外市場の開拓は、食品産業の事業基盤の強化と原料調達力の強化に不可欠なものであり、流通業、外食業との連携も視野に入れた積極的な展開が期待されます。



事例:食品製造業のアジアへの進出事例

アサヒビール(株)は、中国山東省政府から、今後の中国農業のモデルとなる企業的な大規模経営の構築に向けた協力要請があったことを踏まえ、平成18(2006)年、商社等との連携の下、日本側の100%出資により、同省に農業法人を設立し、約100haの農地で、野菜(スイートコーン、ミニトマト、アスパラガス等)、いちご、牛乳等の現地生産に取り組んでいます。

その際、酪農生産で発生する牛ふんを発酵させたたい肥を野菜や果物の生産に活用することにより、化学肥料に頼らず地力の維持を図るとともに、農場内で生産されたとうもろこし、野菜の非食用部分を乳牛の飼料に活用するなど、循環型農法を実践しています。また、農作物の生産履歴管理、ICタグによる乳牛の個体管理等ITを活用した農業生産、鮮度管理を徹底した低温物流システムの構築等、最新の技術を導入した農場経営を展開しています。日本で農業を学ぶ大学生の農場研修や、中国の農業大学の学生のインターンシップの取組を通じて人材育成にも貢献しています。

生産物は、山東省青島市、北京市、上海市の日系や外資系のスーパーマーケットを中心に、すべて中国国内で販売されています。安全・安心・高品質な農畜産物として市場価格よりも割高にもかかわらず、牛乳の売行きが好調であり、経営全体の2年後の黒字転換を目指しています。

温室におけるいちご生産
温室におけるいちご生産
乳牛への給餌
乳牛への給餌
搾乳作業
搾乳作業
 

(食品産業の景況感は引き続き厳しい状況)

食品産業の景況判断を示す各種DI(*1)(景気動向指数)についてみると、売上高DIは、リーマンショックが発生した平成20(2008)年下半期から平成21(2009)年下半期まで低下を続け、その後、平成22(2010)年に入り改善したものの、依然マイナス13.8となっています(図2-32)。また、経常利益DIは、平成21(2009)年以降、改善する傾向がみられましたが、マイナス19.3となっています。資金繰りDIも経常利益DIと同様の動きをみせており、マイナス9.8となっています。

売上高DI、経常利益DI、資金繰りDIを平均して算出した景況DIは、東日本大震災の影響等により、平成22(2010)年下半期のマイナス15.8から平成23(2011)年上半期のマイナス20.2まで低下しましたが、平成23(2011)年下半期にはマイナス14.3となり、改善の動きがみられます。

なお、食品産業においては、食品産業を取り巻く競争環境が厳しさを増す中、企業合併・買収等による規模拡大を通じた競争力の強化や海外市場への展開等を目的とした企業再編が進んでいます。


*1 DI は、Diffusion Index の略。前年同期と比較して、「増加する(楽になる)」の構成比(企業の割合)から「減少する(苦しくなる)」の構成比(企業の割合)を差し引いたもの


(東日本大震災を踏まえた食品産業の対応)

東日本大震災により、食品産業が緊急支援物資の提供をはじめとした食料の安定供給により国民生活の根幹をなす役割を担っていることが再認識された一方、様々な要因による事業活動の持続性における課題が浮き彫りになりました。

平成23(2011)年12月に農林水産省が東北地方の食品製造業者等を対象に行ったアンケート調査によると、震災で明らかになった課題に対して、何らかの対応を実施した企業等のうち、43%が「他の自社物流拠点等による出荷や調達を代替する体制の整備」、31%が「過度に極小化した在庫の見直し・在庫量の積み増し」を実施しました(表2-9)。また、今後の対応の必要があるとしている企業等のうち、42%が「サプライチェーンの可視化」、36%が「他の提携・協力企業による出荷や調達を代替する協力体制の整備」が必要と回答しています。



農林水産省としても、災害時でも円滑な食料供給を可能とするため、BCP(事業継続計画)の策定等を促すとともに、複数県にまたがるバックアップ体制を構築するなど、食品のサプライチェーン対策を推進することとしています。


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