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農林水産省

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(3)農産物貿易交渉の動向


(WTO農業交渉の状況)

平成13(2001)年、カタールのドーハにおいて、農業、鉱工業、サービスの自由化、アンチダンピング、補助金等のルールの策定、強化等を含む包括的な貿易交渉であるWTO(*1)ドーハ・ラウンドが開始されました。このうち、農業交渉は、関税削減等を目指す市場アクセス、貿易に歪曲的(わいきょくてき)な影響を及ぼす施策の実質的な削減を目指す国内支持、輸出の競争力に歪曲的な影響を及ぼす補助金の撤廃を目指す輸出競争の3つの分野で行われ、平成16(2004)年7月末には交渉の大枠となる「枠組み合意」が成立しました。その後、関税削減等の方式を決めるモダリティ交渉が行われ、平成19(2007)年7月以降、議長が提示したモダリティ・テキストに基づく議論が続けられ、平成20(2008)年7月の非公式閣僚会合ではモダリティ合意に接近したものの、先進国と新興国との対立により会合は決裂し、モダリティ・テキストは同年12月の提示以降改訂されていません。

しかしながら、平成23(2011)年12月に開催された第8回WTO閣僚会議の議長総括文書において、ドーハ・ラウンド交渉が近い将来に一括合意することは難しいと認めつつ、部分合意も含めた新たな手法により打開の道を探ることとされました。これを受けて、平成25(2013)年12月の第9回WTO閣僚会議で何らかの合意を得るべく各分野で交渉が行われる中、農業分野においても、平成24(2012)年秋に途上国からモダリティ・テキストの一部を先行合意する提案が出され、これに基づき議論が行われているところです。

WTO農業交渉において、我が国は、今後もドーハ・ラウンド交渉の前進に向け、引き続き多様な農業の共存が可能となるルールの確立を目指していくこととしています。


*1 [用語の解説]を参照。

(EPA/FTA交渉等の取組)

WTOドーハ・ラウンド交渉の行方が不透明な中、世界的に経済連携協定(EPA)/自由貿易協定(FTA)(*1)網が拡大しています(図2-1-22)。このような中で、我が国は、平成25(2013)年3月現在で13の国・地域とEPAを締結しています(図2-1-23)。

また、現在EPA交渉を実施中の国・地域のうち、豪州とは、平成24(2012)年4月に第15回交渉会合、6月に第16回交渉会合を行いました。モンゴル及びカナダとは、それぞれ平成24(2012)年3月に交渉の開始に一致し、モンゴルとは6月に第1回、12月に第2回の交渉会合を行い、カナダとは11月に第1回交渉会合を行いました。コロンビアとは、平成24(2012)年5月に3回目の共同研究を行い、7月に共同研究の報告書を公表後、9月の日コロンビア首脳会談でEPA交渉を開始することで一致し、12月に第1回交渉会合を行いました。このほか、韓国とは交渉再開に向けてこれまで2回の局長級協議を開催したところであり、湾岸協力理事会(GCC(*2))との交渉は延期されています。

さらに、EUとは、交渉の範囲と野心のレベルを定めるためのスコーピング作業の終了を受け、平成24(2012)年11月に、欧州委員会が理事会(加盟国)から交渉権限を取得し、平成25(2013)年3月に日EU首脳電話会談において交渉開始に合意しました。また、トルコとは、平成24(2012)年11月から共同研究を2回実施したところです。


*1 [用語の解説]を参照。
*2 GCCは、Gulf Cooperation Councilの略称。加盟国はバーレーン、クウェート、オマーン、カタール、サウジアラビア、アラブ首長国連邦。
 
図2-1-23 我が国のEPA/FTAの進捗状況

(アジア太平洋地域における広域経済連携の取組)

アジア太平洋地域における広域経済連携については、平成22(2010)年11月に横浜で開催されたAPEC首脳会議で、「アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP(*1))への道筋」が合意され、平成24(2012)年9月にウラジオストクで開催されたAPEC首脳会議で、「FTAAPがAPEC地域経済統合課題を推進するための主要な手段であることを認識し、最終的なFTAAPに向けた経路として発展し築かれた様々な地域的な取組に留意し、その実現に向けて前進する方途を模索し続ける」こととされました(図2-1-24)。


図2-1-24 アジア太平洋地域における経済連携の現状

このような中、平成23(2011)年11月にASEAN(*2)首脳会議は、ASEANとFTAを締結しているFTAパートナー諸国(*3)との東アジア地域包括的経済連携(RCEP(*4))を設立するためのプロセスを開始することで一致しました。平成24(2012)年8月にASEAN諸国とFTAパートナー諸国の経済大臣会合が開催され、交渉の基本指針及び目的にかかる文書(「RCEP交渉の基本指針及び目的」)を採択しました。同年11月にASEAN関連首脳会議において、ASEAN諸国とFTAパートナー諸国の首脳は、RCEP交渉立ち上げを宣言しました。

また、日中韓FTAについては、平成24(2012)年6月から9月にかけて3回にわたり開催された事務レベル会合で実務的な協議を終了し、11月のASEAN関連首脳会議の機会に、交渉の開始が宣言され、平成25(2013)年3月に第1回の交渉会合を行いました。


*1 FTAAPは、Free Trade Area of the Asia-Pacificの略。
*2 [用語の解説]を参照。
*3 FTAパートナー諸国は、日本、中国、韓国、インド、豪州、ニュージーランドの6か国。
*4 RCEPは、Regional Comprehensive Economic Partnershipの略。ASEANとFTAパートナー諸国によるEPAを目指すもの。

(TPP協定交渉の概要)

環太平洋パートナーシップ(TPP(*1))協定交渉は、平成18(2006)年に発効したP4協定の締約国であるシンガポール、ニュージーランド、チリ、ブルネイに加えて、米国、豪州、ペルー、ベトナムの8か国により、平成22(2010)年3月に開始されました(図2-1-25)。その後、平成22(2010)年10月の第3回交渉会合からマレーシアが参加し9か国となりました。平成23(2011)年11月には、APEC首脳会議において日本、カナダ、メキシコが交渉参加に向けた関係国との協議を開始する意向を表明し、交渉参加9か国との協議を行ってきました。メキシコ及びカナダについては、平成24(2012)年6月に行われたG20サミットにおいて、TPP協定交渉参加9か国から交渉参加への支持が表明され、米国政府から米国議会への90日の事前通知等、参加各国の手続きを経て、平成24(2012)年10月に正式参加が認められました。

TPP協定交渉参加国は、平成23(2011)年11月にTPP首脳によって表明された「TPPの輪郭」において示されているように、「関税並びに物品・サービスの貿易及び投資に対するその他の障壁を撤廃する」など、包括的で高い水準の協定を達成すべく、交渉を行ってきました。平成24(2012)年9月には、「TPP貿易閣僚による首脳への報告書」において、「相互の物品市場に包括的で関税のないアクセスを与え、同時に、サービス、投資、及び政府調達に関する制限を除去する、高い水準の市場アクセスのパッケージを策定する作業を継続した」ことが報告されました。


*1 TPPは、Trans-Pacific Partnershipの略。

図2-1-25 これまでのTPP協定交渉

TPP協定交渉においては21の分野が扱われており、交渉の進捗状況は分野によって異なります(図2-1-26)。

交渉参加国の発表によれば、これまでに「分野横断的事項」のうち中小企業に関する議論が終了しました。規制制度間の整合性、電気通信、税関及び開発について第16回交渉会合で良好な進展があり、これらで残された作業は、協定を完成する段階において取り扱うこととし、当面は、これらに関する作業部会は開催されない見込みです。一方、物品市場アクセス、知的財産、競争(国有企業)、投資、環境等の分野では交渉が難航しており、平成25(2013)年内の交渉妥結のために更に交渉を進めることが必要とされています。


図2-1-26 TPP協定交渉で扱われる分野

(TPP協定交渉に関する我が国の取組)

TPP協定交渉については、平成22(2010)年10月1日に、菅内閣総理大臣(当時)が「TPP協定交渉等への参加を検討する」と所信表明演説で述べた後、平成22(2010)年11月9日に「包括的経済連携に関する基本方針」が閣議決定され、TPP協定交渉参加国に政府職員を派遣し、情報収集を行ってきました。

その後、野田内閣総理大臣(当時)は、平成23(2011)年11月12~13日に米国・ホノルルで開催されたAPEC首脳会談の出席に先立ち、11日の記者会見において、TPP交渉参加に向けて関係国との協議に入り、十分な国民的な議論を得た上で、あくまで国益の視点に立って、TPPについての結論を得ることを表明しました。

これを受けて、平成24(2012)年1月に、ベトナム、ブルネイ、ペルー、チリ、2月には米国、シンガポール、マレーシア、豪州、ニュージーランドへ政府職員を派遣し、TPP協定交渉参加に向けた関係国との協議を実施しました。

関係国との協議を通じて得られた情報については、国民の関心も強く、政府としても都道府県に説明員を派遣するなど、国民への情報提供を行いました。

平成24(2012)年12月に発足した安倍晋三内閣の下では、TPP協定交渉については、「「聖域なき関税撤廃」を前提にする限り、交渉参加に反対」という基本的な考え方の下、これまでの協議の内容、TPPに参加した場合に生じ得る様々な影響等を精査、分析し、国民への情報提供を行いながら、検討を行ってきました。

平成25(2013)年2月22日に日米首脳会談が開催され、日米の共同声明が発表されました。共同声明においては「日本がTPP交渉に参加する場合には、全ての物品が交渉の対象とされること、及び、日本が他の交渉参加国とともに、2011年11月12日にTPP首脳によって表明された「TPPの輪郭」において示された包括的で高い水準の協定を達成していくこと」、「日本には一定の農産品、米国には一定の工業製品というように、両国ともに二国間貿易上のセンシティビティが存在することを認識しつつ、両政府は、最終的な結果は交渉の中で決まっていくものであることから、TPP交渉参加に際し、一方的に全ての関税を撤廃することをあらかじめ約束することを求められるものではないこと」等が確認されました。

3月13日には自由民主党外交・経済連携本部において、「農林水産分野の重要5品目等」「の確保を最優先し、それが確保できないと判断した場合は、脱退も辞さないものとする」と、国益を守るよう政府と与党が一体となって交渉を進めていくべきとの決議がなされました。

これらを踏まえ、3月15日、安倍内閣総理大臣はTPP協定交渉への参加を決断し、交渉参加国にその旨を通知することとしました。TPP協定交渉参加の表明において、安倍内閣総理大臣は、TPPについては「国益にかなう最善の道を追求」するとしており、農林水産分野においては、「あらゆる努力によって、日本の「農」を守り、「食」を守る」と述べました。これを受けて、農林水産大臣は、交渉参加に当たっては、国益を守り抜き、農林水産分野の聖域を確保するよう全力を尽くすことを表明しました。

このような中、同日に内閣官房から公表されたTPPの政府統一試算においては、TPPによる関税撤廃の経済効果として、実質GDPが0.66%(3.2兆円)増加するとしています(*1)(図2-1-27)。一方、農林水産物への影響については、(1)内外価格差、品質格差、輸出国の輸出余力等の観点から、輸入品と競合する国産品と競合しない国産品に二分する、(2)競合する国産品は、原則として安価な輸入品に置き換わる、(3)競合しない国産品は、安価な輸入品の流通に伴って価格が低下するとの前提を置いて、試算を行いました。その結果、生産額が約3兆円減少し、このうち米が約1兆円、豚肉が約5千億円、牛肉が約4千億円、牛乳乳製品が約3千億円減少すると試算されています(*2)。



平成25(2013)年4月12日には、日米協議は合意に至り、日米間の往復書簡において、「日本と米国は、日本には一定の農産品、米国には一定の工業製品というように、両国ともに二国間貿易上のセンシティビティが存在することを認識しつつ、TPPにおけるルール作り及び市場アクセス交渉において共に緊密に取り組んでいく」ことで一致しました。

その後、4月20日に、インドネシアで行われたTPP閣僚会合において、TPP交渉参加国各国と我が国の二国間協議が終了したことが確認されました。翌21日には、TPP閣僚会合での議論を踏まえ、TPP交渉参加11か国を代表し、ニュージーランドから「TPP現参加国が今後必要に応じそれぞれの国内の法的手続きを完了した後、日本は、正式に交渉参加国となり、交渉に参加する」との声明が発出されました。

これらの二国間の協議に前後して、4月18日に参議院、19日に衆議院の農林水産委員会においてTPP協定交渉参加に関して、「米、麦、牛肉・豚肉、乳製品、甘味資源作物などの農林水産物の重要品目について、引き続き再生産可能となるよう除外又は再協議の対象とすること」、「10年を超える期間をかけた段階的な関税撤廃も含め認めないこと」等が決議されました。

今後、現交渉参加国の国内手続きが完了次第、我が国はTPP交渉に参加していくことになります。交渉参加に当たっては、政府一体となって交渉に臨むこととしており、関係閣僚から構成される「TPPに関する主要閣僚会議」を設置し、この下に経済再生担当大臣を本部長とする「TPP政府対策本部」を設置するとともに、本部長の下に国内総合調整を担当する「国内調整総括官」と交渉を担当する「首席交渉官」を置く体制が整備されています(図2-1-28)。


*1 この試算結果は、一定の仮定の下で貿易自由化による経済全体への影響を、経済構造調整を終えて中長期均衡に達した時点において、貿易を自由化しなかった場合と比較したもの。
なお、試算結果の実質GDPの増加効果は、ある時点に限られたものではなく、経済構造調整を終えた段階以降の継続的な経済の底上げ効果である。
*2 政府統一試算は、図2-1-27の注2)及び3)に示す一定の前提の下で、国全体への影響を試算したもの。他方、現実には農林水産業への依存度が高い地域では、相対的により大きな影響が出る可能性がある点には留意が必要。

図2-1-28 TPP協定交渉に関する体制


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