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農林水産省

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(2)動植物防疫の取組


(家畜防疫の取組)

平成23(2011)年4月に「家畜伝染病予防法」が改正され、海外からの家畜の伝染病の侵入を防ぐための水際措置の強化、家畜の伝染病を早期に発見し通報するための届出制度の構築や初動対応の迅速化、発生農家等への支援の充実等の措置が講じられました。また、同年10月に畜産農家が日頃から守るべき飼養衛生管理基準が見直され、農場へ出入りする車両の消毒等、その内容が拡充されました。

また、空海港の水際においては、海外からの入国者に対する靴底消毒、検疫探知犬等を活用した携帯品検査のほか、海外での農場への立ち入りの有無等の質問等を行っています。この結果、近年、成田空港、関西空港ともに国内に持ち込むことができない肉製品等の不合格品件数が増加している状況にあります(図1-5-5)。さらに、海外で農場に立ち入った者等に対しては、携帯品の消毒や衛生指導等を行っています。

国内では、畜産農家が飼養衛生管理基準を遵守できるよう、各都道府県において、家畜防疫員による農場への立入検査や防疫指導、防疫演習等が行われており、農林水産省においては、飼養衛生管理の優良事例を広く紹介しています。

平成25(2013)年度においても、空港や港の出国エリアにおけるポスター提示、リーフレット配布及び年末年始や大型連休等の期間を中心としたキャンペーン広報を実施し、動物検疫に関する国民の周知活動等の取組を行いました。特に、平成26(2014)年2月から3月までのソチでの冬期オリンピック・パラリンピックの開催に際しては、専用のリーフレットを作成・配布するなど、旅行者への注意喚起に努めました。

また、平成25(2013)年10月には、国内で7年ぶりに豚流行性下痢(PED)の発生が確認され、その後、南九州地域を中心に発生が続いています。PEDは、豚とイノシシだけが感染する病気で、成豚では一過性の下痢を引き起こした後、回復しますが、生後間もない子豚が感染すると高い確率で死亡します。

このため、農林水産省では都道府県等と連携して、農場の出入口や畜産関連施設での消毒の実施等の飼養衛生管理を徹底するよう呼びかけるなど、PEDの発生の防止に取り組んでいます。




コラム:口蹄疫からの再生・復興における新たなステージに向けた展開(宮崎県畜産新生プランの策定)

平成22(2010)年4月20日、宮崎県において発生した口蹄疫*は、同県の畜産農家に多大な影響を及ぼしました。その後、口蹄疫は終息したものの、同県の畜産経営は再開の途上にあります。

このような状況の中、宮崎県は、畜産農家、市町村、関係団体と一体になって、「忘れない そして 前へ」を合言葉に、畜産の再生・復興の新たなステージに向かって前進していくため、平成24(2012)年8月に口蹄疫に関する情報発信等を行う「口蹄疫メモリアルセンター」を開設し、悲しい経験を風化させない取組を継続しています。また、平成25(2013)年3月に「宮崎県畜産新生プラン」を策定し、安全・安心で付加価値の高い畜産の構築を図る取組を推進しています。

同プランは、同県の畜産経営を取り巻く様々な課題を克服するため、「全国のモデルとなる安全・安心で付加価値や収益性の高い畜産の構築」に向けて、同県の畜産の新生を図るものであり、生産性の向上、生産コストの低減、販売力の強化、畜産関連産業の集積といった4つの課題について、平成25(2013)年度から平成27(2015)年度の3年間で集中的に取り組むこととしています。平成25(2013)年度においては、同プランの推進のため、関係者と連携して、畜産コンサルティング連携会議、宮崎牛及び県産食肉販売戦略会議等の体制を整備しました。また、「家畜の適正な飼養管理に関するガイドライン」の作成、インターネット販売、宮崎空港でのPR、テレビ広告、シンガポールで「宮崎牛」を販売する指定店の認証等を行いました。


口蹄疫メモリアルセンターの展示風景(全国の応援メッセージ)
口蹄疫メモリアルセンターの展示風景(全国の応援メッセージ)
畜産新生プラン 概要
 
*「用語の解説」を参照。


(農場HACCPの推進)

図1-5-6 農場HACCPの取組イメージ(酪農)

農場段階における衛生管理の充実・強化を図るため、畜産農場にHACCPの考え方を採り入れ、生産農場段階での人への危害要因をコントロールする、より高度な衛生管理手法(農場HACCP)が推進されています(図1-5-6)。

農場HACCPは、飼養衛生水準を向上させる「一般的衛生管理(*1)プログラム」と重大な危害要因が発生するポイントを管理する「HACCP計画」で構成されています。このうち、「一般的衛生管理プログラム」においては、HACCPによる衛生管理の基礎として、農場ごとにHACCPを効率的に機能させるための前提となる衛生管理の方法や手順などを定めています。一方、「HACCP計画」においては、必須管理点(CCP)の決定や必須管理点における許容限界の決定、モニタリング方法の確立、是正措置の確立等について定めています。

農場HACCPに取り組むことにより、農場における危害要因(動物用医薬品や注射針の残留等)の管理が可能となるととともに、衛生管理コストを抑えつつ最適な衛生状態を作り出し、取引先には衛生水準の高い農場としてアピールすることが可能となります。さらに、飼養衛生管理の記録を整備することにより、取引先等からのクレームに対する原因追及が容易になり、クレーム発生時における対処の信頼性が向上することや、農場従事者の衛生意識の向上、事故発生率の低下による生産性の向上が見込まれること等、畜産物の安全性を継続的に向上させる以外の効果も見込まれます。

また、平成23(2011)年度から、民間機関による農場HACCPの認証手続が開始され、平成25(2013)年12月時点で、31農場が認証されています(*2)。農林水産省では、農場HACCPの取組農場数をさらに増やしていくため、農場HACCPの導入や認証取得を促進するための農場指導員の養成等を推進することとしています。

*1[用語の解説]を参照。
*2 農場HACCP 認証協議会公表

 

事例:農場HACCPの取組による豚肉のブランド化
北秋田市
農場全景
農場全景

秋田県北秋田市(きたあきたし)の(有)森吉牧場(もりよしぼくじょう)は、平成19(2007)年の農場開設当初から、農場HACCPによる徹底した衛生管理体制の下、安全で高品質なブランド豚の生産に取り組んでいます。

同農場では、家畜防疫の観点から、入場時の制限(訪問記録作成、立て看板の設置)、衛生管理区域の設定、人・車両・豚の動線の設定、消毒の徹底、注射針・薬品・添加剤等の管理記録の作成等を行っています。また、食品安全の観点から、農場の衛生管理を向上させる農場HACCPを導入し、平成24(2012)年4月に、農場HACCP認証を日本で初めて(第一号)取得しました。

これらの取組の結果、健康な豚の生産と安定的な供給体制を構築するとともに、1日当たり体重増加率の向上も達成しているほか、養豚経営で大きな問題となる豚の慢性疾病である豚繁殖・呼吸障害症候群やオーエスキー病(*)の発生・侵入を防ぐことで健康な豚を育成できており、豚肉のブランド化における強みとなっています。

また、農場HACCPの取組により生産が安定、衛生レベルが向上し、コスト削減につながるものと捉えており、農場HACCPの考え方を熟知した社員の育成に力を入れています。具体的には、入社時の研修、毎月のミーティング、外部講師を招いた勉強会等を通じて社員の知識水準を高めており、今後も継続することとしています。

豚舎内の様子
豚舎内の様子
* 豚のウイルス病で、豚繁殖・呼吸障害症候群は繁殖障害や呼吸障害、オーエスキー病は繁殖障害や神経症状を発症。いずれも養豚業の生産性を低下させることから、「家畜伝染病予防法」の届出伝染病に指定。
 

コラム:BSEの清浄性の国際的な認定(「無視できるBSEリスク」としてのステータス認定)

我が国は、平成13(2001)年の牛海綿状脳症(BSE)発生以来、「と畜場におけるBSE検査体制及び特定危険部位の除去体制の確立」、「肉骨粉等の飼料給与規制等によるBSE感染経路の遮断」、「24か月齢以上の死亡牛についての届出義務とBSE検査体制の確立」等の対策に取り組んできました。

このような取組の結果、平成21(2009)年5月に、我が国は国際獣疫事務局(OIE)(*)から「管理されたBSEリスク」の国に認定され、さらに、平成25(2013)年5月の第81回OIE総会において、我が国はBSEステータスの最上位である「無視できるBSEリスク」の国に認定されました。

「無視できるBSEリスク」の国に認定される主な要件は、「“過去11年以内に自国内で生まれた牛”で発生がないこと」、「有効な飼料規制が8年以上実施されていること」等であり、OIEのBSEステータス認定により、国際的な検証に基づく評価が得られたことになります。

このように我が国のBSE対策の妥当性・有効性が国際的に証明されたことから、今後、輸出先として有望な国との検疫協議が促進されることが期待されます。

なお、牛の肉骨粉の肥料利用については、平成26(2014)年1月に、牛の飼料への流用・誤用を防止する措置を義務付けた上で再開しました。

* OIEは、L’Office International des Epizootiesの略。大正13(1924)年にフランスのパリで発足した世界の動物衛生の向上を目的とする国際機関であり、平成25(2013)年5月現在178か国・地域が加盟。OIEは加盟国からの申請に応じ特定疾病のステータスの公式認定を行っており、BSEについては、飼料規制、BSEサーベイランスの実施状況等を科学的に評価した上で①無視できるリスク、②管理されたリスク、③不明なリスクに分類。

 「無視できるBSEリスク」の国として認定された時の様子
「無視できるBSEリスク」の国として認定された時の様子
我が国におけるBSE の発生と対策
 


(植物防疫の取組)

植物の病害虫については、海外からの病害虫の侵入を防ぐ取組、国内のまん延を防止する取組が行われています。

国際的な取組として、海外から輸入される植物について、輸入の禁止、輸出国の栽培地での検査、輸出国における輸出前の熱処理、我が国での輸入検査等に取り組んでいます。また、輸入検疫条件の変更や国際基準に沿った関係規制等の改訂を行っているほか、国際植物防疫条約(IPPC)による国際基準の策定作業に専門家を派遣しています。

国内的な取組として、「植物防疫法」に基づき、病害虫が付着しているおそれのある植物の移動規制、移動規制地域で対象となっている病害虫の根絶を目指した防除、病害虫の侵入防止のための侵入警戒調査、健全な種苗を供給するための種苗検査等に取り組んでいます。

平成25(2013)年においても、空港や港の出国エリアにおけるポスター掲示、リーフレット配布、年末年始や大型連休等の期間を中心とした広報キャンペーンの実施、植物防疫に対する国民への周知活動等の取組を行いました。

また、平成21(2009)年に我が国で初めて確認されたウメ輪紋ウイルスは、平成25(2013)年の調査により、新たに3府県10市町村で感染が確認(計10都府県38市町村)され、このうち大阪府の1市を同年12月に「植物防疫法」に基づく緊急防除の防除区域に指定(計3都府県13市町)しました。また、早期の根絶に向け、伐採する植物の範囲を広げるなど対策を強化しつつ防除を推進しました。

 

事例:久米島におけるアリモドキゾウムシの根絶の達成
久米島
ヘリコプターによる不妊虫放飼
ヘリコプターによる
不妊虫放飼

アリモドキゾウムシは、トカラ列島以南の南西(なんせい)諸島及び小笠原(おがさわら)諸島に発生しており、かんしょ等に重大な被害を及ぼしています(*1)。このため、これらの発生地域で生産されたかんしょ等は、「植物防疫法」に基づき本土等の未発生地域への出荷が規制(*2)されており、発生地域におけるかんしょ等の生産振興に支障を来しています。

このような中、沖縄県では、アリモドキゾウムシの根絶に向け、平成6(1994)年から久米島(くめじま)において本虫の根絶事業を開始し、約20年にわたる取組の結果、平成25(2013)年4月に根絶を達成しました。

この根絶事業は、「不妊虫放飼法」と「オス除去法(*3)」等の防除対策により本虫の根絶に成功した世界初の事例であり、今後は、この成果を基に他の発生地域での根絶事業が一層推進されることが期待されます。また、久米島産のかんしょは、根絶事業の進展による本虫の発生の抑制とともに、品質の向上が図られ生産も拡大しました。一方、久米島には本虫と同様にかんしょ等に重大な被害を及ぼすイモゾウムシが発生しているため、久米島産かんしょ等は、引き続き本土等への出荷が規制されていることから、現在、イモゾウムシの根絶に向け取組を進めているところです。

*1 被害を受けたかんしょは、臭気と苦みのため、食用や家畜のエサに供することができない。
*2 沖縄県等で生産されたかんしょは、基本的に本土等への出荷が禁止されているが、蒸気の熱により処理されたかんしょ(「植物防疫法」に基づく基準で処理・確認されたもの)は、出荷が可能。
*3 オスが引きつけられるフェロモンと呼ばれる物質と殺虫剤を染みこませた小片を野外に散布し、虫の発生密度を減らす方法。
 

 

(総合的病害虫・雑草管理(IPM)の推進)

我が国の温暖な気候条件の下で、病害虫の発生も多く見られる中、農作物の安定的な生産のためには、これら病害虫の防除対策が重要となっています。

一方、化学農薬の使用低減に対する消費者の要請や環境へ配慮した農業生産への取組も重要であり、病害虫や雑草の発生しにくい環境を作るとともに、病害虫の発生予察情報の活用やほ場の観察により、適切な防除の時期を判断し、天敵(生物的防除)や防虫ネット(物理的防除)等の多様な防除技術を適切に組み合わせて化学農薬のみに依存しない防除を実施する「総合的病害虫・雑草管理(IPM(*1))」を推進していくことが重要となっています(図1-5-7)。

このため、平成17(2005)年に農林水産省が策定した「IPM実践指針」に基づき、都道府県において、IPMに必要となる農作業の工程をとりまとめたIPM実践指標が作成されています。平成25(2013)年10月時点での作成数は、全国37都道府県で236件となっており、作物別にみると果樹類、果菜類(*2)及び葉茎菜類(*3)が多くなっています(図1-5-8)。また、農林水産省では、都道府県が作成したIPM実践指標を活用し、IPMに取り組む農業者団体等に対する支援策も実施しており、平成25(2013)年度は全国で18団体が支援策を活用し、IPMに取り組んでいます。

IPMを推進・普及することにより、各地域に生息する天敵が害虫の発生を抑制する機能を可能な限り活用するとともに、化学農薬に対する抵抗性を獲得した病害虫への防除対策を確立するなど、環境負荷を軽減しながら病害虫の被害を防止し、農作物の安定生産に貢献することが期待されます。また、病害虫防除の面だけでなく、高知県や鹿児島県では特色ある農産物の販売にも結びつけるような取組が行われています。

*1 IPM は、Integrated Pest Management の略。
*2 果実を食用に供するもので、なす、トマト、きゅうり、かぼちゃ、ピーマン等。
*3 葉や茎を食用に供するもので、キャベツ、レタス、ほうれんそう、ねぎ、たまねぎ等。

図1-5-7 IPMの基本的な考え方


図1-5-8 IPM 実践指標の作成状況
データ(エクセル:34KB)                 データ(エクセル:34KB)


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