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農林水産省

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第4節 食品産業の動向


食品産業は、農林水産業とともに食料の安定供給や国民の豊かな食生活の実現に重要な役割を担っているほか、地域経済においても重要な地位を占めています。また、人口の減少・高齢化の進行により国内需要が減少する中、高齢化に伴う介護食品等の需要の増加といった新たな国内需要や、新興国の経済成長等により拡大が見込まれる海外需要を取り込んでいくことが重要となっています。以下では、食品産業の役割と動向、情勢の変化に対する取組について記述します。

(食品産業の国内生産額は減少傾向で推移)

食品産業は、国産農林水産物の最大の需要者として国内農林水産業を支えていますが、我が国における食品産業の国内生産額の推移をみると、食料品価格の低下や少子化等を背景に、1990年代後半から減少傾向にあり、平成23(2011)年度は78兆円となっています。これは全産業(901兆円)の9%を占めています(図1-4-1)。



(食品製造業は地域経済の安定に貢献)

食品製造業は、農林水産物を加工して多種多様な食料品を製造し、消費者に安定供給するとともに、地域の農林水産物の大きな需要先として重要な役割を果たしています。

全製造業に占める食品製造業の出荷額と従業者数の割合を地域別にみると、製造品出荷額等においては北海道と沖縄が3割程度と高くなっています(図1-4-2)。また、従業者数の割合については、全ての地域で製造品出荷額等の割合を上回る中、北海道と沖縄は5割程度となっており、地域経済の安定に重要な役割を果たしています。


(食品流通業の動向)

食品流通業は、良質な食品を安定的かつ効率的に供給するとともに、多様化する消費者ニーズを生産者や食品製造業者へ伝達する重要な役割を担っています。

食品流通業のうち食品卸売業の商業販売額をみると、農畜産物・水産物卸売業は平成2(1990)年以降、販売数量の減少や単価の下落等により、減少傾向で推移しています(図1-4-3)。一方、食料・飲料卸売業については、平成3(1991)年以降減少傾向にありましたが、近年は飲食料品小売業の販売額増加、業務用食材の需要増加等により増加傾向に転じています。

食品流通業のうち飲食料品小売業全体の商品販売額をみると、近年は増加傾向となっています(図1-4-4)。また、業態別に食料品販売額の推移をみると、スーパーマーケット、コンビニエンスストアが増加傾向にある一方、百貨店は緩やかに減少しています。


(青果物、水産物の6割程度が卸売市場を経由)

卸売市場は、生鮮食料品等の基幹的な流通インフラとして、効率的で継続的な集荷・分荷や公正な価格形成等の重要な役割を果たしており、近年、卸売市場を経由して流通する生鮮食料品等の割合は、青果物6割(国産青果物では9割)、水産物6割、食肉1割、花き8割程度となっています(図1-4-5)。

このような中、卸売市場の機能を十分に発揮していくため、平成22(2010)年10月、コールドチェーン(*1)システムの確立をはじめとした生産者及び実需者のニーズへの的確な対応、卸売市場間の機能・役割分担の明確化による効率的な流通の確保等を目的とした「第9次卸売市場整備基本方針」が策定され、卸売市場の整備及び運営が行われています。

*1 [用語の解説]を参照。

(中食産業の市場規模は緩やかに増加)

外食産業は、消費者の多様な食志向に対応した食事、快適な時間や空間を家庭の外で提供することにより、豊かな食生活の実現に大きな役割を担っています。

外食・中食(*1)産業全体の市場規模をみると、近年は横ばいで推移しており、平成24(2012)年は前年と比べて1.8%上昇し29.2兆円と推計されます(図1-4-6)。

このうち、持ち帰り弁当店や惣菜店、テイクアウト主体のファストフード等の中食産業は、食の簡便化志向や世帯構造の変化等を要因に緩やかな増加傾向で推移しており、平成24(2012)年は前年と比べて2.9%上昇し5.9兆円と推計されます。

*1 [用語の解説]を参照。



コラム:フード・コミュニケーション・プロジェクト
協働の着眼点(ベーシック16)の構成
協働の着眼点(ベーシック16)の構成

輸出版FCP展示会・商談会シート(英語版)
輸出版FCP展示会・商談会シート(英語版)

平成20(2008)年度に立ち上げられたフード・コミュニケーション・プロジェクト(FCP)は、消費者の「食」に対する信頼を高めることを目的に、フードチェーンに関係する食品関連事業者が業種を超えて意見交換や情報共有を行い、フードチェーンの各段階における食品関連事業者の取組を「見える化」して業界全体のレベルアップに取り組むプロジェクトです。平成26(2014)年3月末現在、1,632の企業/団体が同プロジェクトに参画しています。

FCPでは、フードチェーンに関わる食品事業者が業種や規模に関わらず消費者の信頼向上のため「食品事業者であれば気をつけるべきこと」を「協働の着眼点」(ベーシック16)として整理し、共有しています。これにより、食品事業者は自らの行動を振り返ることで、取組の向上を目指します。

また、この協働の着眼点を基に複雑なフードチェーンを「見える化」して「伝える」ためのツールを開発・普及しています。

主なものには、取引先による工場監査効率化のため共通のチェック項目を整理した「FCP共通工場監査項目」、商品の効果的なPRを可能にする「FCP展示会・商談会シート」等があります。「FCP展示会・商談会シート」は普及が進み、全国各地の商談会で使用されています。

また、平成25(2013)年度からは、FCPの国際展開として、FCPツールを国際標準に反映・調和・整合させるための議論やFCPの活動を国際的に発信する取組も開始しています。

具体的には、「FCP共通工場監査項目」とGFSI(Global Food Safety Initiative:国際的な小売・食品製造事業者の団体)の中小食品事業者の食品安全国際規格対応を支援する「グローバルマーケット・プログラム」との整合性を検討する作業に協力し、また、英語・中国語・韓国語の「輸出版FCP展示会・商談会シート」を作成しました。

 


(食品産業の海外展開の取組)

食品産業が今後も継続して発展していくためには、拡大が見込まれる世界の食市場の取り込みが重要となっています。

このような中、アジアにおける食品産業の現地法人数は、平成17(2005)年の533法人から平成24(2012)年度の694法人まで着実に増加しています(*1)。

新たな海外市場の開拓は、国内市場が成熟化する中、食品産業の事業基盤の強化と原料調達力の強化に不可欠なものであり、製造業、流通業、外食産業が互いの連携も視野に入れ、積極的な展開を行うことが重要となっています。

*1 (株)東洋経済新報社「海外進出企業総覧」

(食品リサイクルと食品ロス削減の取組)

図1-4-7 納品期限の見直しに関する実証事業の概要

食品ロス削減国民運動(NO -FOODLOSS PROJECT)のロゴマーク「ろすのん」

環境と資源の制約の下、農林漁業や食品産業の持続的成長を達成するためには、生産・流通・消費のフードチェーン全体における食品廃棄物等の削減と再生利用の取組が重要です。

このような中、食品リサイクル法(*1)に基づく食品廃棄物等の発生抑制及び再生利用の促進により、食品産業全体における食品廃棄物等の年間総発生量が年々減少するとともに、再生利用等の実施率は平成20(2008)年度の79%から平成24(2012)年度の85%まで上昇しました(*2)。

しかしながら、業種別の再生利用等実施率は、食品小売業や外食産業等川下に至るほど分別が難しく、飼料化・肥料化ができないこと等から低迷しています。

このため、分別が多少粗くても対応可能なメタン化により川下のリサイクルを推進することとしています。また、食品リサイクル法の定期報告に基づくデータの収集・分析を行った上で、平成26(2014)年4月から26業種について発生抑制の目標値を設定し、事業者による発生抑制の取組を推進することとしています(*3)。

我が国で年間1,700万t発生する食品廃棄物の中には、まだ食べられるのに捨てられている「食品ロス」が500?800万t含まれると推計されています(*4)。

このような中、農林水産省の支援の下で発足したフードチェーンに関わる食品関連企業等からなる「食品ロス削減のための商慣習検討ワーキングチーム」が、平成25(2013)年3月の中間とりまとめに基づき、同年8月から半年程度、特定の地域で飲料・菓子の一部品目の店舗への納品期限を現行より緩和(賞味期間の3分の1から2分の1以上)する実証事業を実施し、それに伴う返品や食品ロス削減量等の効果を測定しました(図1-4-7)。

平成26(2014)年3月に行われた実証事業の最終報告では、製造業において納品期限緩和により未出荷廃棄量が削減できる可能性が確認されるとともに、卸売業では納品期限切れや返品が減少する傾向が確認されました。また、小売業においても飲料及び賞味期間180日以上の菓子について、店頭廃棄の増加等の問題はみられませんでした。さらに、この結果を用いて推計した食品ロス削減効果は約4万t(約87億円相当)となり、納品期限の緩和による食品ロス削減の効果が見込まれることから、今後は納品期限の緩和を推奨するとともに、飲料・菓子以外の食品における効果の検証等を行うこととしています。

一方、食品ロスの約半分(200万?400万t)は一般家庭からのものであり、食品ロス削減のためには消費者の意識改革も併せて実施していく必要があります。このため、農林水産省では、食品ロス削減国民運動のロゴマーク(愛称「ろすのん」)を作成し、内閣府、文部科学省、経済産業省、環境省及び消費者庁と連携して、食品ロス削減国民運動(NO-FOODLOSS PROJECT)を展開しています 。

*1 正式名称は「食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律」
*2 農林水産省調べ
*3 「食品廃棄物等多量発生事業者の定期の報告に関する省令の一部を改正する省令」(平成 26(2014)年3月 31 日公布、同年4月1日施行)
*4 農林水産省「平成21 年度食品ロス統計調査」等を基に農林水産省で推計。

(介護食品の開発・普及の取組)

介護食品のニーズは、要介護者数等から約2兆5千億円(*1)と試算されているものの、平成24(2012)年の介護食品の市場規模は約1千億円(*2)に留まっており、介護食品に係る潜在的ニーズ等に対してどのように対応していくかが喫緊の課題となっています。

このような中、農林水産省では、高齢者の食に対する問題点について包括的に議論し、介護食品をめぐる課題を明らかにするため、平成25(2013)年2月に「これからの介護食品をめぐる論点整理の会」を立ち上げ、同年7月に介護食品をめぐる論点を5つの視点として、「介護食品の定義の明確化」、「介護食品の普及」等に整理しました。

この論点を踏まえ、同年10月に立ち上げられた「介護食品のあり方に関する検討会議」の下にワーキングチームを設置し、課題解決に向けた具体的な検討を行っています。

*1 介護保険施設における介護保険制度上の1日当たりの食費基準額1,380 円× 365 日×要介護者数506 万人(平成23(2011)年4月現在)として農林水産省で試算。
*2 (株)富士経済「高齢者向け食品市場の将来展望 2013」

(食料品アクセス問題への取組)

近年、飲食料品店の減少、大型商業施設の郊外化等が進行した結果、過疎地域のみならず都市部においても、高齢者を中心に食料品の購入や飲食に不便や苦労を感じる消費者が増加しており、食料品アクセス問題として社会的課題となっています。

農林水産省が全市町村を対象に行った調査によると、食料品アクセス問題に対し「対策が必要」と回答した市町村は79%となっています(図1-4-8)。このうち、「対策を実施している」と回答した市町村は65%、「対策を検討している」と回答した市町村は11%となっています。また、対策の実施状況を都市規模別にみると、大都市では幅広い対策が行われており、中でも「宅配、御用聞き・買い物代行サービス等による支援」の実施割合が高く、中小都市では「コミュニティバス、乗合タクシーの運行等に対する支援」の実施割合が高くなっています(図1-4-9)。また、対策の実施手法をみると、大都市では「民間事業者への費用補助や助成等の支援」が高く、中小都市では「民間事業者等への業務運営委託(運営主体は市町村)」、「市町村が自ら実施」が高くなっています。

一方、対策が必要であるにもかかわらずその検討を行っていない市町村は、全国で24%を占めており、都市規模別には小都市ほどその割合が高い傾向がみられます。

食料品アクセス問題の解決には、民間事業者や地域住民のネットワークを通じた継続的な取組や、地方公共団体、各府省の連携した取組が重要です。


(緊急時に備えたサプライチェーン構築の取組)

東日本大震災では、建物や機械等の被災、エネルギーや通信等の社会インフラの停止等により、被災地はもとより、被災地のバックアップをすべき関東地方等においても食料供給が停滞し、社会的混乱が生じました。今後も首都直下地震や南海トラフ地震等の発生が懸念される中、食品産業事業者等は、緊急事態が発生した場合においても事業の継続を図るため、食料の安定供給を行うための事業継続計画(BCP(*1))を策定するとともに、個々の食品産業事業者では対応できない事態に備えて食品産業事業者間の連携・協力体制の強化を図ることで、災害に強いサプライチェーンを構築することが求められます。

このような状況を踏まえ、農林水産省では、平成25(2013)年7月、食品産業事業者間の連携促進に係る取組を支援するため「緊急時の食品産業事業者間連携に係る指針」を策定しました。また、平成26(2014)年3月、食品産業事業者間等の連携の実効性を確保するための訓練・演習に関するマニュアルを策定しました。

*1 BCP は、Business Continuity Plan の略。企業が被災しても重要事業を中断させず、中断しても可能な限り短期間で再開させ、中断に伴う顧客取引の競合他社への流出、マーケットシェアの低下、企業評価の低下等から企業を守るための経営戦略のこと。



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