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農林水産省

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(1)食品の安全性の向上に向けた取組


(食品の安全性の向上のためには科学的根拠に基づいたリスク管理が重要)

消費者が求める「品質」と「安全」といったニーズに適(かな)った生産体制への転換を図るためには、「後始末より未然防止」の考え方に基づき、生産から消費にわたる取組を進めることが重要です。このため、農林水産省では、科学的根拠に基づいてリスク管理を行っています(図2-5-1)。

食品の安全性向上に向けたリスク管理に当たっては、まず、食品安全に関する情報を収集・分析し、優先的にリスク管理の対象とする有害化学物質・有害微生物を決定した上で、農畜水産物・食品中の含有実態調査を行っています。その上で、これらの実態調査の結果を解析し、必要がある場合には、低減対策を検討することとしています。


図2-5-1 科学的根拠に基づくリスク管理

有害化学物質に関しては、平成24(2012)年10月に、平成15(2003)年度から平成22(2010)年度に実施し公表してきた有害化学物質の含有実態調査の結果を一冊のデータ集としてまとめ、広く配布しました(図2-5-2)。このデータ集は「食品の安全性に関する有害化学物質のサーベイランス(*1)・モニタリング(*2)中期計画」(平成18(2006)~22(2010)年度)において、優先的に実態調査を行う必要があると位置付けられた危害要因(かび毒、環境中に存在する有害化学物質、食品製造工程に由来する汚染物質、残留農薬)を対象として、農畜水産物・加工食品のうち消費量の多いもの、過去の調査で有害化学物質の濃度が高かったもの、濃度が高い可能性があるものを調査し、解析が終了したものをまとめたものです(延べ分析点数:約34万4千点)。調査の結果、我が国で生産された農畜水産物・加工食品のほとんどの安全性が高いことが確認されました。この調査で得られたデータは、これまでに実施された国内外のリスク評価やリスク管理措置の検討において基礎データとして活用したほか、今後もリスク管理の基礎データとして活用していくこととしています。


*1 問題の程度又は実態を知るために調査すること。
*2 矯正的措置を採る必要があるかどうかを決定するために、傾向を知ること。

図2-5-2 有害化学物質含有実態調査結果データ集における調査点数と調査結果の活用

また、有害微生物に関しては、汚染実態調査の結果等を基に、平成24(2012)年6月に、鶏卵の生産農場への食中毒菌の侵入やまん延を防ぐ対策を取りまとめた生産者及び指導者向けのハンドブックを作成し、生産現場への普及を始めました。

今後も実態調査を継続し、必要に応じて有害化学物質・有害微生物の低減対策を検討するとともに、低減対策の「農業生産工程管理(GAP)」への反映、これまでに定めた低減対策の実行可能性・有効性の検証を通じて生産現場に強力に普及を進めていくこととしています。さらに、科学に基づく食品安全に係る施策を強化するため、レギュラトリーサイエンス(科学的知見と規制や行政措置の橋渡しとなる科学)を推進しています。


コラム:「栽培から出荷までの野菜の衛生管理指針」
栽培から出荷までの野菜の衛生管理指針
栽培から出荷までの
野菜の衛生管理指針

食中毒事件が起きると、消費者の健康に被害が出るだけでなく、原因と疑われる食品への信頼が失われ、経済的に大きな損失が出る可能性があります。生鮮野菜は、肉類と比べて微生物が増えにくいと言われており、食中毒を起こす微生物に汚染される可能性は低いと考えられますが、海外では生鮮野菜が原因と考えられる大きな食中毒事件が報告されています。

このため、農林水産省は、平成23(2011)年6月、生鮮野菜を衛生的に保ち、食中毒事件が起きないように、肥料として使用される家畜ふん堆肥や水の管理、手洗い等衛生上の実施すべき点をまとめた「栽培から出荷までの野菜の衛生管理指針」を策定し、同指針の取組が生産現場のすみずみまで行き渡るよう、普及に力を入れています。

平成24(2012)年8月に札幌市(さっぽろし)等で浅漬を原因食品とする腸管出血性大腸菌O157の食中毒事件が発生しました。調査の結果、汚染の原因は明確になっていませんが、今回の食中毒は、浅漬の製造工程における衛生管理の不備が原因であったことが指摘されています。食中毒事件の未然防止には、生産から消費までにわたって衛生管理に取り組むことが不可欠です。この立場から、農林水産省では、引き続き職員が現場に出向き、生産段階においても衛生管理が重要であることを説明し、野菜生産者の意識の向上に努めています。

 

(農業生産工程管理(GAP)の導入産地数は着実に増加)

食品の安全性を向上させるため、生産段階においては、農業生産工程管理(GAP)(*1)(以下「GAP」という。)の取組を推進することが重要です。GAPを多くの農業者や産地が取り入れることにより、食品の安全性向上のみならず、環境の保全、労働安全の確保、競争力の強化、品質の向上、農業経営の改善や効率化の実現につながります。

平成24(2012)年8月に農林水産省が消費者を対象に行ったアンケート調査(*2)によると、農業者がGAPに「取り組む必要がある」と考えている消費者の割合が9割以上となっています。その理由については、「食品の安全性がより高まるため」と回答した消費者の割合が53%と最も高く、次いで「生産情報が明確になるため」が23%となっており、食品の安全性の向上に向けて、消費者からもGAPに取り組むことが期待されています(図2-5-3)。

このような中、我が国におけるGAPの現状をみると、農業者団体や地方公共団体、流通業者、民間団体等様々な主体が独自にGAPを策定して取組を推進してきたことから、取組内容が多岐にわたっています。こうした実態を踏まえ、平成22(2010)年4月に、高度な取組内容を含む先進的なGAPの共通基盤として、「農業生産工程管理(GAP)の共通基盤に関するガイドライン」(以下「ガイドライン」という。)が策定されました。このガイドラインは、食品安全、環境保全や労働安全に関する法律や指針の内容を踏まえ、我が国の農業生産活動において、実践を奨励すべき取組を明確化したものとなっています。

GAPを導入している産地(*3)は、平成24(2012)年3月末現在で、2,462産地(主要産地の60%)となっており、着実に増加しています(図2-5-4)。このような中、ガイドラインに則したGAP導入産地数(*4)は、620産地となっており、産地におけるGAPの取組の更なる拡大と併せて、ガイドラインに則した取組内容の高度化を図ることが課題となっています。


*1 [用語の解説]を参照。
*2 農林水産省「農業生産工程管理(GAP)及び環境に配慮した農産物に関する意識・意向調査結果」(平成24(2012)年12月公表)
*3 野菜、米、麦、果樹、大豆の産地強化計画等を作成している産地を調査対象として集計。
*4 野菜、米、麦のGAP導入産地を調査対象として集計。
 

(HACCP(危害分析・重要管理点)は中小事業者での導入促進が課題)

食品の安全性を向上させるため、食品の製造段階においては、HACCP(危害分析・重要管理点)(*1)(以下「HACCP」という。)の取組を推進することが重要です。

HACCPを導入すると、科学的根拠に基づく継続的な監視・記録により、異常発見時には速やかに対策を講じることができることから、その導入前に比べ、より効果的に問題のある製品の出荷の未然防止に対応できるとともに、原因の追及を容易に行うことが可能となります。

農林水産省が食品製造業等を対象に行った調査(*2)によると、HACCPを全ての工場・一部の工場で導入済み又は導入途中の食品製造事業者の割合は、平成12(2000)年度の10%から、平成23(2011)年度の24%まで14ポイント上昇しています。

これを販売金額規模別にみると、5千万円未満の層では導入率が6%、5千万~1億円では12%となる一方、100億円以上では76%となっており、販売規模が小さい層ほど導入率が低い状況にあります(図2-5-5)。


*1 [用語の解説]を参照。
*2 農林水産省「食品製造業におけるHACCP手法導入状況実態調査」(平成24(2012)年5月公表)


また、HACCPの導入に当たっての問題点をみると、施設・設備の整備(初期投資)や導入後の運用コストが大きい、従業員に対する研修を行う余裕がないとの回答が多くなっています(図2-5-6)。

このような状況を踏まえ、農林水産省は、HACCPを導入する際の施設・設備の整備に対するHACCP支援法(*3)に基づく長期低利融資措置に加え、低コスト導入手法の普及促進や、HACCPの導入促進に関する責任者・指導者を養成する研修等の取組を実施しています。また、HACCP支援法は、その有効期限が平成25(2013)年6月30日に到来することから、同法の延長や支援対象の拡大等を内容とする法案を国会に提出したところです。


*3 正式名称は「食品の製造過程の管理の高度化に関する臨時措置法」



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