このページの本文へ移動

農林水産省

メニュー

(2)総合的な食料安全保障の確立に向けた取組


(飼肥料の安定供給の確保)

我が国は、化学肥料の原料となる尿素、りん鉱石や塩化加里について、ほぼ全てを輸入に依存しており、その輸入相手国は特定の国に集中しています(図2-1-14)。

一方、輸入肥料原料の単価の推移をみると、尿素、りん鉱石、塩化加里のいずれについても、平成19(2007)年から20(2008)年にかけて肥料原料の需給の逼迫(ひっぱく)により価格が上昇しましたが、平成21(2009)年には下落に転じ、その後、平成22(2010)年秋頃からは緩やかな上昇傾向にあります(図2-1-15)。


将来的には世界人口の増加等に伴う食料需要の高まりにより、世界的な農業生産の拡大に伴う肥料需要の増大が見込まれており、肥料の安定供給の確保とともに、施肥の改善が重要となります。

このため、我が国では、肥料投入量を抑制する散布技術や減肥基準による施肥技術体系の確立、土壌診断(*1)の奨励及びその結果に基づく施肥設計の見直し、地域における施肥指導体制の強化、国内に存在する未利用・低利用資源の肥料としての有効利用等の施肥の改善に向けた施策を推進しています。

また、我が国は、飼料穀物(とうもろこし、こうりゃん等)の多くを輸入に依存しており、主な輸入相手国は、米国、豪州、カナダ、アルゼンチン等となっています。このような中、平成24(2012)年6月以降の米国における高温・乾燥により、配合飼料の主原料であるとうもろこしの作柄悪化が懸念されたことから国際価格が上昇しました。

飼料穀物の価格上昇を受け、調達先が米国から南米諸国(ブラジル、アルゼンチン等)やウクライナ等に急速に移行していますが、こうした調達先においては、脆弱(ぜいじゃく)なインフラ等に起因する輸送遅延等の新たなリスクが顕在化しています(図2-1-16)。

このため、不測の事態における海外からの飼料原料の供給途絶や国内の配合飼料工場の被災に伴う配合飼料の供給逼迫(ひっぱく)に備えるとともに、調達先の多元化に伴う新たな輸送リスクに対応できるよう、配合飼料の主原料であるとうもろこし、こうりゃんの備蓄数量を35万tから60万tに引き上げることとしました。


*1 [用語の解説]を参照。


コラム:近年における農業の交易条件指数の動向

平成24(2012)年の農産物価格指数(平成22(2010)年=100)は、米、野菜等が上昇したことにより、前年に比べて3.3ポイント上昇しました。一方、農業生産資材価格指数は、平成14(2002)年から上昇傾向にあり、平成24(2012)年は、飼料や肥料、光熱動力費の上昇により、前年に比べて0.7ポイント上昇しました。

このような状況を反映して、生産者段階の農産物価格と農業生産資材価格の相対的な関係を示す農業の交易条件指数をみると、平成24(2012)年においては、農産物価格の上昇が農業生産資材価格の上昇を上回ったことから、前年に比べて2.6ポイント上昇しました。しかしながら、平成24(2012)年末以降の円安基調により、今後、飼料、肥料、燃料等の原材料輸入価格の上昇による悪化が懸念されます。



(緊急事態食料安全保障指針の策定)

食料は、人間の生命の維持に欠くことができない基礎的なものであることから、緊急事態が発生した場合であっても国民への安定的な供給を確保していくことが重要です。

しかしながら、食料の多くを輸入に頼っている我が国においては、国内外の様々な要因によって食料供給の混乱が生じる可能性があり、過去には国内生産の減少や輸入の減少・途絶等により、我が国の食料供給に影響を及ぼす事態が発生しています(表2-1-3)。このことを踏まえ、緊急の要因により食料の供給に影響が及ぶおそれのある事態に的確に対処するため、農林水産省では平成14(2002)年3月に「不測時の食料安全保障マニュアル」を策定しました。同マニュアルにおいては、食料供給の見通しに関する情報収集・分析・提供や備蓄の活用と輸入先の多角化等に努めるとともに、特定の品目の供給が平時の供給を2割以上下回ると予測されるような場合には、緊急の増産や買占めの是正等による適正な流通の確保等の政府として講ずべき対策の基本的な内容、根拠法令、実施手順等を記載しました。


表2-1-3 過去に発生した緊急事態の例

その後、東日本大震災の教訓を将来に活かす観点から、平成24(2012)年9月に同マニュアルの見直しを行いました。具体的には、局地的・突発的な緊急事態の発生により、食料が地域的に偏在し、又は一時的に供給がストップする事態に対応するため、同マニュアルに「局地的・短期的事態編」を追加するとともに、食料の安定供給に影響を与える可能性のある不安要因(リスク)の洗い出しを行いつつ、国際的な連携等の新たな取組を加え、同マニュアルは「緊急事態食料安全保障指針」として再編されました(図2-1-17)。


図2-1-17 マニュアルから指針への見直しの概要

同指針の「局地的・短期的事態編」においては、平素からの取組として、食品事業者間の連携の強化、物流ネットワークの在り方の検証、訓練・演習の実施等による緊急時におけるサプライチェーンの機能維持の確保等、家庭備蓄の推進等を定めています。また、局地的・短期的事態における対策として、円滑な流通等の確保や、検疫・食品輸入手続きの迅速化、食品表示規制の弾力的な運用、国民生活安定緊急措置法その他法令による価格・流通の安定対策等を定めています。

(責任ある農業投資の促進に向けた取組)

国際土地連合の報告書によると、平成12(2000)年から平成22(2010)年の期間において、世界で2億ha(2千件)の農地を含む土地の取引(検討中又は交渉中のものを含む。)が行われ、特にアフリカ、アジア等で増加していることが報告されています(図2-1-18)。

また、土地取引面積の推移をみると、平成16(2004)年以降増加し、平成21(2009)年には食料価格の高騰等を背景に大きく増加しています。一方、土地取引の目的をみると、バイオ燃料の生産が6割、農産物の生産が2割を占めており、土地取引の多くが農地を対象として行われている状況があります(図2-1-19)。


このように、食料価格の高騰等を背景とした世界規模での土地取引の動きがみられる中、我が国は、平成21(2009)年7月に開催されたG8ラクイラ・サミットにおいて、被投資国、小農を含めた現地の人々、投資家の3者が利益を得られるよう、国際農業投資の行動原則を策定することを提案しました。

これを契機として、国連食糧農業機関(FAO)、国際農業開発基金(IFAD)、国連貿易開発会議(UNCTAD)及び世界銀行による「責任ある農業投資原則(PRAI)」が策定されました。

また、FAO世界食料安全保障委員会(CFS)は、特に途上国における脆弱(ぜいじゃく)な土地所有管理が社会的不安をもたらし、投資や経済成長の抑制を招いていることを踏まえ、その改善を図るため、平成24(2012)年5月に「国家の食料安全保障の文脈における土地所有、漁業、森林の責任あるガバナンスのための任意ガイドライン」を策定しました。同ガイドラインは、各国政府が土地等の権利に関する法律の策定や施策を実施する際に参照すべき原則や事務的事項を取りまとめていますが、土地所有に関して初めて国際的に合意されたものであり、適正な土地所有を通じた投資や経済成長に一定の効果をもたらすことが期待されています。

現在、PRAIはG8、G20、アジア太平洋経済協力(APEC)等の国際的枠組みで支持されており、我が国は、世界銀行の開発政策・人材育成基金を通じてPRAIの実用化に向けたパイロット事業への支援を行っているほか、FAO への拠出により、世界的な農業投資情報の一元化や農業投資促進のための政策ガイダンスづくり等の作業を進めています。

また、平成24(2012)年10月からは、CFSにおいて、責任ある農業投資のための原則を策定するための議論が開始され、我が国も積極的に参加しています。

(世界の栄養不足人口は減少傾向で推移)

FAO、IFAD及び世界食糧計画(WFP)が共同で発表した「世界の食料不安の現状2012(SOFI)」によると、2010/12年(*1)において、世界人口の13%(8億7千万人)が慢性的な栄養不足に苦しんでいることが報告されています。このうち、98%に相当する8億5千万人が開発途上国に集中しており、開発途上国の人口の15%が栄養不足人口と推定されています。

一方、1990/1992年以降における世界の栄養不足人口の割合は低下しており、平成12(2000)年の国連ミレニアム・サミットでまとめられた「平成27(2015)年までに飢餓に苦しむ人口の割合を平成2(1990)年比で半減させる」というミレニアム開発目標の達成に近づいています(図2-1-20)。

このような中、2010/12年における栄養不足人口を地域別にみると、南アジアが3億人(全体に占める割合35%)と最も多く、続いてサブサハラ・アフリカ(*2)2億3千万人(同27%)、東アジア1億7千万人(同19%)の順となっています(図2-1-21)。

また、2010/12年における栄養不足人口を1990/1992年と比較すると、東南アジアや東アジアにおいては栄養不足人口が大きく減少していますが、サブサハラ・アフリカや西アジア・北アフリカにおいては増加しており、これらの地域では更なる対策が必要とされています。


*1 2つの年次を「/」で接続したものは、その期間を示す。
*2 アフリカ大陸のうちサハラ砂漠以南の地域・国の総称。

(世界の食料安全保障への貢献及び農林水産分野における国際協力)

今後、世界の人口が増加し、中長期的には食料の需給が逼迫(ひっぱく)する可能性がある中、我が国は、G8・G20サミット、APEC食料安全保障担当大臣会合及び首脳会議、ASEAN+3(*1)農林大臣会合、食料価格乱高下に関するFAO閣僚級会合、CFS、OECD農業委員会等世界の食料安全保障に係る国際会議に積極的に参画し、世界の食料生産の増大及び生産性の向上に向けた国際的な議論に貢献しました。

このような中、我が国は、農林水産業への支援を通じた飢餓・貧困対策への貢献や気候変動や越境性感染症等地球的規模の課題への適切な対応を重点分野とし、開発途上国における農業等に関する基礎的調査や技術開発・人材育成、農林水産分野の国際機関への拠出を通じた協力活動等の国際協力を進めています。具体的な取組の一つとして、アフリカの食料安全保障に貢献するため、米生産倍増、豆類やいも類の増産の支援を行っています。西アフリカの半乾燥地域に位置するブルキナファソにおいては、干ばつの被害を受けにくく高収量である豆類のササゲの新品種の導入と普及が進められ、国民の栄養不足や貧困等の解決の糸口になることが期待されます。

また、東アジア地域における大規模災害等の緊急時に備えるため、ASEAN+3による緊急米備蓄体制の確立に向けた取組を行っています。平成24(2012)年7月に、「東南アジア諸国連合及び協力3か国における緊急事態のための米の備蓄制度に関する協定(APTERR(*2)協定)」が発効し、12月にはこの協定の現金備蓄の枠組みを活用して、フィリピンにおける台風の被害を受けた被災者に対し、20万ドルの緊急支援を行うことを決定しました。

米を活用した食糧援助については、被援助国やWFPからの要請を踏まえ、近年10~20万t程度の援助を行っています。このうち、国産米を活用した援助については、被援助国のニーズや財政負担等の制約があるものの2~3万t程度の援助を行っています。

なお、食料安全保障に資する情報整備強化にも取り組んでおり、アジア地域における正確な食料・農業統計情報と生産予測情報を整備し、地域全体の食料安全保障状況を監視するための「アセアン食料安全保障情報システム(AFSIS)」の自立化の促進及び、平成22(2010)年10月に新潟県で開催されたAPEC食料安全保障担当大臣会合に基づき構築した「アジア太平洋食料安全保障情報プラットフォーム(データベース)(APIP)」の改善に取り組んでいます。また、平成23(2011)年6月のG20農業大臣会合で合意された、穀物等市場に関する情報の質や信頼性の向上を図る「農業市場情報システム(AMIS)」の整備に取り組んでいます。さらに、日本、中国、韓国における農林水産分野での協力を促進することを目的として、平成24(2012)年4月、韓国(済州島)において、第1回日中韓農業大臣会合が開催されました。本会合において、食料安全保障の確保、口蹄疫(*3)等の動植物疾病対策、自然災害に関する情報共有、経済連携の推進等について3か国が共同で取り組むことを内容とする共同声明が署名されました。また、併せて大臣会合を毎年持ち回りで開催することや、平成25(2013)年に我が国において第2回会合を開催することが合意されました。


*1 参加国はASEAN及び日本、中国、韓国。
*2 APTERRは、ASEAN Plus Three Emergency Rice Reserveの略。
*3 [用語の解説]を参照。

コラム:世界各国の1人当たり国内総生産(GDP)と食料の1人1日当たり供給熱量との関係

下図は、平成21(2009)年のデータに基づいて、世界各国の1人当たり国内総生産(GDP)(*1)と食料の1人1日当たり供給熱量(*2)の関係を示したものです。

各国のデータ間を左下から右上にカーブして伸びているのが、これらデータの傾向を表す曲線(回帰曲線)です。この曲線により、1人当たりGDPが1千米ドル増加する場合の1人1日当たり供給熱量を推計すると、1人当たりGDPが1万米ドルの国の場合、24kcal増加するのに対し、4万米ドルの国では、6kcalと僅かな増加にとどまります。

日本とカナダの1人当たりGDPは、3万9千米ドル台と、ほぼ同水準ですが、食料の1人1日当たりの供給熱量は、日本が2,723kcalとなっており、カナダを676kcal下回っています。これは、体格や食生活の違い(供給熱量源を動物由来と植物由来に分けると、カナダは動物由来が26.3%であるのに対し、日本は20.8%)等によるものと考えられます。

また、日本の1人1日当たり供給熱量(2,723kcal)と同水準の国として、ブルガリア(2,791kcal)、コロンビア(2,717kcal)、ベトナム(2,690kcal)等が挙げられます。これらの国の供給熱量に占める動物由来の割合は20~22%であり、日本と同程度となっています。


*1、2 [用語の解説]を参照。



 ご意見及びアンケートについて

農林水産省では、皆さまにとってより一層わかりやすい白書の作成を目指しています。

白書をお読みいただいた皆さまのご意見・ご感想をお聞かせください。

アンケートはこちら


お問合せ先

大臣官房広報評価課情報分析室
代表:03-3502-8111(内線3260)
ダイヤルイン:03-3501-3883
FAX:03-6744-1526