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農林水産省

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(1)農業・農村の持つ多面的機能


(農業・農村の持つ多面的機能の十分な発揮が必要)

農業・農村は、食料を供給する役割だけでなく、その生産活動を通じ、国土の保全、水源の涵(かん)養、生物多様性の保全、良好な景観の形成、文化の継承等、様々な役割を有しており、その役割による効果は、地域住民を始め国民全体が享受しています(図4-2-1)。

また、農山漁村地域において、農業、林業及び水産業は、それぞれの基盤である農地、森林、海域の間で相互に関係を持ちながら、水や大気、物質の循環等に貢献しつつ、様々な多面的機能を発揮しています。

このため、農業・農村がこれらの多面的機能を十分に発揮できるよう、各種施策や取組を通じて、その持続的な発展に努めていくことが重要です。


図4-2-1 農業・森林・水産業の多面的機能

(農業・農村の多面的機能発揮に向けた取組)

農地は、農業が営まれることにより、様々な機能を発揮します。畦畔に囲まれている水田や水を吸収しやすい畑の土壌は、雨水を一時的に貯留し、時間をかけて徐々に下流に流すことによって洪水の発生を防止・軽減させるという特徴を有しています(図4-2-2)。

また、水田等に利用されるかんがい用水や雨水の多くは地下に浸透し、下流域の地下水を涵(かん)養しています。このような地下水の涵(かん)養機能により、下流地域では地下水を生活用水や工業用水として活用することができます(図4-2-3)。

さらに、水田に張られた水は、雨や風から土壌を守り、侵食を防ぐ働きがあるほか、畑地の作物は被覆効果を発揮するなど、下流域への土壌の流出を防ぐ働きがあります。


図4-2-2 洪水防止機能の発揮(イメージ図)

図4-2-3 涵(かん)養された地下水が下流域で活用されている例(熊本市を流れる白川流域のイメージ図)

農村地域は、農業が営まれることにより、大地に育った作物と農家の家屋、その周辺の水辺や里山が一体となって醸し出す独特の雰囲気を有する景観を形成しています。

埼玉県の三富新田など武蔵野にみられる地割景観(*1)や島根県の出雲(いずも)平野、富山県の砺波(となみ)平野、岩手県の胆沢(いさわ)平野等にみられる散居景観(*2)等は、伝統的な取組等と併せて現在まで引き継がれており、地域住民からも高い評価を得ています(図4-2-4)。


*1 1農家ごとに幅40間(約72m)、長さ375間(約675m)と細長く地割(区画)され、そこを道に面した方から順に屋敷地、農地、そしてコナラやクヌギ等の平地林を配している。
*2 家々が散在する形態を持つ散居村でみられる景観。多くは防風林等で家を囲っており、独特の景観を醸し出している。

図4-2-4 農村で保全されている伝統的な景観

また、水田や畑には多様な生物が生息しています。自然との調和を図りながら、営農が行われ、水田や畑が適切かつ持続的に管理されることにより、植物や昆虫、動物等の豊かな生態系を持つ二次的な自然が形成・維持され、多様な野生動植物の保護にも大きな役割を果たしています(図4-2-5)。

このような場は、人間が自然に深く関わることにより創出されており、農業により継続して養育されている動植物や豊かな自然に触れることを通じ、生命の尊さ、自然に対する畏敬や感謝の念など人間の感性・情操が豊かに育てられるなど、教育的な効果ももたらしています。


図4-2-5 二次的な自然が形成・維持される例(生物多様性保全機能)

このほか、水田や畑の中の微生物は、家畜排せつ物や生ごみ等から作った堆肥を分解し、再び農作物が養分として吸収できるようにする有機性廃棄物処理機能を持っています。

さらに、農村地域は、都市部にはない様々な自然や生き物、歴史や文化との出会いがあります。疲れた心や体を癒やす自然空間、豊かな人間関係や新しい生きがい、楽しみを提供する暮らしがあり、レクリエーションの場の提供にも役立っています。

現在、全国各地で、水田や畑地等を活用した洪水防止機能、生物多様性保全機能、良好な景観の形成機能、保健休養機能等の多面的機能の発揮に向けた様々な取組が展開されています。


事例:多面的機能の発揮に向けた取組
田んぼダムの落水量調整の仕組み(フリードレーン方式の例)
田んぼダムの落水量調整の仕組み
(フリードレーン方式の例)
新潟県
◯水田の貯留機能を通じて洪水防止に貢献

新潟県は、水田の貯留機能を活かし、洪水を軽減する取組(田んぼダム)を実施。具体的には、水田の排水口に落水量調整装置を設置して、大雨時に水田に雨水を貯留し、水路への流出を緩やかにすることにより、下流での急激な増水を軽減。

 
熊本県熊本市
白川中流域の田んぼがつくる「くまもとの水」
白川中流域の田んぼがつくる
「くまもとの水」
◯転作田の活用を通じて地下水を涵(かん)養

熊本県熊本市(くまもとし)は、市民の水道水源の100%を地下水で賄っており、市内を流れる白川の中流域に広がる水田が熊本市を中心とする地域の地下水源となっていることから、平成16(2004)年1月に、熊本市と大津町(おおづまち)・菊陽町(きくようまち)・地元土地改良区等との間で協定を締結し、転作した水田に水を張る取組を実施。さらに、平成24(2012)年4月に、住民・事業者・行政等が一体となって地下水保全に取り組む「くまもと地下水財団」が発足。このような広域での地下水保全のための連携が高く評価され、平成25(2013)年3月に、国連“生命の水(Water for Life)”最優秀賞(水管理部門)を受賞。

 
流域住民が一体となって「水源かん養林」を育成
流域住民が一体となって
「水源かん養林」を育成
愛知県
◯山林の整備を通じて清流の保全に貢献

愛知県の明治用水土地改良区は、「水を使うものは自ら水を作るべきだ」という先人の先見的発想により、明治用水の水源である矢作川上流に約525haの山林を所有し、治山と治水が一体であるという考えのもと、清流を保つため、「水源かん養林」を育成。

 
生息場・避難場所となる魚巣ブロックの設置
生息場・避難場所となる
魚巣ブロックの設置
深みや拡幅区間による多様な魚類の生息環境の創出
深みや拡幅区間による
多様な魚類の生息環境の創出
岩手県奥州市
◯環境に配慮した基盤整備を通じて生物多様性の保全に貢献

岩手県奥州市(おうしゅうし)(いさわ南部地区)は、地域の水田等が持つ「農耕地環境」、屋敷林、河畔林(かはんりん)等が持つ「緑地環境」、農業用水路、ため池等が持つ「水辺環境」の保全・再生を基本理念として国営農地再編整備事業を実施。環境に配慮した排水路の整備により、ドジョウ、アブラハヤ、トウヨシノボリ等の個体数が増加。整備前には確認されていなかったギバチ、モツゴ等の種が新たに確認されるなど、多様な魚種が生息する環境が創出。

 
環境に配慮し栽培されたオリジナルブランド「信州高山さわやかりんご」
環境に配慮し栽培された
オリジナルブランド
「信州高山さわやかりんご」
長野県高山村
◯資源の再利用を通じて地域の環境保全に貢献

長野県高山村(たかやまむら)は、村内の生ごみ、きのこ農家の廃おが粉や家畜ふん尿を堆肥化し、樹園地を中心に村内農地へ還元する「資源循環型農業」を推進。非農家の増加により深刻化していた生ごみの処理問題を解決するとともに、堆肥施用等により土壌の水はけ・水持ちが向上し、ミミズ等の生物が増加することで、地力も維持増進。また、環境に配慮したりんご栽培により、産地ブランド化を推進。

 
梅園の管理による美しい集落づくり
梅園の管理による
美しい集落づくり
愛媛県砥部町
◯梅園の管理を通じて良好な景観形成に貢献

愛媛県砥部町(とべちょう)の「農事組合法人ななおれ梅組合」は、周辺の耕作放棄地を借り受け、観賞用梅等の植栽や遊歩道の整備等を通じて、耕作放棄地の解消と美しい集落づくりに努めるとともに、梅園を開放して「梅まつり」を開催するなど、良好な景観づくりを展開。

 
三富新田の昔ながらの地割景観
三富新田の昔ながらの地割景観
埼玉県川越市、所沢市、狭山市、ふじみ野市、三芳町
◯落ち葉堆肥の活用を通じて野菜生産と伝統的な景観の保全に貢献

埼玉県西部の三富新田は、江戸時代に開拓され、道路側から順に屋敷林に囲まれた屋敷地、農地、平地林が配置される特徴的な地割を有する地域。300年以上前から続く平地林の落ち葉を堆肥化して活用する独特の循環型農業を実践し、さつまいも、さといも等を栽培。今日も残る三富新田の昔ながらの地割景観は地域住民からも高く評価。

 
有機農業の取組
有機農業の取組
奈良県宇陀市
◯有機野菜の生産を通じて環境への負荷軽減に貢献

奈良県宇陀市(うだし)では、地域全体で有機農業を始めとする環境保全型農業を推進しており、地域で発生する有機物を堆肥化し、積極的に農地に還元し、循環型農業を展開。耕作放棄地を積極的に利用したほうれんそう、こまつな、みずな等の有機栽培に取り組む。農薬を使用しないことにより、環境への負荷も低減。

 

(農業分野における生物多様性保全の推進)

農林水産省は、平成19(2007)年7月に「農林水産省生物多様性戦略」を策定し、農業・農村の多面的機能の一つである生物多様性保全を重視した農林水産業を推進してきました。その後、平成20(2008)年6月に「生物多様性基本法」が施行され、平成22(2010)年10 月に開催された生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)で「戦略計画2011-2020・愛知目標」(以下「愛知目標」という。)等の決議が採択されたことを受けて、平成24(2012)年2月に農林水産省生物多様性戦略を改定し、我が国の農林水産業、農山漁村が有する生物多様性の保全等の機能をより一層発揮することとしました。

平成24(2012)年9月には、改定された農林水産省生物多様性戦略の内容が反映された「生物多様性国家戦略2012-2020」が閣議決定され、「2020年までに、生物多様性の保全を確保した農林水産業が持続的に実施される」こと等、愛知目標の達成に向けた我が国の目標が設定されました。また、平成24(2012)年10月には生物多様性条約第11回締約国会議(COP11)が開催され、愛知目標の達成等に向けて、生物多様性に関連のある他の条約や関係機関等とも協力しながら、取組を強化していくことが合意されました。

これらの動きを踏まえ、農林水産分野における生物多様性に関する取組を引き続き推進することが重要です。



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