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農林水産省

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(2)鳥獣被害の現状と対策


野生鳥獣による農作物被害額は、年間200億円を上回っており、獣類によるものが8割、鳥類によるものが2割を占めています。シカとイノシシによる被害額は依然として多いほか、シカによる被害面積が引き続き高い水準となっています(図3-1-9、図3-1-10)。



このような中、イノシシ、シカについては、有害捕獲活動等により、捕獲数が大きく増加しています(図3-1-11)。

一方、捕獲の担い手である狩猟免許所持者数は年々減少するとともに、60歳以上の割合が上昇しており、高齢化が進んでいます(図3-1-12)。このうち、わな猟免許所持者数については増加がみられますが、銃猟免許所持者数は大きく減少しています。

鳥獣被害は、農林水産業にとどまらず、生態系、生活環境等広い範囲に及ぶことから、平成25(2013)年12月に環境省と農林水産省が共同で「抜本的な鳥獣捕獲強化対策」を取りまとめ、シカとイノシシの個体数を10年後(平成35(2023)年度)までに半減させることを目指すこととし、具体的な捕獲目標を設定して捕獲の強化を図ることとしました。

さらに、環境省においては、平成26(2014)年3月に、都道府県や国が鳥獣の管理のために行う捕獲等事業の創設、鳥獣の捕獲等を行う事業者に関する認定制度の導入等を含む「鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律の一部を改正する法律案」を国会に提出したところです。



鳥獣被害が深刻化・広域化する背景として、農山漁村の過疎化や高齢化の進行による耕作放棄地(*1)の増加、狩猟者の減少や高齢化による捕獲圧の低下、里山・森林管理の粗放化、近年の少雪傾向等に伴う野生鳥獣の生息環境の変化等が考えられます。

また、鳥獣被害は農業者の営農意欲を低下させ、耕作放棄地を増加させる一因となっていますが、耕作放棄地の増加が更なる鳥獣被害を招くという悪循環を生じさせており、被害額として数字に表れる以上に農村の暮らしに深刻な影響を及ぼしています。

このため、市町村が鳥獣被害防止特別措置法(*2)に基づく被害防止計画を作成し、鳥獣被害対策実施隊等による捕獲や追い払い等の地域ぐるみの被害防止活動、侵入防止柵の整備、地域リーダーの育成、獣肉の利活用等を図る人材育成に取り組んでいます。

被害防止計画を作成した市町村数は1,369まで増加しており、鳥獣被害が認められる全市町村(約1,500)の9割に達する一方、鳥獣被害対策実施隊を設置している市町村数は745まで増加したものの、引き続き設置の促進と体制の強化が必要となっています(図3-1-13)。

なお、被害防止計画を作成した市町村については、市町村が負担する同計画に基づく被害防除活動経費に対する特別交付税措置が講じられていることに加え、鳥獣被害対策実施隊を設置した場合は、一定要件を満たす実施隊員について、狩猟税の軽減措置、銃刀法の技能講習の免除等の優遇措置が設けられています。



他方、鳥獣被害軽減のための新たな取組として、ITを活用した捕獲技術(自動監視・遠隔操作)、監視カメラでの確認により吊り上げた捕獲網を落として捕獲する方法(ドロップネット)、シャープシューティング(*3)等の新技術が開発されており、このような新技術も取り入れて、地域ぐるみの被害防止活動を総合的に実施することが効果的です。

*1 [用語の解説]を参照。
*2 正式名称は「鳥獣による農林水産業等に係る被害の防止のための特別措置に関する法律」
*3 単に餌付けと狙撃を組み合わせた方法ではなく、一定レベル以上の技量を有する射手、動物の行動をコントロールするための給餌、警戒心の強い個体の出現予防等の体制を備えた捕獲手法のこと。


事例:鳥獣被害防止に向けた取組
(1)地域住民が一体となった鳥獣被害対策の取組
津市
サルの追い払いに取り掛かる地域住民
サルの追い払いに取り掛かる地域住民

三重県津市(つし)の片田(かただ)地区では、サル、シカ、イノシシによる農作物への被害が増加してきたことから、平成19(2007)年に11の自治会、猟友会、農協、消防団等で構成する「片田地区獣害対策協議会」を設立しました。

同協議会は、鳥獣の餌場をなくす、畑はネットで囲うなどの「獣害対策5ヶ条」を策定し、住民に周知するとともに、各戸に被害記録簿等を配布し、被害の発生状況を基に鳥獣が出没する地域の予測等を行っています。

特に、サルの被害対策として、捕獲したサルに発信器を付けて群れの動きを監視し、地区に侵入しようとする群れに対する追い払いや寝場所の攻撃(夜間の追い払い)等により、サルの群れが同地区を避けるようになり被害が大幅に減少しました。

また、同協議会は、獣害被害対策を促す研修会の開催やポスターの配布等による地域住民の意識向上に努めているほか、わな免許取得の励行による人材の育成も行っています。

今後も、地域住民が一体となった対策に取り組むことにより、鳥獣被害を減少させていく考えです。

(2)高度な捕獲技術を全国各地で普及する取組
足利市
捕獲機材の設置方法を指導する須永氏(中央)
捕獲機材の設置方法を指導する須永氏(中央)

栃木県足利市(あしかがし)の須永重夫(すながしげお)さんは、同市で捕獲されたイノシシの約2割を捕獲するなど、鳥獣被害の軽減に貢献する中心的な人材です。

また、須永さんは高度な捕獲技術や野生鳥獣に関する見識を活かし、「農作物野生鳥獣被害対策アドバイザー」として、県内はもとより全国各地で被害対策に関する助言・指導や講演等を行い、捕獲技術の普及に積極的に取り組んでいます。

一方、捕獲機材の開発にも取り組んでおり、平成11(1999)年及び17(2005)年に捕獲檻及びわなに関する特許を取得するとともに、平成24(2012)年にはカラス被害を軽減する器具を開発し実用新案登録を行うなど、効果的な鳥獣被害対策の開発・普及に努めています。

 


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