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第3節 都市と農村の共生・対流


都市と農村の共生・対流の推進は、それぞれに住む人々がお互いの地域の魅力を分かち合い、理解を深めるために重要な取組です。

以下では、都市と農村の多様な共生・対流の重要性、グリーン・ツーリズム、訪日外国人旅行者受入れの推進、子供の農業・農村体験、廃校を活用した農村の活性化等、農業と医療・福祉・教育・観光との連携をはじめとする活力ある農村の構築のための取組について記述します。


(都市と農村の共生・対流の推進)

農業・農村は、その生産活動を通じ、生物多様性の保全、良好な景観の形成、文化の継承等、様々な役割を担っており、地域住民や農村を訪れる都市住民にゆとりや安らぎをもたらします。このため、グリーン・ツーリズムをはじめとする農村での一時滞在型のものから、二地域居住型、定住型まで多様な形態により、都市と農村の共生・対流が進められています(図3-3-1)。

しかしながら、農村においては、人口の減少や高齢化、社会資本の老朽化等に伴い、集落機能や地域の活力の低下が進行していることから、農村に受け継がれている豊かな地域資源を最大限に活用した地域の活性化に取り組むとともに、新たな市場の創出により農村における所得や雇用を増大させることが必要です。

このため、農村の現状と課題を踏まえつつ、都市と農村の共生・対流を推進し、都市住民や消費者のニーズにも応えることで、地域の活性化とコミュニティの再生を図り、美しく伝統ある農村を次世代に継承していくことが重要です。


図3-3-1 都市と農村の共生・対流に関わる多様な形態

(グリーン・ツーリズムの取組)

農村において、自然、文化、人々との交流を楽しむ滞在型余暇活動であるグリーン・ツーリズムは、都市住民の農業・農村への関心を高め、地域の活性化に大きな役割を果たしています。滞在の期間として日帰りから宿泊を伴う長期的なもの、また、定期的・反復的なもの等様々です。

農村地域においては、地域の特性に応じた多様な取組が行われており、例えば、市民農園・体験農園は消費者との交流が容易な都市的地域に多く、観光農園や農家民宿は平地農業地域、中山間農業地域において多く取り組まれているほか、地域資源を活かした行事の開催等により都市住民との交流を促進する取組がみられます。

また、農家民宿等のグリーン・ツーリズム宿泊施設への宿泊者数は年々増加しており、都市住民・消費者のニーズに応えるとともに、6次産業化(*1)の進展や農家所得の向上、地域の活性化等に大きく寄与しています(図3-3-2)。

今後、グリーン・ツーリズムの推進に当たっては、国内外の旅行者のニーズが個性化・多様化する中、農業者と観光事業者等の連携により、農業体験や地域の特色ある「食」の提供等、農村の持つ豊かな地域資源を新たな観光需要と結び付けることが重要です。

*1 [用語の解説]を参照。

(農村地域における訪日外国人旅行者受入れの推進)

平成25(2013)年6月、内閣総理大臣が主宰する観光立国推進閣僚会議が取りまとめた「観光立国実現に向けたアクション・プログラム」において、グリーン・ツーリズムをはじめとする新たな観光分野について、関係省庁や関係者が広く連携しながら魅力ある観光地域づくりを促進するとともに、情報発信の強化を図ることとされました。

また、平成25(2013)年9月、2020年オリンピック・パラリンピック競技大会の開催地として東京が選出されたことから、官民一体となったオールジャパンの体制の下、訪日外国人の受入環境の整備の促進が急務となっています。

観光庁の調査によると、訪日外国人旅行者は、伝統的な食文化体験、日本の農村の風景の見学、伝統的な町並み巡りに対する興味が高い傾向にあり、大都市だけでなく農村についても高い興味を示しています(*1)。

このため、外国人に対して我が国の農村が有する地域資源の魅力を広く情報発信するとともに、外国人のニーズに合わせた農業体験プログラムの開発により、訪日外国人旅行者を農村へ誘致することが重要です。

農村への誘客を拡大することにより、農村での交流や生活体験、郷土料理等を通じて、我が国の農林水産物や食文化等への理解を深めてもらうことが期待されます。

*1 観光庁「外国人が楽しめるニューツーリズムを目指して」(平成24(2012)年3月公表)

(子供の農業・農村体験の取組)

子供が農業を体験することや農村地域の人々との交流を深めることは、将来の農業・農村に対する国民の理解を高める上で重要です。

このような体験を実施する取組の一つとして、農林水産省、文部科学省、総務省が連携し、子供の農山漁村における宿泊体験を推進する「子ども農山漁村交流プロジェクト」を推進しています。

このプロジェクトでは、子供が農林漁家の家庭に宿泊するなどして、地域の人々との交流を行いながら、豊かな自然や伝統・文化に触れるとともに、農山漁村の生活や農林漁業等の実体験を通じて、食の大切さを学び、農山漁村・農林漁業への理解醸成を図ります。

さらに、社会規範や生活技術を身に付けるとともに、学習意欲や自立心、豊かな人間性・社会性を育む等、様々な教育的効果のほか、受入農林漁家の生きがいや農林漁業者としての意識の向上等も期待されています。このプロジェクトにおいて、農林水産省は受入地域の整備に向けた総合的な支援や人材育成、体験プログラムの開発等の支援を、文部科学省は小学校等に対する活動や情報提供等の支援を、総務省は受入地域のコミュニティや市町村等に対する支援等を行っています。

平成24(2012)年度までに、全国141地域において、約12万人の小学生が参加し、農山漁村地域の活性化にも寄与しています(図3-3-3)。

このほか、都会の中高生を農山漁村に受け入れる動きも広がっており、例えば、北海道浦幌町(うらほろちょう)のNPO法人(*1)食の絆を育む会は、北海道十勝管内の農林漁業者450戸と連携した「農村ホームステイ」を展開し、年間約2千人の中高生が農林漁業を体験することにより、農林漁業や食への理解を深めています。

*1 [用語の解説]を参照。


事例:多様な田舎体験プログラムと受入農家の広域連携による交流の取組
上越市、十日町市
稲刈体験をする中学生
稲刈体験をする中学生

新潟県の越後田舎体験(えちごいなかたいけん)推進協議会は、過疎化と高齢化が進行する中山間地域の活性化を図るため、平成10(1998)年に旧東頸城郡(ひがしくびきぐん)6町村と民間体験施設が連携することにより、体験型観光の取組を始めました。

同協議会では、「農林漁業体験」を始め、地域資源を活かした「味覚」、「自然」、「雪国」、「伝統工芸」等のありのままの自然や暮らしを体験できる100を超えるプログラムを提供し、教育旅行を中心に年間約45校、5千人のほか、企業等の体験旅行を受け入れています。

同協議会の運営は、事務局が企画立案を担い、外部人材やUターン・Iターン人材の登用、廃校・空き家の有効活用等を促進するとともに、上越市(じょうえつし)と十日町市(とおかまちし)にまたがる11地域、約400戸の受入農家のネットワークを構築しています。

体験プログラムは、指導員となる受入農家の自信や生きがいにもつながっており、同協議会では、新たな体験プログラムや一般観光客向けの旅行コースの開発により、交流人口の拡大に積極的に取り組むこととしています。

 


(農業と医療・福祉との連携)

近年、農村における癒(い)やしや安らぎの提供、農作業を行うことによる健康の維持・増進の効果等に着目し、農業と医療・福祉が連携した取組が全国各地で展開されています。

具体的には、福祉施設等において、野菜や草花等を育てることを通じて心身を癒やす園芸療法により、心身を患う子供等の治療や障害者・高齢者等の回復訓練を行う取組、作付けや収穫等の農作業を通じて収入の確保や身体機能の向上を図る取組等が広がっています。

また、農業法人等が個々の持つ障害特性に応じて障害者の雇用を受け入れる取組、高齢者が働きやすい環境を整備して高齢者の健康や生きがいの向上に結び付ける取組等の農業と医療・福祉が連携した取組が展開されています。

特に、企業が特例子会社(*1)を設立して農業分野に進出する事例も増加しており、企業は法定雇用率の達成や社会貢献が可能となる一方、農業分野での障害者雇用の増加や地域の農業者との連携等による地域の活性化が期待されます(表3-3-1)。

*1 障害者の雇用の促進及び安定を図るため、事業主が障害者の雇用に特別の配慮をした子会社を設立し、一定の要件を満たす場合には、特例としてその子会社に雇用されている労働者を親会社に雇用されているものとみなして、実雇用率に算定が可能。

表3-3-1 特例子会社による農業活動への取組事例


事例:障害者の雇用を考えたサラダ用ほうれんそうの生産
泉南市
収穫作業の様子
収穫作業の様子

大阪府泉南市(せんなんし)のハートランド(株)(平成18(2006)年設立)は、水耕栽培によるサラダ用ほうれんそうの生産・販売を通じて、知的障害者や精神障害者に雇用の場を創出しています。

同社のほうれんそうは、水耕栽培の利点を活かし、天候に左右されない生産を行うとともに、苗作りから収穫、箱詰めまでの生産工程を細分化し、障害者の程度や特性・適性に合わせた作業体系を構築しています。この取組により、障害を持つ方においても作業経験に比例して作業スピードと正確性が向上するとともに、働きやすい職場が形成されています。

また、同社はほうれんそうを使用した野菜スープの製造・販売に取り組んでいます。現在のところ、同社では、このスープの購買層として働き盛りの20歳から40歳代のビジネスマン等を対象にしていますが、高齢者や介護が必要な方への販売も検討しており、今後の経営の発展が期待されます。

注:同社では、障がいを持つことは害ではないとの考えから、「害」に代えて旧字の「碍(がい)」を用いて「障碍者」と表記しています。


事例:農業を通じた生活困窮者の自立支援
藤沢市
農作業研修の様子
農作業研修の様子

神奈川県藤沢市(ふじさわし)のNPO法人農スクールは、ホームレス等の生活困窮者に加え、ひきこもりやニート(*)に対して農作業研修を行い、その適性に応じて、農業法人への就農をあっせんする取組を行っています。

代表の小島希世子(おじまきよこ)さんは、出身地の熊本県では農村における空き家や人手不足が問題になっていた一方で、都市では住む家や仕事を探す人が多数存在していたことから、求職中の人と人手不足の農業界を結び付けることができないかと考え、平成23(2011)年から活動を開始し、平成25(2013)年8月に同NPO法人を立ち上げました。

農作業研修は、藤沢市内にて実施しており、野菜栽培を行う中で、栽培技術、忍耐力、コミュニケーション力等の習得のほか、労働に対する達成感や自信を身に付けることを目指しています。また、生活困窮者には、その心身の状態によってきめ細かな対応が必要であるため、農作業日誌の作成を義務付けることにより、心身の状態を把握するとともに、研修者自身が変化に気付くよう促しています。

同法人は、これまで3人の研修者に就農をあっせんしたほか、5人は労働意欲を取り戻し農業以外に就職しました。小島さんは、この活動を通じて、解雇等により職を失った生活困窮者であっても再挑戦が可能な社会を実現したいと考えています。

*15歳から34歳までの若者で、仕事に就いておらず、家事も通学もしていない人をいう。


(農村の活性化に向けた取組)

多くの農村では、農業従事者の高齢化・後継者不足、若者の流出という大きな課題がありますが、地域の活性化のため、このような課題に立ち向かい、農村の豊かな地域資源を活用した新しい事業の創出を図る地域を支援していくことが重要です。

このため、農林水産省では平成20(2008)年度から「田舎で働き隊!」事業により、農村に関心を持つ都市住民を活用し、農村地域の活性化を担う人材の育成・確保等に取り組む集落等を支援してきました。

同事業の活用により、平成20(2008)年度は約2,500人が1か月未満の短期研修において農作業や地元農産物の加工・販売等を体験しました。さらに、平成21(2009)年度から平成24(2012)年度までの4年間で936人が約1年間の人材育成研修に参加し、そのうち509人が研修終了後も地域において様々な就労先で活躍しています(図3-3-4、図3-3-5)。

平成25(2013)年度からは、「新・田舎で働き隊!」として、グリーン・ツーリズム、子ども農山漁村交流、商品開発、流通システム、IT等を担う専門的な技能や技術を持つ人材や地域活性化に意欲ある都市の若者等の地域外の人材を受け入れる取組を推進しています。実際の事業を通した実践研修を行いながら、地域活性化の担い手となる人材を育成するとともに、地域おこし協力隊(*1)等との合同研修や人材連携を図ることとしています。

*1 都市住民が生活の拠点を過疎、山村、離島、半島等の地域に移し、地域おこし活動の支援や農林漁業の応援、住民の生活支援等の「地域協力活動」に従事、併せてその定住・定着を図りながら、地域の活性化に貢献する取組で、総務省が支援。



事例:起業家や芸術家等の移住支援を通じた地域活性化の取組
神山町
古民家の蔵を再生したサテライトオフィス
古民家の蔵を再生したサテライトオフィス

徳島県神山町(かみやまちょう)は、高齢化と転出者の増加により過疎化が進行していましたが、NPO法人グリーンバレーが取り組む起業家や芸術家に向けた空き店舗の情報提供や移住支援等の活動により、転入者の増加と地域の活性化が実現しています。

同法人は、平成11(1999)年より国内外の芸術家を同町に招へいし、制作活動を支援するプロジェクト等を実施してきました。この取組により、同町を訪れる芸術家や移住を希望する芸術家等が増加し、同町への移住に対する潜在的ニーズが顕在化しました。

このため、町から委託を受けて町への移住支援を行い、子供を持つ若年夫婦や起業家を優先的に受け入れることで、過疎化、高齢化等の町の課題解決を図っています。

また、既存のブロードバンド環境を活かして、IT企業等が短期的に使用するサテライトオフィスの誘致も行っており、平成25(2013)年には10社のオフィスが開設され、新たな雇用も生み出しています。

同法人は、創造的な人々が集まる場所を創り出すことで、町を常に新しいものが生み出される地域に発展させることを目指しています。


(廃校・空き家の有効活用)

農村地域では、児童生徒数の減少による廃校や過疎化・高齢化による空き家が増加しています。学校施設は、地域住民にとって身近な公共施設であるとともに地域のシンボル的な存在である場合も多く、廃校となった後もコミュニティの拠点として活かすことが重要です。

文部科学省の調査によると、平成14(2002)年度から平成23(2011)年度までに発生した廃校については、建物が現存するもののうち7割が他の学校施設や社会体育施設、公民館・資料館等の社会教育施設、体験交流施設等に活用されています(表3-3-2、図3-3-6)。

また、長期間人の出入りがない家屋は、老朽化の進行が早く、地域の居住環境や景観、防災・防犯面において悪影響を及ぼす可能性があることから、改修・活用により地域の活性化やコミュニティの維持・再生につなげる取組が必要です。

農村の持つ豊かな地域資源を観光、教育、健康等に活用する地域活動に必要な拠点施設として、廃校や空き家を活用することにより、都市と農村との共生・対流の一層の促進が期待されます。



事例:廃校を活用した体験宿泊施設を交流拠点とする地域活性化の取組
本山町
廃校を活用した施設「清流館」での手打ちそば体験
廃校を活用した施設「清流館」での手打ちそば体験

高知県本山町(もとやまちょう)の汗見川(あせみがわ)地区は、廃校となった小学校を体験宿泊施設として活用することにより、交流人口の拡大と地域の活性化に取り組んでいます。

同地区は四国の中央部に位置し、面積の99%を森林が占める山間地域で、かつては林業が盛んでしたが、昭和40年代以降、林業の衰退とともに人口が減少し、地域の活性化が課題となっていました。

このため、昭和47(1972)年、地域住民により同地区を流れる汗見川の清掃等を行う「汗見川を美しくする会」を立ち上げ、地域の保全活動を行ってきました。さらに、地域の活性化を推進するため、平成11(1999)年に「汗見川活性化推進委員会」を設立し、地域の景観改善等の地域活動に積極的に取り組んできました。

このような中、同地区の小学校が廃校となったため、本山町は同委員会と連携して、平成20(2008)年に校舎を宿泊施設「清流館」に改修するとともに、地域住民がインストラクターとなり、観光客を対象に間伐や田植・稲刈り作業等の体験プログラムの提供を開始しました。同施設では、プログラムの充実によって交流人口の増加を図り地域の活性化につなげています。

また、同委員会は県と連携し、平成24(2012)年に同施設内に地域の特産品の開発や高齢者支援等を行う活動拠点(集落活動センター)を開設するなど、様々な面で地域の活性化に貢献しています。



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