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農林水産省

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(3)担い手の動向


(販売農家数は減少するものの、大規模化が進展)

平成25(2013)年の販売農家(*1)数は、前年と比べて3%減少し145万5千戸となりました(図2-1-12)。これを主副業別にみると、主業農家(*2)数は32万5千戸(6%減)、準主業農家(*3)数は33万3千戸(3%減)、副業的農家(*4)数は79万8千戸(2%減)となっており、全ての区分で減少しています。

一方、平成25(2013)年の販売農家1戸当たりの平均経営耕地面積は、全国2.12ha、北海道23.18ha、都府県1.52haとなっています(*5)。

このうち、北海道と都府県別に50ha以上又は5ha以上の経営耕地面積を有する販売農家数の推移をみると、販売農家数が大幅に減少する中、北海道においては、50ha以上の販売農家数は4.8千戸、都府県においては、5ha以上の販売農家数は6万7千戸となっています(図2-1-13)。

*1?4 [用語の解説]を参照。
*5 農林水産省「農業構造動態調査」


(法人経営体の増大)

法人経営体数は、増加傾向で推移しており、平成25(2013)年の法人数は1万4,600法人となりました(図2-1-14)。また、農地面積に占める法人の農地利用面積の割合も上昇しており、平成25(2013)年の割合は6.7%となっています。

農業を発展させていくためには、経営管理の高度化、対外信用力の向上、有能な人材の確保、農業従事者の福利厚生の充実、経営継承の円滑化等の面でメリットのある法人経営体を育成していくことが重要です。




事例:先進的な法人経営の取組
山口市
船方農場グループの構成
船方農場グループの構成

山口県山口市(やまぐちし)の船方(ふなかた)農場グループは、農業生産(1次産業)、加工事業(2次産業)、交流事業(3次産業)を行う法人をグループ化して、6次産業化(*)に取り組むという新たな経営形態を確立しています。

同グループ創業者の坂本多旦(さかもとかずあき)さんは、昭和44(1969)年に酪農等を行う船方総合農場を設立しましたが、農業が産業として自立するためには、農業経営を法人化し経営規模の拡大や経営の多角化等に取り組むことが有効な手段と考え、昭和47(1972)年に(有)船方総合農場に改組しました。

その後、都市農村交流や体験学習等を行う交流事業を独立し、(株)グリーンヒル・アトー(昭和62(1987)年)を設立するとともに、来場者に牛乳等を販売する加工事業を立ち上げ、(株)みるくたうん(平成2(1990)年)を設立するなど、複合化・多角化を進めました。また、グループ内の全体調整を行うための事業協同組合であるみどりの風協同組合(平成2(1990)年)を設立し、各法人が効率的に連携するための調整を図っています。

一方、人材育成に当たっては、農業は技術のマニュアル化が難しいことや、苦労して人材を育成しても独立してしまい育成コストが回収できないなどの課題も生じていますが、グループ間の交流等により幅広い人材を育成しています。

*[用語の解説]を参照。


(一般企業等の農業参入の拡大)

平成21(2009)年の「農地法」改正により、企業が農地を利用して農業経営を行うための要件が大幅に緩和されました。

具体的には、リース方式(貸借)であれば企業やNPO法人(*1)等の一般法人であっても全国どこでも参入が可能になり、リース期間も最長50年に延長されました。この結果、平成25(2013)年12月末までの4年間で1,392法人が農業に参入しています(図2-1-15)。「農地法」改正前の約7年(平成15(2003)年4月から平成21(2009)年12月)の間に参入した法人数は436法人であることを踏まえると、「農地法」改正後のリース方式での参入は、改正前の5倍のペースで進んでいます。

また、農地を所有できる農業生産法人(*2)への出資要件が大幅に緩和され、農業者等以外の出資者については、1構成員当たりの出資を10分の1以下とする要件を廃止するとともに、農商工連携事業者等一定の者については、2分の1未満まで可能となりました。

このほか、植物工場等の農地以外の土地を活用した企業による農産物の生産も行われています。

また、参入した企業の多くは、本業でのノウハウを活かしながら農業生産に取り組んでいます。株式会社日本政策金融公庫が他産業から農業に参入した企業を対象に行った調査によると、主に本業における工程管理や品質管理のノウハウを農業経営における生産管理や品質維持・管理手法に活用していることがうかがえます(図2-1-16)。

今後、他産業から参入した企業による農産物の計画的な生産やほ場ごとの作業管理、農産物の品質基準の設定、販売交渉といった経営ノウハウが他の農業経営体にも広く波及することにより、新たな農業経営の展開につながると考えられます。

*1、2 [用語の解説]を参照。


事例:企業の農業参入
(1)直営農場における野菜生産(リース方式)
牛久農場の作業の様子
牛久農場の作業の様子

イオン(株)は、平成21(2009)年にイオンアグリ創造(株)を設立し、自社店舗で販売する農産物の一部について自ら生産する取組を開始しています。

イオンアグリ創造(株)の設立当初は、茨城県牛久市(うしくし)に農地を借り受け生産を開始しましたが、平成26(2014)年3月現在では全国15か所の直営農場(合計約200ha)において、キャベツや小松菜等を生産し、関東圏内の店舗でプライベートブランド(*1)農産物として販売しています。

また、各農場では、GLOBALG.A.P.(*2)の認証を取得し、食の安全や品質向上に取り組むとともに、店舗を回る配送トラックを活用した農産物の集出荷、カット野菜の生産や規格外品の有効利用等あらゆる無駄を省いたコスト削減に取り組んでいます。

さらに、農場運営を通じた地域活性化への貢献として、地域住民の積極的な雇用や農業体験会の実施、近隣の学校や養護施設の生徒による就労体験等を実施しています。

このような取組とともに、農業を担う若者の育成にも力を入れており、農業経験者、関係学部出身者に限らず、農業を発展させる意気込みのある多様な人材を確保し、互いに学び合う風土づくりを通じて、農業の発展に取り組んでいます。

*1 スーパーマーケットや百貨店等の大手小売企業者が自ら企画生産して販売する独自のブランド製品。
*2 [用語の解説]を参照。
(2)地域の活性化を目指して農業へ参入(農業生産法人への出資等)
JR博多駅内の鶏卵直売所
JR博多駅内の鶏卵直売所

JR九州グループは、鉄道以外の新規事業として農業分野に参入することを通じて、地域の雇用創出や遊休地の活用等九州地域の活性化を目指しています。

同グループは、平成22(2010)年に大分県大分市(おおいたし)で農業生産法人を設立し、にら栽培を開始した後、生産品目と地域を拡大し、甘夏(大分県臼杵市(うすきし))、トマト(熊本県玉名市(たまなし))、鶏卵(福岡県飯塚市(いいづかし))、かんしょ(大分県臼杵市)、ピーマン(宮崎県新富町(しんとみちょう))、かんきつ類(熊本県宇土市(うとし))の生産に取り組んでいます。

同グループは農業参入に当たり、行政、農協、農業者等地域の関係者と合意形成を行った上で、参入する地域・品目を決定するとともに、県の公社等の仲介により、円滑に農地を賃借しています。さらに地域の農業者から技術指導を受け、生産物は主に農協を通じて出荷しているほか、従業員の地域雇用に積極的に取り組むなど、地域との連携を密にしています。

また、グループ会社の遊休地を活用して参入した鶏卵事業では、鶏の福祉を優先した飼育方法により健康な親鳥の飼育にこだわっています。さらに、現地直売所、JR博多駅内や周辺の百貨店、羽田空港内等において、そのこだわりの生産方法のPRと併せて卵やスイーツを販売するなど、ブランド価値向上や加工品への展開等高付加価値化を進めています。

今後、同グループは、九州一円における農業展開を図るとともに、自社グループのレストラン等への供給拡大や、規格外品を活用した加工品の開発等による付加価値の向上に努め、地域の活性化に取り組むこととしています。

(3)店舗で生じた食品残さを利用した循環型農業システムの構築(農業生産法人への出資)
循環型農業システム
循環型農業システム

(株)イトーヨーカ堂は、平成20(2008)年、企業の社会的責任(CSR)活動の一環として、食品残さのリサイクルを通じた循環型農業の実現と地域農業の活性化を目的に、千葉県のJA富里市(とみさとし)とその組合員との共同出資により、農業生産法人(株)セブンファーム富里を設立しました。

同農場は、イトーヨーカ堂の各店舗で生じた食品残さを堆肥化して同農場及び協力農業者のほ場で使用するとともに、収穫された農産物を店舗で販売することで循環型農業を形成しています。

このほか、同農場は(株)イトーヨーカ堂の若手社員向けの農業体験や周辺地域の小学生等を招いた収穫体験ツアー等を行っており、地域との交流や食育の場としても貢献しています。

平成26(2014)年1月現在、(株)イトーヨーカ堂は、全国10か所で同様の取組を実施しており、今後も、生産・販売が一体となった取組を通じ、産地の活性化に貢献していきたいと考えています。

(4)トリジェネレーションシステムによるCO2削減と品質向上(農地以外での農産物の生産)
六ヶ所村
農場の様子
農場の様子

青森県六ヶ所村(ろっかしょむら)の(株)トヨタフローリテックは、トヨタ自動車(株)が所有する土地の有効活用のため、トヨタ自動車(株)と愛知県の花き商社である(株)ハクサンの共同出資によって平成11(1999)年に設立されました。

同社では、2haのガラス温室にデンマーク製の自動栽培システムを導入し、ミニバラ等の花付きの鉢物を生産しています。温度・光量がコントロールされた温室の中で自動灌水・養液供給システムによって品質管理を行い、年間400万鉢を生産しています。

環境負荷軽減とCO2を利用した生産性向上のため、平成20(2008)年からトリジェネレーションシステム(*)を導入し、その結果、年間900tのCO2排出量の削減と、花きの光合成促進により、茎が太くなったり、色の鮮やかさが増したりといった、生産性・品質の向上を同時に達成しています。

* コジェネ発電設備(天然ガスを使ったマイクロガスタービン)から生産される①電気(照明に利用)と②熱(暖房に利用)に加え、従来は大気に放出していた③CO2を温室に供給し、花きの光合成を促進するもの。
 

 

(集落営農の経営発展のために法人化を推進)

集落営農は、集落を単位として農作業に関する一定の取決めの下、地域ぐるみで農作業の共同化や機械の共同利用を行うことにより、経営の効率化を目指す取組です。農業従事者の高齢化や担い手不足が進行している地域において、農業、農村を維持する上で有用な形態として全国的に拡大しています。

平成26(2014)年の集落営農数は、任意組織11,462、法人組織3,255の合計14,717となりました(図2-1-17)。

任意組織の集落営農と法人組織の集落営農における総収入等を比べると、法人組織は任意組織に比べて「1千万円以上」の総収入を得る割合が高いほか、経営規模拡大に「取り組んでいる」割合や総収入が「増加した」割合が高くなっています(図2-1-18)。これは、集落営農を法人化することで、経営基盤である農地の利用権設定や、役員等による機動的な経営判断、雇用による就農の促進、融資・出資等の受け入れが可能になるなどにより、積極的な経営を展開することができた結果と考えられます。このため、農林水産省では、集落営農の法人化に必要となる定款作成や登記費用等の経費に対する助成や、集落営農の組織化・法人化等の合意形成に向けて普及指導員OB等を活用する地域連携推進員への支援等を行っています。

集落営農は、地域の農業、農村を維持、発展させていくための重要な担い手であることから、将来にわたって安定的に運営できるように、任意組織としての集落営農を法人化に向けた準備・調整プロセスと考え、一定の期間後、法人化を促していくことが重要となっています。

集落営農に占める法人数の割合(法人化率)を地域別にみると、北陸地方と中国地方で高くなっています(図2-1-19)。



事例:効率的な農業経営を目指す集落営農の取組
一関市
農事組合法人おくたま農産役員の方々
農事組合法人おくたま農産役員の方々

岩手県一関市(いちのせきし)の農事組合法人おくたま農産(平成19(2007)年設立)は、効率的に営農を展開できる体制を構築するため、ほ場整備事業を契機として、7つの集落営農が統合して設立された組織です。

同法人は、徹底した生産コストの削減に向けて、田植や稲刈り等の作業体系を抜本的に見直し、農業機械や人員配分を集中させることによって作業効率を高め、人件費を2割削減することに成功しました。また、機械整備部門を設置し農業機械の点検整備を自前で行うことによって修繕費を5割削減するなど、創意工夫と自主的な取組による省力化と低コスト化を達成しています。

また、農業改良普及センターと連携し主食用米の直播栽培の実証ほ場を設け、安定生産に向けた栽培技術(雑草防除等)の確立を進めており、主食用米の更なる低コスト生産を目指しています。このほか、同法人は作業の効率化で余裕が生じた労働力をトマトや小菊等収益性の高い品目の生産に投入することにより、収益構造の強化にも取り組むこととしています。

 


(基幹的農業従事者の減少と高齢化の進行)

基幹的農業従事者(*1)数は、減少傾向で推移しており、平成25(2013)年の基幹的農業従事者数は、前年と比べて2%減少し174万人となっています(図2-1-20)。基幹的農業従事者の年齢構成をみると、65歳以上が61%(107万人)、40代以下が10%(18万人)であり、世代間のバランスが崩れた状態となっています(図2-1-21)。

今後、高齢農業者のリタイアが増加すると見込まれることから、耕作放棄地や後継者のいない農家の農地について、担い手による有効活用を図るとともに、将来における我が国の農業を支える人材となる青年層の新規就農者を確保し、定着を促進することが喫緊の課題となっています。

*1 [用語の解説]を参照。


(39歳以下の新規就農者が増加)

平成24(2012)年の新規就農者数は、前年に比べて3%減少し5万6,480人となりました(図2-1-22)。新規就農者数を就農形態別にみると、新規自営農業就農者(*1)、新規雇用就農者(*2)はそれぞれ5%減少し、4万4,980人、8,490人となりました。一方、新規参入者(*3)は43%増加し3,010人となりました。

これを年齢別にみると、40歳から59歳、60歳以上は減少していますが、39歳以下は前年に比べて6%増加し1万5,030人となりました。

しかしながら、39歳以下の新規就農者のうち3割程度は、生計の目途が立たないこと等から数年以内に離農しており、定着するのは1万人程度と推測されています。

今後、持続的で力強い農業構造を実現するためには、基幹的に農業に従事する者が90万人必要と見込まれており、これを65歳以下の年齢層で安定的に担うには、青年層の新規就農者を毎年2万人程度確保していく必要があります。

*1?3 [用語の解説]を参照。


図2-1-22 新規就農者数の推移
データ(エクセル:35KB)               データ(エクセル:35KB)

(新規就農施策の効果により青年層の新規参入者数が増加)

平成24(2012)年度から、青年の就農意欲の喚起と就農後の定着を図るため、原則45歳未満で一定の条件を満たす就農希望者・新規就農者を対象として、就農前の研修期間(準備型、最長2年間)及び経営が不安定な就農直後(経営開始型、最長5年間)の所得確保を支援する「青年就農給付金」の給付(年間150万円)が行われています。

青年就農給付金の給付対象者の内訳をみると、準備型においては、年齢別では20代が最も高く(36%)、研修機関別では農業大学校等の教育機関が46%と最も高くなっています(図2-1-23)。一方、経営開始型においては、年齢別では30歳代が半数を占め、個人・夫婦別では個人が84%となっています。


このような取組の結果、平成24(2012)年における新規参入者は、前年に比べて43%増加し3,010人となりました(図2-1-24)。これを年齢別にみると、39歳以下は、平成23(2011)年の800人から平成24(2012)年の1,540人まで約2倍に増加しました。

また、農業法人等への雇用就農を促進するため、農業法人等が実施する新規就農者に対する実践研修等に対して支援する「農の雇用事業」(最長2年間)が平成20(2008)年度から実施されています。


 

(地方公共団体、道府県農業大学校による就農支援対策)

新規就農を促進する様々な支援策が、都道府県、市町村の各段階において打ち出され、年々充実しています。平成25(2013)年度では、39都道府県、592市区町村において、独自の新規就農支援策が展開されており、農業研修や、住宅、農地の取得に対する支援等が行われています(*1)。

また、農業関係の研修教育機関として、全国42道府県の道府県農業大学校が設置されており、就農率は54%(継続研修を含む。)となっています(表2-1-2)。

このような支援対策の実施により、新規就農希望者の円滑な就農・定着が期待されます。

*1 農林水産省調べ

(青年層の就農への関心の高まり)

このような各種支援対策の結果、青年層の農業への関心も高まっています。農林水産省は、平成25(2013)年7月から平成26(2014)年3月までの期間で、全国4か所(札幌市、東京都、名古屋市、大阪市)で合計8回の新規就農相談会「新・農業人フェア」(株式会社リクルートジョブズ主催)を開催しました。同フェアは、農業を仕事にしたいと考えている全ての人を対象とした総合就農相談会であり、同フェアへの入場者数は、前年度と比べて34%増加し7,430人となりました。また、来場者の年齢をみると30歳代以下が64%を占めています(図2-1-25)。

同フェアの会場では、就農希望者や地方公共団体、農業法人等が一堂に会し、就農に関する各種情報提供や、農業法人等による会社説明会のほか、独立就農に向けた個別相談等が行われました。

青年就農者の就農準備に対する支援として、全国及び各都道府県の農業会議等が「新規就農相談センター」を設置し、就農に関する情報提供や就農希望者からの個別の就農相談に対応しています。また、公益社団法人日本農業法人協会が中心となり、自らの農業適性の確認や農業法人等への就業後に早期離職する就業ミスマッチ防止等を図るため、大学生、社会人等を対象とした短期間の農業就業体験(インターンシップ)を実施し、平成25(2013)年度においては、790人が参加しています(図2-1-26)。

さらに、平成25(2013)年度から、将来の職業を考える大学生等に向けて、農業の魅力を伝え、就職先を考える際の選択肢の一つとして認識してもらうための働きかけを実施しています。農林水産省では、平成25(2013)年度において、全国合計69校の大学等の就職担当部局を訪問し、その中で、学生の就職先として農業を積極的に考える4つの大学等において、「職業としての農業」をテーマに①農業界の動きや、②全国の農業者の事例、③農業インターン、就農イベント等の紹介等を内容とした授業や講演会等を実施しており、今後も、新規就農者の増加に向けて、このような取組を継続して行っていくこととしています。

このほか、平成25(2013)年12月から、青年就農給付金受給対象者や農の雇用事業の研修生をはじめとした青年新規就農者と農林水産省が直接つながるネットワークとして、「青年新規就農者ネットワーク(愛称:一農ネット)」の取組が開始され、農林水産省からの情報提供や登録者に向けたアンケート、交流会の開催等の取組を行っています。

今後も、就農希望者に対する情報提供や相談会等を通じて、農業への関心を就農につなげていくことが重要です。

事例:飲食店勤務をきっかけとした意欲的な新規就農者
岡山康介氏
岡山康介氏
多気町

三重県多気町(たきちょう)の岡山康介(おかやまこうすけ)さん(36歳)は、前職の飲食店勤務の仕事を通じて食材に対する興味が深まるとともに、自らも生産したいという思いが高じたことから、平成25(2013)年に祖父の農地を引き継いで就農しました。就農に当たっては、県内トマト農家等で農業研修を受け、現在は12aのハウスでトマトを生産しています。

今後は、トマトの規格外品の活用や消費者への直接販売のほか、前職の経験を活かし、トレーラーハウスを改装したカフェの開店や、カフェにおけるトマト販売にも取り組みたいと考えています。また、これまでの人脈を活かし、農業体験や観光分野等との連携にも取り組んでいく考えです。

 

 

(農業経営者の育成に向けた取組)

農業分野における人材育成への支援は、攻めの農業を実現するために不可欠な取組です。また、農業を成長産業として発展させるためには、農業者が優れた経営感覚を持って経営に当たることが重要であることから、経営者としての農業者を育成していくことが重要です。

このため、平成24(2012)年度から、農業経営者の育成や教育の強化に対する支援を行っています。具体的には、①高度な農業経営者育成教育を実施する教育機関(*1)(以下「高度教育機関」という。)が、研修等を通じて地域の中核教育機関(県農業大学校等)の教育水準を向上させる取組等に対して支援を行うほか、②県農業大学校等が、高度教育機関との連携の下、教育改善計画を策定し、その計画に基づいて、6次産業化やGAP(*2)等新たな教育に取り組む場合等に対する支援を行っています。また、平成25(2013)年度からは、次世代の経営者を育成するため、農業法人等が、その職員等を先進的な農業法人や食品産業等の異業種の法人へ研修派遣する取組を支援する「農の雇用事業(次世代経営者育成派遣研修)」が始まりました。

このほか、平成24(2012)年から、農業者が自らの経営改善に必要な取組の実施状況や経営データを客観的に把握できる「新たな農業経営指標」の活用や、農業経営者同士によるネットワーク形成を図るためSNS(*3)を活用した「農業経営者新時代ネットワーク」の運営を行っています。

このような取組を通じて、経営感覚を持ち、自らの判断で消費者・実需者のニーズの変化等に対応する農業経営者の育成が期待されます。

*1 平成25(2013)年度は、(一社)アグリフューチャージャパン、(株)サラダボウル、NPO 法人日本プロ農業総合支援機構、(株)パソナ農援隊。
*2 [用語の解説]を参照。
*3 SNS は、Social Networking Service(Site)の略。インターネット上で友人を紹介しあって、個人間の交流を支援するサービス(サイト)。



コラム:「世界農業ドリームプラン・プレゼンテーション2013」の開催
大会の様子
大会の様子
相互支援研修会の様子
相互支援研修会の様子

群馬県昭和村(しょうわむら)(有)農園星ノ環(ほしのわ)代表の星野高章(ほしのたかゆき)さんと茨城県下妻市(しもつまし)の(有)ストロベリーフィールズ代表の遠藤健二(えんどうけんじ)さんは、「日本の農業には夢がある。しかし、語る場がなかった。農業関係者自らが夢を語り、多くの人の心に届けば、農業の未来は絶対変わる」という思いから、「世界農業ドリームプラン・プレゼンテーション」を立ち上げ、平成25(2013)年10月に第1回を開催しました。

ここでは、農業者や農に関わる人たちが発表者となり、自らが思い描くビジネスプランと、その実現に向けた想いを映像や音楽とともに観覧者にアピールし、発表の後には観覧者の投票によって「感動大賞」や「共感大賞」の表彰を行うものです。

今回の開催では20組の発表者の中から、「感動大賞」には茨城県稲敷市(いなしきし)で酪農を営む上野裕(うえのゆたか)さんが選ばれたほか、「共感大賞」には青森県弘前市(ひろさきし)でりんご栽培を営む水木(みずき)たけるさんが選ばれました。

今回参加した発表者は、この大会の開催に向けて合計6回の「相互支援研修会」に参加し、専門家によるアドバイスを受けたほか、発表者同士の交流を通じて、農業への夢・思いを強めました。

今後も、この大会の開催を通じて多くの農業者が夢と体験を語り、多くの観覧者に感動と共感を与える場になることが期待されます。

 


(女性農業者の就農状況は年代別に差異)

平成25(2013)年における基幹的農業従事者174万2千人のうち女性農業者は42%(72万9千人)を占めており(*1)、農業や地域活動の担い手として重要な役割を果たしています。

女性農業者の就農状況を年代別にみると、20歳代では、「農業法人に就職」が最も高くなっていますが、30歳代以上では、「配偶者の実家の農業」の割合が上昇するとともに「独立して就農」、「農業法人を経営」の割合も上昇しています(図2-1-27)。全体では55%が「配偶者の実家の農業」に携わっていると回答しており、次いで「自分の実家の農業」、「独立して就農」の順となっています。

また、農業を職業に選択した理由は、20歳代では「農村生活、自然が好きだから」が最も高く、次いで「植物や動物を育てることが好きだから」、「身体を動かす仕事が好きだから」の順となっています。全体では「家庭環境から農業をやらざるを得ないから」との回答が最も高くなっている一方で、「やり方次第で成果を得ることができるから」、「食べ物を生産するという意義のある仕事だから」等の前向きな回答も高くなっています(図2-1-28)。

*1 農林水産省「農業構造動態調査」



コラム:女性のキャリアとしての農業を紹介するセミナーの開催
セミナーの様子
セミナーの様子

農業との関わりが少ない都会の若い女性にも「職業としての農業」を考えてもらうため、自身も非農家出身であり現在は農場長として茨城県土浦市(つちうらし)久松農園に勤務している伏見友季(ふしみゆき)さんが講師となり、「職業としての農業を考えるためのセミナー」が、キャリア教育の一環として平成25(2013)年11月に東京都世田谷区の日本女子体育大学で開催されました。

伏見さんは、「自分のやりたいことをつきつめたら農業にたどり着いた」、「料理教室の講師などこれまでの仕事で培った強みが、農業という現在の仕事でも活かせている」などと講演し、女子学生たちは、自分自身のキャリアアップの中で農業にいきいきと取り組んでいる先輩女性の話に熱心に聞き入っていました。

講義を聴いた学生からは、「食べ物を作るってやっぱりすごい」、「自分がいるからこそできる好きな仕事をしたい」、「様々な可能性を考えて今できることをやっておくべき。農業も選択肢の1つに入れてみる」など様々な感想が聞かれました。

 


(女性農業者の持つ知恵を社会に発信する「農業女子プロジェクト」)

女性農業者は、日々の自らの仕事や生活者として家事・育児等に携わる中で培った、女性ならではの知恵を有しています。そうした知恵を活かして、農産物の生産だけでなく加工、サービス(販売、農業体験の提供等)を含めた多様な活動を行い、高い目標や志を持って農業経営を展開している女性農業者が、全国各地で活躍しはじめています。

このような女性農業者の力を積極的に活かしていくために、農林水産省は平成25(2013)年11月、「女性農林漁業者とつながる全国ネット(愛称:ひめこらぼ)」(平成24(2012)年10月設立)と連携して、「農業女子プロジェクト」を立ち上げました(図2-1-29)。このプロジェクトは、女性農業者の活動を社会全体に発信することによって、その存在感を高め、将来的には職業として農業を選択する女性の増加を図ることを目指しています。

同プロジェクトには、全国の女性農業者93人が参加(平成26(2014)年3月現在)するとともに、連携企業として自動車メーカーや旅行会社、ホテル等10社(*1)が参画しており、今後も参加者・連携企業を増加させていくこととしています。

このプロジェクトでは、これら連携企業ごとに個別プロジェクトを実施しており、例えば、①ファストフードチェーンと一緒に野菜のおいしさを活かしたサイドメニューを企画する取組、②アイデアを活かして快適でデザイン性に優れた農作業用ウェア開発を行う取組、③乗りやすい軽トラックの企画・開発を行う取組等を進めています。

女性農業者にとっては、自分たちの知恵を活かしてもらえるだけでなく、企業から農業経営に役立つヒントを学ぶことができる機会になっています。また、連携企業にとっては、農業就業人口の約半数を占める女性農業者向けの市場を開拓することにつながるという魅力もあります。

「農業女子プロジェクト」の活動を通じて、今後も農業で活躍する女性の姿を広く社会に伝えていくことが重要です。

*1 参加企業は、井関農機(株)、(株)エイチ・アイ・エス、(株)コーセー、(株)タニタ、(株)東急ハンズ、(株)モンベル、(株)レンタルのニッケン、ダイハツ工業(株)、日本サブウェイ(株)、リーガロイヤルホテル東京(平成26(2014)年3月現在)。

図2-1-29 「農業女子プロジェクト」概要

(地域社会や農業経営における女性の参画)

農業委員に占める女性の割合や農業協同組合の役員に占める女性の割合は、平成25(2013)年において、それぞれ6.3%(2,232人)(*1)、6.0%(1,117人)(*2)となっており、近年増加傾向にありますが、依然として低い状況にあります。このため、関係団体における女性役員等の登用目標の設定を促すとともに、地域の理解・機運の醸成に向けた啓発活動を展開しています。

平成25(2013)年度においては、農業委員への女性の登用の拡大を進めるため、現職の女性農業委員等の知見を集めて、女性が農業委員になるために必要な知識等をまとめたパンフレット「あなたも農業委員になりませんか!」を作成し、平成26(2014)年7月(沖縄県は9月)の農業委員統一選挙に向けて積極的な周知活動を行っています。また、全国各地で女性農業委員の組織化が進展しており、平成25(2013)年度には、新たに香川県と愛媛県で女性農業委員の会が設立されました。平成23(2011)年に設立された全国女性農業委員ネットワークでは、現在39府県の女性農業委員組織が会員となっており、女性農業委員の資質向上や相互研さんに取り組んでいます。

さらに、農協運営への女性参画の取組を推進するため、女性の視点やネットワークを活かした農協の事例を紹介したパンフレットを作成し、研修等において活用しています。

一方、家族で取り組む農業経営において、経営方針や役割分担等を明確にする「家族経営協定(*3)」は、女性の経営参画を促すとともに、経営体としての組織力を向上させる取組として有効です。家族経営協定の締結数は年々増加しており、平成25(2013)年における締結農家数は、前年と比べて4%増加し52,527戸(*4)となりました。

このような取組を通じて、女性の能力が最大限に発揮されることにより、女性農業者の活躍が一層促進されることが期待されます。

*1 全国農業会議所調べ(平成25(2013)年9 月1日現在)
*2 全国農業協同組合中央会調べ(平成25(2013)年7 月31 日現在)
*3 [用語の解説]を参照。
*4 農林水産省調べ


事例:積極的な経営展開を図る女性農業者の取組
七尾市
高 博子氏
高 博子氏

石川県七尾市(ななおし)のNOTO高農園(たかのうえん)の高博子(たかひろこ)さんは、福岡県での会社勤務を経て、平成12(2000)年に能登島(のとじま)で夫婦揃って就農し、有機農業に取り組んでいます。

高夫婦は「医食同源」、「身土不二(しんどふじ)」を信条として、土づくりや農薬を使わない栽培を実践しています。平成14(2002)年には地元農業者と「能登エコファーマーズ倶楽部」を設立し、環境にやさしい農業生産や地産地消のPR活動の取組を行うほか、夫婦揃って「野菜ソムリエ」の資格を取得しました。

また、平成19(2007)年には七尾市が主催する「のと・七尾女性起業塾」の第1期生として学び、平成21(2009)年には高農園の販売部門を担う能登大地(株)やエディブルフラワー(食べられる花)の栽培・加工販売を行う「りらく」を設立するなど6次産業化にも意欲的に取り組んでいます。

現在は、約300種類の伝統野菜、西洋野菜、ハーブ等を栽培し、販売先は、消費者とのコミュニケーションを重視した販売活動の結果、全国の百貨店やレストラン等を中心に200件近くの取引先に野菜を納入するに至っています。

今後は、世界農業遺産(GIAHS(ジアス))(*)に登録された能登の食材PRと能登島で新たに農業に挑戦する若者の育成を行い、能登島で新規就農者を増やしたいと意欲的に活動しています。

*世界農業遺産(GIAHS)については、第3章第1節「農業・農村の持つ多面的機能の維持・発揮」を参照。
 

 

(農作業事故防止に向けた取組)

農作業に伴う死亡事故は毎年400件程度発生しており、その8割を65歳以上の高齢者が占めています(図2-1-30)。

このような状況を踏まえ、平成22(2010)年から全国の関係機関の協力の下、農作業繁忙期で事故が多く発生する春と秋に「農作業安全確認運動」を実施しており、平成25(2013)年は、地方公共団体や、農業機械製造業者、農業関連団体等の625団体が運動に参加し、啓発活動等を実施しました。

また、農作業事故の7割を占める農業機械による事故を未然に防止するため、「トラクターの片ブレーキ防止装置」や「自脱型コンバインの手こぎ部の緊急停止装置」を開発し、今後、実用化し、普及を進めることとしています。

さらに、万が一の事故に備えるため、農業者も一定の要件(*1)を満たす場合は労災保険の特別加入の仕組みを利用することが可能となっています。しかしながら、平成24(2012)年末において加入している農業者は12万人にとどまっており、引き続き、その仕組みや加入のメリットの周知を図り、加入促進に取り組むこととしています。

*1 特定農作業従事者、指定農業機械作業従事者又は中小事業主等に該当する者。
 特定農作業従事者は、年間の農業生産物総販売額が300 万円以上又は経営耕地面積2ha 以上の規模で、①トラクター等の農業機械を使用する作業、② 2m 以上の高所での作業、③サイロ、むろ等の酸欠危険のある作業、④農薬散布、⑤牛・馬・豚に接触する作業に従事している者。
 指定農業機械作業従事者は、自営農業者(兼業農家を含む)のうち、次に指定された機械を使用し農作業を行う者。①動力耕うん機その他の農業用トラクター、②動力溝掘機、③自走式田植機、④自走式防除用機、⑤自走式動力刈取機、自走式収穫用機械、⑥トラック、自走式運搬用機械、⑦動力脱穀機や動力草刈機等の定置式又は携帯式機械。
 中小事業主等は、常時300 人以下の労働者を使用する事業者本人又はその家族従事者(法人の場合は代表者以外の役員)であって、要件(1 年間に100 日以上にわたり労働者を使用することが見込まれ、雇用する労働者について労働保険関係が成立、労働保険の事務処理を労働保険事務組合に委託していること)を満たす者。



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