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農林水産省

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(3)集落機能の維持と地域資源の保全


(集落の現状)

農業集落による健全な農業生産活動や共同活動を通じて、農村に存在する地域資源の保全や有効活用が図られるとともに、農業・農村の持つ多面的機能が維持・発揮され、国民全体の生活に寄与しています。

しかしながら、総務省が過疎地域等の集落を対象に実施した調査によると、住民生活・地域文化、生活基盤・産業基盤、自然環境・災害・景観について、集落機能の低下につながる多くの課題が挙げられています(図3-1-14)。

農村の集落機能が低下した場合、農業・農村の持つ多面的機能が十分に発揮されず、地域資源の管理の粗放化や耕作放棄の増大、自然環境・景観の悪化、土砂災害、野生鳥獣による被害、伝統・文化の衰退等を招き、国民の暮らしや国土の保全に多大な影響を及ぼすおそれがあります。

一方、農村における都市部にはない様々な自然や生き物、良好な景観、歴史や文化との出会い、癒(い)やし・安らぎ、健康の維持・増進等の効果・機能への期待が高まっており、農業を軸に観光と連携した農家民宿、観光農園、農家レストラン等の取組に加え、農業と医療・福祉・教育の連携等の新たな取組もみられるようになっています。

このため、農業生産活動の担い手を支える取組を強化するとともに、集落機能を維持・強化することにより、農業・農村が持つ多面的機能の維持・発揮や地域の活性化を図り、美しく活力ある農村を次世代に継承していくことが重要です。



(中山間地域等直接支払による取組)

中山間地域等の農業生産条件が不利な地域における農業生産活動を維持し、多面的機能の確保を図ることを目的に、平成12(2000)年度から中山間地域等直接支払を実施しています。

仕組みとしては、対象となる農用地において農業を5年以上続けることを協定により約束した農業者等に対して、交付金を交付する制度であり、それら協定参加者は、耕作放棄の防止や水路・農道等の管理、農用地と一体となった周辺林地の管理、景観作物の作付け、魚類・昆虫類の保護等、様々な活動を行うことができます。

平成26(2014)年1月末現在の取組の見込みとして、全国68万3千haの農用地を対象に、28,007協定が締結されています(図3-1-15)。

本制度の実施により、耕作放棄地の発生防止や協定締結を契機に共同活動への意識が高まるなど、農地の保全や集落の活性化に寄与しているほか、集落を基礎とした営農組織の育成・法人化や地場産農産物等の加工・販売の拡大、棚田等の地域資源を活かした体験交流活動の推進等、全国各地で様々な取組が行われています。




事例:集落営農法人による経営の多角化と地域活性化の取組
高原町
農産物直売所「杜の穂倉」
農産物直売所「杜の穂倉」

宮崎県高原町(たかはるちょう)の花堂(はなどう)集落は、過疎化や農業後継者不足への懸念から中山間地域等直接支払を契機として、平成17(2005)年に営農組合を設立し、農作業の受託に取り組むなど集落営農を推進しました。

また、平成20(2008)年に営農組合を母体とした「農事組合法人はなどう」を設立し、農地の利用集積を推進するとともに、組合員全員による奉仕作業や土地・資材等の提供により、平成21(2009)年に農産物直売所「杜(もり)の穂倉(ほくら)」を建設し、6次産業化の取組を開始しました。

商品の開発に当たっては、同組合の女性部「乙女会」が中心的な役割を担い、生産から加工・流通まで一体的に取り組むとともに、交流イベントの開催や古民家を活用した農家レストランの経営のほか、食育活動の一つとして町内の小中学校の給食に地域食材を提供しています。

このような取組の結果、直売所の年間来客数は20万人以上に達し、年間売上額も1億円を超えるなど、生産者の意欲の向上と地域活性化に貢献しています。

 


(農地・水保全管理支払による取組)

農地、農業用水等の地域資源は、食料の安定供給の確保や農業の多面的機能の維持・発揮に不可欠な社会共通資本です。しかしながら、近年、農家と非農家の混住化、農村の高齢化等の進行により、これら地域資源の維持・管理が困難になっています。

このため、平成19(2007)年度から「農地・水保全管理支払(*1)」により、地域住民をはじめとする多様な主体の参画を得て行う、水路の草刈り・泥上げ、農道の砂利の補充等の農地・農業用水等の保全管理や農村環境の向上に資する共同活動への支援が行われています。

さらに、平成23(2011)年度から、老朽化が進む施設の長寿命化のための補修・更新等の向上活動に対する支援が行われています。

平成26(2014)年1月末現在の取組の見込みとして、共同活動支援は19,020活動組織、148万haにおいて取り組まれ、向上活動支援については、8,250活動組織、40万haにおいて実施されています(図3-1-16)。

農林水産省が農村振興に取り組む活動組織を対象に行った調査によると、「地域が目指す方向についての話し合い」、「地域の行事やイベント」、「子どもが参加する地域活動」、「生態系の保全」について、農地・水保全管理支払をきっかけとして「本対策がきっかけで新たに始まった」、「前から取り組んでいて盛んになった」と回答する割合が高くなっているほか、「農地の利用集積」についても取組が進んでいることがうかがえます(図3-1-17)。

なお、平成26(2014)年度からは、新たに創設される「多面的機能支払(*2)」において、引き続き地域コミュニティによる地域資源の基礎的保全活動や質的向上を図る活動を支援します。

*1 平成19(2007)年度から平成22(2010)年度までの名称は「農地・水・環境保全向上対策」。



事例:地域力の向上を図り地域資源を適切に保全・管理する多様な取組
河北町
水田内を観察するための木道(地域で直営施工)
水田内を観察するための木道(地域で直営施工)

山形県河北町(かほくちょう)の元泉(もといずみ)地区では、農家数の減少や高齢化により、水路や農道等の保全管理が年々困難になっていることや、将来を担う子供たちと若い後継者の農村環境への関心の低下が課題であったことから、平成19(2007)年に農地・水・環境保全向上対策(*1)の活動組織として、元泉地域農地・水・環境保全組織(*2)を立ち上げ、地域の持続的・自律的発展に向けた活動に取り組むこととしました。

同組織には、地域の各団体(農業者、自治会、婦人会、子供会、老人会、消防団、青年組織)が参加するとともに、国の研究機関、環境調査機関、大学、NPO法人等が活動を支える応援団を形成し、地域資源の保全管理、田園自然再生を実践しています。

地域資源を次世代に継承する取組として、地域づくり研修会、「めだかの学校」による環境学習、地域の「見どころ、見せどころ、聞かせどころ」写真コンテスト等、地域を見つめ直す取組のほか、GIS(地理情報システム)を用いた地域資源の記録・管理・活用を行っています。

また、地域外の都市住民との交流組織「おやきまき会(*3)」をつくり、農地や田園環境を通じた交流を行っています。 このように、地域の多様な人材を最大限に活用した取組を展開し、非農家の参画、地域力の向上が図られています。

*1 平成23(2011)年度より「農地・水保全管理支払交付金」に名称を変更。
*2 組織設立当初は「元泉地区保全会」として活動を開始。
*3 「おやきまき」は親戚の意味。

(環境保全型農業直接支援による取組)

環境保全に効果の高い営農活動に取り組むことは、地域環境や地球環境の保全・向上に資することから、平成23(2011)年度より、化学肥料・化学合成農薬を原則5割以上低減する取組と併せて、地球温暖化防止や生物多様性保全に効果の高い営農活動に取り組む農業者等に対して環境保全型農業直接支援が実施されています。

環境保全に効果の高い営農活動として、土壌への炭素貯留を目的とした、①カバークロップ(緑肥等)の作付けの取組、②炭素貯留効果の高い堆肥の水質保全に資する施用の取組、生物多様性保全を目的とした、③化学肥料・農薬を使用しない有機農業があります。このほか、④地域の環境や農業の実態等を勘案した上で、地域を限定して取り組むことができる地域特認取組を対象として支援しています。

平成26(2014)年1月末現在における取組面積の見込みとして、前年度に比べて14,218ha増加し55,656haとなっており、毎年取組の拡大が図られています(図3-1-18)。

 

事例:町ぐるみで行う地域資源の循環による環境保全型農業の取組
遊佐町
環境保全型農業を実施しているほ場
環境保全型農業を実施しているほ場

山形県遊佐町(ゆざまち)の遊佐町共同開発米部会では、平成4(1992)年の立ち上げ以降、農法・価格・食べ方等全般にわたり消費者と創り上げる「共同開発米事業」を実施しており、部会員全員(462戸)がエコファーマー認定を取得し、環境保全型農業直接支援の対象となっています。

部会の米づくりは、環境に負担をかけず、土本来の力を最大限引き出すことを目的としており、町内で生産された堆肥施用を基本とした土づくりや、発足時より統一した生産方法による環

境に配慮した米づくりを進め、平成20(2008)年には同部会のブランド米「遊YOU米」が特別栽培農産物*の認証を取得しました。

また、地域内の未利用資源を活用した地域内資源型肥料「遊佐づくし」を地元企業と開発する取組や、農家・牧場・消費者が一体となって、地域資源循環・耕畜連携の観点で、豚尿の液肥化や大豆収穫後に無肥料による飼料用米作付(輪作)を行う「飼料用米プロジェクト」を推進するなど、環境保全型農業を町ぐるみで実施しています。

* 化学肥料・化学合成農薬の割合を慣行栽培の50%以下に抑えた農産物。


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